晶子、らいてう、俊子、花世、野枝…ポスト一葉への模索とは何であったのか。「女性表現」史のパイオニアが再び、指し示す文学研究の新しい地平。
本書は、パーリ語、サンスクリット語で書かれた原始仏典の徹底的な読み込みを通して、釈尊の教えが、女性差別を当然視するバラモン教的な人間観を批判するなかから生まれ、本来、積極的に女性の宗教的救済を認める方向性をもっていたこと、真理への覚醒が誰に対しても開かれているとする平等主義の立場に立っていたことを明らかにする。著者はさらに、原始仏典と漢訳仏典とを比較しつつ仏教史の流れをたどり、釈尊入滅後、徐々にインド一般社会の男尊女卑的差別思想が仏教教団に浸透し、教団が保守化する中で、「三従五障説」に象徴されるような女性差別が定着し始めたこと、またそうした状況に対する批判として大乗仏教が起り、なかでも法華経が一仏乗の思想を標榜し、男女平等を説く新たな思想として誕生したことを論証する。米国仏教研究界で注目を集めた英文図書を大幅増補。
本書は、急速に変貌するアジア地域の家族を、そこに暮らす人びとの日常の生活や意識をとおして理解しようとするものである。当然、極端な文化決定論や、あるいは直線的な社会発展論の立場からは距離をおくが、今ある家族の現象が、その背後に見え隠れする諸社会の伝統や文化とどのようにかかわりあいながら生じているのか、という問題意識を共有しつつ、現代アジア地域の家族の変容を浮かび上がらせることを目ざしている。
日本の現実と財界の思惑ーその関係を読み解く。よりマシな社会のために考えてきたこと。
近代デザインの歴史をジェンダーとの関わりに焦点を絞って明らかにしたユニークな試み。「女性の趣味とデザイン改革」「近代の男らしさ」「近代と女性らしさ」などを展開の主な論旨に、インテリア、ショッピング、キッチン等々に見られる典型的な女性の価値観が、男性中心の合理的な文化の潮流の中で抑圧されてきた事実を明らかにし、「女性文化」の観点から厳しくその再構成・再評価を図る。
総力戦体制の「戦後」への連続と再編ーいまなお東アジアに息づく植民地主義を「生活世界の植民地化」「動員」「ジェンダー」などの視座から照射して、生活者たちのまなざしに寄り添いながら「戦後」の時空間変容の意味を捉え返す。輻輳した「戦後」を解きほぐし、植民地主義という暴力の臨界点を探って、戦後責任に正面から応答する試み。
受容や影響だけなく、文化接触・文化融合がもたらすアメリカ・太平洋世界の文化風景を学際的なアプローチと歴史的パースペクティブで描き、アイデンティティの変容を探る。
序論・文化風景としての太平洋世界(瀧田佳子)
第1章・〈太平洋〉を書く(シーラ・ホーンズ)
第2章・環太平洋共同体の萌芽─両大戦間期の民間団体(廣部泉)
第3章・アメリカ占領軍向け「慰安施設」に見られるジェンダー(有賀夏紀)
第4章・ナサニエル・エマソンのフラ(矢口祐人)
第5章・教育におけるアメリカ・西欧モデルと文化的ジレンマ─日本とマレーシアの選択(恒吉僚子)
第6章・アメリカとアジアの知的交流(藤田文子)
第7章・日米文化教育交流会議の成果と課題(能登路雅子)
第8章・チャイナタウンの孫悟空(杉山直子)
第9章 交錯する文化的自画像(川野美砂子)
第10章・『カルパチア山脈』におけるディスプレイスメント(ラクエル・ヒル)
少子化の時代に、女性は社会と家族をどうつないでいくか。家族の表象を革新し、社会と家族の新たな関係を模索する。
“ジェンダー”と女性の“病”が交差するトポスでいま、何がおこっているのか?理論と実践、大学と現場、個人と社会はどう関わるかを真摯に問いかける気鋭の論集。行政・NPO・研究に携わる9人の報告。
労働時間と生活時間の両方を取りあげ、ミクロ統計データを含む原資料による国際比較方法を提案。不払残業労働の国際比較、同一世帯内の夫と妻の相互関係の統計的分析、等を究明。
ドメスティック・イデオロギーの支配する19世紀アメリカで、禁じられた領域に足を踏み入れ、兵士やスパイとして勇敢に戦った、南北戦争の女性たちの日記や手紙や回想記。
福祉国家をめざしていたイギリスの市場経済重視への転向が教育に及ぼした影響とは。
中央の管理強化と選択制をうながす自由競争原理による教育政策改革の流れを追い、批判的に概観。
1945年から2000年までの歴代政権の実施した制度と政策を実証的に研究。
序 論
本書の主題 / ポスト福祉社会における人的資本 / 本書の計画
第1章 社会民主主義的総意?教育 1945〜79
機会の平等化1945〜60 / 総合制の闘い / 1960年代の争いの種 / 1970年代 / ラスキンとその後
/ 1970年代のイデオロギー
第2章 自由市場方式の高まり:教育 1980〜87
逆行的ヴイジョン / 選抜と民営化 / 特別選抜 / 少数民族集団 / 学校統治 / 中央集権管理
/ 教師統制 / カリキュラム統制 / 職業教育 / 重大な改革へ
第3章 競争の創造:教育 1988〜94
1988年教育改革法 / 選択と多様性 / 大混乱と片意地 / 視察のための法律 / 過去最も長文の教育法
/ カリキュラム統制 / カリキュラム批判 / 高等教育 / 教員と訓練 / 1990年代初頭の労働党教育政策
第4章 競争の結果:1994〜97
1995〜96年制定法 / 保守党最後の法 / 自由市場方式の影響 / 問題校 / 特別な教育ニーズ
/ カリキュラム問題 / 14〜19歳と教養ー職業区分 / 労働党の政策
第5章 新労働党と教育:1997〜2000
学校政策 / 1988年学校水準・枠組み法 / 選別と専門化 / 排除への取り組み / 中央集権化する支配
第6章 生涯学習の中央集権化
生涯学習 / 成功への学習 / 学習・技能法案 / 高等教育 / 政策と資格14〜19歳
/ 継続性と変化1997〜2000
第7章 教育と中流階級
階級構造の変容 / 能力主義と達成 / 学校の有効性 / 中流階級のニーズ / 私利 / 選択と利点
/ 職業教育の回避 / 貧しい人々を避ける / 階級と公共の利益
第8章 公正の問題:人種とジェンダー
人種と民族性 / ジェンダー / 少女たちの学業成績 / 少年たちの「成績不良」
第9章 教育と経済
最近の歴史 / 1990年代の労働市場 / 仕事と教育 / 新しい経済体制? / グローバル経済と教育
/ 貧しい人々のための将来性
結 論 ポスト福祉社会の教育
プラスの局面 / マイナスの局面 / 将来