明治以降近代日本のセクシュアリティはいかに形成され、どのように変容したか。膨大な資料を渉猟・分析、言説形成過程を検証する。
近代日本のセクシュアリティ言説形成過程に見出された一定のパターンをオナニーに関する言説に焦点に検証するとともに、「性=本能論」「性=人格論」が拮抗し交錯して慣習や制度を形成してきた様を素描。哲学、理論社会学、フェミニズムなどセクシュアリティ研究の成果に理論的検討を尽くし、資料を検証する方法論の確立を目指す。
ポルノ・買春の蔓延状況に鉄槌を!擁護論を展開する論客を徹底批判。
性(セクシュアリティ)に関する概念とその関連を整理し、性差や性的アイデンティティの問題、また子ども・青年のセクシュアリティ形成過程と性教育の課題を提示。
「政治と性/ジェンダー/セクシュアリティ」を統一テーマに開催された政治思想学会第31回研究大会の発表報告論文4本を中心に、公募論文10本と書評8本を収録。
性教育発展の国際的スタンダードである『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』の翻訳書を、日本の教育・福祉・医療・保健等の現場で活動する執筆者たちが読解・論議を重ねて解説。子ども・若者と語りあう包括的性教育を実践するためのヒントいっぱいの案内書。
多様なセクシュアリティの人にとって、対人援助の場を安心・安全な空間としていくために。さまざまな現場で、セクシュアリティの視点を実践に活かす方途を探る。
気鋭の研究者たちが、
ヴィクトリア朝の性を大いに語る!
「抑圧的」と語られながら、
実は、セクシュアリティのイメージが溢れていたヴィクトリア時代。
多彩な視点から、19〜20世紀初頭の「性の言説」を捉え、
現代にも影響を与え続けている
「ヴィクトリア朝文化とセクシュアリティの関係」をひもといていく──。
序章 横溢するセクシュアリティ
【田中 孝信】
第1章 マルサス以降──性は個人と人口をつなぐ
【要田 圭治】
第2章 「不適切な」議題と急進派女性ジャーナリスト、イライザ・ミーティヤードーー1847年スプーナー法案(誘惑・売春取引抑制法案)の行方
【閑田 朋子/日本大学文理学部教授】
第3章 「模倣」する「身体」──『アグネス・グレイ』における動物・身体・欲望の表象
【侘美 真理/東京藝術大学音楽学部准教授】
第4章 髪と鏡ーーメドゥーサとしてのバーサとそのセクシュアリティ
【本田 蘭子/広島大学非常勤講師】
第5章 欲望の封印から充足の模索へ──エリス・ホプキンズとヴィクトリア朝中期の性の葛藤
【市川 千恵子/茨城大学人文学部准教授】
第6章 「現代バビロンの乙女御供」──ウィリアム・T・ステッドの少女売春撲滅キャンペーン
【川端 康雄/日本女子大学文学部教授】
第7章 ジャーナリズムとセクシュアリティの世紀末──オスカー・ワイルドの自己成型
【原田 範行】
第8章 イースト・エンドと中国人移民ーー世紀転換期のスラム小説にみる異人種混淆
【田中 孝信】
第9章 D. H. ロレンス『息子と恋人』のセクシュアリティと(ポスト)ヴィクトリア朝
【武藤 浩史/慶應義塾大学法学部教授】
アジアのセクシュアリティとジェンダーのあり方を鍵として,東アジアと南アジアを中心とする父系的社会と,東南アジアから日本・韓国までの双系的社会という2つの社会を区別し,それに文明化と近代化が重なって生み出された,アジアの重層的多様性を描き出す。
序論 アジアの重層的多様性(落合恵美子)
【第1部 セクシュアリティ──2つのアジアと1つの近代】
◇1-1 2つのアジア 1. カーマスートラを解読する/2. 朝鮮後期における妾と家族秩序/3. タイの性愛文化におけるヨバイの伝統/4. 百歳女性のライフヒストリー ◇1-2 性と愛の近代 5. 性と愛をめぐる論争/6.植民地朝鮮における新女性,セクシュアリティ,恋愛/7. 「爆弾」としての婚外性交渉 ◇1-3 セクシュアリティの現在 8. レイプ,懲罰,国家/9. 男性ピンナップ,GRO,マッチョ・ダンサー/10. 北京におけるゲイ・コミュニティの実態調査
【第2部 ジェンダー──葛藤と実践】
◇2-1 伝統の重層性 11. 仮面と素顔/12. 「男性の概念」とは何か/13. 女性・神学・暴力/14. 江戸時代は女性にとって暗黒の時代か ◇2-2 近代的性役割の成立と変容 15. 良妻賢母思想の成立/16. アメリカ植民地教育はフィリピン女性の地位をどう変えたか/17. 男性性を作り直す/18. 最後の伝統的な姑 ◇2-3 アジアのフェミニズム 19. 女にとって産むこと産まぬこと/20. 韓国家族法における男女平等 対「伝統」/21. 語られない秘密/22. 「被害者化」を超えて
PART 1 セクシュアリティ教育のいま、これから
PART 2 セクシュアリティ教育実践
PART 3 民間団体のとりくみに学ぶ、協働する
PART 1 セクシュアリティ教育のいま、これから
じぶんごととしての包括的性教育へ
──『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』から学ぶ日本の性教育の課題
堀川 修平(都留文科大学非常勤講師)
都教委「性教育の手引」を検証する
水野 哲夫(“人間と性”教育研究協議会代表幹事)
人権教育としてのセクシュアリティ教育
──教育実践に取り組むために
内海崎 貴子(川村学園女子大学教育学部教授)
安心・安全な学校づくりのために
──性的トラブルと境界線
野坂 祐子(大阪大学大学院准教授)
【対談】 『ジェンダー平等教育実践資料集─多様性を排除しない社会にむけて─』の活用を
大橋 由紀子(日教組女性部長)、内海 早苗(日教組前女性部長)
PART 2 セクシュアリティ教育実践
〈性教育実践1保育園〉 自分のからだといのちを守るための、5歳児への性教育
安永 愛香(社会福祉法人どろんこ会理事長)
●子どもと読みたい 性と生の絵本
〈性教育実践2小学校〉 もっと知りたい自分のこと──性の多様性を学ぶ
及川 比呂子(神奈川県三浦市立初声小学校養護教員)
〈性教育実践3中学校〉 生徒のニーズに応じた性教育実践
越 安子(公立中学校教員)
〈性教育実践4特別支援学校〉 歌や踊りを交えて楽しい&記憶に残る授業に
船木 雄太郎(公立支援学校養護教諭)
《探る・深める》 つくられたボディ・イメージに抗して
千田 有紀(武蔵大学社会学部教授)
PART 3 民間団体のとりくみに学ぶ、協働する
性教育は性のポジティブな部分から
福田 和子(#なんでないの プロジェクト)
《探る・深める》 私のからだは私のもの
大橋 由香子(フリーライター・編集者)
「性的同意」とは自分も相手も尊重する人間関係のこと
大澤 祥子(ちゃぶ台返し女子アクション共同代表理事)
対等でお互いを尊重する関係性を学ぶ
──デートDV予防教育
阿部 真紀(NPO法人エンパワメントかながわ理事長)
思いがけない妊娠にとまどう人に寄り添う
土屋 麻由美(NPO法人ピッコラーレ副代表)
男性の性被害はなぜ認知されにくいのか?
──セクシュアル・トラウマ・インフォームド・ケアの提案
熊谷 珠美(Center for HEART代表、臨床心理士)
一人ひとりの姿を通して見えてくる豊かな性。親、教師、ボランティアにはなにができるか?“性”にかかわる課題をヒューマンな視点でなげかける。
人の移動とセクシュアリティには強い関わりがある。人の国際移動、とりわけ強制移動と呼ばれる現象のなかにセクシュアリティの問題が規定されていることを、性的マイノリティの人々が難民として移動する経験に関するアメリカでの調査を通して明らかにする。
まえがき
序章 「性的マイノリティの難民」を問う
1.「性的マイノリティの難民」を問う
2.研究の方法
3.本書の構成
第1章 難民・強制移動とジェンダー/セクシュアリティ
1.難民・強制移動とジェンダー
2.性的マイノリティの難民へのアプローチ
3.クィア移住研究として
第2章 国境におけるセクシュアリティの歴史と政治
1.セクシュアリティの規範と入国管理
2.難民政策のターニングポイントーー1980年マリエル・ボートリフト
3.「ホモセクシュアル・マリエルズ」から「特定の社会的集団の構成員」へ
第3章 性的マイノリティの難民の保護
1.セクシュアリティと保護/排除の言説
2.外交政策としての「LGBT難民と庇護希望者」
3.「LGBT難民」≠「LGBT庇護希望者」
4.新聞報道のなかの性的マイノリティの難民
5.国境の厳格化と入国管理政策
第4章 難民の移動と語りの構築
1.調査のフィールドと支援のアクター
2.移動と難民認定申請
3.難民の語りの構築
4.権利とアイデンティティを「学び」、語るーニューヨーク市の事例から
5.非正規移民から難民申請者へーサンフランシスコ・ベイエリアの事例から
第5章 難民の語りのクィアな可能性
1.「寛容なアメリカ」対「ホモフォビックな出身国」
2.帰属意識の複層性
3.庇護国アメリカとLGBTコミュニティの包摂の幻想
終章 性的マイノリティの難民の包摂と排除
1.「LGBT難民」の包摂と移民・庇護希望者の排除
2.クィアな実践としての移動と語り
3.今後の研究課題
あとがき
参考文献一覧
日々の出会いやメディアのなかで、セクシュアリティはわたしたちを挑発している。セクシュアリティに無関心な人びとを含めて、わたしたちはセクシュアリティから逃れられない時代を生きているのだ。「性」の視点から人間と社会を問い直す。
植民地主義と性差別主義の結びつき
戦後沖縄における性暴力や性売買をめぐる問題は、これまでフェミニズムの観点から様々に論じられてきた。しかし、広大な米軍基地を抱え、アメリカや日本との複雑な権力関係にさらされるこの地の問題を考えるためには、それだけでは不十分である。植民地主義と性差別主義が深く結びついているからだ。不可視化されてきたこの問題を分析するため、ポストコロニアル・フェミニズムの手法を本格的に社会学に導入し、女性を取り巻く言説を問い直す、刺激に満ちた気鋭の力作。
「ポストコロニアル・フェミニズムという視点は、重要でありながら、あるいは、重要であるからこそ隠され続けてきた植民地主義と性差別主義とのつながりを可視化することができる。ポストコロニアル・フェミニズムは、過去から現在へ続く不正義の発見を助ける眼鏡であると言える。」(本書より)
現代社会で育まれた先鋭な視点を通して第二波フェミニズムの諸テーマを再検討し、フェミニズムの新たなステージを切り開く。現代の生・性・思想に貫通するカラクリを探き出す挑戦的16編。
ドイツ・ヴィルヘルム時代の市民社会における、ジェンダー秩序の生成、性の規範化プロセスとそれによる女性の管理、新しい性道徳の意義、を明らかにすることで、性と政治社会の関係性を考察し、現代におけるセクシュアリティをめぐる問題の理解・解決への手がかりとしたい。
序 章 セクシュアリティと政治
第1部 新しい性道徳の波紋
第1章 管理売春制度と廃娼運動
第2章 ヘレーネ・シュテッカーと堕胎論争
第3章 オット・グロースの「エロス論」がヴェーバー・サークルに与えた影響
補論1 女性作家 マルガレー・ベーメ
第4章 ドイツ社会民主党と性倫理ー1913年、「出産ストライキ」論争を中心に
補論2 錯綜するプロレタリア女性運動
第2部 性の二重道徳と法の支配ーバーデン大公国を例に
第5章 19世紀のバーデン自由主義ーフリードリヒ大公とバーデン立憲制
補論3 バーデン大公国の社会的特徴
第6章 バーデン大公妃ルイーゼと「バーデン女性連盟(BFV)」
第7章 バーデン大公国の管理売春制度にみる市民社会と政治の一側面
-公的娼家の閉鎖を求める請願書を例に
第8章 ヴィルヘルム時代の女給の問題化プロセス
-カミラ・イェリネックの女給運動を例に
補論4 1970年代東西ドイツにおける妊娠中絶をめぐる論争
終 章 ヴィルヘルム時代の新しい性道徳の意義
“恋愛”の時代から“性欲”の時代へ。そして“性欲”に悶え“性欲”に涙する人々を登場させた近代。文学において“性”を描くこととはー“性”の言説分析。
何がリスペクタブルな振舞か。ナチズムへと至る国民主義の高揚の中で、性的領域も正常/異常に分けられていく。セクシュアリティ研究の先駆的著作。
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18世紀の宗教復興とフランス革命を経て、西洋では「礼にかなった」作法を重んじる市民的価値観が浸透していった。リスペクタブルか否か? その問いかけはセクシュアリティをも正常/異常に区分し、国民主義と結びついて社会の管理・統制を強化した。逸脱行為と見なされた同性愛や売春は社会秩序を乱すものとされ、自制する「男らしさ」と、性欲を排した男同士の友情が市民道徳の基盤となっていく──。宗教、医学、芸術、性別分業、人種主義などの諸要素が絡まり合って作用し、市民的価値観と国民主義が手を取り合ってナチズムへ至る道が鮮やかに描き出される。文庫化にあたって、心理学者メアリー・ルイーズ・ロバーツによる新たな解説を付した。
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「正常な性意識」が、ナチズムを支えたーー
セクシュアリティ研究と歴史学を結んだ先駆的名著
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第1章 序論 国民主義と市民的価値観
第2章 男らしさと同性愛
第3章 身体の再発見
第4章 友情と国民主義(ナショナリズム)
第5章 どんな女性?
第6章 戦争と青年と美しさ
第7章 血と性ーーアウトサイダーの役割
第8章 ファシズムとセクシュアリティ
第9章 結論ーー万人の道徳
モッセ著作集版解説(メアリー・ルイーズ・ロバーツ)
一九九六年の訳者あとがき(佐藤八寿子)
訳者解題(佐藤八寿子)
原註
人名索引