女性解放運動から第三波フェミニズムの誕生まで。浮かび上がるもうひとつのアメリカ現代史。
家事労働と賃労働とのダブルバインドのなかで、フェミニズムは「働くこと」それ自体がはらむ問題を見据える地平に立った。資本と男たちとによる搾取からの解放の道をめぐっての論争、対論、働く女たちの現場からの発言の集成。
動物をめぐる思想はここまで到達した
いまや動物にとどまらず、あらゆる存在の解放をめざす包括的正義の理論へと至った批判的動物研究を始めて本格的に紹介。理論水準を大幅に引き上げるとともに、実践へと誘い、シンガー『動物の解放』以来の衝撃をもたらす力作。
19世紀にはじまり、ピーター・シンガー『動物の解放』をもって本格化した動物擁護、動物解放の理論はその後、多様な社会運動や学問との協力・批判を経て、種を越えたあらゆる抑圧と差別に反対し包括的正義の実現を目指す、強靭な理論=実践へと鍛え上げられた。批判的動物研究と呼ばれ、世界的な隆盛をみせるその潮流は、いまやどんな思想も理論も無視できないものとなっている。本書では批判的動物研究を主に哲学、社会学、ポスト人間主義、フェミニズムの観点から整理、検証し、諸正義を結ぶ領域横断的な解放理論として描き出す。動物をめぐる数々の翻訳を手掛けてきた著者が、渾身の力で放つ初の著書。
◎目次
謝辞
序論
批判的動物研究
本書の構成
第一章 動物たちの現状
食用利用
肉用牛/乳用牛/豚/乳用牛/産卵鶏/魚介類
動物実験
行動研究/医学研究/製品試験
動物園と水族館
ペット産業
第二章 道徳哲学
功利主義革命
理論の重要性/功利主義アプローチの問題
動物の権利
内在的価値と生の主体/尊重原則から権利の導出まで/
権利論の実践的帰結/救命ボートの事例
新福祉主義
新福祉主義の実害/新福祉主義の元凶
廃絶主義アプローチ
単一争点の活動/平和的な脱搾取の啓蒙活動
第三章 社会学
抑圧理論
資本主義
商品化/物神崇拝
疎外
構造的暴力
労働者の逆境/環境破壊
動物産業複合体
エコテロリズム
第四章 ポスト人間主義
人間学、人間主義、人間中心主義
人間の名、動物の問い/生贄構造
生政治
生政治と生贄構造/動物生政治
ポスト人間主義の倫理
ポスト人間的状況/差異と応答/未分化と変成
資本・労働・抵抗
動物労働論/接触地帯/紛争地帯
第五章 フェミニズム
父権制と自然
女性・動物・自然/二元論の形成
父権的抑圧
残酷への意志/暴力の正当化/生殖支配/性と肉食…
低賃金労働力、セックスワーカー、家事労働者、嫁・妻・母として、そして国際社会に繋がる1人として、女たちは越境し続けるー自らの解放の糸を手探りで紡ぎながら。1970年代の経済大国化した日本からアジアへ向けた視線、そして21世紀、格差と貧困化が新たな分断を生む世界で、身を切るような挑戦から切り拓いてきた連帯の回路を読みなおす。
人は皆、ケアを必要とする存在である。リベラリズムの普遍主義を問い直し、依存する他者に対し柔軟に応じうる規範理論を構想する。
1910 年代後半、菊栄は「女われら」の自主自立を訴え登場した。
女性を性役割分業へと強制する男社会の告発、良妻賢母主義への論駁は、今日のフェミニストの主張にまっすぐにつながる。
はしがき 序章
1章 菊栄の生い立ち
2章 社会主義、フェミニズムへの関心、山川均との結婚
3章 山川菊栄のフェミニズム思想と反軍国主義
4章 山川菊栄の「帝国のフェミニズム」批判と階級社会批判
5章 社会主義女性思想と社会主義運動の展開
6章 労働組合婦人部論争と「婦人同盟」問題
7章 帝国のフェミニズム・植民地主義批判
8章 山川菊栄の時局・戦争批判
9章 「国体観念」呪縛、民衆と女性の生活の疲弊
10章 戦争抵抗者の生き残り戦略ー生活者の視点を貫く
11章 敗戦と山川菊栄
12章 非武装中立・平和主義・社会主義へ
本書は金沢21世紀美術館での「ぎこちない会話への対応策ー第三波フェミニズムの視点で」展に関連して出版されました。
正当な地位を獲得すればするほど進む若い世代のフェミニズム離れ。それはなぜか。近代主義的な言説の厚む幾重もの屈折を解きほぐす。
『装置としての性支配』(1995年)につづく第五論集。90年代後半から今日までのフェミニズム、ジェンダー論を中心とした著者の代表的な仕事を収める。「女の時代」と呼ばれた80年代から一転して90年代のフェミニズムは、普及と拡散という事態に直面し、フェミニズム離れという現象すら起きている。少子化、晩婚化、経済不況の深刻化のなかでフェミニズムが抱えている課題を明らかにする。総論から各論へ、女性全体の問題から個別の問題へ、という時代の変化の意味を探っていく。性の商品化、性暴力、自己決定、セクハラなどの問題群をどう考えればよいのか。
韓国フェミニズムの今日を築き、それぞれの専門分野でも著名な研究者の論文をまとめ紹介した希有の書。女性学、文学、哲学、倫理学、法学、教育行政の各分野から構成、韓国フェミニズムの斬新な活力と韓国固有の課題を模索する姿が多くの貴重な示唆を与える。
文化的・社会的に構築されたセクシュアリティは、現在どこまで揺らいだか。排他的で抑圧的な異性愛規範を踏み破り、自らのセクシュアリティを選択する人、性暴力被害の当事者、性産業で働く人の声が制度や法を動かし始めた。これまで聞かれることのなかった多様な声を収録。
客観性,合理性,価値中立性,真理など科学の中心的概念から科学と権力の共謀関係を問う。グローバルなレベルで社会正義と民主主義に反するプロジェクトを推し進める近代西洋科学への論争の書。フェミニズム,ポストコロニアリズムの立場から現代社会と科学の関係を批判的に考察してきた科学哲学者,ハーディングの本邦初訳。
日本語版への序文
はじめに
謝辞
序章 科学と不平等ーー論争を呼ぶ問題
論争となっている問題
専門用語についての挑戦
第1部 科学的研究の社会
1章 人種と科学について考える
科学は人種差別主義なのか
人種差別的な科学実践の擁護
科学の世界ーー人種、文化、帝国
結論ーー人種差別への抵抗が担うラディカルな役割
2章 他人が我々を見ているように、自分自身を見つめる
--ポストコロニアル科学論
「妖精ジニーが我々に与えてくれる贈り物は……」
自然科学は多文化的なものなのか
近代科学は他にもあるのか
3章 両目を開けてーー科学の世界
1つの地球、多くの科学?
南側諸国を出発点とするプロジェクト
北側を出発点とするプロジェクト
4章 北側のフェミニスト科学論ーー新たな挑戦と機会
北側におけるフェミニスト科学技術論
5章 差別的な科学認識論と科学哲学
スタンドポイント研究ーーその方法論的性質
科学実践はどのようにして文化化された自然をつくり出すのか
事物がいかに科学を悩ませるかーー行為遂行的な科学実践
実践に焦点を当てたフェミニスト科学哲学の重要性
6章 啓蒙思想の周縁に位置するフェミニスト科学技術論
フェミニズムと南側のポストコロニアル科学技術論
GESDにおけるフェミニスト固有のテーマ
結論
第2部 真理、相対主義、そして、科学の政治的無意識
7章 西洋科学の政治的無意識
外在的対内在的な民主主義の問題
科学にとっての民主的な理想
科学の統合というテーマーー1つの世界、1つの真理、1つの科学?
統合という理想のコスト
反民主的理想と民主的理想
近代西洋科学の政治的無意識を再考する
8章 科学において真理の主張は意味をなさないのか
初期の懐疑的立場ーークワイン、デュエム、ポパー、クーン、ファイヤアーベント
最近の分析
なぜすべての科学が「民族科学」でなければならないのか
知者はひとり?
意味をなさない真理の理想
9章 相対主義の脅威はパニックに値するのか
単一の基準に対する挑戦への3つの反応
誤った2つの仮定
近代主義者の夢を過去のものにするーーポスト実証主義のアプローチの1つ
絶対主義と相対主義を捨てる
訳者あとがき
注
文献
索引
黒人女性が受けた人種差別と性差別という二重の抑圧を告発し、中産階級の白人女性を偏重してきたフェミニズムに一石を投じる。「女性」が一枚岩でないこと、階級と人種をも考察すべきであることを指摘し、フェミニズムのその後の方向性に影響を与えた古典的名著。
謝辞
凡例
序章
第一章 性差別と黒人女性奴隷の経験
第二章 奴隷制廃止後もおとしめられつづけた黒人女性像
第三章 家父長制という帝国主義
第四章 人種差別とフェミニズムーー責任の問題
第五章 黒人女性とフェミニズム
訳注
監訳者あとがき
参考書目録
事項索引
人名索引
何者でもない少女や女性たちによる手作りの小冊子「ガール・ジン」。それはアメリカにおけるアカデミズムや既存の女性団体の外側で、1990年代以降の「第三波フェミニズム」を支えてきた。ガール・ジンは読者に希望を与え、怒りをかきたて行動を促すことで、社会や政治への介入を可能にする。個人的で親しみやすさを重視する一方で、広い集団行動を呼びかける。
フェミニズム以前・以後,女性たちが権能や権限を手に入れてきた数多くの方法を振り返る。フェミニズムの歴史的擁護/ジェンダーと権力/他。
中国、韓国、台湾、香港の4地域で沸き起こっているフェミニズム運動を一挙紹介。豊富な写真と当事者の寄稿が伝える、フェミニストたちの苦闘と創造力。あなたの知らないフェミニズム、あなたの知らない東アジアがここにある。
【目次】
●はじめにーー東アジアのフェミニズム・ムーブメント
●中国ーー草の根フェミニズムの登場
●韓国ーーフェミニズムの大衆化と亀裂、新たな挑戦
●台湾ーージェンダー平等への変革をもたらすエネルギー
●香港ーー暴力と闘う行動力と創造力
●4地域共通コラムーーセクシュアル・マイノリティ、オンライン・フェミニズム、戦時性暴力
●座談会ーーハッシュタグだけじゃ始まらない
●文献紹介
まえがきーーハッシュタグだけじゃ始まらない
中国ーー草の根フェミニズムの抵抗と創造
韓国ーーフェミニズムの大衆化と新たな挑戦
台湾ーージェンダー主流化を推し進めるエネルギー
香港ーー民主化運動の中のフェミニズム
コラム/座談会/読書案内
「もうフェミニズムに頼らなくても、女性だって活躍できる」
「女性差別がなくなった現代において、フェミニズムの時代はもう終わった」
と彼女は言った。
では、私やあなたの心のどこかに張りついている「女であることの不安」はいったいどこからくるのだろうか。
ーー「女らしさからの自由」と「女らしさへの自由」、どちらも実現できる世界をともに目指すために。
「ポストフェミニズム」という視点から、若い世代の性別役割分業や性行動の意識調査のデータを分析。さらにSNSにおけるハッシュタグ・ムーブメントや、雑誌『Can Cam』による「めちゃモテ」ブーム、「添い寝フレンド(ソフレ)」経験者などへの調査を通じて、現代社会における「女らしさ」のゆくえを追う。
高級リゾートホテルに泊まる紳士淑女。美食を満喫し、洒落た会話も弾むなかで完全密室の殺人が起こる表題作など、筒井康隆の傑作犯人当てミステリ!
アメリカの憲法では、
いまだに、男女平等が明記されていない、
って知っていますか?
1920年に女性参政権を獲得した後、
アメリカの「フェミニズム運動」は、
どのように展開されたのか──
全米女性参政権協会(NAWSA)、
全国女性党(NWP)、
全国女性有権者同盟(NLWV)の組織の膨大な一次資料をもとに、
1910年代の女性参政権運動、
1920年代半ばにかけてのNWP内における
平等憲法修正条項(ERA)を作成するまでの過程と
NLWVの母性保護を基軸とした社会福祉法制定過程に焦点を当てる。
さらに、「第一波フェミニズム」の思想と実践の成果は、
「第二波フェミニズム」にどのように継承されたのか、
ニューヨークのラディカル・フェミニズムの組織をとおして考察する。