暴力をどのように引き受け、その連鎖を断ち切るのか。南京・台湾・群島・ヴェトナム・沖縄の「暴力の表象/表象の暴力」の痕跡をたどり、戦争が跳梁するこの時代にジェンダーやフェミニズムの視点から暴力の循環を断つための実践的可能性を展望する。
「戦後・暴力・ジェンダー」全三巻の刊行にあたって 大越愛子/井桁 碧
はじめに──ポスト・ダーバンという時代 大越愛子
第1部 「暴力」を断ち切る
第1章 「暴力批判の思想」としてのフェミニズム──「左翼」思想の限界と「ダーバン宣言」の射程 大越愛子
1 忘却
2 なぜ「左翼」批判なのか
3 マルクス理論への問題提起
4 アンぺイド・ワーク論への展開
5 「左翼」思想の新たな提起──マルチチュード論
6 アソシエーション論
7 ダーバン宣言のさらなる展開へ
第2章 人種とジェンダーの複合差別をめぐって──ダーバン会議で問われたもの 熊本理抄
1 人権の基礎は差別撤廃──グローバル化していく人種差別
2 女性の権利は人権──フェミニズムの国際的潮流
3 ジェンダー差別と人種差別
4 ダーバン宣言・行動計画から考える複合差別
5 NGOのなかに見られた南北問題
6 被差別者たちの「連帯」とは
第3章 優生学とジェンダー──リベラリズム・家族・ケア 堀田義太郎
1 優生学の位置
2 「強制」なき優生学
3 リベラリズムとジェンダー
4 ケアワークの社会化の根拠
5 リベラリズムの両義性
第4章 〈原住民〉が抹消された場所で、交渉する 井桁 碧
1 グローバル・エシックスを構想するとして、どの位置から?
2 「われわれが法と呼ぶもの」の絶対的な外部に置かれる者として
3 〈原住民〉として抹消される場所で、交渉する
第2部 暴力の表象/表象の暴力
第5章 「南京のレイプ」の告発者である女性たちの殉教──歴史記述のジェンダー 若桑みどり
1 問題の所在
2 南京大虐殺の経緯
3 市民、歴史家、記者による「歴史記述」
4 女性による国際法廷(二〇〇〇年)
5 建立された二女性の銅像
第6章 戦後台湾アイデンティティと女性の表象 丸川哲史
1 「日本」というトラウマの転移
2 諷刺、あるいは「日本」という尺度
3 ポスト植民地期における「女性」の表象
4 呂赫若における「女性」のポジション
第7章 「国民」文学とジェンダー──ポストコロニアリズムと「群島」の物語 本橋哲也
1 『ブル島』四部作と国民の創造/想像
2 『アースシー』六部作と「群島」の歴史
第8章 ヴェトナムにおけるアメリカ戦の亡霊 権憲益[堀田義太郎 訳]
1 アメリカ戦の亡霊
2 亡霊と先祖
3 悲嘆からの解放
4 結論
第9章 沖縄・基地問題・暴力 高里鈴代/宮城晴美/大越愛子/井桁 碧
本書は、日本のジェンダー(社会的・文化的性差)をめぐる多様な問題の現状と課題を、法と政策の観点から明らかにした英語版テキストである。日本のジェンダー法・政策問題を概括的に扱う第1章をはじめ、政治参画、人身売買、家族法、家制度、雇用・労働、女性に対する暴力、教育など様々な問題について、図表等を用いてわかりやすく概観している。これまでは「ジェンダーと法」に関する教科書は数冊刊行されているが、欧文のものは存在しなかったため、本書は、海外のみならず日本の研究者や学生・市民にとっても貴重な一冊といえよう。
日本初の育児休業制度はいかにして誕生したのか。1965年、全電通(全国電気通信労働組合)と電電公社との間で取り交わされた協約の成立過程を実証分析しつつ、組織内部のジェンダー構造と再生産を重層的に解明。両立支援の原点を問い直す。
なぜ人間の活動領域は公私に区分され、男女に異なる役割が振り分けられてきたのか。「個人の尊重」という人権理念のもとでもなお、こうした思考が私たちを縛り続けている。ジェンダーの視点からこの束縛を解き明かし、個人・家族・国家の関係を問い直す、法学、社会学、政治学、教育学の挑戦。
戦前期の女性教化とその関係雑誌について、真宗を事例にその実態に迫った論考6篇と、当時を代表する真宗系仏教婦人雑誌である『婦人雑誌』の総目次を収録。
20世紀初頭に真宗本願寺派が他宗に先駆けて取り組みながらも、これまで論じられてこなかった女性教化者(教誨師・教士・僧侶)養成・登用事業の実態と女性教化者自身の意識の変化、同派の仏教婦人会中心に開始された女子大学創立事業がやがて教団関係者へとその主導権が移行していくさまや、戦前期に多数発行されていた真宗系仏教婦人雑誌の創刊から廃刊までの経緯と背景などを展望する。
【主な内容】
第一部 論文
第一章 女性教誨師の任用とその実情
第二章 女性教化者「女教士」の任用と養成機関の変遷
第三章 女性僧侶の登場とその背景
第四章 本願寺派仏教婦人会「女子大学設立運動」再考
第五章 近代真宗「女性教化雑誌」興亡史
第六章 『婦人雑誌』と関連事業の展開
第二部 雑誌総目次
『婦人雑誌』(『婦人教会雑誌』改題)総目次
はしがき
第一部 論文
第一章 女性教誨師の任用とその実情
はじめに
一 女教誨師登用をめぐる事情
二 講習所設置と卒業生の動静
三 第二回・第三回講習所の開設
四 女教誨師の低迷
おわりに
第二章 女性教化者「女教士」の任用と養成機関の変遷
はじめに
一 教士制度の創設とその背景
二 教士制度への批判
三 教士の任用状況
四 女教誨講習所と専修学院
五 女教士養成のひろがり
おわりに
付録 教士・女教士名簿
第三章 女性僧侶の登場とその背景
はじめに
一 第一次世界大戦後の女性論の動向
二 女教士の活動と意識
三 女教士・婦人会の活性化
四 女性公民権の獲得運動
五 本願寺派の女性公民権運動への対応
六 女性僧侶創成に至る経緯
おわりに
第四章 本願寺派仏教婦人会「女子大学設立運動」再考
はじめに
一 大谷籌子の生涯と事蹟
二 大谷籌子の女子大学設立理念
三 二つの女子大学設立趣意書
四 女子大学設立運動の実態
五 設立運動の挫折とその後
六 本願寺派による女子大学設立事情の継承
七 女子大学設立不認可の事情
おわりに
第五章 近代真宗「女性教化雑誌」興亡史
はじめに
一 欧化全盛期創刊の雑誌
二 日清戦争後創刊の雑誌
三 全国婦人会の組織化と機関誌
四 大正デモクラシー期創刊の雑誌
おわりに
第六章 『婦人雑誌』と関連事業の展開
はじめに
一 『婦人教会雑誌』の創刊
二 『婦人雑誌』への改題
三 連合婦人会の変遷
四 雑誌の特色と関連事業
五 廃刊に至った事情
おわりに
第二部 雑誌総目次
『婦人雑誌』(『婦人教会雑誌』改題)総目次
あとがき
世界が急速に変化を遂げる激動の20世紀、女性と社会のあるべき姿を模索して、人生を懸けた女たちがいた。公正な社会を求め格闘する彼女たちの百年の歩みと、装いに映し出される社会のありようから、中東・イスラーム地域と現代世界の歴史と現在を炙り出す。
「イスラーム・ジェンダー・スタディーズ」シリーズ刊行にあたってーー5『記憶と記録にみる女性たちと百年』
はじめに[岡真理]
第1部 女性たちと百年
第1章 家族計画とチュニジア初の女医[鷹木恵子]
歴史のプリズム1 日本で最初の女性医師[鷹木恵子]
歴史のプリズム2 近代トルコ女性の「リベルテ」を求めて[松尾有里子]
歴史のプリズム3 個としての信念を貫いた女性[服部美奈]
第2章 ジェンダー平等を求めてーー1920年代のレバノンにおける宗教改革運動[後藤絵美]
歴史のプリズム4 革命後は忘れられた?フェミニスト[山崎和美]
第3章 人々の痛みの根源を探るーーイラン・ソーシャルワーカーの母[藤元優子]
第4章 自由と真の男女平等のために闘い続けた女性詩人[鈴木珠里]
第5章 『若者の証言』をめぐる百年ーー「すべてをもつ」ことを夢みる女たち[松永典子]
歴史のプリズム5 異教徒への伝道を夢みて[山口みどり]
歴史のプリズム6 植民地主義・性差別と闘ったエジプトの女性教師[千代崎未央]
第6章 農民運動女性指導者の愛と闘争の人生[長沢栄治]
第7章 大学モスクの女性活動家の先駆者[野中葉]
第2部 変身する女性と社会ーー装いに映るジェンダー
装いとアイデンティティ
第8章 イラク◇路上で抗議するムスリム女性たち[酒井啓子]
現代のプリズム1 西サハラ◇メルフファと解放闘争[新郷啓子]
現代のプリズム2 日本◇ネヴロス クルド人の装いと思い[中島由佳利]
第9章 ウズベキスタン◇ヴェールを捨てたその後に[帯谷知可]
現代のプリズム3 アメリカ◇信仰とお洒落だけではないーームスリムファッション最前線[高橋圭]
装いと国家
第10章 中国◇回族女性のヴェールの意味[松本ますみ]
現代のプリズム4 パキスタン◇罪深き女たちの詩[須永恵美子]
第11章 イラン◇帽子とヘジャーブーー服装の国家規制が導いたもの[藤元優子]
装いと信仰
第12章 エジプト◇女優たちの神学ーーヒジャーブ、フェミニズム、イスラーム[後藤絵美]
現代のプリズム5 ベルギー◇モランベーク地区に生きるムスリムの女性たちーー子育てと装いをめぐるフィールドノーツから[見原礼子]
第13章 インドネシア◇変身する女性と社会ーー近年のチャダル着用現象を事例に[野中葉]
世界化する「装い」
現代のプリズム6 世界◇ベリーダンスの衣装と百年[木原悠]
現代のプリズム7 日本◇共鳴するモデストファッション[岡井宏文]
編者あとがき
参考文献・参考資料
デパート、スーパーで働く女性たち。女性労働の特殊性を過度に強調したり、不利を告発したりする「ジェンダー・ステレオタイプ」の分析を斥け、今日的状況にふさわしい労働組織変革の方途を探る。
青は男の子の色? 女の子は見た目のことばっかり言われる!? 女の子って陰湿でコワイ?
若い世代にも根強く残る「らしさ」をマンガで紹介し、自分らしく自由に生きるために大切なことを伝えます。
本書では、性別職域分離をめぐる問題について、ブルーカラー男性職種への女性の参入を事例として取りあげつつ検討している。労働現場に足を運び、労働者の生の声を拾いあげながら、各職場のルールが何を要因としてどう変わり、女性労働者や男性労働者、そして労働組合や経営者が、それをどのように捉え、いかに対応しているのかを具体的に解明した。性別職域分離の縮小の内実を分析し、今後の展望を明らかにしている。
仕事と子どもの間で引き裂かれつつ、格差構造を生き抜いている現代女性。その複雑な状況を、豊富なデータを用いて明らかにする。
スニーカー縫製工場と国際政治、女性兵士と家父長制、日常生活と国家安全保障の関係とは?“フェミニスト的好奇心”で加速する軍事化のしくみを照らし出す。
世界最高水準の研究教育拠点形成を目標とする平成15年度21世紀COEプログラム(社会科学分野)の1拠点として、東北大学「男女共同参画社会の法と政策-ジェンダー法・政策研究センター」が採択された。この拠点は、21世紀の日本と世界がめざす男女共同参画社会形成のための理論的課題を、法学および政治学を中心とする視点から明らかにし、「ジェンダー法・政策」研究という新たな学問分野を確立するとともに、ジェンダーセンシティヴな若手研究者・法曹実務家・政策担当者等を育成することを目的としている。また、研究教育の成果を世界に発信してアジア地域と欧米の諸機関をつなぐネットワーク拠点を形成し、地方公共団体・弁護士会等とも連携して、研究成果を政策実践にフィードバックさせることをめざすものである。
既成の戦後論/民主論/占領論は何を語らないのか──。いま・ここの構造的暴力に抗うために、敗戦後という時空間、ジェンダーというまなざし、東アジアという問題領域を照射し「戦後」を歴史化して、戦後思想の政治性を射抜くフェミニズム文化批評。
「戦後・暴力・ジェンダー」全三巻の刊行にあたって 大越愛子/井桁 碧
はじめに──ジェンダーから読む「戦後」 大越愛子
第1部 戦後とは何か
第1章 戦後思想のパラドックス 大越愛子
1 敗戦後から戦後へ
2 「家父長制」デモクラシー
3 大日本帝国の崩壊、民族差別・人種差別の隠蔽
4 象徴天皇制という欺瞞
5 ジェンダーの「戦後」
6 パラドックスは超えられるか
第2章 敗戦/占領とジェンダーのポリティクス 井桁 碧
1 「大きなアメリカ人」
2 挑発する〈ジェンダー〉
3 〈性〉の未来に
4 占領軍兵士の「慰安」
5 書くことの/読むことの〈位置〉
6 占領と「性的比喩」
7 GIの日本と「日本の女」
8 従属の象徴としての「パンパン」
9 戦後思想の特徴としての「男性的」
10 敗戦/占領と〈性〉の修辞/ポリティクス
第3章 沖縄から広がる戦後思想の可能性──戦場における女性の体験を通じて 洪★王偏に允★伸
1 人種化された体──「朝鮮人従軍慰安婦」と「辻遊郭の女性」
2 住民の統治手段となった女性の体と「強かん恐怖」
3 「慰安婦」たちの戦後と拠点としての沖縄──結論に代えて
第4章 リブの可能性と限界──主婦と娼婦の分断 菊地夏野
1 女性と国家
2 抵抗の「場」をずらす
3 主婦的状況の意識化
4 娼婦と主婦の分断
5 主体化を超えるエロス
6 臨界点
第5章 女性学の戦後──よりよく〈わたし〉を生きるために 大橋 稔
1 男性と女性学
2 ブラック・フェミニズムと日本の女性学
3 女性学の現在
第2部 戦後思想を外部の視点で捉える
第6章 リドレス不可能性について──サイゴン、広島、フランツ・ファノン 米山リサ
1 解放とリハビリの米国神話──フィリピン、日本人女性、ヴェトナム難民
2 戦争犯罪を銘記することの意味
3 リドレス不可能性の意味と可能性
第7章 大虐殺の後で──済州島における女性の痛みと生存の連帯 金成禮[藤枝 真 訳]
1 アンティゴネーと悲嘆する権利
2 歴史の廃墟のなかの女性の地位
3 国家暴力という統治体の「アカ」大量虐殺
4 反共産主義という見せ物における性化された身体
5 家父長的言語に対する沈黙の身体
6 連帯と痛み──夢、哀しみ、霊魂憑依
7 生き残るための連帯──「寡婦」ネットワーク
8 トラウマの消えない記憶と女性の人権
第8章 東アジアの戦後の歴史を考える──日韓を横断する視点は可能か 権憲益/金成禮/大越愛子/井桁 碧
おわりに 井桁 碧
まえがき
序章 フェミニズム国際法学の視座
はじめに
1 国際組織の動きとジェンダー
2 フェミニズム国際法学の視座
3 女性差別撤廃条約の実施措置とNGOの参画
4 女性差別撤廃条約と国内法
1
第1章 国際人権保障における女性の人権
はじめに
1 「女性の権利は人権である」--フェミニズム国際法学誕生の契機
2 男女平等概念の変遷ーー国際人権保障における女性の人権の展開
3 女性に対する暴力ーーフェミニズム国際法学の背景
4 国連世界女性会議文書にみる女性差別撤廃条約
第2章 女性差別撤廃条約ーーフェミニズム国際法学の基盤
はじめに
1 女性差別撤廃条約の法理
2 女性差別撤廃条約締約国の差別撤廃義務
3 女性差別撤廃条約の現状と課題
第3章 女性差別撤廃条約選択議定書の概要
1 選択議定書制定の経緯
2 選択議定書の概要
3 日本の選択議定書批准に向けて
第4章 女性差別撤廃委員会における日本レポートの審議とNGO
はじめに
1 日本レポート審議とNGO
2 JNNCのアプローチ
3 「最終コメント」とJNNCの見解
4 JNNCの委員会審議後のコミットメント
5 国内への影響
2
第5章 政策としての男女平等
1 日本の女性政策の変遷
2 日本国憲法制定の男女平等
3 女性差別撤廃条約国会承認審議における男女平等
4 21世紀日本の男女共同参画政策ーーNGOの参画と地方分権の進捗
第6章 女性差別撤廃条約と男女共同参画社会基本法
1 国連の動きと21世紀の日本
2 女性差別撤廃条約と男女共同参画社会基本法
おわりに
第7章 日本の女性NGOと国連
はじめに
1 日本女性の国連への窓ーー国連NGO国内婦人委員会
2 女性差別撤廃条約の署名・批准の実現ーー国際女性年連絡会
3 国連女性2000年会議に向けた日本NGOレポートの策定ーーNGOレポートをつくる会から日本女性監視機構へ
4 女性差別撤廃条約日本レポートの審議ーー国際女性の地位協会と日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク
おわりに
補論
第1章 衆議院における女性差別撤廃条約承認審議
はじめに
1 会議の日程と構成
2 条約と国際社会とのかかわり
3 条約に対する日本政府の見解
4 他の人権条約との関係
5 関連して触れられたトピック
6 その他の事項
第2章 参議院における女性差別撤廃条約承認審議
はじめに
1 第102回国会参議院外務委員会:会議の日程と構成
2 条約制定過程における日本政府の態度
3 条約締結の意義
4 条約各条文と国内法制の関係
資料
1 女性差別撤廃条約
2 女性差別撤廃条約選択議定書
3 女性差別撤廃条約・選択議定書締約国ーーレポート提出・審議状況一覧
4-1 第2次・第3次日本政府レポート審議に対する女性差別撤廃委員会による「最終コメント」
4-2 第4次・第5次日本政府レポート審議に対する女性差別撤廃委員会による「最終コメント」
あとがき
索引
初出一覧