サンスクリット原典の徹底的な読み込みを通して、釈尊の元来の教えが女性の宗教的救済を認めていたこと、原始仏教は誰に対しても開かれている平等主義を貫いた普遍宗教であったことを明らかにした研究書。
「無機物への帰還」の欲動、「死への魅惑」。コミュニケーションの本来的困難性は、いかにして「生への意志」により超克されゆくか。「フランスの他者」デリダは「増え続ける難民たちに絶対的な歓待の場を提供しなければならない」と訴えた。試行され続ける「他者」の問題。ジェンダー・コミュニケーションの可能性という視点から、本書はさらに思考を続ける。
ポスト工業社会の中で日本を含む東アジアは多くの課題に直面している。経済が高度化する中での労働に関するひずみ、新自由主義の導入のもとで発生するジェンダー問題、そして全体を覆う移民への適応。日本、韓国、カナダの研究者が、その課題の現在点を把握し、解決への糸口を探る試み。
女と家族を守るために戦争に行く男。愛する男を送り出す女。女たちの愛国心はどのような形をとったのか。そして、戦後の和解と復興における女たちの役割とは。ジェンダー史、社会文化史の入門書として最適の一冊!
タンザニアは中央アフリカ東部に位置する国である。北部にはアフリカ最高峰のキリマンジャロ山があり、そのふもとでは一九七〇年代から、日本の支援で灌漑稲作の普及が進められてきた。貧困、干ばつ、生活向上のための支援である。その結果、タンザニア全土に灌漑稲作が広がり、トウモロコシの粉を煉った主食のウガリだけでなく、最近では調理の簡単なコメも地元の人々に広く受け入れられるようになっている。
コメの生産に従事しているのは男性ばかりではない。手間暇のかかる苗床、田植え、除草、収穫などは女性の仕事とされている。しかし、女性の役割はなかなか正当に評価されていない。
タンザニアでは多くの女性が農業に従事し、トウモロコシ、コメ、ヒエ、野菜などの栽培をしているが、ほとんどが零細で天水に依存した伝統的農業を営んでおり生活は厳しい。女性には資産と呼べるものはほとんどない。女性が所有する土地は全農地の約一三%だが、女性は労働力や労働時間などに見合うだけの土地に関する権限を保障されていない。
タンザニア政府は、財産権の私有化、土地制度の確立(地権・地籍の確定や登記)など、土地権の近代化を促進してきたが、女性の土地所有、相続に関する取組は全国的には進んでいない。だが、筆者が調査したキリマンジャロ州の灌漑稲作地区はこの点に関して目覚ましい成果を上げていた。
本書は、慣習的土地所有権の弊害を乗り超えながら、農村の土地権の近代化を先取りしてきたキリマンジャロ州の灌漑稲作地区に焦点を当て、一九七〇年代から現在に至るこの地区の土地権(耕作権、所有権、相続権など)の意味をジェンダーの視点に立って、個別面接調査手法などを駆使しながら明らかにした希少な研究書である。
調査結果として、女性の土地権が経時的に増加していること、その要因として、女性が土地の所有や相続を「価値あること」として認識していること、それに基づく共同的な取組が地域社会の変容とともに社会的に認知されるようになったこと、などが判明した。
入手しにくい土地権をめぐる実証的データに基づき、アフリカ農村女性の価値観や社会的地位に関する新たな側面を浮き彫りにしたのが本書である。内外を問わず、男女の社会的関係性の変革を重視する「ジェンダー視点の協力活動」がいっそう求められている今日、本書による「国際協力ジェンダー研究」の試みが、少しでもその発展に寄与しうるならば幸いである。(たなか・ゆみこ)
鈴木杜幾子明治学院大学名誉教授の退任を記念して開かれたラウンドテーブル企画・美術とジェンダーをめぐって。
トマス・ハーディと妻たちの栄光と苦悩と確執の歳月をたどり、文学と歴史が交錯するハーディ文学生成の「真実」に迫る。「帝国」「階級」「ジェンダー」「宗教」を問い、多数の貴重な図版を配した著者渾身のハーディ文学論。
人種やジェンダーの観点からアメリカ文学を読みなおし、アメリカに潜む排除と抑圧のメカニズムを明らかにする。
序章 アメリカ/文学を読みなおす
1 アメリカを読みなおす
第1章 女としての〈アメリカ〉-アメリカの「発見」とポカホンタス物語
第2章 男たちの妄想ー魔女幻想とセクシュアリティ
第3章 反復と回帰ー『ウィーランド』とアメリカン・ゴシック
2 アメリカ文学を読みなおす
第4章 ジャンルとジェンダーー越境するポー
第5章 詩とジェンダーーホイットマンとディキンスン
第6章 アレゴリーの毒ー『ラパチーニの娘』あるいは読みのポリティックス
3 ジェンダー・アレゴリー
第7章 ヘスターの「沈黙」-『緋文字』のジェンダー・ポリティックス
第8章 失敗としてのジェンダーーヘミングウェイの男性性構築
第9章 幻想としてのジェンダーー『M・バタフライ』の越境する身体
4 ゴシック・アレゴリー
第10章 フランケンシュタインのアメリカージェイムズ・ホエールのゴシック・アレゴリー
第11章 〈まなざし〉の異性愛ー『めまい』の危険な反復
第12章 皮膚に宿るアレゴリーー『羊たちの沈黙』のゴシック・ホラー
日本社会学理論学会の機関誌。第14号。
「差異と共生」というテーマをめぐって多様な視点からアプローチを試みる。
特集序文
ポスト多文化主義時代における差異と共生
イスラーム、シティズンシップ、ジェンダー
岡崎宏樹
イスラームを人間化する
多文化主義社会イギリスにおけるムスリム女性とヒジャブ
安達智史
「ポスト多文化主義時代」とフランスのマイノリティ
セクシュアル・デモクラシー、「ノン・ミクシテ」と カラー・ブレイヴな普遍主義
森千香子
リベラル多文化主義と先住民の再起
「理論」の独白から思想の対話へ
鈴木赳生
【論 文】
「社会的なもの」としての再生産労働
介護保険制度を中心に
兪羅珠
フェミニズムの主体と権利
中絶をめぐる女性の自己決定権の再考
松浦由美子
見田宗介の社会学理論における近代価値空間の反転と裂開
70年代の理論構想の意義
徳宮俊貴
ホーリズムとしての知識社会学
知識社会学の根本問題の解決に向けて
小田和正
【書 評】
対立を乗り越えるための社会理論
馬渡玲欧
(書評対象書:井口暁著『ポスト3・11のリスク社会学̶原発事故と
放射線リスクはどのように語られたのか』)
〈他者〉の変奏̶インヴェンションとシンフォニア
油井清光
(書評対象書:奥村隆著『反転と残余̶〈社会の他者〉としての 社会学者』)
〈消費社会論〉というジレンマ
石川洋行
(書評対象書:間々田孝夫著『21世紀の消費̶無謀、絶望、そして希望』)
理論はいかにして自由な空間を切り拓くのか
出口剛司
(書評対象書:樫村愛子著『この社会で働くのはなぜ苦しいのか』)
多民族国家エチオピアは若年層の都市流出や高齢化の進展の中たくましく人々が生きている。本書は女性個人の土地保有権を保証する特徴的な土地政策を考察し、1990年代から現在に至るまでの農村社会の変容と人々のエスノグラフィからアフリカ農村の来し方と行く末を考える。
はじめに
序章 農村に変化をもたらすものーー課題の設定
第I部 エチオピア概観
第1章 エチオピアの政治体制の変遷
第2章 EPRDF政権期の経済・社会構造の変化
第3章 調査地/調査方法について
第2部 土地獲得のための戦略と限界
第4章 EPRDF以前の土地制度の変遷
第5章 土地再分配と女性の土地保有権
第6章 土地管理制度の整備ーー国家による農村のとりこみ
第7章 農村における土地制度の実践ーー土地不足のなかで創られる新しい慣習
第3部 「町」の役割ーー受け皿と中継点
第8章 「町」における経済活動
第9章 「町」から変わる若い女性のライフコース
終章 農村変容と若者の選択
おわりに
マルクス主義とフェミニズムの理論的統合をめざす。性差別を不断に生み出している日本型企業社会その克服の展望をさぐる気鋭の野心作。
トランス男性はどこにいるのか。移行後の実生活に根差して「男性」の範疇でトランス男性をとらえ直すとともに、これまでその存在がまったく想定されていない「男性学」に対して、当事者の視点から新たな見方を提起する意欲作。
はじめに
第1章 トランス男性とは
トランス男性とは
トランスジェンダーの用語
トランス男性の人生
トランス男性の治療
トランス男性が社会的に男性化するときのステップ
第2章 既存の男性学と、トランス男性の不在
男性学とは何だったのか
日本の男性運動の歴史
男性学はフェミニズムと手をとるのか
男性同士で同じものへ向かう
男性学においてトランス男性はどこにいる?
男を男たらしめる、覇権的男性性とは
トランス男性が獲得させられる男性特権
メディアにおけるトランス男性の不在
トランス男性の現状から
トランス男性は弱者男性なのか?
弱者男性論の抱える問題
男性差別の実態
ラディカル・マスキュリズムへの警戒
コラム 『幽☆遊☆白書』から読みとるトランス男性の不在
第3章 トランス男性の発掘
男性外部からのアプローチ
男性内部からのアプローチ
新しい視点から
第4章 第一の切り口:フェミニズムに囚われるトランス男性
なぜトランス男性とフェミニズムは親和性を持ちうるのか
「ピンクの赤ん坊」だったトランス男性
ラディカル・フェミニズムへの接近
トランス男性がフェミニズムに関わり続けることの困難さ
だからトランス男性はフェミニズムと別れなければならない
第5章 第二の切り口:トランス男性は男性学に潜在していたのか
トランス男性は主張しない?
少年と成人男性の対比
男性内部の多様性
トランス男性とゲイセックス
男性ホルモンによる性的感覚の変化
トランス男性の孤立した心理
男性同性愛という歴史
トランス男性にとっての同性愛
ゲイの男性性
コラム 『POSE/ポーズ』に見るトランス男性の不在と、夫人の抱える“名前のない問題”
第6章 第三の切り口:トランス男性の男性性を探して
トランス男性の男性性
Self-Organizing Men--トランス男性によるトランス男性のための本
女性コミュニティにいたトランス男性
女性との差異ーートランス男性の「胸」
ペニスのない男性
トランス性を残したいトランス男性について
なぜ手術要件なしで戸籍変更希望のトランス男性がいるのか
トランス男性の孤独と向き合う
おわりに
参考文献
なぜみずからの性別に違和感をいだくのか?どのようにして、割り当てられた性別とは異なる性同一性を形成していくのか?「ある性別として生きる」とはどういうことなのか考えてみたい、すべての人におくる一冊。
序章 「ある性別として生きる」とはどういうことかー新たな性別観呈示のために(多様な性に関する諸概念
本書の構成)
第1章 これまでの性別観はどのようにつくられてきたかー本書の背景(性別観をめぐる学校教育領域とマス・メディア領域の立場の違い
これまで性同一性は、何によって形成されると考えられてきたのか
遺伝と環境要因をつなぐ行動遺伝学研究
“病理”としての性的自己の非典型性)
第2章 研究1 双生児データによる性同一性障害傾向の発達メカニズム(小児期から成人期までの性同一性障害傾向の遺伝と環境の影響)
第3章 研究2 多様な性同一性の形成(性同一性の測定法
身体への医学的介入とジェンダー・アイデンティティの関連
典型的性役割とジェンダー・アイデンティティの関連
性的指向の諸側面
他者や社会からの受容とジェンダー・アイデンティティの関連
ストレスコーピング・スタイルとジェンダー・アイデンティティの関連
規定されないものとしてのジェンダー・アイデンティティ)
終章 これからの性別観ー総合考察(多次元モデルからみた性同一性
多様で流動的な性別のあり方)