ポスト工業社会の中で日本を含む東アジアは多くの課題に直面している。経済が高度化する中での労働に関するひずみ、新自由主義の導入のもとで発生するジェンダー問題、そして全体を覆う移民への適応。日本、韓国、カナダの研究者が、その課題の現在点を把握し、解決への糸口を探る試み。
女と家族を守るために戦争に行く男。愛する男を送り出す女。女たちの愛国心はどのような形をとったのか。そして、戦後の和解と復興における女たちの役割とは。ジェンダー史、社会文化史の入門書として最適の一冊!
タンザニアは中央アフリカ東部に位置する国である。北部にはアフリカ最高峰のキリマンジャロ山があり、そのふもとでは一九七〇年代から、日本の支援で灌漑稲作の普及が進められてきた。貧困、干ばつ、生活向上のための支援である。その結果、タンザニア全土に灌漑稲作が広がり、トウモロコシの粉を煉った主食のウガリだけでなく、最近では調理の簡単なコメも地元の人々に広く受け入れられるようになっている。
コメの生産に従事しているのは男性ばかりではない。手間暇のかかる苗床、田植え、除草、収穫などは女性の仕事とされている。しかし、女性の役割はなかなか正当に評価されていない。
タンザニアでは多くの女性が農業に従事し、トウモロコシ、コメ、ヒエ、野菜などの栽培をしているが、ほとんどが零細で天水に依存した伝統的農業を営んでおり生活は厳しい。女性には資産と呼べるものはほとんどない。女性が所有する土地は全農地の約一三%だが、女性は労働力や労働時間などに見合うだけの土地に関する権限を保障されていない。
タンザニア政府は、財産権の私有化、土地制度の確立(地権・地籍の確定や登記)など、土地権の近代化を促進してきたが、女性の土地所有、相続に関する取組は全国的には進んでいない。だが、筆者が調査したキリマンジャロ州の灌漑稲作地区はこの点に関して目覚ましい成果を上げていた。
本書は、慣習的土地所有権の弊害を乗り超えながら、農村の土地権の近代化を先取りしてきたキリマンジャロ州の灌漑稲作地区に焦点を当て、一九七〇年代から現在に至るこの地区の土地権(耕作権、所有権、相続権など)の意味をジェンダーの視点に立って、個別面接調査手法などを駆使しながら明らかにした希少な研究書である。
調査結果として、女性の土地権が経時的に増加していること、その要因として、女性が土地の所有や相続を「価値あること」として認識していること、それに基づく共同的な取組が地域社会の変容とともに社会的に認知されるようになったこと、などが判明した。
入手しにくい土地権をめぐる実証的データに基づき、アフリカ農村女性の価値観や社会的地位に関する新たな側面を浮き彫りにしたのが本書である。内外を問わず、男女の社会的関係性の変革を重視する「ジェンダー視点の協力活動」がいっそう求められている今日、本書による「国際協力ジェンダー研究」の試みが、少しでもその発展に寄与しうるならば幸いである。(たなか・ゆみこ)
鈴木杜幾子明治学院大学名誉教授の退任を記念して開かれたラウンドテーブル企画・美術とジェンダーをめぐって。
トマス・ハーディと妻たちの栄光と苦悩と確執の歳月をたどり、文学と歴史が交錯するハーディ文学生成の「真実」に迫る。「帝国」「階級」「ジェンダー」「宗教」を問い、多数の貴重な図版を配した著者渾身のハーディ文学論。
人種やジェンダーの観点からアメリカ文学を読みなおし、アメリカに潜む排除と抑圧のメカニズムを明らかにする。
序章 アメリカ/文学を読みなおす
1 アメリカを読みなおす
第1章 女としての〈アメリカ〉-アメリカの「発見」とポカホンタス物語
第2章 男たちの妄想ー魔女幻想とセクシュアリティ
第3章 反復と回帰ー『ウィーランド』とアメリカン・ゴシック
2 アメリカ文学を読みなおす
第4章 ジャンルとジェンダーー越境するポー
第5章 詩とジェンダーーホイットマンとディキンスン
第6章 アレゴリーの毒ー『ラパチーニの娘』あるいは読みのポリティックス
3 ジェンダー・アレゴリー
第7章 ヘスターの「沈黙」-『緋文字』のジェンダー・ポリティックス
第8章 失敗としてのジェンダーーヘミングウェイの男性性構築
第9章 幻想としてのジェンダーー『M・バタフライ』の越境する身体
4 ゴシック・アレゴリー
第10章 フランケンシュタインのアメリカージェイムズ・ホエールのゴシック・アレゴリー
第11章 〈まなざし〉の異性愛ー『めまい』の危険な反復
第12章 皮膚に宿るアレゴリーー『羊たちの沈黙』のゴシック・ホラー
日本社会学理論学会の機関誌。第14号。
「差異と共生」というテーマをめぐって多様な視点からアプローチを試みる。
特集序文
ポスト多文化主義時代における差異と共生
イスラーム、シティズンシップ、ジェンダー
岡崎宏樹
イスラームを人間化する
多文化主義社会イギリスにおけるムスリム女性とヒジャブ
安達智史
「ポスト多文化主義時代」とフランスのマイノリティ
セクシュアル・デモクラシー、「ノン・ミクシテ」と カラー・ブレイヴな普遍主義
森千香子
リベラル多文化主義と先住民の再起
「理論」の独白から思想の対話へ
鈴木赳生
【論 文】
「社会的なもの」としての再生産労働
介護保険制度を中心に
兪羅珠
フェミニズムの主体と権利
中絶をめぐる女性の自己決定権の再考
松浦由美子
見田宗介の社会学理論における近代価値空間の反転と裂開
70年代の理論構想の意義
徳宮俊貴
ホーリズムとしての知識社会学
知識社会学の根本問題の解決に向けて
小田和正
【書 評】
対立を乗り越えるための社会理論
馬渡玲欧
(書評対象書:井口暁著『ポスト3・11のリスク社会学̶原発事故と
放射線リスクはどのように語られたのか』)
〈他者〉の変奏̶インヴェンションとシンフォニア
油井清光
(書評対象書:奥村隆著『反転と残余̶〈社会の他者〉としての 社会学者』)
〈消費社会論〉というジレンマ
石川洋行
(書評対象書:間々田孝夫著『21世紀の消費̶無謀、絶望、そして希望』)
理論はいかにして自由な空間を切り拓くのか
出口剛司
(書評対象書:樫村愛子著『この社会で働くのはなぜ苦しいのか』)
多民族国家エチオピアは若年層の都市流出や高齢化の進展の中たくましく人々が生きている。本書は女性個人の土地保有権を保証する特徴的な土地政策を考察し、1990年代から現在に至るまでの農村社会の変容と人々のエスノグラフィからアフリカ農村の来し方と行く末を考える。
はじめに
序章 農村に変化をもたらすものーー課題の設定
第I部 エチオピア概観
第1章 エチオピアの政治体制の変遷
第2章 EPRDF政権期の経済・社会構造の変化
第3章 調査地/調査方法について
第2部 土地獲得のための戦略と限界
第4章 EPRDF以前の土地制度の変遷
第5章 土地再分配と女性の土地保有権
第6章 土地管理制度の整備ーー国家による農村のとりこみ
第7章 農村における土地制度の実践ーー土地不足のなかで創られる新しい慣習
第3部 「町」の役割ーー受け皿と中継点
第8章 「町」における経済活動
第9章 「町」から変わる若い女性のライフコース
終章 農村変容と若者の選択
おわりに
マルクス主義とフェミニズムの理論的統合をめざす。性差別を不断に生み出している日本型企業社会その克服の展望をさぐる気鋭の野心作。
ジェンダーに「男性」と「女性」しかないなんて、もう過去の話!
ジェンダーにはさまざまなジェンダー・アイデンティティがあります。自分のジェンダー・アイデンティティを探し、お家や学校、友だち関係の中で、どのように表現し、伝えていけばいけばよいか、ジェンダーの基礎から10代が不安に感じること、つらい問題への対処をワーク形式でわかりやすく紹介。
・自分のジェンダー・アイデンティティを探してみよう!
・ジェンダー・アイデンティティを表現してみよう!
・不安に感じること、つらい問題に立ち向かう方法を見つけよう!
日本社会のアクチュアルな分析、人間的な価値、総合的な視野、21世紀のグローバル・スタンダードへ、社会形成へのオルタナティブな視角。
本書は、ポスト高度成長期、とりわけ1980年代を主たる対象に、女性の就労に関わる政策を、フレキシビリゼーション・平等・再生産という三つの大きな政策課題に整理し、政治学の視角から分析したものである。
日本には国籍や母語、敬虔さなどからみて、多様で多彩なムスリム(イスラーム教徒)が暮らす。彼ら/彼女らの個々に異なる経験を鮮やかに描き出し、日本のムスリムを取り巻く歴史的・社会的状況を詳らかにした上で、受け入れや共生への課題や方向性を示す。
「イスラーム・ジェンダー・スタディーズ」シリーズ刊行にあたってーー7『日本に暮らすムスリム』
はじめに
第1部 日本でムスリマ/ムスリムとして生きる
第1章 ムスリム理解を考えるーームスリム“も”食べられるインクルーシブ給食と日本人ムスリマのヒジャーブの事例から[佐藤兼永]
コラム1 日本の大学で「イスラーム」を教える[小野仁美]
第2章 「ムスリムであること」とどう向き合うかーー第二世代の語りから[クレシサラ好美]
コラム2 SYM名古屋モスクーー日本中のみんなに伝えたい、一人じゃないよ[カン夢咲/パイン・ゼイイエトゥン/クレシ明留]
第3章 若いムスリム女性のアイデンティティ形成ーー日本とパキスタンにルーツをもつ女性たちの事例から[工藤正子]
コラム3 日本の化粧品市場におけるハラール認証の実効性ーーインドネシア出身ムスリム住民への調査から見えたもの[武田沙南/石川真作]
第4章 日本でムスリムとして子どもを育てる[アズミ・ムクリサフ]
第5章 ヴェールの可視性から考える在日外国人ムスリム女性の葛藤[沈雨香/アキバリ・フーリエ]
コラム4 中古車・中古部品貿易業と千葉のスリランカ人コミュニティ[福田友子]
第2部 歴史と社会制度
第6章 見えにくいものを見るということーー日本のイスラーム社会の概要と実態把握上の課題[岡井宏文]
コラム5 日本のイスラーム建築[大場卓/深見奈緒子]
第7章 日本の入国管理制度とグローバリゼーションーーとくにムスリムの定住の観点から[伊藤弘子]
コラム6 あるクルド人家族との出会いから[温井立央]
第8章 在日ムスリム定住化までの様相ーーイラン人とトルコ人を比較して[森田豊子]
コラム7 インドネシア人技能実習生と考える地域の未来[西川慧]
第9章 インドネシア人女性の生きる闘いーーエンターテイナーたちのライフヒストリー[佐伯奈津子]
コラム8 日本ートルコ交流略史[三沢伸生]
第10章 「日本を懐かしむトルコ人」との邂逅ーー日本人特派員が描いたイスタンブルのタタール移民[沼田彩誉子]
コラム9 1920〜40年代の神戸のテュルク系ムスリムと教育活動[磯貝真澄]
第3部 受け入れと共生
第11章 保健医療分野におけるムスリム対応とモスクによる取り組み[細谷幸子]
コラム10 鹿児島マスジドーー地方の外国人散在地域におけるムスリムの居場所[森田豊子]
第12章 ヨーロッパの「移民問題」から何を学ぶか[石川真作]
コラム11 日本のムスリムと埋葬[岡井宏文/森田豊子]
第13章 日本とカナダの難民認定ーーアフマディーヤ・ムスリムのある一家を事例として[嶺崎寛子]
特論 アフガニスタン女性からのSOSを読み解く[小川玲子]
参考文献