ついに父を殺してしまったヒカルは、組織に追われる一匹狼のヤクザ・鉄男に導かれ、ともにオートバイで放浪の旅に出た。西へ、北へー。二つの孤独な魂の果てしない逃避行は続く。そして、ひたすらに走り続ける鉄男との旅はヒカルをいつしか大人の男へと成長させるのだった。一方、残された萌子や夏美、母の真莉子にもさまざまな転機が訪れ、やがて悲劇の歯車は少しずつ回り始める…。
膠原病の一種の全身性強皮症について、自らも患者である医師が分かりやすく解説。
とつぜんの不幸で笑うことをわすれてしまった夫婦。二人におきた二十年後の奇跡とは…。
生涯最初のチーズの味、向田邦子との美味談義、海軍時代の仲間との旨いものの縁、文士たち贔屓の老舗の鰻、食堂車の思い出…、記憶の中の多彩な料理と交友を綴る、自叙伝的食随筆。巻末に、阿川佐和子との父娘対談「父さんはきっとおいしい」を収録。第五三回読売文学賞(随筆・紀行賞)受賞作。
〈静〉のなかに無限の激情をたたえた詩劇、世阿弥の〈花伝書〉を得て深まる、能。たくましい中世民衆の微笑・哄笑・嘲笑のエネルギーを一コマに掴む、狂言。ハートで読み、古典に遊ぶ。
戦災で故郷である奈良に戻った入江泰吉(1905〜1992)は、奈良大和路の風物に救われたと語っていた。約半世紀にわたって撮り続けてきた入江だが、その原点は、戦後すぐに見た、昔と変わらない農村風景であり、街を行き交う人や明るい子どもたちの表情だった。写真集に収録した二百点を越える写真からは、入江の温かいまなざしが感じられ、奈良大和路の飾らない風景が広がっている。これは入江の心の原風景であり、貴重な記録写真でもある。
本書は、理工系学生が専門基礎課程で習得しておくべき微分方程式の入門的解説書である。
ひもがほどけ、強い風に流されて、空のかなたに消えた2号機。予測がはずれ、風にどんどん流されて、海に落ちた4号機。落下地点が、予測と50kmも誤差があった5号機。ササの深いやぶに落ちて、どうしても見つからなかった10号機。撮影しても、レンズがくもって写真がぼやけた5号機から10号機。11号機で成功。でも、きれいな写真は一万数千枚中のたった一枚。たくさんの失敗を乗りこえながら、風船を使った宇宙開発が続きます。
本書では、ごく身近な限られた食材を使って短時間で作る、高齢者向きの献立や料理の数々をお届けします。食べやすい調理のくふう、栄養の整え方、咀嚼力や嚥下力などが低下した人の食事の注意、また、現場でのいろいろな対応策や、介護にあたるホームヘルパーとしての心得なども、盛り込みました。グループホームなどの施設や、家庭で高齢のご家族の食事作りに携わる人にとっても、参考になるヒントがたくさんあります。
『古寺巡礼』『ヒロシマ』『筑豊のこどもたち』『室生寺』など、昭和の写真界をリードした土門拳は、達意の名文家でもある。肖像写真に添え、被写体の人間像を見事に描出した『風貌』、日本の伝統美を熱く語る『私の美学』をはじめ、時代と社会を見つめ、リアリズムを説き、写真論を展開した珠玉のエッセイ集。「一日本人としての自分自身が日本を発見するため、日本を知るため」そして人々にそれを伝えるために、生を賭した“写真の鬼”。
色鉛筆画の概念を大きく変えた著者林亮太が発想の原点であるスケッチ描写から緻密な完成作品に仕上げるまでを画材の選び方から構図の考え方、混色の方法などを交えて、わかりやすく解説します。林流超写実技法のすべてを学べます。