イーデンが祖父の書斎のドアを開けると、そこにはもう二度と会うことはないと思っていた男性が立っていた。驚いて立ちつくす彼女に、祖父が声をかけた。「ブレイド・ハモンドをおぼえているだろう」もちろんおぼえている。5年前、14歳だった彼女は、羊の毛刈り職人としてやってきた彼に密かに恋をしていたのだから。だが、あのころに比べると、牧場の経営は極端に悪化していた。今では人を雇うこともできず、牧場の仕事と家事のいっさいをイーデンが一人で引き受けている。祖父のことばは、彼女をさらに驚かせた。「ブレイドはこの牧場を買い取りたいそうだ」
グウェンは男尊女卑論者の夫バリーと離婚し、新しい人生のスタートを切ろうとしていた。ところが、過去のすべてを断ち切るために旅に出たその日に、車をぶつけてしまう。相手の車から男が飛び出してきた。ミッチェル・ライオンズと名乗るその男は、事故はグウェンの責任だと主張し、彼女の意見を聞こうとさえしない。離婚した夫と同じ、男は女より優れていると思いこんでいる人間…。ミッチェルの態度に彼女はいらいらし反発する。せっかくそんな男から解放され、自立した女を目指して新しいスタートを切ろうとしたのに…。
「きみにあのホテルを売ることにしたよ」アレックスは前置きもなしに切り出した。「きみの望みだろう?ホテルを買収すれば昇進できるんだろう?」ジョアンナの胸に絶望感が広がった。まだわたしを野心だけの女だと思っているの?ベッドをともにすることで仕事をうまく運ぼうとする女だと…。「どうしていまになってそんなことを…」「きみを傷つけてしまったからだ。ぼくにはこんなことしかできない」わたしはふたりの間にビジネスを絡ませたくなんかない。十五年前と同じようにあたなを愛しているのよ。でもあなたは、愛を返せないからかわりにあのホテルを提供するというのね?「きみにはカナダでの生活がある。そしてぼくはギリシアの人間だ」「わかったわ。でもホテルは買えない、お情けなんてまっぴらよ」「じゃ、これでさよならだ」アレックスは彼女に触れたいのをこらえた。
私はいったい、なんてことをしてしまったのだろう。アントワネットは置いたばかりの受話器を茫然と見つめた。ニューヨーク州に住む祖母のもとに、クリスマス休暇を過ごしに行くと約束してしまったのだ。夫のデレクとともに…。二カ月前ならなんでもないことだった。だが別居し、離婚調停中の二人にとっては大問題だった。「あなたとデレクに会うのが、とても待ち遠しいわ」祖母の言葉はうれしかったが、彼女は体調がすぐれず、心臓も弱っている。一緒に祝うクリスマスは、今年が最後かもしれない。そんな祖母に自分たちが離婚を考えているとは、とても言えなかった。でも、私は夫の浮気の現場をこの目で見ている。開業医の彼は看護婦のシルビアと診察室で抱き合っていた…。頼めば、彼は来てくれるかもしれないけれど、私は彼が絶対許せない。迷った末にアントワネットは夫に連絡したのだが、皮肉まじりの彼の対応に我慢がならず、途中で電話を切ってしまった。彼女は仕方なく、祖母に本当のことを告げるために、一人旅立った…。
古き良き時代のおもかげを今に残す町、オレゴン州ストラットフォード。サイア・ソマーズがポーランドの広告会社を辞め、祖母の園芸店を継ぐためにこの町に戻ってから一年になる。ある日サイアは姉のシーリアと、今は閉鎖されている古いホテル、ワーウィック・インを訪れた。夢の匂いを閉じこめたようなワーウィック・インの舞踏室で思い出に浸っていたサイアの前に、暗がりから、一人の男が姿を現した。
兄の死で、父の会社を継いだマーニィは、順調に業績を伸ばし、キャリアウーマン向けの雑誌創刊を準備していた。ところが、その編集会議の席上でスタッフ一同は、カバーモデルとして社長みずから登場すべきだと、強く主張する。しぶしぶ承諾した彼女は、撮影当日、大変なショックを受けた。なんとカメラマンは、マーニィが17歳のときに熱愛した相手であり、死んだ兄の親友でもあったウェブだった。しかも、兄は彼の運転するオートバイに同乗して、事故死していた。私情を押し殺してカメラの前に立つマーニィ。しかし、愛憎を隠しきれぬ彼女には、モデルは無理だった。
シカゴ郊外にある小さな田舎町ブーンビル。幼なじみのダン・バトラーとの恋に破れたエイプリルは、農場を経営しながら、保守的な町を活気づけようと努力している。ある日、ダンの祖母アイリーンが莫大な遺産を町に残して亡くなった。しかも、エイプリルとダンをその遺産運営委員会のメンバーに選んで。町のために遺産を有効に使うには、ダンと協力し合うしかない。複雑な思いでアイリーンの葬式に参列したエイプリルは、バトラー家に代々伝わる美しい指輪がダンの母親の指にないことを知って愕然とする。いったいあの指輪はだれにゆずられたのかしら?
クレアは夫と別れたのち、しばらく伯父のウォルターの仕事を手伝うつもりで故郷のミネソタ州の田舎町へ帰ってきた。ところが、伯父の営む骨董店に賊が侵入し、伯父は頭を殴られて意識不明の重体になってしまった。ちょうどそのころ、ミネアポリスで独立戦争当時の公文書が盗まれ、海外に持ち出せば百万ドルの値がつくとされ、密輸団の暗躍も噂にのぼっていた。そこへ、十数年前、町を出ていったダンが捜査官として密かに任務を負って帰ってきた。彼と再会したクレアの心は波立つーかつて愛し合いながら、何も告げずに去っていったダン。あの時、いったい何があったのか。それに町の保安官のバートと今も反目しているのはなぜなのだろう。そんな時、再び骨董店に賊が押し入り、今度はクレアが襲われた。そしてダンから店がミネアポリスの盗難事件とかかわりがあると知らされ、骨董の壺が狙われていたこともわかる。クレアとダンは犯人を追いはじめるが、ついに恐ろしい殺人事件へと発展して…。