どんな物にも穴を開ける「穴屋」佐平次のもとを訪れた恰幅のいい姫君。憎き姫君に茶会で恥をかかせるため、茶碗に穴を開けてくれという。後を尾けた先は薩摩屋敷。姫の話では藩邸内で佐平次やシーボルト、北斎の噂が出ているらしい。きな臭さを感じつつ依頼を成功させたが、知らぬ間に懐に入っていた紙には佐平次の本名「倉地朔之進」の文字が…(「洩れる穴」)。好評シリーズ。
自他共に認める地味で平凡な女子高生・安住美空は、自他共に認める非凡なる美形の兄・貴海が、実家・晴安寺で開業した便利屋稼業を手伝っている。二月のある日、寺を訪れたのは、兄妹の亡くなった母の親友。貴海ではなく美空に頼みたいという彼女の依頼ごととは…?不器用ながらも依頼人や案件に真剣に向き合う美空と、それをさりげなく見守る兄、次第に周囲の人々も巻き込んでいく、じんわり優しいシリーズ第2弾。
「好きな人の役に立ちたいー二度と会えなくても」極貧の底で震えていた紫音は、裕福な男爵家の次男、重巳に拾われ、何不自由なく育てられる。やがて紫音は重巳に寵愛されるようになるが、窮地に陥った重巳を救おうと無邪気な嘘をついた結果、離ればなれになってしまう。二度と会えないはずだった二人だが、六年後、思わぬ場所で再び巡りあう。かつての嘘の罰のように荒々しく奪われ囚われた紫音は、変貌した重巳の態度を哀しむが、愛しさは募って…。心が凍った貴公子×淫らで純粋な高級男娼。届かなくても貫き通す、一途で無垢な恋心の行方は。