先の見えない時代、列島にアートプロジェクトが満ちる。民衆は祝祭芸術を求めるが、アートプロジェクトの多くは祝祭芸術であり、芸術活動は、祝祭芸術が豊かなところに開花する。
本書の第一の試みは、祝祭と地域社会が持つエネルギー、ダイナミズムを解き明かすことである。
第二に、地域社会と芸術アートとの関係性を解き明かそう。登場するのは、棚田、郷土芸能、奇祭、山野草、潟湖沼、過疎や離島、野草採集、川遊び、里山、沼沢、町工場、農業、川砂利採掘、回船など一見“アート” とは遠い日本人の原風景である。
第三に、芸術は個人のものであるとともに、共同体の表現でもあると喝破する。芸術活動は人々の思いを協働で表現する。
祝祭とアートプロジェクトに込められるのは、豊かな自然と情の満ちる地域社会を再生しようとする人々の願いの根源。日本人の原風景を遡りたどって行き着いた、アートプロジェクトがもたらす再生と創造の新たな地域社会像を提示する。
「もしかしたら、ノスタルジアこそ、あらゆる芸術の源泉なのである」(澁澤龍彥)。「記憶」の断片から「芸術」のはじまりを紡ぎ出し、人間の根源的な営みを解きほぐしてゆく。美学、文学、美術史、演劇、観光人類学、オブジェ制作等をめぐって第一線の論者たちが織りなす知の饗宴。【寄稿】谷川渥/宮下規久朗/水沢勉/北川健次/小針由紀隆/萩原朔美/進藤幸代/海野弘/高遠弘美/丸川哲史/秋丸知貴
まえがき
I
記憶と芸術──二重螺旋の詩学 【北川健次】
壁に掛けられた小さな風景画──イタリアの自然と画家たちの記憶 【小針由紀隆】
絵画の時間性 序説 【谷川渥】
+記録/+記憶──あるパフォーマーのこと 【水沢勉】
歴史画と集合的記憶 【宮下規久朗】
2
生の織物 【海野弘】
ポール・セザンヌと写真──近代絵画における写真の影響の一側面 【秋丸知貴】
ハワイ・ポノイを歌うこと 【進藤幸代】
意味を逃れる 【萩原朔美】
《幕間》
澁澤・種村時代を語る──谷川さんと午後五時にお茶を 【谷川渥×中村高朗】
3
「引用的人間」の記憶について 【高遠弘美】
W・B・イェイツとシェーマス・ヒーニーをめぐる記憶 【虎岩直子】
芸術創造のプロセス──「さまよえるユダヤ人」伝説をめぐって 【中村高朗】
戦前の記憶と戦後の生──太宰治における天皇・メディア・死 【丸川哲史】
あとがき
シェイクスピアを凌駕するほどの技法を披露し、17世紀のバロック演劇に華をそえたカルデロン。広大無辺な想像のキャンヴァスに、聖と俗の劇世界を洗練された筆致で描出し、バロック演劇に特有の鮮やかなコントラストが織りなす百花繚乱の劇空間を創出した、カルデロン独特の劇芸術の神髄に迫る!
2014〜2016年に国内で刊行された、芸術・言語・文学分野の翻訳図書9,732冊の目録。「著者名索引(ABC順)」付き。
特異な創造性の芽生えが、この国のここかしこ、様々な領野でみられるようになっている。それを、「藝」の字の由来(「植物に手を添え土に植える」)に鑑み、とりあえず「藝術2.0」と名づけ、「藝術家2.0」たちの営みを探索することを通して、人類が未だ知らない新しい創造性の在りか、思想、精神を見究めてゆく。限界を迎えていたアート界に現れたニューウェーブを捉える挑戦的な論考。
旺盛な活動を行なった文人にして、魯迅の実弟。ナショナリストにして“漢奸”。「生を求める意志」を持ち悩み苦しむ現世的な人間=頽廃派をキーワードに、近現代の日中文化をつなぐ要注意人物、周作人の思想に迫る。
2020年、新型コロナ・ウイルスの災禍は美術界にも打撃を与えた。計画していた展覧会は軒並み中止または延期され、作品の陳列や検証などの研究成果を公開する機会がことごとく奪われた。
半世紀にわたり美術館運営に従事してきた著者もまた、ウイルスという眼に見えない相手を前に、館長職を務める美術館を切り盛りし、美術評論や普及活動に奔走する日々をコラム等で発信してきた。『鞄に入れた本の話』(2010年)『鍵のない館長の抽斗』(2015年)に続いてそれらをまとめた本書は、先行き不透明な当世を照らす、美術界泰斗によるすぐれた洞察にあふれている。
「書名は『芸術の補助線』とした。簡単な幾何の問題をまえにして、いくつも補助線を引き、躍起になって解いていた十代半ば頃のことを想いださせるが、これは不透明な時代のなかに生じる、さまざまな事象の意味を、まさに補助線を引くようにして探りを入れているーーいまの私につながっている気がする。」(本書あとがき)
美術館の仕事をめぐって、通勤途中や旅先でふと考えた事がらを小さなスケッチブックに書き留めてきた“館長の雑記帖”最新版。解説・武田昭彦。
I
一字違いのこと
顔というものは 松田正平氏を訪ねて
レッテルを貼る ビル・トレイラーの絵
ある彫刻家の虫籠
時の溜まりにーー桑原甲子雄の写真
買いそびれた蜂蜜ーー信濃デッサン館再訪
劉生日記の一言
十円硬貨 松江行
杖と車椅子
献本 鶴見俊輔氏を悼む
プッポウソウ 音威子府の森
ゴンサレスの鉄彫刻
土偶と文化の地熱
表現と「母語」
師弟 萩散策
吾妻兼治郎氏の思い出
洞爺湖の砂澤ビッキ
植物の神経 津久井利彰氏への手紙
若林奮と旧石器時代への想像
益子行
吉田一穂を語る
展覧会余話
大原美術館にて
鴉と桃と柳原義達
寝床の読書
物書きの編集者・長谷川郁夫
II
米倉斉加年氏を偲んで
長蛇の列
カフェ・クーポールでの集合写真
佐伯彰一氏のこと
スティーブンソンと吉田松蔭
XとY
装幀をめぐって
ヒトとチンパンジー
安藤忠雄氏の挑戦
ノグチと収容所の日本の庭
展覧会の挨拶
素敵なふたり
車椅子の山ロ勝弘さん
不便利益のすすめ
バスキア展で
幻の展覧会
III
風雪という名の鑿をもつ砂澤ビッキ
画家としてのル・コルビュジエ
ドナルド・キーン氏との出会い
消えた巨大な土の塊
関根正二にまつわる話
カラヴァッジョの名を耳にすると
中原悌二郎賞をめぐって
イサム・ノグチのパートナー
記憶・尾道・志賀直哉
わたしの宝物
椅子にはじまる彫刻論
先用後利
野性の境界
山頭火にあやかって
あとがき
解説 武田昭彦
ルネサンスを彩った天才から凡才まで、80人の芸術家の数奇な物語!レオナルド、ミケランジェロ、ラファエロ──ルネサンス期イタリアで光を放った天才たち。そしてアルプスを越えれば、デューラー、クラーナハ、ファン・エイクらの巨匠たちがいた。しかし彼らならびたつ天才の陰には、数多の凡庸な芸術家の姿があった。
生活経験を芸術的経験に連続させる教育方法を「芸術的構成活動」として理論化し、誰もが参加できる新しい芸術の教育方法として提起。
文化芸術における国家と表現の自由、倫理の問題を捉え直し、文化政策・芸術支援をデータから評価・分析し提示する。
これからの政策・支援を考える重要な論点について議論を展開。
1960年代、テレビジョンの想像力=「虚像」がアートを起動した。磯崎新は虚業をかたり、横尾忠則は虚像となり、高松次郎は影を演じた。今野勉はテレビの日常性を主張し、東野芳明はテレビ環境論を書いた。マスメディアの想像力を分母に、現代を逆照射する戦後日本芸術論。
第一次大戦を経て、時代はパラダイム転換期キュビスム小説『ベビュカン』で表現主義の寵児に前へ、ダ、ダ、ダ、ダ、ダーッ、表現の最先端へ1920年代をもって、「二十世紀」の芸術と銘打つ越境する芸術理論、切れ味鋭いアクチュアルな批評大家を容赦なく斬り、アヴァンギャルドの心性に注視現代美術の祖型はすでにここにーある発表当時、センセーショナルな議論を巻き起こしたモダニズム芸術の基本書、待望の初訳。
芸術家の人生を読んで知る。より多くの人がアートに親しみ、楽しむきっかけを作る1冊です。
約30年間をアメリカで過ごし、ニューヨークを拠点にアートや写真のキュレーション、そして写真集の編集を数多く手がけてきた河内タカ氏が、世界の建築家・デザイナー総勢31名をピックアップし、それぞれのアーティストについて作家同士のつながりやネットワークとストーリーを交えて語ります。そして、イラストレーターのサンダースタジオによる独自の視点で切り取った各アーティスト、いわゆる一般的なポートレートではなくそのアーティストにまつわる要素がしっかりと表現されたイラストでご紹介。河内氏の軽妙な語り口と、サンダースタジオによるユーモア溢れるポートレートのコラボレーションです。
敷居の高い“アート”ですが手に取りやすい内容、デザインになっているため、より多くの人がアートに親しみ、楽しむきっかけを作りたいと考えております。第2弾目は、ミッドセンチュリーで活躍していたアーティストたちのお話しです。
生涯六十余戦負け無しの無敵の二刀流剣客、宮本武蔵。実在した一人の武芸者の、生死を分ける激しさ、苦しみや孤独、そして自らを恃む強い信仰ーそれらが、残された武蔵の数多くの作品群にまざまざと刻まれている!「兵法の理をもつてすれば、諸芸諸能もみな一道にして通さざるなし」(『五輪書』)と言い切る、剣豪なるが故の芸術の核心に迫る意欲作。