伊丹の新酒を積んで江戸に向かったはずの新酒番船が消息を絶った。その船頭の息子と知り合った「かわせみ」の面々が心配するなか、父親の船頭が生還したとの知らせが。安心したのもつかの間、船頭は、再び海に挑む…。表題作ほか、全七篇を収録。美しい江戸の四季を背景に、人間模様を情緒豊かに描き出す不朽の人気シリーズ。
戦後日本の代表的な作家六人の短編小説を、村上春樹さんがまったく新しい視点から読み解く画期的な試みです。「吉行淳之介の不器用さの魅力」「安岡章太郎の作為について」「丸谷才一と変身術」…。自らの創作の秘訣も明かしながら論じる刺激いっぱいの読書案内。
現代の奇妙な空間ー都会。そこで暮らす人々の人生をたとえるなら、それはメリー・ゴーラウンド。人はメリー・ゴーラウンドに乗って、日々デッド・ヒートを繰りひろげる。人生に疲れた人、何かに立ち向かっている人…、さまざまな人間群像を描いたスケッチ・ブックの中に、あなたに似た人はいませんか。
『羊をめぐる冒険』から四年、激しく雪の降りしきる札幌の街から「僕」の新しい冒険が始まる。奇妙で複雑なダンス・ステップを踏みながら「僕」はその暗く危険な運命の迷路をすり抜けていく。七〇年代の魂の遍歴を辿った著者が八〇年代を舞台に、新たな価値を求めて闇と光の交錯を鮮やかに描きあげた話題作。
失われた心の震えを回復するために、「僕」は様々な喪失と絶望の世界を通り抜けていく。渋谷の雑踏からホノルルのダウンタウンまでー。そこではあらゆることが起こりうる。羊男、美少女、娼婦、片腕の詩人、映画スター、そして幾つかの殺人がー。デビュー十年、新しい成熟に向かうムラカミ・ワールド。
“とびっきり旨い料理と旨い酒がここにある”-こだわりの末に手に入れられる食物の美、飲み方に食べ方、酒と肴についての話。英国で楽しむポオチド・エッグ、アメリカで通った酒場、そして広島の蛎、能登の岩海苔、甲府の鮠の煮貝、長崎の唐墨に近畿の松茸の話…。旨いものを求める旅に終りはない。吉田健一が守り通してきた食と酒への古びないポリシー。幸福な食エッセイ集。
フィデル・カストロとともに1959年のキューバ革命を成就させ、20世紀最大のゲリラとして、今なお人々の心に残るチェ・ゲバラ。医学を志した学生時代から、圧政に苦しむ人々のためにゲリラ戦士となり、革命成就後、与えられた地位を拒み、新たな解放を目論み南米・ボリビアで67年に殺害されるまでのノンフィクション・ノベル。殺害された地に立った著者の思いを描く。
教授は言った。「相手にとどめを刺しちゃいけません。あなたはとどめを刺すやり方を覚えるのでなく、相手をもてあそぶやり方を覚えて帰りなさい。そうすれば、勝負は聴衆が決めてくれます」タレントは唸った。「本物は違う!」今、明される究極のケンカ道とは?フェミニズムの真髄とは?20万人が笑い、時に涙し「学びたい」という意欲を燃えたたせた涙と笑いのベストセラー。
ゲルに住み、馬や羊と共に暮らす遊牧民。深い山に入って獲物を追いかける狩人。家畜や野生動物との深いかかわりの中から生れてきた昔話には、人と動物のあたたかい心の交流や、知恵と勇気で困難を乗り越える人びとの姿が描かれています。馬頭琴の由来話「草原の白い馬」を含め、全15話を収録。語ることを意識した訳文で、読みやすく、聞いてわかりやすい。読んであげるなら4、5歳から。自分で読むなら小学中学年以上。
赤いリンゴに唇よせて/だまって見ている青い空/リンゴは何んにもいわないけれど/リンゴの気持はよくわかる(「リンゴの唄」より)-優しくも人の心を打たずにはおかない言葉で紡がれたサトウハチローの、珠玉の作品群。その詩は読む人を郷愁へと誘う強い言葉に満ちている。その作品百十九篇を収録した待望の文庫オリジナル版。
閑静な町並みの、とある隠居所で紙問屋「美濃屋」の遣り手の主人・富右衛門が、全裸死体で発見された。南町同心の惣十郎は現場で、少し甘いような上品なにおいに気づく。そしてそれが「伽羅千尋」という高価な香だということをつきとめる。犯人が残したものなのか!?心が行き違ってしまっている妻を気にしながらも、惣十郎は探索に精を出すが…。市井に生きる男と女の愛と憎しみの果てを描く、書き下ろし時代ミステリー。大好評の南町同心早瀬惣十郎捕物控、待望の第二弾。
さようなら、3フリッパーのスペースシップ。さようなら、ジェイズ・バー。双子の姉妹との“僕”の日々。女の温もりに沈む“鼠”の渇き。やがて来る一つの季節の終りーデビュー作『風の歌を聴け』で爽やかに80年代の文学を拓いた旗手が、ほろ苦い青春を描く三部作のうち、大いなる予感に満ちた第二弾。
あなたのことは今でも好きよ、という言葉を残して妻が出て行った。その後広告コピーの仕事を通して、耳専門のモデルをしている二十一歳の女性が新しいガール・フレンドとなった。北海道に渡ったらしい“鼠”の手紙から、ある日羊をめぐる冒険行が始まる。新しい文学の扉をひらいた村上春樹の代表作長編。
美しい耳の彼女と共に、星形の斑紋を背中に持っているという一頭の羊と“鼠”の行方を追って、北海道奥地の牧場にたどりついた僕を、恐ろしい事実が待ち受けていた。一九八二年秋、僕たちの旅は終わる。すべてを失った僕の、ラスト・アドベンチャー。村上春樹の青春三部作完結編。野間文芸新人賞受賞作。
昭和初年、夫人森三千代とともに流浪する詩人の旅は、いつ果てるともなくつづく。東南アジアの圧倒する自然の色彩と、そこに生きるものの営為を、ゆるぎない愛と澄明な詩心で描く。
写真資料で再現する巨人の劇的な生涯。
いけばな素材としての選び易さと実用例を重視し、日常的に使用する名前や俗名でも作品例を検索でき、一般名や世界共通の名前(学名)にも到達でき、植物の形態、分類の基本や用語にも慣れ親しめるよう配慮。活用の便利さを配慮し、春、夏、秋、冬の大項目立てにした。
書院番から徒目付へ移籍となった久岡勘兵衛。やっと慣れてきたところに、初めて徒目付として扱う事件が舞い込んできた。ある旗本一家が夜逃げしたとのこと。勘兵衛は同じ徒目付の山内修馬と組んで、早速翌日の夜明けすぎから市中を歩き始める。消えた旗本は果たして誰から借金をしていたのか!?やがて調べていくうちに、事件は思わぬ方向へと進展していくのだが…。書き下ろしで贈る、好評の勘兵衛シリーズ第四弾。