〈わたし〉から始める本書では,身近な問い,自分の中の「なんで?」から始めて,その問いに潜む社会の特性を考える。個人的なことが社会的なことにつながる,その面白みを味わいながら,歴史や比較といった社会学の射程の広さ,アプローチの多様性を体感できる。
序 章 パーソナル・イズ・ポリティカル
第1部 「近代家族」は変わったか
第1章 妻の脱主婦化の落とし穴と夫の働き方の問題/第2章 地域におけるM字型カーブの推移/第3章 日本における「近代家族論」の展開と社会へのインパクト/第4章 育児と仕事の競合/第5章 「タイガー」マザーと「不合格」母/コラム1 育児ネットワークと会話分析
第2部 わたしたちはどこから来てどこへゆくのか
第6章 子どもはどちらについていくのか/第7章 伝統家族の複数性を読み解く/第8章 日本的近代化と家の展開/第9章 日本における「近代のエスノグラフィー」の誕生/コラム2 〈わたし〉の沖縄家族社会学
第3部 国境を越える家族/国境を越える研究
第10章 〈外国人の子どもの声〉が声になるまで/第11章 国際結婚で「第1の近代」は揺らいだのか/第12章 2つのオリエンタリズム/第13章 非西洋文化圏における家族研究/コラム3 アジア家族の多様性に迫る
インタビュー・エッセイ 落合恵美子に聞く!
明治期から現在までの図書館は女性にどのようなサービスや資料提供を行ったかをジェンダーの観点から文献により検証・考察した一冊。戦前に存在した婦人閲覧室や戦後に設立された男女共同参画センター・女性情報ライブラリーについて取り上げ、その存在意義を再確認できる。日本の図書館におけるジェンダー問題を可視化し、関連資料提供の際のヒントに。「巻末に索引」付き。
◆名もなき人々の小さな一歩が、歴史に大きな一歩を踏み出す。2023年に開催された貴重なオンラインシンポジウムの熱気が、今、本書でよみがえる◆
「どうする、日本のジェンダー平等戦略」と題した女性人権機構からの発信第1弾。第一部「女性を罰する社会?少子化は当然の帰結」。第二部は、今日の世界的災禍を克服する国際的な枠組みについて語る。名もなき人々の小さな一歩が、歴史に大きな一歩を踏み出す。オンラインシンポ2023の記録。
『どうする、日本のジェンダー平等戦略(信山社ブックレット)』
橋本ヒロ子・林 陽子・芹田健太郎 編
【目 次】
はじめに〔橋本ヒロ子〕
第一部 「女性を罰する社会? 少子化は当然の帰結」【講師】大沢真理
1 女性を罰する社会の正体
2 加速する人口減少
3 貧困率の高さはOECD諸国で有数
国際比較
男女別比較
シングルマザーの貧困率
日本の貧困層の所得の現状
伸びない日本の所得と賃金
4 コロナ禍よりもコロナ対策禍ではないか
コロナで亡くなったのは誰か
超過死亡という社会問題
女性の自殺率の変化
若い女性の自殺率が急増
姥捨て社会にNO
5 結語に代えて
第二部 「W7の歩みとSDGsから見たジェンダー平等の課題」【講師】三輪敦子
1 W7とは
2 W7の歩み
2018年 G7 シャルルボア(カナダ)サミット
2019年 G7 ビアリッツ(フランス)サミット
2021年 G7 コーンウォール(英国)サミット
2022年 G7 エルマウ(ドイツ)サミット
3 2023年 G7 広島(日本)サミット
スローガンとテーマ
5分野の提言とは
4 SDGs目標5の達成への働きかけ
第三部 特別対談「気の向くままに、ゆるくジェンダー平等を語る」〔芹田健太郎×大沢真理×三輪敦子〕
1 改めて問う、現代の市民社会
2 非軍事主義とジェンダー平等
3 女子教育機関の役割
4 SDGsの目標達成への提言
●女性人権機構の歩み
あとがき
東京都国立市は、人口7万6000人弱の小さな自治体である。市が設置する「くにたち男女平等参画ステーション・パラソル」の活動は、全国の自治体に配置されているジェンダー関連施策の担当職員のなかではわりと知られた存在で、これまでに何度もメディアで紹介されてきた。
注目を集める理由の一つは、2018年に国立市が施行した「国立市女性と男性及び多様な性の平等参画を推進する条例」にある。性的指向および性自認などの公表(カミングアウト)をするかしないかの選択は個人の権利であることを明記し、それを第三者に暴露する「アウティング」を日本で初めて明確に禁止したもので、「パラソル」はこの条例にもとづく取り組みを推進するための拠点として開設された。
加えて、この条例にはもう一つの特徴がある。DV(ドメスティック・バイオレンス、家庭内暴力)の被害者支援を重視していることだ。国立市を拠点に活動する「NPO法人 くにたち夢ファームJikka(ジッカ)」は、DVなどの困難な問題を抱える女性たちに制度の壁を越える支援を届けることを目指し、2015年に設立された。行政との密な連携による先駆的な取り組みが徐々に知られるようになり、今では全国各地から支援を求める女性がやってくる。Jikkaとパラソルの活動は、現在の国立市のジェンダー平等施策を支える柱となっている。
こうした国立市の取り組みは、市民たちから寄せられる声によって形づくられたものだ。その背景には、「市民参加のまちづくり」の長い歴史がある。市民の声は、どのように行政を動かし、まちを変えていくのか。そこに反映される市民と行政の関係とは、どのようなものなのか。ジェンダー平等に向けた国立市の挑戦は、まさにこうした問いに対する一つの答えを示している。
市民の声がジェンダー平等のまちをつくる。本書が描くのは、現在もなお進行中の、その実例である。
現在までのコロナパンデミックが与えた広範囲な影響を検証し、それを踏まえてこの時点で今後の新しい社会の設計に女性という視点から提言する。
昭和女子大学女性文化研究叢書 第13集
コロナ禍の労働・生活とジェンダー
目次
刊行によせて 武川恵子
総説 坂東眞理子
第1章 コロナ禍で浮上した女性の雇用継続課題とポスト・コロナの雇用平等促進への政策提言
ーー欧米のジェンダー平等先進国からの学びーー 青木美保・武川恵子
第2章 コロナショックでみえた女性労働者の就業継続の現状と課題 大橋重子・瀬戸山聡子・清水直美
第3章 エッセンシャルワークを担う福祉従事者に関する研究
ーー全国社会福祉法人経営者協議会役員へのインタビュー調査からー 北本佳子
第4章 新型コロナ下における家族介護者の働き方と生活資源マネジメントの課題
ーージェンダーとケイバビリティを手掛かりとしてーー 伊藤純・粕谷美砂子・山本咲子・吉田仁美・斉藤悦子
第5章 コロナ禍における「本格的な趣味」としての家庭料理と女性
ーー日本の社会教育学・生涯学習論に示唆するものーー 歌川光一
第6章 機構危機×COVID-19とジェンダー
ーーいかに新しい社会システムを構築するかーー 松葉口玲子
労働組合はこの数年、ジェンダー平等に加え、組合員の「多様性」に応じた活動にシフトしてきている。これらからの労働組合は高齢層や外国人の組合員など、新たなメンバーとともに労働組合運動を構築していくことが求められている。
本書では、労働組合の男女平等参画、ジェンダー平等、そして組合員の多様化について、企業別・産業別・ナショナルセンター各レベルの労働運動の機能や活動の在り方について検討を試みている。
2000年代の20年間の女性の働き方の変化を振り返り、労働組合におけるジェンダーの主流化を実現させるための一冊。
第1部:「女性」と労働組合の20年
1.データから見た女性の働き方
2.「女性」と労働組合
3.非正規労働者の組織化
第2部:労働組合におけるジェンダー平等
1.連合、産業別組織における男女平等の取り組み
2.企業別組合における男女平等参画
3.女性役員の選出と育成
4.労働組合のジェンダー平等への挑戦
第3部:組合員の多様化に応えるために
1.組合員の多様化のへの対応
2.組合員の多様化とこれからの労働組合
「先生は女子に甘い」「男の子なのにメソメソしない」
教師はジェンダーを「再生産する担い手」?
ジェンダーをめぐる教育課題や学校現場で奮闘する〈教師〉たちがジェンダー公正な社会を実現するための「変革する担い手」となるためにはジェンダー教育実践を推進していくために必要な視点を示す試み
子どもたちが「性別」に制限されないために、「一人の人間」である教師ができることは何か?
ジェンダー公正(平等?)な学校をつくるためにジェンダーから影響を受けて人生を歩んできた教師たちができること
多様な価値観をもつ教師たちがジェンダー平等という「ゴール」を目指すことの難しさ
「先生は女子に甘い」「男の子なのにメソメソしない」
・・・教師はジェンダーを「再生産する担い手」なのか?
教師に「変革の担い手」の役割を求める中で忘れられてきたことがある。
それは「教師も一人の人間であり、その人の人生がある」ということだ。教師は、その役割と葛藤したり、ジェンダーをめぐる教育課題を変革する実践(ジェンダー教育実践)との関係で困難が生じたりする。
ジェンダー平等な学校をつくるために、ジェンダーから影響を受けて人生を歩んできた教師たちができることとは何か。
ジェンダー教育実践を推進していくために必要な視点を示す試み。
教師も一人の人間であり、その人の人生がある以上、教師がその役割と葛藤したりジェンダーをめぐる教育課題を変革する実践との関係で困難が生じたりすることがある。ジェンダー平等な学校をつくるために、ジェンダーから影響を受けて人生を歩んできた教師たちができることとは何か。ジェンダー教育実践を推進していくために必要な視点を示す試み。
ジェンダー差別を生む構造はどのようなところにあるのか、どのような思想の元に成り立っているのかを知り、どのような人もありのままの自分でいられる社会のあり方について考えます。
◇新年のご挨拶 市民生活の向上、地方自治の発展、地域経済の活性化をめざして ●中山 徹
◇直言 社会のデジタル化とスマートシティ ●山田健吾
◇連続企画 「新型コロナ」から日本の社会を考える 第29回 新型コロナと介護 ●伊藤周平
◆特集 ジェンダー差別を超えて多様性の時代へ
文化の多様性とジェンダー平等 ●松岡悦子
東京・国立市 多様な性を尊重するまちづくり ●木山直子
ケア労働者の処遇改善のためには「ジェンダー平等」の社会が不可欠である ●森田 進
労組内での意思決定の場における女性の参画の現状について ●岡上則子清水万由子
シンポジウム 「法整備と SOGI」 に参加して ●編集部: 松川 遥
自治の視点が問われたー区画整理 再開発住民運動集会を終えてー ●遠藤哲人
◆連載
人つながる(22) NPO法人フリースクール「てだのふあ」 〜子どもたちが安心して過ごせる居場所づくり〜 ●山下吉和
検証 津久井やまゆり園事件を人権の視点から考える
第14回 津久井やまゆり園の地元住民としての想い…考え、行動 ●鈴木哲夫
おきなわ定点観測 第10回 日本国憲法の“真価”を私たちに問い続ける沖縄 ●関 耕平
シリーズ 地域発信 耕作放棄地に挑み果樹園の再生を! 第2回 荒れ地を開き安心安全なみかんを育てる ●渡辺卓也
@NEWS ユニチカ跡地住民訴訟と住民自治の展開 ●御代田桜子
BOOK REVIEW
ローカル・ネットワーク
年賀広告
Jつうしん/自治の風/編集後記
表紙写真 大坂 健
スケッチ 芝田英昭
フェミニズムと開発政策は女性たちを支援してきたのか? 国際開発政策は、女性が自分で稼ぐ能力と機会を拡大させて「ジェンダー不平等」を軽減してきた。しかし、それは政策が想定していたような女性の福利の向上につながるわけではなかった。現地で収集した膨大なデータをもとに、男性と女性の不可分な生計関係と女性の労働の強化を明らかにした労作。農業の低迷と人口増加が続くアフリカ農村部での女性支援の政策に一石を投じる。第23回大来賞受賞作品。
本書は、急速な拡大、進展を遂げるジェンダー研究によって拓かれた、知の地平を提示する。第一部ではジェンダー概念そのものをそれが帯びる多様性・多元性から捉え直し、第二部では変容を迫られている市場労働、ケア労働の考察を通じ、新たな社会像を展望する。
幼児期、メディア、学校教育、部活動や進路選択等、
私たちの世界にはどのようなジェンダー(社会的性)が埋め込まれているのか。
男女の性差のみならずLGBTの人々への視点を取り入れ新たに編まれた教育社会学テキスト。
【執筆者】
*河野銀子、*藤田由美子、岩本健良、木村松子、池上 徹、木村育恵(*は編者)
各国の男女格差を測る「世界ジェンダーギャップ指数」を見ると、日本は144か国中114位。先進国では異例の低さだ。女性の社会進出は進んだが、男女の賃金格差、男性の長時間労働など、性別による格差は根強い。では、こうした問題はどうすれば解消できるのか。本書では、ハーバードで人気の行動経済学者が今注目の「行動デザイン」の手法を駆使し、エビデンスに基づく解決策を提示した話題作。有効かつ透明性の高い採用・昇進方法とは? ダイバーシティ研修には意味がない? 日本でも急ピッチで進む「働き方改革」や「女性活躍推進」にも使えるヒントが満載。
序章 行動デザインの力/第1部 問題/第2部 人事のデザイン/
第3部 職場と学校のデザイン/第4部 ダイバーシティのデザイン
フェミニズム運動を淵源の一つとするジェンダー史は、単なる「女性の歴史」を超えて、既存の歴史学に新たな視点と刺激を提供し続けてきた。変容する「男らしさ」と権力の関係、奴隷制や近代国民国家の形成とジェンダーの関わりなど、対象領域を拡張し、今や言語論的転回以後の歴史学をも展望しうる分野に発展している。ジェンダー史の変遷を知るとともに、歴史学を捉え直す視点を獲得できる刺激的な入門書!
はしがき
第1章 なぜジェンダー史なのか?
第2章 身体とセクシュアリティ
第3章 人種・階級・ジェンダー
第4章 男性と男らしさ
第5章 政治文化のジェンダー史に向けて
第6章 「転回」以降の新潮流
訳者あとがき
読書案内
原 註
索 引
日本の英語教育においてジェンダーはどう扱われてきたのか。教育学・教育史・コーパス・心理学・メディア批評の研究者による学際的論考を収める。巻末には編者の開発した「英語教科書図版データベース」を掲載。
第1 部 男女共同参画社会を推進する観点からの英語教科書の分析研究
第2 部 英語教育学・英語学の観点から考えるジェンダー
第3 部 周辺分野(⼼理学・メディア研究)から考えるジェンダー
第4 部 男女共同参画社会を目指した英語教科書分析の資料
自家用ジェットで空を飛び、高級車を乗り回し、プール付豪邸に住まうアフリカ人エリートたち、彼等の暮らしを支えているのは、我々がテレビで最も頻繁に目にする、“かわいそうな”アフリカの貧しき人びと。本書は、国民を守るべき政治エリートたちが、その国民を食い物にする“発展途上国”の現状が、“先進国”にも通ずる、遍く世界における課題であることを証明する。
ノルウェーの幼児教育におけるジェンダー平等、公平性、多様性の尊重に向けた理論と実践をテーマにした意欲的な研究書。豊富な現地調査をもとに、同国の保育政策、カリキュラム、保育者、保護者および子どもの公平性の観点から多角的に分析していく。
「丘の上の町」として築かれた共同体はアメリカとなり、20世紀に超大国へと変貌した。しかし、現代アメリカにおける差別や格差は建国者が掲げた自由・平等の理想とは程遠いものだった……。人種やジェンダーに焦点を当て、アメリカの歴史を物語として描き出す本書はアメリカ史の入門に最適な一冊!
〈書きかえ〉の日本近代文学史
何かを書きつけたい切望、そしてその周囲に生じるさまざな権力関係(=書きかえ)。
近代になって書くことを与えられた女性たち。そのテクストに現れる「複雑性=書きかえ」は何を物語っているのか。文学作品のみならず、書簡、同人誌、雑誌投稿欄など、有名/無名を超えた女性たちの実践の足跡をたどる試み。
手本通りに書くためのなぞり書きが、手本をゆがめ、やがてそれを切り裂くに至るように、SNS時代の今日に通ずる、制度と個々人の関係のその「裂け目」に肉薄した、かつてない日本近代文学史。
文学という“虚構がつくるジェンダー“と、“ジェンダーそのものの虚構性”は、いかなる関係を「現実」において切り結ぶのか?
序 章 書くことを拒否しながら書く──田村俊子「女作者」の複雑さ
第1章 〈女性〉を立ち上げる困難──『青鞜』における小説ジャンルの揺らぎ
第2章 自然主義が消去した欲望──森田草平「煤烟」のマゾヒズム
第3章 大正教養派的〈個性〉とフェミニズム──田村俊子・鈴木悦の愛の陥穽
第4章 労働とロマンティシズムとモダン・ガール
第5章 〈女性作家〉として生き延びる──林芙美子『放浪記』の変節
第6章 盗用がオリジナルを超えるということ──太宰治『女生徒』と川端康成の〈少女〉幻想
第7章 紫式部は作家ではない──国文学研究の乱世と文芸創作
第8章 戦後世界の見取り図を描く──野上彌生子『迷路』と田辺元の哲学
第9章 女性作家という虚構──倉橋由美子『暗い旅』盗作疑惑の周辺
あとがき
注
初出一覧
索引
ウクライナ侵略とパレスチナ・ガザでのジェノサイドが続き、日本国内では政治や災害の問題に加え、国民の生活がますます困窮しています。こうした状況のもと、2024年版の女性白書は「くらしの平和を今こそー国際基準のジェンダー平等を求めて」と題し、くらしと平和が脅かされている実態と、いのち・くらしを守り、平和を希求し、国際基準のジェンダー平等を実現するための展望を見出したいと考えています。各方面からの総論・各論に加え、統計や各種資料も充実。