「もうフェミニズムに頼らなくても、女性だって活躍できる」
「女性差別がなくなった現代において、フェミニズムの時代はもう終わった」
と彼女は言った。
では、私やあなたの心のどこかに張りついている「女であることの不安」はいったいどこからくるのだろうか。
ーー「女らしさからの自由」と「女らしさへの自由」、どちらも実現できる世界をともに目指すために。
「ポストフェミニズム」という視点から、若い世代の性別役割分業や性行動の意識調査のデータを分析。さらにSNSにおけるハッシュタグ・ムーブメントや、雑誌『Can Cam』による「めちゃモテ」ブーム、「添い寝フレンド(ソフレ)」経験者などへの調査を通じて、現代社会における「女らしさ」のゆくえを追う。
日本におけるフェミニズム運動のパイオニア世代の三人が、個人史の軌跡を時代の中に位置づけて語る。草創期の女性史・女性学の熱気、学生運動や「慰安婦」問題との関わり、異性愛者としての立ち位置、そして老いつつある自らの経験と死について。後に続く世代に残す、貴重な歴史的証言。
さまざまな場で起動する「男子基準」、性別(間の/内に)ステレオタイプな分化を促すシステム、知に潜むジェンダー・バイアス、機会と選択の壁ー教育と研究の場はいかに変わりうるか。性や家族を問い直す知への逆風や、制度化と格差のジレンマに地道に向き合う実践と省察。
体育教師、スポーツ研究者や学生たち、そしてスポーツをしている女性たちに向けて、スポーツとジェンダーをめぐる言説を読み解く入門書。
動物をめぐる思想はここまで到達した
いまや動物にとどまらず、あらゆる存在の解放をめざす包括的正義の理論へと至った批判的動物研究を始めて本格的に紹介。理論水準を大幅に引き上げるとともに、実践へと誘い、シンガー『動物の解放』以来の衝撃をもたらす力作。
19世紀にはじまり、ピーター・シンガー『動物の解放』をもって本格化した動物擁護、動物解放の理論はその後、多様な社会運動や学問との協力・批判を経て、種を越えたあらゆる抑圧と差別に反対し包括的正義の実現を目指す、強靭な理論=実践へと鍛え上げられた。批判的動物研究と呼ばれ、世界的な隆盛をみせるその潮流は、いまやどんな思想も理論も無視できないものとなっている。本書では批判的動物研究を主に哲学、社会学、ポスト人間主義、フェミニズムの観点から整理、検証し、諸正義を結ぶ領域横断的な解放理論として描き出す。動物をめぐる数々の翻訳を手掛けてきた著者が、渾身の力で放つ初の著書。
◎目次
謝辞
序論
批判的動物研究
本書の構成
第一章 動物たちの現状
食用利用
肉用牛/乳用牛/豚/乳用牛/産卵鶏/魚介類
動物実験
行動研究/医学研究/製品試験
動物園と水族館
ペット産業
第二章 道徳哲学
功利主義革命
理論の重要性/功利主義アプローチの問題
動物の権利
内在的価値と生の主体/尊重原則から権利の導出まで/
権利論の実践的帰結/救命ボートの事例
新福祉主義
新福祉主義の実害/新福祉主義の元凶
廃絶主義アプローチ
単一争点の活動/平和的な脱搾取の啓蒙活動
第三章 社会学
抑圧理論
資本主義
商品化/物神崇拝
疎外
構造的暴力
労働者の逆境/環境破壊
動物産業複合体
エコテロリズム
第四章 ポスト人間主義
人間学、人間主義、人間中心主義
人間の名、動物の問い/生贄構造
生政治
生政治と生贄構造/動物生政治
ポスト人間主義の倫理
ポスト人間的状況/差異と応答/未分化と変成
資本・労働・抵抗
動物労働論/接触地帯/紛争地帯
第五章 フェミニズム
父権制と自然
女性・動物・自然/二元論の形成
父権的抑圧
残酷への意志/暴力の正当化/生殖支配/性と肉食…
ラディカル・フェミニズムの成果を享受する一方で、そのイデオロギーには違和感を覚える女性たち。フェミニズムはもはや存在意義を失ったのか?「政治的なもの」から「ポップなもの」へ、「社会的なもの」から「個人的なもの」へと重心を移しながら、多様な声を包みこむ第三波フェミニズムと、女性たちの文化実践を結ぶ、今日的フェミニスト・カルチュラル・スタディーズ。
女性の生と性への縛りに抗し、果敢にたたかってきた近代のフェミニストたち。明治・大正から戦後までのジェンダーと家族・国家の歴史に分け入り、異性愛や血縁に拠らない新たな家族のつながり、社会との関係性を探る。女性天皇・男女共同参画をめぐるジェンダーバッシングにも正面からこたえる。
社会学・心理学・哲学・歴史学・経済学・法学……様々な領域をタテ糸に、レズビアン、有色女性、ポストコロニアル等の事項をヨコ糸に300項を取り上げ、織りなしたフェミニズム思想の鮮やかなタペストリー。
女性解放運動の象徴と言われた雑誌『青鞜』の創刊から終刊までを追った評論。雑誌編集という観点からの分析により、平塚らいてうら“新しい女性"たちの等身大の姿を浮き彫りにする。(解説/中島京子)
「女/母」の身体性から、いまフェミニンの臨床哲学を拓く。マイノリティ諸当事者の問題に対峙し、フェミニズムのポスト構造主義ジェンダー論からクィア理論の問題意識へと踏み込み、新たな倫理的価値軸と主体像を模索する。
1970年のウーマン・リブ誕生から40数年。フェミニズムの第一世代として、批判や攻撃をものともせず、最前線を走り続けた田中美津、米津知子、滝石典子、上野千鶴子、井上輝子、樋口恵子、加納実紀代、池田恵理子、高里鈴代、田中喜美子、中西豊子、桜井陽子の12人が、自らの人生とフェミニズムへの思いを語った貴重な同時代史。映画『何を怖れる』に収めきれなかったインタビューを全面的に活字化!
91年、刊行と同時に多大な反響を巻き起こし、いまなお絶大な影響力を与え続ける文化批評の正典、大幅な増補を加えて完全復活。
二〇一六年五月、スイス・ジュネーブの広場に巨大なポスターが現れた。そこには「What would you do if your income were taken care of?」(お金を稼がなくてよくなったら、あなたは何をしますか?)と書かれていた。これは、世界で初めてベーシックインカムを求める国民投票を実現させたアーティスト、エノ・シュミットらによる「世界最大の問い」だった。世界各地で導入の具体的な動きが広まるベーシックインカムは、社会や人間のあり方に何をもたらすのか。二〇一七年四月に同志社大学で開催されたシンポジウム「エノ・シュミットと語るコモンズ、フェミニズム、ベーシック・インカム」をもとに、四人の執筆者が「世界最大の問い」を考える。
「NPO法人女性と仕事研究所」等で女性の労働・仕事およびNPOをテーマに長年活動してきた著者が、趣味として創作活動を行ってきた油絵・絵画と生涯のテーマであるフェミニズムとの関係を問い直す。ヌード絵画と女性の問題等を深く考察し、まとめた一冊。
フェミニズムはリベラリズムの継承者か、それとも批判者か。錯綜した関係を、集団と個人、性の商品化、自己決定権などから解く。
若い女、中年の女、母親、主婦…孤立させられた女たちが声をあげたリブ。制度や意識の変化を経ても、性愛から老いまで、いまだ「名前のない問題」と向き合い生き抜く思想は終わらない。「女であること」と格闘し掴み取られて来たひとつひとつの価値を、手渡す/受け取るというセカンドステージへ。
竹中恵美子を知っていますか?竹中恵美子の「女性労働研究」に出会った人たちが、その出会いをどう受けとめ、自身の実践や人生にどのような影響を受けたのか、熱く語る。
この世には二つの尺度がある。男の尺度と女の尺度である。私たちは、男の尺度=客観の前提を打破し、新しいフェミニスト英文学史を創造しなければならない。
「“ポスト”フェミニズム」とは何か?精神分析学、ポスト構造主義、ポストモダニズム、ポストコロニアリズム等の批評理論と交差しながら、理論をさらに先鋭化・深化させ、新たな領野を切り拓いていくフェミニズムの新段階のことである。先鋭化・深化を進める“ポスト”フェミニズム理論の図解による初の入門書。ラカン、フーコーから、バトラー、セジウィックまで。
〈パンデミック〉は何をもたらしたか?
いま、フェミニズムが解明する!
ウイルスは人間を〈平等〉に襲わない。コロナ禍で明らかになったのは、地球環境がいかに危機的な状況にあるか、また、私たちがいかに社会的・経済的に不公正で不平等な状況に置かれているか、ということだった。〈人間の尊厳〉と〈生存の平等〉、そしてみんなが生きのびることのできる世界を模索し、次世代へとつなげるための30余人の論考を収録。
1 〈パンデミック〉と女性/感染症と文学
松田秀子 有元伸子
岩淵宏子 内野光子
千種キムラ・スティーブン
2 〈交差性〉から探る新たな読み
岩見照代 渡邊澄子
上戸理恵 羽矢みずき
江口佳子
3 21世紀・ポストヒューマニズムの可能性
与那覇恵子 小林富久子
遠藤郁子 山田昭子
4 循環する自然/いのち/セクシュアリティ
渡辺みえこ 永井里佳
橋本のぞみ 矢澤美佐紀
近藤華子 中島佐和子
5 映像に見る〈パンデミック〉と現代
岡野幸江 藤木直実
渡邉千恵子 溝部優実子
6 フェミニズムの“力”
小林美恵子 小林裕子
吉川豊子 真野孝子
羅麗傑 漆田(土井)和代
7 高良留美子氏 追悼
[資料]新・フェミニズム批評の会
三〇年のあゆみ