現代的な意味論や語用論といった分野は分析哲学から派生したため、言語学と哲学は密接な関係にある。本書は言語学において議論されることが少ないプラグマティズムという哲学の概念が言語分析の基礎概念として機能することを示すと共に、その帰結を論じることを試みる。本書はプラグマティズムに加え、身体性、フレーム理論、ネオ・サイバネティクスといった概念との関係について詳細に論じる初の学際的な研究書でもある。
日本の古典や方言の中に生き続けながら、語義未詳とされ日本各地に埋もれたアイヌ語に、日本人のアイデンティティを探る。
だれかにいわれてしまったら、わたしのいのちはおしまいよ(ドイツのなぞなぞ)--不思議な不思議なことばの国、なぞなぞ。そこには詩があり、歌があり、知恵がある。世界70カ国、6600のなぞなぞを集め、日本語訳に加えて原文も並記した世界初の大事典。そこには、ことば遊び的なもの、教訓的なもの、ユーモアやエロチシズムに富むものがあり、その一つひとつが、添えられた700余点の挿絵・イラストとともに、民族の文化や風土を語る。なぞなぞという小さな言語作品を展示した、大きな博物館のごとき大事典。執筆者総数65名。90項目中、8項目が古典で82項目が現代。登場する言語の種類は90を超える。巻末に索引付。
本書は、統語論、音声学・音韻論、形態論、意味論・語用論の各分野におけるインターフェイスをテーマとする4巻シリーズの第2巻である。音声学や音韻論が関与する言語現象はごく身近なところに多く存在しており、本巻で取り扱うテーマも英語史、野球の応援歌、役者の台詞、絵本、子どものスピーチエラー、ディスレクシアと幅広い。各分野の最新の成果や理論的発展をわかりやすく解説した研究書兼概説書となることを目指した。
第1章 音韻論と統語論のインターフェイスー英語史に焦点を当てながらー
大沢ふよう
1. 序
2. 英語の変化
3. 古英語以降の英語に起こった変化
4. 音韻と統語の関係
5. 音韻が統語構造を決定するのか
6. 統語論は不要か
第2章 「燃えよドラゴンズ!」の音韻論と形態論
ー日本語のテキストセッティングと言語学のインターフェイスー
田中真一
1. はじめに
2. 言語文化と音韻論・形態論
3.「燃えよドラゴンズ!」のテキストセッティング
4. 音韻論・形態論の諸概念との関わり
5. 音韻・形態現象とテキストセッティング
6. むすび
第3章 音声,方言,そして演劇のインターフェイス
ーバーナード・ショーによる『ピグマリオン』-
八木斉子
1. はじめに
2. ショーと音との関わり
3. ショーによる演劇作品と音声情報
4. イライザと音声,役者と音声
5. むすびに代えて
第4章 音韻論と言語発達のインターフェイス
ーオノマトペと絵本に焦点を当てながらー
都田青子
1. はじめに
2. 言語の恣意性
3. 音象徴
4. オノマトペ
5. 絵本の中のオノマトペ
6. むすび
第5章 音韻論と言語障害学のインターフェイス
ー言語理論から見た構音獲得と構音障害ー
上田 功
1. はじめに
2. 言語発達期の音逸脱の性格
3. 構音障害の多様性
4. 音逸脱の多様性
5. 制約に基づく分析
6. 制約から見た音逸脱と機能性構音障害
7. インプットについて
8. 言語音の獲得順序
9. 結論
第6章 言語聴覚障害学と英語教育のインターフェイス
ー言語聴覚障害学から発達性ディスレクシアと英語学習を考えるー
原 惠子
1. はじめに
2. 発達障害,学習障害,ディスレクシア
3. ディスレクシア
4. ディスレクシアのある児童生徒
5. 言語によるディスレクシアの問題の現れ方の異なり:日本語と英語
6. 英語学習の問題:B 児の事例を通して
7. 英語学習支援
8. 英語の指導で考慮すべきこと
9. まとめ
私たちは日頃,歩行や呼吸をするのと同じように,特別に意識することなくことばを用いている。つまり,ことばの大半は特段の努力を伴わずとも反射的に用いられていることになる。であるとすれば,私たちは瞬時に何を選択し,同時に何を選択していないのであろうか。本書はこの無意識の選択の背後に潜む「心のオートフォーカス機能」とことばの選択の関係に切り込んでいく。
コーパス言語学(corpuslinguistics)は、英語においては1990年代以降、日本語においては2000年代以降、それぞれ急速な進展を見せ、現在、言語や言語教育に関わる幅広い研究分野に大きな影響を及ぼしている。本書は、英語コーパスと日本語コーパスの両者に目配りしつつ、初学者を対象に、コーパス構築の理念やコーパスを生かした言語研究の方法論について平易に解き明かすことを目指す。
生成形態論の目標は、各種の複雑語を自動的に生成する体系の構築である。その一環として本書は、日英語の名詞化、形容詞化、動詞化の主要な現象を詳細に分析・記述した後で、記述的一般化を「分散形態論」の枠組みで理論的に説明する。即ち、語彙部門を解体し関連情報・操作を適所に最適に分散する機構から、範疇化の基本的・普遍的特性と語彙的・個別的特性を帰結として導く。「詳細な事実観察に基づく理論の構築」を主眼とする。
第1章 生成形態論の基本概念
第2章 分散形態論の文法体系
第3章 形態機構ー統語出力の再調整機関ー
第4章 名詞化の分析
第5章 形容詞化の分析
第6章 動詞化の分析
第7章 範疇化の統一的説明
第8章 チャレンジングな問題ー句の包摂ー
第9章 結び
本書は人間のことばの習得と脳などとの関わりについて取り扱う「言語心理学」という研究分野について、コンパクトに概説したものである。全6章から構成されており、前半の3章では、主に母語習得について概観し、後半の3章では主に第二言語習得について概観をしている。様々な言語学の分野の観点や視点から、言語習得という人間の基本的本能と言われる内容に関して解説を簡潔に行っており、よりダイナミックな内容となっている。
目次
第1章 音声・音韻の獲得と喪失
1.1. 音声学・音韻論とは何か
1.2. 音声・音素の獲得とは
1.3. 臨界期仮説(Critical Period Hypothesis)について
1.4. 言語の音節構造
1.5. 言語のリズムの構造
1.6. 失語症患者の音喪失
1.7. 言語音声の知覚とマガーク効果
1.8. 休止の役割
1.9. まとめ
第2章 語彙の獲得・喪失と生物言語学
2.1. 語彙習得とは何か
2.2. 語彙習得に関する基本概念
2.3. 心的辞書の役割について
2.4. 弁別素性と語彙の喪失について
2.5. 生物言語学
2.6. まとめ
第3章 統語・意味の獲得
3.1. 統語論の情報処理について
3.2. 文理解の意味と認知
3.3. まとめ
第4章 第二言語習得のプロセス
4.1. 用語の整理
4.2. 臨界期仮説
4.3. 音声の習得
4.4. 語彙の習得
4.5. 文法形態素の習得順序
4.6. 統語の習得順序
4.7. まとめ
第5章 第二言語習得理論
5.1. 習慣形成
5.2. インプット、インタラクション、アウトプット
5.3. 自動化
5.4. 社会文化理論
5.5. 用法基盤理論
5.6. まとめ
第6章 第二言語習得の個人差
6.1. 動機づけ
6.2. Willingness to Communicate(WTC)
6.3. 言語不安
6.4. まとめ
一九六〇年代以降、全世界の人文科学を席捲することになる構造言語学ー記号学の源泉が一九一〇-二〇年代ロシア=ソ連における言語学の革新だったことは今や広く知られている。激しく燃え盛るロシア・アヴァンギャルドの芸術運動、そして“詩の革命を唱え展開した未来派詩人たちとの緊密な連帯のなかから出発したロシア・フォルマリズム運動の一翼を担った”言語学者たち、ボードアン・ド・クルトネ、ヤクビンスキイ、ポリヴァノフ、ヤコブソンからバフチン、ボガトゥイリョフにいたる多彩な言語学者、記号学者たちの思考の歩みを、詩的言語研究会(オポヤズ)、モスクワ言語サークル、プラハ言語学サークルの動向をも追いながら克明に辿る。
【「序章 本書の概要」より】
本書は日本語のアクセントとイントネーションを、鹿児島方言およびその近隣方言と東京方言の調査研究をもとに、一般言語学と対照言語学の視点から分析したものである。アクセントとイントネーションはともに音の高さ(ピッチ)が作り出す音声現象であるが、語の特性(アクセント)か、句や文の特性(イントネーション)かという違いを持つ。本書は計4つの章からなり、最初の3つの章では主にアクセントを、最後の第4章ではイントネーションを考察する。
いずれの章も過去20余年間に日本語で書いた論考、英語で書いた論考、そして今回新たに書き下ろした原稿の3つがもとになっている(前2者については文献欄を参照されたい)。日本語や英語で発表していた論考についても、今回データと分析を再検討し、また最近の研究動向を踏まえて少なからず改稿を行った。またopen data scienceの一歩として今後の検証が可能になるように、調査に用いた語彙・例文を章末の補遺に記載し公開することにした。
現代言語学は、主に、自然言語の変化しにくい静的な側面をもとに、言語知識の中身の解明を目指している。しかし、言語には、変化を受けやすい動的な側面もあり、それを知ることではじめて見えてくる言語の本質もある。本巻は、認知言語学・生成文法統語論・日本語学の観点から、文法化・語彙化・構文化という言語変化の一般的な特徴が、それぞれ、どのように説明できるかについて、英語と日本語の豊富な実例をもとに解説する。
本書は、西欧言語とは異なる日本語の人称表現の特徴にもとづき、社会言語学的側面から日本語人称詞を考察した一冊である。考察の範囲は、韓国語人称詞との対照、人称詞の周辺形式としての複数形接尾辞にまで及ぶ。小説作品の分析や意識調査などの研究手法を取り入れ、数値による裏づけを研究の基本とすることで、計量的研究としての意義が認められる。
国名をテーマにしたフェスティバル「国フェス」。
国際交流・理解を謳い、期間限定でそこに持ち込まれる多種多様なモノ・コト・価値の数々。それらの談話ーー言語・非言語を含む、有意味な記号活動のすべてーーを、マルチモーダル談話分析、言語景観研究、地理記号論の三つの視点を基盤に複数の手法で精査し、複雑に展開される相互作用を紐解いていく。
国フェス研究が、在日外国人コミュニティとホスト社会を架橋する可能性に向けてーーーー。
■序
■第1章 国フェスの社会言語学的研究ーー意義と方法
■第2章 調査の手順と国フェス事例の概要ーー開催の趣旨と経緯
(ナマステ・インディア/ブラジルフェスティバル/ラオスフェスティバル/ベトナムフェスティバル/アイ・ラブ・アイルランド・フェスティバル/おいしいペルー/コートジボワール日本友好Dayアフリカンフェスティバル/カンボジアフェスティバル/台湾フェスタ/アラビアンフェスティバル/ディワリ・イン・ヨコハマ/One Love Jamaica Festival/日韓交流おまつり/ミャンマー祭り/ベトナムフェスタin神奈川/その他の国フェス)
■第3章 国フェスのチラシのマルチモーダル談話分析
--A4紙一枚に凝集される国フェス
■第4章 国フェス会場に展開される国名・地名ーー想像の国家空間
■第5章 トークショーでの二言語使用ーー通訳が介在する相互作用
■第6章 参加型の言語関連活動ーー文化資本としての当該国言語
■第7章 音楽ライブでの多言語使用ーー多言語シンガーと観客の相互作用
■第8章 感染症対策を講じた国フェスから見えること
--「新しい日常」における国際交流イベントの課題と展望
■第9章 結論ーー多様性が価値づけられる多言語公共空間形成過程への示唆
コラム
あとがき
引用文献
認知言語学の最先端の論文を継続的に掲載するシリーズ第16巻。国内外の第一線の研究者の論文を掲載し、多岐にわたる認知言語学や関連する言語学の最新研究成果が交流する。
私的・公的表現の区別から見た絵本の表現技法
五十嵐啓太
認知言語学から生態学的言語論への展開ーアイヌ語場所表現の分析を事例にー
井上拓也
「てくる」構文に見られる〈不快感〉について
夏海燕
本動詞から複合語構成要素、接辞への連続性ー形態素「ぶち─」「ぶっ─」「ぶん─」を例にー
栗田奈美
X they said Y they said as a Sarcastic Multi-sentential Construction
Ash L. Spreadbury
格の単義的分析とその帰結ーRoman Jakobson の一般格理論の再解釈ー
中村渉
日英語の語の意味拡張のメカニズムの違い
濱田英人
Instruction of English Counterfactuals Based on Embodied Cognitive Experience
Hideki Hamamoto
多義の原理についての認知意味論的考察ー意味拡張の有契性についてー
松中完二
これまで言語研究で取り上げられることのなかった従軍記、回顧録、部隊史などから片々たる記述を拾い、当時の言語接触のあり様や日中語のピジン(「協和語」「兵隊支那語」など)を再構築することを試みる。
使える日本語が増える!
言葉の使い間違いがなくなる!
言葉の「語源」がわかる日本語勉強本!
衣食住や伝統、文化からできた言葉など、語源を知ることで、
言葉の使い方がもっとよくわかり、文章表現力が高まります。
翻訳された言葉には必ずわたし達の社会があらわれ、
そして翻訳されたものは社会に影響を与える。
翻訳小説の女性達は原文以上に「女らしい」言葉で訳されていることがあります。翻訳と社会とわたし達の密接な関係を読みとき、性差別をなくすための翻訳、社会に抗する翻訳の可能性を探る一冊。
「はじめに」より一部抜粋
翻訳には、それまでにあった古い考えにとらわれない、新しい言葉を生み出す可能性があります。そして、社会の中に存在しなかったり、埋もれたりしている概念を言葉によって「見える化」したり、それまでの偏った見方を変えたりする力があります。
【目次(一部)】
はじめに
『プラダを着た悪魔』の主人公はどんな話し方をする?
「ハリー・ポッター」のハーマイオニーには友だちがいない?
小説はフィクション、わたしたちはリアルな存在
[……]
第一章 小説の女たちはどう翻訳されてきたのか
日本語への翻訳とジェンダー
日本語の女ことばと男ことば
翻訳の中の女性はもっとも典型的な女ことばを話す?
翻訳小説の女性の話し方vs現実の女性の話し方
児童文学ではどうなる?
児童文学は保守的。児童文学の翻訳はもっと保守的。
翻訳者が再現しようとすること
汚いとされる表現にも意味がある
[……]
第二章 女たちのために自分たちで翻訳する
一九七〇・八〇年代に、自分でいる力をくれた翻訳があった
女性の健康のバイブル『Our Bodies, Ourselves』
わたしのからだは自分のもの。自分のからだをよく知ろう。
自分を大切に生きる権利は、みんなにある
『Our Bodies, Ourselves』の時代ー個人的なことは政治的なこと
『女のからだ』の時代ーウーマン・リブ
『からだ・私たち自身』の時代ーウーマン・リブからフェミニズムへ
フェミニスト翻訳の三つの具体的な方法
『女のからだ』のフェミニスト翻訳の方法
『からだ・私たち自身』のフェミニスト翻訳の方法
[……]
第三章 これからのために翻訳ができること
これから考えられる三つの変化
1一律の女らしさから、それぞれの個性へ
2ネガティブなイメージのない性器の名称へ
3「彼」と「彼女」だけでなく、インクルーシブな代名詞を
外国語教育学や第二言語習得の論文において多く使われている手法を網羅的に紹介し、
実際に論文を書く時に活用できるようわかりやすく丁寧に指南したベストセラーの増補版。
調査的面接法入門の章と、構造構成的質的研究法(SCQRM)入門の章が新たに加わったばかりでなく、
質的な研究手法の以外にも、カッパ係数やSEMのFit 指標の表も盛り込まれています。
研究を志す大学院生、中学・高等学校教員、大学教員、教育産業従事者に必携の一冊。
今回の増補のポイント!
☑︎APA第7版に完全対応
☑︎新たに「ベイズ統計入門」「量的手法のさまざまな展開」の章を追加