シェイクスピアを凌駕するほどの技法を披露し、17世紀のバロック演劇に華をそえたカルデロン。広大無辺な想像のキャンヴァスに、聖と俗の劇世界を洗練された筆致で描出し、バロック演劇に特有の鮮やかなコントラストが織りなす百花繚乱の劇空間を創出した、カルデロン独特の劇芸術の神髄に迫る!
序章
1 十七世紀のスペイン演劇
1-1 ロペ・デ・ベーガ以前の演劇
1-2 ロペ・デ・ベーガの大衆演劇
1-3 マドリードの芝居事情
1-4 宮廷芝居
1-4-1 旧王宮
1-4-2 ブエン・レティーロ宮
2 カルデロンの劇芸術
2-1 カルデロンの技法
2-2 文学と絵画
2-3 カルデロンとベラスケス
2-4 劇空間に見る絵画的技法
2-5 詩的世界──イメージ、シンボル、メタファー
3 名誉劇──名誉・嫉妬・復讐
3-1 悲劇のかたち
3-2 名誉の悲劇三部作
3-3 名誉のかたち
3-4 セルバンテスの小説空間に見る名誉の扱い
3-5 カルデロンの冷酷非道な名誉療法──名誉は命よりも大事
3-5-1 『密かな恥辱には密かな復讐を』
3-5-2 『不名誉の画家』
3-5-3 『名誉の医師』
4 〈マントと剣〉の喜劇
4-1 喜劇のかたち
4-2 夜の暗闇と秘密の隠れ場所
4-2-1 『淑女「ドゥエンデ」』
4-3 隠匿の妙味
4-3-1 『時には禍も幸いの端(はし)となる』
4-4 性格の異なる姉妹
4-4-1 『緩やかな水流にご用心』──従順な姉と自由奔放な妹
4-4-2 『愛に愚弄は禁物』──才媛と愚女
4-5 『四月と五月の朝』──捻くれた女と身勝手な男
4-6 変装の妙味
4-6-1 『白き手は侮辱にあらず』
5 人生の糸
5-1 運命と自由意志の相克
5-2 『人生は夢』──自由意志の力
5-3 『風の娘』──権力志向と傲慢さの顛末
6 宗教劇──カトリック信仰の強化
6-1 『驚異の魔術師』──改宗の妙味
6-2 『十字架の献身』──神はいかなる罪も赦される
6-3 『不屈の王子』──カトリック信仰の高揚
7 歴史的背景
7-1 歴史を背景とする作品
7-2 『イングランド国教会分裂』
7-3 アメリカ新大陸(インディアス)の話題性
7-3-1 『コパカバーナの黎明(れいめい)』
8 聖体劇
8-1 聖体劇とは
8-2 聖体劇の起源
8-3 聖体劇の終焉
8-4 カルデロンの聖体劇
8-4-1 『世界大劇場』
8-4-2 『人生は夢』
おわりに
参考文献
年譜
作者名・作品名索引
サイードが高く評価した稀有な黒人革命家。クリケットを愛し労働者階級と植民地の解放をめざして戦争と革命の世紀を疾駆した、思想家の生涯!
2020年、新型コロナ・ウイルスの災禍は美術界にも打撃を与えた。計画していた展覧会は軒並み中止または延期され、作品の陳列や検証などの研究成果を公開する機会がことごとく奪われた。
半世紀にわたり美術館運営に従事してきた著者もまた、ウイルスという眼に見えない相手を前に、館長職を務める美術館を切り盛りし、美術評論や普及活動に奔走する日々をコラム等で発信してきた。『鞄に入れた本の話』(2010年)『鍵のない館長の抽斗』(2015年)に続いてそれらをまとめた本書は、先行き不透明な当世を照らす、美術界泰斗によるすぐれた洞察にあふれている。
「書名は『芸術の補助線』とした。簡単な幾何の問題をまえにして、いくつも補助線を引き、躍起になって解いていた十代半ば頃のことを想いださせるが、これは不透明な時代のなかに生じる、さまざまな事象の意味を、まさに補助線を引くようにして探りを入れているーーいまの私につながっている気がする。」(本書あとがき)
美術館の仕事をめぐって、通勤途中や旅先でふと考えた事がらを小さなスケッチブックに書き留めてきた“館長の雑記帖”最新版。解説・武田昭彦。
I
一字違いのこと
顔というものは 松田正平氏を訪ねて
レッテルを貼る ビル・トレイラーの絵
ある彫刻家の虫籠
時の溜まりにーー桑原甲子雄の写真
買いそびれた蜂蜜ーー信濃デッサン館再訪
劉生日記の一言
十円硬貨 松江行
杖と車椅子
献本 鶴見俊輔氏を悼む
プッポウソウ 音威子府の森
ゴンサレスの鉄彫刻
土偶と文化の地熱
表現と「母語」
師弟 萩散策
吾妻兼治郎氏の思い出
洞爺湖の砂澤ビッキ
植物の神経 津久井利彰氏への手紙
若林奮と旧石器時代への想像
益子行
吉田一穂を語る
展覧会余話
大原美術館にて
鴉と桃と柳原義達
寝床の読書
物書きの編集者・長谷川郁夫
II
米倉斉加年氏を偲んで
長蛇の列
カフェ・クーポールでの集合写真
佐伯彰一氏のこと
スティーブンソンと吉田松蔭
XとY
装幀をめぐって
ヒトとチンパンジー
安藤忠雄氏の挑戦
ノグチと収容所の日本の庭
展覧会の挨拶
素敵なふたり
車椅子の山ロ勝弘さん
不便利益のすすめ
バスキア展で
幻の展覧会
III
風雪という名の鑿をもつ砂澤ビッキ
画家としてのル・コルビュジエ
ドナルド・キーン氏との出会い
消えた巨大な土の塊
関根正二にまつわる話
カラヴァッジョの名を耳にすると
中原悌二郎賞をめぐって
イサム・ノグチのパートナー
記憶・尾道・志賀直哉
わたしの宝物
椅子にはじまる彫刻論
先用後利
野性の境界
山頭火にあやかって
あとがき
解説 武田昭彦
生活経験を芸術的経験に連続させる教育方法を「芸術的構成活動」として理論化し、誰もが参加できる新しい芸術の教育方法として提起。
旺盛な活動を行なった文人にして、魯迅の実弟。ナショナリストにして“漢奸”。「生を求める意志」を持ち悩み苦しむ現世的な人間=頽廃派をキーワードに、近現代の日中文化をつなぐ要注意人物、周作人の思想に迫る。
「モノからコトへ」時代の、その先へ
長編書き下ろしと7編の論考で探る、「作品」と「制作」の新たなる可能性
現代美術のあり方が、芸術とは何かを問う内的な行為からその外にある現実社会への働きかけへと変化してきているいま、「作品」はどこへ向かうべきなのかーー。芸術とは何か、作品とは何かを根本から問い続け、美術作家としてその時々の自身の答えを作品にあらわしてきた池田剛介による、待望の処女論集!
「ユリイカ」「現代思想」「早稲田文学」「POSSE」等に寄稿した2011年から2017年までの思考の軌跡と、それを束ねる長編書き下ろしで構成。カバー、表紙、扉には本書のために著者本人が制作した新作を実験的方法で印刷し、書物というモノの可能性を追求する。
自身も不確かな世界に身を置き、活動の継続方法を模索し続けてきたアーティストがたどり着いた、「制作」のあり方とは。モノを作ることを志す全ての人必読の、いまを生き抜くためのヒントに満ちた一冊。
chapter 1. 失われたモノを求めて
chapter 2. 干渉性の美学へむけて
祝祭・現実・遊び
虚構としてのフォームへ
セザンヌの中間地帯
保存と解凍
クマと人とが出会う場で
カタストロフの傍らに
動物や世界から切り離された人間はいかにして個としてその生を全うするか。バタイユの絵画論と文学論に共通する地平を「幼年期」への志向に見いだす、新鋭による果敢な読解。
巻頭特集
木口木版(こぐちもくはん)とは黄楊や椿など、目の詰まった堅い木を輪切りにした面を、「ビュラン」という彫刻刀で彫っていく木版画の一種です。
18世紀末のイギリスで発明され、当時は書籍の挿絵として用いられていました。
日本へは明治20年に伝わり、やはり書籍や新聞の挿絵のために使われます。
やがて印刷の技術が発展するにつれて木口木版は廃れていきますが、1960年代に日和崎尊夫(ひわさきたかお)という一人の版画家が、独学でこの技法をよみがえらせました。そして、日和崎も一員であった木口木版画のグループ「鑿の会」(のみのかい)の活躍に影響を受けて、木口木版は日本で流行します。
本特集では「鑿の会」以後、現在活躍する作家18名の紹介と、木口木版発祥の19世紀の作家・作品をそれぞれご紹介します。
緻密で美しい小品世界のもつ魅力を、隅から隅までご紹介する決定版です。
巻頭特集/木口木版 日本の現在と西洋の起源
現代木口木版の作家たち
宮崎敬介・二階武宏・林 千絵・齋藤僚太
柄澤 齊「年輪と星星 木口木版見聞記1974〜1979」
西洋木口木版の起源と発展
佐川美智子「西洋の木口木版ーその魅力」
今すぐ買える版画の逸品「版画マーケットプライス」
注目の作家/星野美智子
版画芸術オリジナル版画・アートコレクション制作/銅版画家・古本有理恵
期待の新人作家/村上 早
写真芸術の世界/杉本博司
話題の展覧会より/埼玉県立近代美術館開催 辰野登恵子展
福岡アジア美術館開催 闇に刻む光 アジアの木版画運動1930s-2010s
展覧会スポットライト「九州・沖縄版画プロジェクト2018」
「没後30年 城所 祥展」
「版画のコア core 2」
全国版画展スケジュール紹介(12月〜2019年2月)
公募展結果発表・公募展募集要項
版画インフォメーション
木版画技法実践講座/木口木版(講師 多摩美術大学版画科教授・古谷博子)
はじめてでも版画がわかる! 版画用語辞典ハンドブック
[商品について]
芸術における身体は何を表現するのかーー。
本書は、現代舞踊(コンテンポラリー・ダンス)という身体アートの世界に身を置いた著者が、手掛けた舞台の台本や演出ノート、エッセイ、座談会を通じて、現代舞踊の魅力を、ひいては芸術における身体の魅力を表現しようと試みる「現代アートの文字版」である。
時代の影響を強く受ける現代舞踊の在りし日と今を知る上で、また身体芸術の評論として、読み応えのある内容となっている。
感度の高い芸術諸氏にお勧めしたい一冊。
[目次]
まえがき
第1ラウンド 制作メモ
1 評論
上演まえの短いDISCOURS
かくされた部分七景
《旅》よ よみがえれ!
傍白
ほか
2 省察
≪演出ノート≫から 「ジ・アビス〈深淵〉」
レフレクション「信田の森の物語り」
ほされた日常の風景
影のうら側
ほか
第2ラウンド 人と芸術
江口博氏を悼む
どこにもあって、どこにもない『エレホン郷』
石井漠に見る三つの舞踏態
マーサー・グラハムの偉大とモダン・ダンスの古典
ほか
第3ラウンド ドキュメンタリー
あるスタッフから見たこの十五年と昨今
ドイツの夏 現場からの報告
追跡「ヴィトリオ・ローシー」
新たな舞踊年鑑の刊行に寄せて
第4ラウンド エッセイ集
短歌と舞踊
パン屋さん探し
腰痛と注射
バイリンガル
ほか
第5ラウンド 座談会
《詩と現代舞踊》をテーマに
《ザ・ユニーク D・ナグリン》を語る
《歴史を学ぶ、歴史を語る》
《コンテンポラリーダンスの二〇年間》対談
第6ラウンド 創作戯曲
歴史劇『近衞公の死』四幕十二場
あとがき
著者略歴
[出版社からのコメント]
芸術が私たちに非日常の世界をもたらすものであるとして、舞台芸術の中にある身体の日常性はどの様に捉えられるのでしょうか。
「文化」としての芸術が、歴史や社会の影響を受けながら発信してきた表現は、私たちの日常をどの様に変えていったでしょうか。
本書は現代舞踊に視点を当てた作品ですが、その評論やエッセイ、戯曲は、芸術や文化を貫く射程を持ち、読者に思索という運動を促す懐の深さを持っています。
著者の人生の半身でもある身体芸術の魅力を、じっくりと味わっていただければ嬉しく思います。
[著者プロフィール]
日下 四郎(くさか・しろう)
1930年 京都市に生まれる 戸籍名:鵜飼宏明
1948年 旧制第三高等学校文科丙(フランス語科)を修了
1953年 新制東京大学第1期生として文学部ドイツ文学科を卒業
経歴:放送 JOKR(ラジオ)からTBSテレビで番組制作 〜1979年
舞台 DANCE THEATER CUBICで創作活動 台本&演出 〜1991年
教職 淑徳短期大学/日本女子体育大学の非常勤講師 〜1997年
評論 現代舞踊を中心とする創作作品の批評と審査 〜2013年
以上ダンス関係の仕事にはペンネーム日下四郎(くさかしろう)を用いた。
【主な著作と作品】
●鵜飼宏明名の著作
『太陽と砂との対話:西アジアのシルクロード』(1983 里文出版)
『東京大学・学生演劇七十五年史:岡田嘉子から野田秀樹まで』(1997 清水書院)
『さすが舞踊、されど舞踊』(2005 文芸社)
『ナナとジャン : 昭和20年代が生んだ青春の譜 上下巻』(2016 青嵐舎)
●日下四郎名の著作
『モダンダンス出航』(1976 木耳社)
『竹久夢二の淡き女たち』(1994 近代文芸社)
『現代舞踊がみえてくる』(1997 沖積舎)
シリーズ『ダンスの窓から』(2003-2012全3冊 安楽城出版)
翻訳本『ルドルフ・ラバン』(2007 大修館書店) その他
●ビデオ制作(全6巻 各1時間 台本・演出および解説パンフレット)
『第1巻 開拓期の人々』〜『第6巻 戦後世代の展開』(1988-2005CDAJ)
著者は世界的な陶磁学者で陶芸家の小山冨士夫の内弟子となって修業の後、独立・開窯した。本書は、著者が陶芸作家になるまでの苦闘を赤裸々に語り、夢を捨てない生き様を描く。また著者は地域の人々の協力でNPO法人「瑞浪芸術館」を設立し、館長として文化活動に取り組み様々な分野の芸術家とも交友する。その興味深い活動も語られる。
《主な内容》
第一章 陶芸への道
幼がたり╱旅立ち╱小山冨士夫先生に師事╱独立・開窯╱ 初窯の苦闘と初商い╱窯場の整備╱火事╱瑞浪芸術館の創立╱私の陶芸観
第二章 忘れ得ぬ人とことども
サム・フランシス氏╱荒川豊蔵氏╱新井英一氏╱宮城まり子さん╱ソンコ・マージュ氏╱出口直日さま╱ルーシーリーさん╱石黒宗麿氏╱鎌田真吾氏╱久田勘鷗氏╱中村嘉津雄氏╱横井照子さん╱浜美枝さん