数学と芸術は、どのような共通点をもつであろうか。一般に、絵画や彫刻は目で鑑賞し、感性的に反応するものであり、数学は頭脳と知性で対応するものだ、と言われる。確かに、このような側面もある。しかし、感性と知性という両極端に、これほどはっきりと裁断できるものであろうか。本書は、これらの問題に答えて、パルテノン神殿から現代の抽象芸術まで主に視覚芸術を対象に、そのなかに数学的思考・精神の流れをさぐろうとする。たとえば、シンメトリー、ハーモニー(調和)、プロポーション、運動、構造などの概念を、文化史的・精神史的に考察する。読者は、本書のこのような考察を通じて、人間の創造行為のすばらしさに驚嘆されるであろう。知的スリルに富む、エキサイティングな小篇である。
前半「ある芸術の形成」に続く『自伝』の後半。ライトは新しく得た伴侶の「励まし」を力に、祖父の開拓した田園に生活を立て直し、20年代末の大不況に見舞われるが、景気の回復により仕事に恵まれ、創意溢れる建物を次々と創り出すとともに、生活と仕事を組み入れた建築教育を推し進める。
本書では、ジャズの誕生から今日までの歴史が、12人の偉大なるジャズメンの人生を通して綴られる。ここに登場する12人が20世紀を代表する素晴らしい作曲家であることは間違いない。しかし、ジャズは本質的に即興で作られる音楽でありーそこで生まれたテーマは、それに続くソロのための単なる出発点にすぎないー彼らの「作曲」は、このような観点に基づいて捉えられなければならない。彼らの織りなす物語は、読む者の琴線に触れる。クラシック音楽のファンたちは、これまであまり知らなかったジャズのもつ繊細な複雑さを認識し、新鮮な情熱あふれる美しさを感じるだろう。文化史のなかでジャズが発達していく驚くべき過程は、12人のジャズメンの苦しみと静かな栄光の物語のなかで見えてくる。というのもジャズはアメリカ黒人が奴隷の身分から公民権を獲得するまでの歴史と密接な関係にあるからだ。一方で、ジャズファンにとっては、今回初めて目にするであろう多くの証言が鍵となり、ジャズメンの歩みをこれまで以上に鮮明に知ることができるだろう。これまで、多くのジャズメンの伝記やジャズの歴史の本が出版されてきたが、本書はこれら両方の性格を合わせもち、いわばリレーの選手たちのように、ジャズという名のバトンを次々に受け継いでいった12人の偉大なる音楽家の人生に焦点が当てられている。
本書のテーマ第一「「日本古典音楽」を見渡して考える」、「日本音楽の間」で、リズムといわず、間というのに深い意味がある。「唄(うた)字について」は、誰でも思いつくようで、これほど多面的に鋭く論じたのは珍しい。「日本の音楽理論における「中」について」は、上でもなく、下でもなく、中であることに意味がある。テーマ第二「芸能の相互関係の中でとらえる」は、日本音楽史の大きな命題。雅楽と声明と能とに詳しい著者の最も得意とする研究。テーマ第三の楽曲解説は著者の啓蒙活動の中心課題で、殊に能と長唄の関連する大曲は、著者の特に力をこめた論叢。テーマ第四「楽器の古態を絵画にさぐる」二篇は、近年、洋楽でも邦楽でも徹底を期した研究の生まれる領域となりつつある。特に著者の三味線のそれは殊のほか新規と評される。テーマ第五の文献解題二篇中の一つ「『めりやす豊年蔵』をめぐって-研究史を軸に」は、著者の最も力をこめた「研究史」的研究の実例。歌謡史研究の先覚、高野辰之、波多野賢一、藤田徳太郎の各氏等の研究に、東京芸大本、中央図書館本の校異を重ねた見事な筆致。
日本人の心情を描きだした静謐な映像美で、世界に類を見ない芸術を創造した小津安二郎。その全作品をあらゆる角度から分析、詳細なデータも収録した「完本」版小津論。「東京の合唱」「生れてはみたけれど」など初期作品から「麦秋」「東京物語」「秋刀魚の味」など代表作まで、その全魅力を探る。
謝肉祭に見られる王と臣下、男と女、動物と人間の転倒などの象徴的地位逆転現象は、フレーザー以来「未開」民族において広く知られるが、その淵源はギリシア民衆文化に遡る。本書は人間の象徴行為の核心をなす逆転過程の諸例を西欧の絵画や文学に探り、その社会的・文化的働きを明らかにした洞察的な論文集。
学校改革・教育改革への提言。「万人に当てはまるサイズを基準にするな」「芸術教育の大切さ」など、著者の実践に基づいた具体的な提言。とかく“押し付け”になりがちな教育改革論議に一石を投ずる。学校を「喜び」と「魔法」のある場所に。「個育て」「共育」に必読の書。
わたしはフォルム・ゼロにおいて変貌を遂げ、ゼロを超え、創造へと踏み出した。-対象やイメージ、意味から解き放たれた純粋な創造行為、絵画そのものの自立性を求める「スプレマチズム絵画」を提唱、“白地の上の黒い正方形”などの作品を残した、ロシア・アヴァンギャルドを代表する画家カジミール・セヴェリーノヴィチ・マレーヴィチ。その代表的な理論的・哲学的論攷、さらに絵画以外のジャンルに触れた芸術論を、本邦初訳にて収録。
空想は楽しい。お金もかからず、思いのままにどこへでも行くことができる。女優や著名な美術作品に自ら扮したポートレイトでおなじみの芸術家Mこと森村泰昌が、空想の楽しさを十分に味わいつつ、芸術の森へと読者を誘う。空想というのは、どんな仕事や生活の場面にでも適用できるキーワードであり知恵であり思考テクニックである。空想することの愉快と醍醐味を、多種多様な読者にお届けしよう。
ケンペのバトンのもとでは、みんながしあわせになった。初版、出る筈のない夢の書と迎えられ、ここに贈る増訂版。
スポーツというアート-美と物語がそこにある。スポーツ・武道・芸術・物語をめぐるユニークな文化社会学の試み。
“ことば”が交錯“同時代”を呼吸。“文化力”とはなにか。
新たな「知」への模索。学問分野を超え、新しい統合原理を求めてつどった科学者たちの激闘の記録。
中世の人びとは、教会建築や彫像をどのようにつくりだしていったのか?本書は初期中世・ロマネスク・ゴシックという三つの時代区分を踏まえて、「西洋における中世芸術のすべて」をわかりやすく解説する。美術史・建築史の初学者に最適なハンドブック。用語解説・建築各部名称図付。
医療ミスやニアミスの発生頻度を大きく減らす。本書は、医療事故防止に病院を挙げて取り組んでいる大阪の医真会八尾総合病院の安全対策を中心に紹介しながら、看護部門の医療事故防止にどう取り組んだらいいかを具体的に考えました。
芸術表現の制作者(クリエーター)をめざす学生にむけた講義、「法と芸術」用に書き下ろしたもの。まず、クリエーターにとっては基本法ともいうべき著作権法について、初心者向けに必要と思われるところを解説。さらに表現の自由や自主規制についても考える。
第5回ふるさとイベント大賞受賞。地域と世界が協働した真夏の大祭。アートの新世紀を拓いた140を超える作品のドキュメント。地球環境・住民参加・公共事業など、多方面で見出された21世紀の地域づくりモデル。豪雪の中山間過疎地が発信した世界最大規模のアートトリエンナーレ。里山の53日間、大地と人が交感した三年大祭の全記録。