バレンティーナとウォーレンの婚約報道は全米の話題を独占した。27歳のライターと56歳のエレクトロニクス界の帝王の結婚は、だれもがバレンティーナの金目当てと疑っている。ウォーレンの年下の親友で、彼を父のように慕うジョシュもそのひとりだった。「なんとしてもこの結婚はやめさせる。金目当てのきみとはね」と言いながら近づいてくるジョシュ。バレンティーナは、女をペット扱いする彼に反発しながらも、その若々しく広い胸に惹きつけられていた。「あなたがどう思おうと、ウォーレンと結婚してみせるわ」バレンティーナは自分を納得させるように言いきった。わたしは愛など信じない。ウォーレンへの好意と尊敬があれば、きっと幸せな結婚生活が送れるわ。盛大な婚約披露パーティーの日、ジョシュの冷たい視線を浴びながら、彼女は微笑もうとしていた。
アラバマ州ウインターヘイブンの町。帰郷したニコルはひとり途方に暮れていた。地元の名士だった父の遺言は、大きな屋敷を市民のための立派なホールに改築すること。だが、いったいどこから手をつければいいのだろう。そこに救いの手をさしのべたのが、造園業者のイーサンだった。ふたりはひと目で惹かれあうが、障害は多かった。ニコルはニューヨークに自宅と教師の仕事があり、イーサンには死別した妻とのあいだにふたりの子供がある。おまけに彼は仲間たちと会社を創立、事業が軌道にのるまで恋はおあずけという非情な取り決めを交わしたばかりだった。
「絶対に後悔させないわ、ブレイク」晴れて一人前のリサーチャーに昇格したレンは、経営者である彼に企画を持ち込んだ。ベビー用品の販売をしている友人の父の会社から、商品改良に生かすべく、顧客の声をリサーチしてほしいと頼まれたのだ。ところが、ベビー市場に関心のないブレイクは即座に反対した。やっぱり、幼いころからのあこがれの人だけれど、仕事と結婚しているような男性にわかるはずがないのよ。でも、なんとか女性たちに直接インタビューして、この仕事を成功させ、いずれは彼の共同経営者になりたい。そうすれば彼も、大人の女性として認めてくれるかもしれない。
大晦日の夜、ジュリーの兄は友人タイラーを連れて帰ってきた。一月一日がジュリーの誕生日のため、毎年大晦日はパーティになる。二人はたちまち惹かれ合い、熱いキスを交わした。だがタイラーはジュリーがまだ十七歳と知り、彼女の前から姿を消した。それから八年ー。ジュリーは二十歳のとき結婚したが、その夫も今はこの世にいなかった。今年もまた大晦日の夜。いつものようにパーティが開かれる中、ジュリーは兄が連れてきた人物を見てその場に凍りついた。忘れもしない八年前の大晦日、激しく口づけを交わした相手、タイラー・ジョーダン。茶色の髪も、瞳も、体つきも、なんて亡夫に似ているのだろう。そこで彼女は愕然とした。私は亡夫がタイラーに似ていたから、結婚したんだわ…。
アマンダは、夏の家族旅行で滞在した高級ホテルでハンサムなベルボーイ、デインと恋に落ちた。だが、やがて別れのときは訪れ、初恋は、ほろ苦い思い出へと変わっていった。十年後。二十五歳となったアマンダは、温かい家庭を持つ夢を捨て、キャリア・ウーマンとして多忙な毎日を送っていた。そんな折、研修期間中の滞在場所がデインと胸ときめく日々を過ごしたホテルに決まる。大丈夫、彼のことは完全に忘れたもの。アマンダはそう自分に言い聞かせた。けれども、予期しない運命が彼女を待ち受けていた。
ソフィ・B・ジョーンズは五年前から、「マウンテン・スター」の経営に心血を注いできた。週に四日は、納屋で、彼女自身が選んだ映画を上映する。牧場と宿泊施設を備えたこの小さなリゾートは、ソフィの努力でお客の人気も上々だった。ある夜、映画を紹介しながら、ソフィは吸いこまれそうな美しい瞳をした黒髪の男性にじっと見つめられているのを感じていた。その瞳は語りかけていた…きみのことを深く知りたい、と。そして、その瞬間、ソフィは恋におちていた。彼がソフィから、この「マウンテン・スター」を奪いに来た、元の地主の遺児シンクレア・ライカーであるとも知らずに。
真宗寺院に生まれながら宮沢賢治の生涯に学びつつ親鸞の教えに帰依した著者が、諸師との出会いを通じて深められた自らの信の世界を、共産党・宮本顕治との旧交などを織りまぜて自伝風に綴る。