“インディ500”の開催を前にわき立つインディアナポリス。だが、エレインの心はうかれ騒ぎとはほど遠かった。キースったら、なぜこんなことに巻き込まれてしまったの…。小説家の卵である弟のキースは、新作のための体験取材のつもりで、雑誌に載った殺人を匂わす求人広告に応募し、うかつにも手を引けない状況に陥ってしまったのだ。しかもそのことを、やっかいな第三者に知られてしまった。ポール・クーパーー、よりにもよって、雑誌記者に。実は、エレインとキース姉弟には、他にも世間に知られてはならない秘密がある。それが今、キースの考えなしな行動によって露呈の危機にさらされていた。弟の将来も、やっとつかんだわたしの仕事上の地位も、ポールはきっとめちゃめちゃにしてしまうわ…。
フェリーはシャンプレイン湖の水面を滑るように進んでいった。デッキに立つサンディの髪がなびいている。シンガーソングライターのサンディーは、生活観の違いからロッド・パワーズと離婚し、息子とふたり、バーモント州の森の中でひっそりと暮らしていた。それが、孫に会いたいというロッドの父親の招きを受け、今日ふたたび、思い出深い湖畔へと戻ってきたのだ。二年前に別れた夫との再会を、心のどこかで予測しながら、サンディーはパワーズ家のロッジに着く。過去の思い出にふけるサンディーの前に、ロッドがあられた。見知らぬ女性を伴い、落ち着いた様子で…。得体の知れない痛みが、サンディーの体を走り抜けた。
「あなたなんてほしくないわ!」アレクシアは怒りにふるえながら叫んだ。ネイサン・ハザードは、自信たっぷりの笑みを浮かべている。34歳にして、ハザードコーポレーションをニュージーランドのコンピュータ会社に育てた辣腕家。ニューマーケット・バナー紙の記者アレクシアが、やっとのことで接近し、鋭い質問を浴びせかけた男だ。だが話が終わったとき、ネイサンは彼女を誘惑した。「きみはぼくを追ってきた。きみはぼくがほしい。ちがうかい?」なんて傲慢でずうずうしい人なのかしら。アレクシアはネイサンを押しのけて、外へ出た。名札がはずれていて、彼には記者とわからなかったことに気づいたが、アレクシアの怒りはおさまらなかった。
ライアンは無理解な夫と別れて、故郷のハワイ島に戻って以来、ハワイ文化センターの職員として、島の神話や伝説の研究をしている。そんなある日、文化センターの別館の建設のため、アメリカ本土から、建築請負業者コーディ・ハンターがやって来た。ハワイ島は精霊の宿る島。住人は伝統を重んじ、霊の存在を信じているが、本土の人間には理解しにくい。そこで、ライアンが彼と周囲との折衝役をおおせつかった。コーディは男らしく魅力にあふれているが、たいへんな頑固者。奇妙な事件がもちあがるたびに、彼女に合理的な説明を求めてくる。建設予定地の近くに住む老婦人ツツ・リリーが計画の変更を申し立ててきたときも、コーディはぴしゃりと断り、ライアンは板ばさみになって苦しむのだった。
2年間愛し合ってきたウエイトに殴られ、リンデンは彼と別れる決心をした。楽しい思い出が走馬灯のように頭をよぎるけれど、同じ画家としての自分に向けられる嫉妬に、もう耐えられない。彼女は幼いころに暮らしたペランギ島へ帰ることにした。マレーシアの虹の島-ペランギにある、高床式のあの家に。
小さな花屋を経営するフェイス・ヒリヤードは、この何日か大忙しだ。初めて、手に余るほどの仕事を請け負ってしまった。ある結婚式の、花にかかわる一切を引き受けたのだ。当日は、悪いことに怠け者の助手が現れず、フェイスはたった一人、大わらわで教会とその祭壇を花で飾った。脚立にのぼり花のアーチを作っていたフェイスが、バランスをくずして落下し、見知らぬ男の腕に抱き止められたのは、一瞬の間の出来事だった。僕は君と結婚しようと思う-天からの贈り物でも受け止めたように、その男は言った。彼の目に、フェイスは、これまでに見たこともない、優しく、あたたかで、誠実な光を見た。その目に見つめられて苦しむ日が来るなどとは、その時フェイスは思ってもみなかった。
ビッグ・ショウの開幕予定日まで、あと三週間もない。プロデューサーのマギー・コールはパニック状態に陥っている。鳴りっぱなしの電話は大スターたちからのわがままな要求か文句、あるいはあちこちからのお金の請求だ。しかし、これは誰のせいでもない。全米各地から有名スターをブロードウェイの劇場に集めて開く豪華なチャリティ・ミュージカルショウを企画し進行しているのは、ほかならぬマギー自身なのだから。最大の問題は経費の不足だ。各界から寄付を集めたが、開幕にこぎつけるには、どうしてもまだ二十五万ドル足りない。最後の頼みはウォルビー基金という財団、理事長が芸能界嫌いで、説明を聞いてくれようともしない。そこでマギーは策を講じ、自分の魅力のありったけを賭けて、理事長ブレント・ソマフィールドへのアタックを開始した。
ターシャは母親に死なれ、天涯孤独の身となった。亡くなって初めてわかったが、母は一万ドルもの預金を残していた。二人はずっと貧しい暮らしをしてきたにもかかわらず。そして、遺品の中の、ビローフという人物が母にあてた謎の手紙。父親について何も知らされていないが、これで自分の出生が明らかになるのでは?ターシャは早速、手紙にあったトナカイ・ロッジヘ行くことにした。ところが手がかりとなるロッジの経営者はすでにこの世を去り、跡を継いでいる息子のセスはビローフなど知らないと言う。だがターシャはその態度から、セスは何か知っていると直感した。
フェリーはシャンプレイン湖の水面を滑るように進んでいった。デッキに立つサンディーの髪がなびいている。シンガーソングライターのサンディーは、生活観の違いからロッド・パワーズと離婚し、息子とふたり、バーモント州の森の中でひっそりと暮らしていた。それが、孫に会いたいというロッドの父親の招きを受け、今日ふたたび、思い出深い湖畔へと戻ってきたのだ。二年前に別れた夫との再会を、心のどこかで予測しながら、サンディーはパワーズ家のロッジに着く。過去の思い出にふけるサンディーの前に、ロッドがあれわれた。見知らぬ女性を伴い、落ち着いた様子で…。得体の知れない痛みが、サンディーの体を走り抜けた。
高校を卒業して20年目の同窓会。ジュリー・ローデスは、受付に並ぶなつかしい顔の中にチャッド・モーガンを見つけ、心躍らせた。彼女は、チャッドに会いたいがために、自らこの同窓会の幹事を買って出たのだ。ふたりは高校時代、ステディの仲だった。だが、裕福な家のひとり娘だったジュリーは、親の反対に抗しきれず、ほかの人と結婚した。あれから20年。夫に先立たれ、今では実家の援助もままならず、ジュリーは双子の子供を大学に入れるのにも四苦八苦。チャッドは平和部隊でフィリピンに行って以来、ずっとボランティア活動を続けているようだ。今回も、ニカラグアの民間国際援助組織の赴任先から、ジュリーにひと目会いたくて、わざわざ来たのだった。ふたりの愛は再燃するかに見えた。だが、ジュリーの左手薬指には大きなダイアモンドが…。
いつまでも待っているというエヴァンの求愛の言葉を頼りに、ダーシーは、妹を連れて彼の住む島を訪れた。愛してもいない彼と結婚する決意を固めたのには理由がある。日増しに美しくなっていく十五歳の妹を、亡き母の四番目の夫ジョージの毒牙から守るとともに、父の遺産である会社の経営権をジョージの手から奪い返すためだ。遺産は母の遺言で、ダーシーが二十五歳になるか結婚するまでは彼女の自由にならず、ジョージが一手に管理していた。ところが、ダーシーの思わくをよそにエヴァンは長期不在中で、彼女たちを出迎えたのは彼の兄マイルズだった…。
ミッチは問題生徒の更生プログラムで高校に出向することになった。彼は、緑の瞳に広い肩を持つ長身の現役警部。学校で待ち受けていたのは、警官に強い敵愾心を抱く生徒ジョニー、元ギャンググループのメンバーだ。さらに、そのジョニーを温かく見守る美しい女教師キャシーも大の警官嫌いだった。考え方の違いから、ミッチとキャシーは激しく反発し合う。それでも授業を進めるうち、いつしか互いに惹かれていった。しかし二人には、それにジョニーにも、人に語れない過去があった。温もりを求めながらも、三人は重い過去に縛られ相手を傷つけてしまう。ある日授業のなかで、突然ミッチの悪夢がよみがえってきた。ついに、たくましい警官の仮面がはがされていく。忌まわしい過去から解放されるとき、三人に見えたものは…。
常に時代をリードしてきたSF界の巨匠の集大成エッセイ集。超ベストセラー群の隠されたエピソード満載。孤高の作家の内なる魂の凝縮。
紙に「虹」をかけた男たち。新聞のカラー印刷実現に心血を注いだ、中日新聞の加藤登一と、その仲間たちの苦闘の歴史を克明に描く。