「凡庸」とは「すぐれたところのないこと」などといった相対的、あるいは普遍的な概念ではない。ルイ・ナポレオンのフランス第二帝政期に誕生した、極めて歴史的な現実であり、その歴史性は今なおわれわれにとって同時代のものなのだーー大作『「ボヴァリー夫人」論』(2014年)の執筆がすでに開始されていた1970年代、『「ボヴァリー夫人」論』を中断してまで著者を執筆に駆り立てた、現代批評の頂点。
講談社文芸文庫版への序文
『凡庸な芸術家の肖像』への序章
『凡庸な芸術家の肖像』第一部
I 蕩児の成熟
II 蕩児は予言する
III 特権者の代弁
IV 開かれた詩人の誠実
V 韻文の蒸気機関車
VI 凡庸さの発明
VII 旅行者の誕生
VIII 芸術家は捏造される
IX 仮装と失望
X 写真家は文芸雑誌を刊行する
XI 編集者は姦通する
XII 友情の物語=物語の友情
XIII 『遺著』という名の著作
XIX 自殺者の挑発
XV 教室と呼ばれる儀式空間
XVI 説話論的な少数者に何が可能か
XVII イデオロギーとしての倦怠
XVIII 新帰朝者の自己同一性
XIX 日本人の模倣癖と残忍さについて
XX 才能の時代から努力の時代へ
『凡庸な芸術家の肖像』第二部
I 崩壊・転向・真実
II 夢幻劇の桟敷で
III 外面の痛み=内面の痛み
IV シチリア島の従軍記者
V ふたたび成熟について
VI バヴァリアの保養地にて
VII 徒労、または旅人は疲れている
VIII 文学と大衆新聞
IX 変容するパリの風景
X 物語的配慮とその許容度
XI 黒い小部屋の秘密
XII パリ、または数字の都市
XIII 排除さるべき落伍者たち
上巻への註
美術館で拝むだけがアートではない。アートは社会のリアルに切り込むための「武器」である。原爆ドーム上空に飛行機雲で「ピカッ」の文字を描き、事故直後の福島第一原発敷地内に放射能マークの国旗を掲げ、岡本太郎の巨大壁画に原発の絵を付け足す。現代日本のアートシーンで最も物議をかもしてきたアーティスト集団Chim↑Pom(チン↑ポム)が自由を新たに塗りかえる。世界のアートの動向と共におくる生き方としての美術入門。「これからのアイデア」をコンパクトに提供するブックシリーズ第3弾。
(目次)
「イサム・ノグチー彫刻から身体・庭へー」展によせて ジェニー・ディクソン
In Consideration of: Iasamu Noguchi-from sculpture to body and garden Jenny Dixon
舞踊神のいる庭ーイサム・ノグチ、あるいは未来のディオニソス 新見 隆
第1章 身体との対話
北京ドローイングー身体から抽象へ 宗像晋作
イサム・ノグチの彫刻と身体について -マーサ・グラハム「ヘロディアド」の鏡を巡る一考察 瀧上 華
第2章 日本との再会
自然を知ること -イサム・ノグチの陶彫 宗像晋作
AKARIの発展とノグチの想い 木藤野絵
第3章 空間の彫刻ー庭へ
空間と大地 イサム・ノグチの庭について 福士 理
セントラルパークのためのプレイグラウンドのプランに関する考察 田口慶太
第4章 自然との交感ー石の彫刻
ノグチ晩年の大型玄武岩作品の文脈 ダーキン・ハート
Noguchi’s Late Large Basalts in Context Dakin Hart
対談: 和泉正敏(公益財団法人 イサム・ノグチ日本財団 理事長)×新見 隆
資料編
年譜/参考文献/出品作品リスト
宇宙へと飛翔する想像力
「宇宙へと飛び去った男」「棺アート」「消失と復活の劇場」「ゾンビ・コスミズム」……
人工衛星スプートニク1号の打ち上げとガガーリンの宇宙飛行で幕を開けたソ連のプロジェクトは生活レベルまで浸透し、芸術家たちの想像力を宇宙へと差し向けることになる。共有された遺産としての《宇宙》を芸術家たちはいかに我が物としてきたのか。ロシア宇宙主義を背景に、作家たちが形づくる星座を観測する。
序章 復活する宇宙
第1章 複数形のコスモスを生きる
1 生活と宇宙の接続
2 宇宙感覚のインストール
3 時空間をめぐる神話的遊戯
4 ロケットの環世界
第2章 三つの方舟の軌跡ーー正方形・飛行機・棺
1 正方形の変容ーースプレマチズムの宇宙的領野
2 飛行機というユートピアーー夢と現実の媒体
3 棺は復活の夢を見るかーー生と死の探求
第3章 ユートピアの観測点ーー後期ソ連の宇宙芸術
1 観測と交信ーーコンセプチュアリズム前史
2 生の劇場ーーキネチズム
3 地上の宇宙飛行士たちーーモスクワ・コンセプチュアリズム
第4章 死と復活のスペクタクルーー宇宙芸術の身体イメージ
1 ロシア宇宙芸術の現在ーー不死の克服
2 平等のストラテジーーー誰の視点で未来を語るか
3 ゾンビ・コスミズムーー芸術史のゾンビ化
4 宇宙芸術とユーラシア主義ーー死をめぐる闘争
結びに代えて
注
図版出典
宇宙芸術関連年表
太平洋戦争の開戦によって強制収容所へ送られた12万人あまりの日系アメリカ人。過酷な境遇に置かれた彼らは、日本の心と人としての尊厳を失うことはなかったー。スミソニアン・アメリカ美術館をはじめ、全米で25万人あまりが訪れ、感動した「我慢の芸術」作品集。
フィンセント・ファン・ゴッホは、27歳のとき、絵に人生を捧げる決心をしました。黄色がもっともお気に入りの色でした。そして、風景と普通の人々を好んで描きました。
この大画家の世界にようこそ!
彼の絵は、生きているあいだに一枚しか売れませんでした。
《自画像》《ひまわり》《星月夜》など作品説明も充実しています。小学生低学年から。
●キャッチ
Chim↑Pom from Smappa!Groupの元リーダー、渾身の書き下ろし40万字(単行本3冊分)!
アートが育んできたラディカルさ、全ての行為・行動・活動が「アクション」であるという自覚で、私たちの日常はガラリと変わる。いまやアクション(活動芸術)あるのみ!
●内容紹介
本書は、独創的なアイデアと卓越した行動力で、社会に介入し、私たちの意表を突く数々のプロジェクトを成功させてきたアーティスト・コレクティブ、Chim↑Pom from Smappa!Groupの卯城竜太によるはじめての単著です。今春、森美術館で開催された「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」は、初の大規模な回顧展ですが、実は作品を見ただけでは彼らがやってきたこと、成し遂げてきたことはあまりわかりません。彼らにおいては、作品成立の元に「プランニング」「スタディ」「ネゴシエーション」「オーガナイズ」「ステートメント」「ファンディング」「展開」などの様々なオペレーションが隠されているからです。それは精緻な理論にささえられており、実際、驚くべき冒険そのものです。本書はそうした日本で最もラディカルなアーティスト・コレクティブの内奥をすべて開示し、グランドセオリーなき世界で新しい未来を切り開くためのドキュメント&理論書です。
<結論から言えば、僕は、何重にも「アクション」の解釈がねじれたその先に、「いまやアクションあるのみ!」は、新たに有効なキャッチフレーズとしてここに再び召喚できると考えている。もちろん、繰り返すように、その言葉の意味は昔のままでも額面通りのものでもない。その使われ方もかつての前衛アートの「再生」にはならない。だから、この変化はリサイクルのようなマイナーチェンジとは違うスケールの、パラダイム・シフトに匹敵するものだと公言できる。アーティストやアクティビストと名乗る一部の行動派による度胸試しのような「直接行動」から、アクションの概念は、すべての人間に実装される「誰もができ得る『活動』」へと新たに拡張されているのである。そのことを整理する先には、きっと、究極的な目的と世界が広がっているはずだ。……脱資本主義や反権威という命題のもとに自爆を繰り返してきたアナーキーなアクションの文脈において、「新たなアクション」は、社会丸ごとを乗っ取る革命よりも先に、資本主義の支配が実は部分的に既に「終わっている」ことを気づかせるだろう。>(「はじめに」より)
★ オペラの「知りたい! 」が
この一冊できちんとわかる!
★ 国別のオペラの特徴、
表現豊かな歌声の魅力、
迫力あるオーケストラの構成・配置。
★ 観劇するときの見どころを
くまなく解説。
★ 『セビリアの理髪師』、
『アイーダ』、『蝶々夫人』など…
日常の恋物語から、
劇的な結末を迎える悲恋まで、
人間ドラマの名作を厳選して紹介。
◆◇◆ 著者からのコメント ◆◇◆
「オペラって何?」と聞かれると、
最もシンプルな答えは
「歌いながら芝居する舞台」になります。
演劇ならセリフが飛び交いますが、
オペラは基本的に歌声でやりとりし、
オーケストラが伴奏します。
オペラのステージでは基本的に
「生の声」と「生のオーケストラ」
でドラマを作ります。
バレエの場面があるオペラでは、
ダンサーが特別出演して華を添えます。
つまりは、「なんでも人力でこなしてしまおう」
という420年前のやり方が、
現代のオペラ公演でも
基本的な考え方になっているのです。
オペラの主役歌手は、
1回舞台に立つと2キロは痩せるといいます。
時代ものの物語が多く、
重い衣裳を着たまま、
平均2~3時間のステージで一所懸命に歌うと、
そこまで体力を消耗するわけです。
オペラの舞台は、大掛かりで華やかなもの。
演目によっては、合唱団や助演者も含めて、
数百人が同時にステージに乗ることがあります。
目で見ても、耳で聴いても
「この迫力を超えるものがあるか! 」
と、思わせてくれる
ーー それが、舞台芸術オペラの一番の魅力です。
岸 純信
◆◇◆ 主な目次 ◆◇◆
☆第1章 オペラの歴史
* オペラとは何か
* オペラは歌劇
* オペラとミュージカル
* オペラの形式・種類
・・・など
☆第2章 オペラの構成
* オペラ歌手
* オペラ歌手のレパートリー
* メゾソプラノとソプラノ
* オペラのオーケストラ
・・・など
☆第3章 オペラの鑑賞
* オペラの楽しみとは
* 略奪愛の物語とオペラ
* オペラでタブーとなる題材
* 映画「カストラート」とオペラ
・・・など
☆第4章 オペラの作品
【日本で一番人気の名作】
* オペラ 《魔笛》
* オペレッタ《こうもり》* 楽劇 《ワルキューレ》
* 喜劇オペラ 《フィガロの結婚》
【ビギナーにオススメの名作オペラ10選】
* ヴェルディ 《椿姫》
* ヴェルディ 《アイーダ》
・・・など
「カチューシャ可愛いや別れのつらさ」文芸協会「人形の家」から最後の舞台「カルメン」までわずか八年足らずで散った名優・松井須磨子。身近で見た須磨子と島村抱月の愛憎劇の真相を知る人の生々しい回想記。
2018年の岡本太郎現代芸術賞最高賞を受賞するなど、現代芸術シーンで注目が高まる、さいあくななちゃん。本書には、これまでの創作活動で生まれた2000点に及ぶ作品からセレクトした約500点を収録するほか、2万字に及ぶ自伝を収録。現代芸術家・さいあくななちゃんの学生時代から今現在までの6年間を凝縮した計320ページに及ぶ渾身の1冊。
すべての人がアートと共に生きる世界をめざす「Art in You」
宮島達男の最新の芸術論が詰まった箴言集
1988年、最も権威ある国際美術展「ヴェネツィア・ビエンナーレ」の若手作家部門「アペルト88」にて世界の注目を浴びて以来、国際的な活躍を続ける宮島達男。1999年のヴェネツィア・ビエンナーレでは日本代表として参加し、その評価を確実なものにしました。これまでの作品発表は、世界30カ国250カ所以上に及びます。
2000年代に入ってからは、2006年〜2016年に東北芸術工科大学副学長、2012年〜2016年に京都造形芸術大学副学長と教育の現場に立ち、後進の指導にあたってきました。
とりわけ教育に関わったこの10年は、作品発表とは違って、「言葉」を用いてメッセージを伝えることが多く、それをまとめたいという想いからできあがったのが、この書籍です。
構成は、大きく3つの章にわかれています。
第1章「哲学の深淵を語る」は、宮島が信頼を置く編集者・東晋平によるインタビューをもとに、新たに書き下ろされました。宮島の作品に通底する「3つのコンセプト」=〈それは、変化し続ける/それは、あらゆるものと関係を結ぶ/それは、永遠に続く〉の解説にとどまらず、さらにその深層にありながら、これまで発表されてこなかったフランス思想や仏教思想のルーツにまで迫った、まさにアーティスト宮島達男の核となるテキストです。
第2章「日々の言葉」では、2010年〜16年までの宮島のツイートから、「アーティストとしての心得」や「考えるためのヒント」などが平易な言葉で語られ、第3章「芸術と平和」では、2001年〜15年に新聞などに寄稿したテキストの数々などをまとめました。
また、作品制作の過程で生まれるアイデアスケッチやドローイングなど、書籍初収録となる貴重な図版も多数掲載し、言葉のみならずビジュアルでも、宮島芸術の根幹に触れることができる書籍となっています。
近年、宮島は前述の3つのコンプトに加え、「Art in You」という概念を提唱しています。これは、アーティストだけがアートの主体者ではなく、あらゆる人にアート的な感性があり表現が可能であるという意味であり、すべての人がアートを通じてよりよい人生を送ることを提示しているのです。この本を通じて、読者のみなさまがそれぞれの「Art in You」を体得するきっかけになりますように。
1 哲学の深淵を語る
「それ」とは何か
三つのコンセプト
作品(ドローイング)
2 日々の言葉
アーティストとして生きる君へ
創造の海
思考する石
3 芸術と平和
被爆「柿の木」二世根づく
旭日興年
芸術と評価
卒業
子どもにもっと芸術を
アーティストとして生きること
教育に携わる理由
作品の名前
マチュピチュと東北R計画
エイズ孤児と芸術の出会い
冬は必ず春となる
Art in You
枯山水における「見立て」
芸術と平和学
ドローイングとデッサン
作品の永遠性と保存
アーティストの未来
作品リスト
あとがき
シェイクスピアもオペラも当初はポピュラーだった。ラップの分析etc.を通し、高級/ポピュラー、本物/偽物、純粋/不純の区分を退け、アートを経験と捉えて生の全体へと拡張する。
演劇論でも舞踊論でもない世界的に類を見ない舞台芸術そのものに焦点を当てた全く新しい論考。舞台芸術とは何か、そのあり方を根本的に探り、総合的舞台芸術作品の姿をあぶりだす。1982年から独自の手法で次々と新しい作品を制作し続けながら、世界的知名度を得てきた著者による画期的新著。
前衛芸樹が生まれた19世紀末から20世紀初頭は動乱、革命、戦火の時代だった。1907年のキュビスムのセンセーション、1909年の未来派宣言、1916年チューリヒ・ダダを嚆矢とする世界的なダダ・ムーブメント、1924年ブルトンによるシュルレアリスム宣言。1930年瀧口がブルトンの『超現実主義と絵画』を訳出して以来の、中井、針生、岡本、中平へと続く前衛芸術受容の日本的困難と屈折を、社会的事象とともに論じる。
1.瀧口修造と前衛写真
物質の夢
写真的触覚一ーー瀧口修造と前衛写真1938-40
フォトジェニックとは/写真のシュルレアリスム/触覚の二次元的表現/科学と総合芸術
写真的触覚二ーー瀧口修造と前衛写真1953-56
触覚的記憶ーー写真と版画/リアリズム論争の時代/オブジェ=事物と、幻想/客観と主観のダイナミクスに生成するもの
2.中井正一の史的構図
現実感覚とユートピア/対話的コミュニケーションの〈場〉/映画ーー動いていく時間の壁/リズムとモンタージュ
3.岡本太郎 その歴史的位置
はじめに/奇妙なイズムとしての対極主義/対極主義、アヴァンギャルド、縄文土器/近代市民社会と芸術家/日本的なものと西洋的なもの
4.針生一郎の批評的原点
保田の美学と左翼民衆主義/戦後美術への視座/戦後精神としての対極主義/「サドの眼」から〈現実〉へ/花田清輝の「あるがままの林檎」/ドキュメンタリー芸術のゆくえ/日光東照宮と岡本太郎/二元論的思考からの拘束
5.写真家 中平卓馬
はじめに/アジェーー写真を見ることへの問い/シュルレアリスムーー政治と芸術/美的自由と国家ーーマルクーゼの理論/「風景」をめぐってーー写真とそのイメージ/「植物図鑑」とは、いったい何であったか/おわりに
ソ連崩壊後次第に明らかになってきた資料が示すスターリン時代の芸術家たちの赤裸々な真実。権力との関係において、創造的知識人はどうあるべきかを、今あらためて鋭く問いかける一冊。
それはどのようにして始まったか
社会主義リアリズムへの道における造形芸術の巨匠たち
革命の演劇あるいは演劇の革命
民族的な表現形式と国際的な内容
「革命の告知者」の懐柔
アンドレイ・プラトーノフー「富農の記録」の作者の幸せと不幸せ
人を恐れさせるためには身内を打てーある日記の物語
デミヤン・ベードヌイー「有害な男」から「無害な男」への変身
詩の反抗
ピリニャークー先延ばしされた死
エフゲニー・ザミャーチンー自由へと放たれて
ロシア・プロレタリア作家協会からソヴィエト作家同盟へー画一化の始まりにおける文化の再編
アレクセイ・トルストイー焼きポテトと善の希求
ショーロホフー『静かなドン』の作者で、三〇年代の弾圧のはずみ車
ブルガーコフー保存しておけ、だが、印刷はするな
コリツォーフー「拳銃を持ったジャーナリスト」の死
メイエリホリドー「愛と政治の三角関係」
セルゲイ・エイゼンシテインー『戦艦ポチョムキン』から『イワン雷帝』へ
ミハイル・ゾーシチェンコー日が沈む前に