富と女を手中にして、殺人者の完全犯罪は着々進行する。そしてまた第二、第三の女と殺人が…。当局の追及を必死にかわす犯人の知恵と、微妙にからむ男女の性を、人間心理の深層でとらえるサスペンスミステリーの秀作。
石川県能登島の夏は火祭りである。祭のさなか、女が殺された。穂積しのぶ、金沢市に住む人妻と分った。-10月8日、警視庁捜査一課の倉原真樹巡査部長は鴻野警視から、殺人事件の捜査を命じられる。しかし、事件は約15年前の11月21日のヤマだった。匿名電話が入り、犯人は中野区に住む山岡初恵だと告げたのだ。裏づけ捜査を進めるうちに第2の殺人事件が発生した。被害者の田尾俊雄は山岡初恵を知っていたらしい。錯走するさまざまな人生。捜査の過程で真樹は悩み始める…。粋で魅力的な女刑事の推理と冒険。
真夏の日差しは、透明な炎のように、すべてのものを燃えあがらせていた。コンクリートの壁は白く輝き、木々は濃い影を埃っぽい地面に落としていた。そこにふと響いた、かすかな笑い声。(くすくすくす)風のあいだに紛れてしまって、気のせいにしか思えなかったけれど-それは、悪夢の迷宮の門を開く、残酷な笑い声だったのだ。制服のエスパー少女・イオの戦い。第5弾。
「ああいやだ。またあの夢を見てしまった」六歳のころから一年に何度か見る、あのへんな夢。交通事故にあって脳の手術をうける夢なんて、気持ちわるいったらない。そして十二歳の誕生日を前にしてもっと恐ろしい夢が。「目ざめよ、唯。あたえられた使命をはたせ」ぶきみな声がくりかえされる。いったいどういうことなの。小学校高学年以上から。
宮崎県都井岬の断崖で映画の撮影中、男優の一人が転落、死亡した。男は燃えるような夕焼けの空に突然両腕を突き上げ、耳を掩うと絶叫し眼下の岩礁に落下してしまったのである。「熱演のあまりバランスを失った」事故と事件は片づけられた。しかし彼の妻は、この忌まわしい十一月二十九日という日が、ここ数年夫を苦しめ続けていた日であったことに気づく。夕焼けと死には密接な関わりが隠されていたのだ。
現代アメリカ史を書き換えた二人の黒人解放運動指導者。その思想と行動のドキュメント。
あたし、工藤由香。高校3年生。桜崎探偵事務所に持ちこまれた新たな依頼-それは、悪夢に苦しむ少年を助けてほしいという、風変わりなものだった。少年が、飼っている動物を殺す夢を見た翌朝、必ず夢に見た動物が、夢に見たとおりの方法で、殺されているのが見つかる。それが、猫や鶏を殺す夢であったうちは、まだよかった。ある夜、少年はついに、人間を殺す夢を見てしまったの…。
東京の片隅に立つ老朽ホテル「アカギホテル」。その住人の「悪夢氏」は、眠りに落ちれば、必ずや悪夢に苦しめられるという、しかし心優しき自由人である。自殺クラブに勧誘され本当の自殺を選択しそうになる不思議な心理、死んでも次の生に記憶が連続し、真の意味で死ねない悩み…。悪夢氏のもとに持ち込まれる、悪夢のような謎を、今日も悪夢に悩まされながら、悪夢氏が解く。奇妙な味の探偵小説。
ホストクラブに勤める有光重夫は人身売買ブローカーから逃げてきたというタイ人女性・トウイに出会い、彼女を匿うこととなった。しかしトウイは何者かに連れ去られてしまい、同じ頃、店の上客であった平沢しのぶも姿を消す。それから二カ月ほど過ぎて、トウイの死体が発見された。しのぶの背後にいるヤクザが有光への見せしめに殺したのか、それともブローカーによる私刑なのか…。
「貧者の核兵器」とも称される毒ガス-第二次世界大戦中、旧日本軍の最終兵器として大量に製造されたが、敗戦により未使用弾は地中深く埋められた。半世紀の時を超え、中国の奥地に遺棄された毒ガス弾が、腐食により環境を破壊し始めたと知り、著者は行動を開始する。戦争の負の遺産にかかわってしまった普通の人々の心の歴史を、ヒロシマのTVディレクターが克明な取材に基づいて綴る、鎮魂のルポルタージュ。
帰省する途中、大学生の醍醐と夢摘は車中に脱走した子供が紛れ込んでいるのを発見した。行きがかり上、送ることになった二人が辿りついたのは醜悪至極な幽霊病院。惨劇の記憶を封印した脱出不可能な館で首切り死体が次々現れ、惨劇はやむ気配すらない。奇怪でおぞましい真相、唯一無二の奇妙な味わいを堪能あれ。