ロマンの成立しがたい現代は、うるおいの乏しい時代である。この小説の主人公はそのような現実からはじき出された女である。彼女は魂の安息を求めて故郷へ帰って来た。しかし生きている以上、ひとは現実と手を切ることはできない。ひとりの女の過去と現実を通して、現代にふれてみたかった
結婚に破れたヴァイオリニストの百合は、ひとり故郷の北海道へ帰ってきた。ふと立寄った千歳の街で戦闘機の青年パイロットと出合う。彼の一途な熱情は、百合の揺れる心のひだにしのびこみ……。だが、百合にとって愛とは何だったのだろうか?さすらう女の愛と性の哀しみを抒情豊かな北国を舞台に描く長編。
私たち親子の歴史は、戦争をぬきに語ることはできません。戦争という特殊な時代背景のもとでは、人々は生きる姿勢を厳しく問われるものです。人間が好きで、広く世界の文化を愛し、芸術に親しんだもの静かな父は、一方で、工場のサボタージュを指揮する厳しいレジスタンス精神の持ち主でした。こうして一冊の本になるほど、父との思い出をたくさん持つことができたことを、私はとても幸せに思います。
ご存知、女流マンガ家ミヤコ先生と、アシスタントである妹のチョコ。ふたりは今日も〆切に追われています。担当編集者・山田は脚を骨折しました。姫は悪霊を背負い、山田のグラン・ババは老人性テレパシストとして時空を超えました。皆それぞれ多忙ながら幸福です。現実は、記号の連鎖を孕みながら、くもの巣に光る一粒の露の如きに、何色にも移ろいつつも輝いております。「処女少女マンガ家の念力」に続く待望の第2弾。この世に存在する最も平和な1冊です。すべての愛すべき登場人物に、そしてあなたに、神の祝福を。
「意義ある日曜日」にしようと、海外へ飛び続けるシルバーの男たち。作家・城山三郎とNHK取材班は、彼らを追って、アジアに旅した。
とうさんに買ってもらったばかりのランニングシューズをはいて、ぼくは走る。いつもいっしょに走っていた犬のバウはもういないけれど、バウのぶんもいっしょに風をうけて、ぼくは走る。もっと走る。5月のはじめ、日曜日の朝だった。毎日新聞「はないちもんめ童話大賞」(1986年度)を受賞した表題作をはじめ、「ぼくのピエロ」「夏まつりのまぼろし」「いじめっこに、ごようじん」など詩情豊かな6短編を収める。
あたし、仙子。ドジなとこだけが先祖の久米仙人ゆずりかと思ったら、超能力まで遺伝するなんて。あたしは恋人の温海さんに触れられると空を飛んじゃうし、お兄ちゃんは人の心を読めるテレパスなの。ハンサムなのに、フラれてばっかりのお兄ちゃんだけど、最近、恋人ができたみたい…。親友の青葉とあとをつけたんだけど、行き先は荒れはてたお寺。お兄ちゃんの様子が、へんなの。