地球上には150万もの種が生息するが,これら多数の種はどのようにつくられたのだろうか。ピーター・グラントとローズマリー・グラントの夫妻は,1973年以来40年もかけてこの問いに迫ってきた。その精力的な研究の成果が,32頁におよぶ鮮やかな口絵写真とともに本書にまとめられている。研究対象となったのは,南太平洋のガラパゴス諸島に生息する一群の鳥,ダーウィンフィンチである。
本書では,種分化にかかわる数多くのプロセスが一つ一つ検討され,ダーウィンフィンチの長期野外研究の結果に基づいて検証されていく。たとえば以下のようなものだ。
・何年かに一度,急激に変化する自然環境下で,自然淘汰によりフィンチの嘴の形態とサイズが急速に進化することを,自然淘汰のはたらく条件や原因も含めて詳細に実証した。
・子どもは父親からさえずりを学習する。これは雌による配偶者選択にはたらく。結果,種間の交雑を避けることになり,生殖隔離機構として重要な意味をもつ。また,学習の相手を間違えることで異なる種の間での交雑が生じる。これは鳥類では一般的なことらしい。
・交雑は結構頻繁に生じていて,雑種形成による遺伝子浸透のため種間の区別が消失してしまうこともある。そうでない場合には,交雑は形質の遺伝的なばらつきを増やして自然淘汰がはたらきやすくし,環境への素早い適応的進化をもたらす。
翻訳出版にあたり,グラント夫妻から寄せられた日本語版へのあとがきには,ガラパゴスのダーウィンフィンチのすべての種について,全ゲノムが解読されてわかったことや最近のフィールド調査の成果など,本書を出版した後の研究の進展が書かれている。この分野の研究の進展についての興奮を読者に伝えたいという著者達の意気込みが伝わる。
(ピーター・グラントとローズマリー・グラントの夫妻は,2009年に,基礎科学部門における第25回京都賞を共同受賞している。進化生物学や生態学,動物行動学といったいわゆるマクロ生物学では,京都賞が最高の権威をもつ)
長期にわたる野外研究の重要性とともに,他方でゲノム研究や発生の分子生物学,学習などの進歩と,生態学や動物行動学,地理学などとが結びつくことによって生命現象が深く理解されうることが,本書により実感できるだろう。
[原著:How and Why Species Multiply:The Radiation of Darwin's Finches. Princeton University Press.]
サハリン島で見られる維管束植物の最新「国勢調査」のモノグラフ。ロシアと日本の間での学名見解の違いも明らかにした。自生植物1,186種,分類に課題がある18種を「検討種」として解説し、保全生物学につながる絶滅危惧種・外来種の現状も取り上げた。「調査」は,日本側に残されている戦前の樺太(主に南サハリン)標本,2000〜2007年におこなった北サハリンを含む日ロ共同サハリン島調査での採集標本,そしてロシア側に保管されている標本や,これまでの日本・ロシアから出されたフロラ・レヴィジョン・図鑑・論文などに基づいておこなった。採集年・採集者名、採集地の和名・ロシア名・場所、サハリン州の絶滅危惧種のリストも追加した。北方地域に興味を持つ植物のみならず動物や昆虫の研究者必携の書。大学図書館や地域の博物館・標本庫、天然記念物保存・調査に関わる文部行政「機関」や教育委員会にも必要不可欠な書。
Plate
要約
Summary
はじめに
第1章 サハリン島の自然環境
1.地理・地形と地質・地史
2.気候環境
第2章 サハリン島の植物
1.植物研究史
2.地域フロラ
3.種数と多様性
4.島内の植物地理区
5.植生・植生史
第3章 サハリン島の維管束植物リスト
凡例
シダ植物
裸子植物
被子植物・基底群
被子植物・単子葉類
被子植物・真正双子葉類
第4章 サハリン島の植物分類地理
1.植物調査の量,密度と範囲
2.地理分布
3.染色体数と分子系統地理
4.保全生物学:「絶滅危惧種」と「外来種」
Appendix
Appendix1 サハリン島の維管束植物標本採集者記録
Appendix2 サハリン島の植物標本採集地名索引
Appendix3 サハリン州(サハリン・千島)の絶滅危惧植物リスト
Appendix4 Plateデータ一覧
引用・参考文献
おわりに
事項索引
和名索引
学名索引
経営者が本当に果たさなくてはならない役割、意識しなければならない社員との関わり方を、“伝説の外資トップ”が具体的に解説!
19世紀のパリのアパルトマンや、使用人のいる上流階級の住宅の台所から、C.ペリアン、P.シャロー、レンゾ・ピアノら建築家が手がけた台所など、フランスを中心とした西欧の台所の変遷からみる近代史。
家事労働の能率化によって獲得した時間と、機能的でコンパクトになり、合理化されたことにより失われた空間を問う。
目次:ミシェル・ブラスによる序文
序章 1 はじめに 2 本書の趣旨 3 研究の方法
第1章 台所空間の縮小化ーー失われたテーブルと椅子
1 進歩として扱われる移動可能なセンターテーブルの消失
キッチン・カード:ビーチャー姉妹とアンクルトムの台所
2 フランス20世紀初頭の台所の建築的レシピーー類型の多性様
キッチン・カード:パリにおけるブルジョワのアパルトマンの台所
キッチン・カード:慈善財団の台所
3 台所の建築的レシピ 1920〜1930年ーーモデルの発明と展開
キッチン・カード:リリアン・ギルブレスによる有名な台所
4 建築家たちのライバル意識ーーモデルの伝播とテイラーリズムの普及 1920〜1930年
キッチン・カード:かの有名なフランクフルト・キッチン 1926年
キッチン・カード:最小限の台所の大コンペティションーーフランクフルトCIAM 1929年
キッチン・カード:パリ市の台所のタイプ 1920〜1930年
キッチン・カード:ヴィラE1027の台所 1926〜1928年
キッチン・カード:ピエール・シャローとガラスの家の台所 1928年
5 アナザー・レシピ:ユートピア、余暇における居住環境
キッチン・カード:モスクワの共同サービス付きの小さな台所
第2章 窓がなくなりリビングに開かれた台所
1 窓がなくなりリビングに開かれた台所
キッチン・カード:ユニテ・ダビダシオンの台所 1947〜1952年
2 戦後の台所のレシピーーベビーブーム期における標準化
3 建築家の役割
4 シャルロット・ペリアンの多彩な台所
キッチン・カード:ベビーブーム期の台所の標準型
キッチン・カード:1950年代のアメリカの台所
キッチン・カード:1950年代のスェーデン・キッチン
5 1950年代の建築モデルは存続する
キッチン・カード:1960〜1970年代の台所
キッチン・カード:デザイナーとキュイジニストの台所
第3章 獲得した時間と失われた空間を求めて
1 時間との闘いのなかで何を獲得したのか
2 獲得した時間、失った空間、食事の準備
3 20世紀の男性、女性、子ども、そしてキッチン
付録 今日のキッチン・カード
キッチン・カード:3つのドアのある台所
キッチン・カード:台所ーー設備を埋設した壁
解題 「19〜20世紀の日欧における台所近代化」須崎文代
建築家の希望はどこにある?槇文彦の問いに伊東豊雄、塚本由晴、藤村龍至ら17名が答える。
「社会的企業」という新しい概念から、EU全15カ国の事例を詳細に分析、ポスト福祉国家におけるサードセクターを再定義して、経済と社会の転換と再生を理論的実証的に展望する意欲作。
単なる就職活動のノウハウではなく、長期的なキャリア形成の指針として大学生や同世代の若者が就活とともに、その後の人生を幸せに送るためのベースになる考え方を紹介する。
実用面を意識したASRに関するコンクリート診断,および基盤技術としての骨材の岩石学的評価を記した専門書.
主にASRについて詳細に解説しているが,ASRと区別するために,塩害や中性化などのほかの劣化機構についても解説している.
また,ASR劣化をより正しく分析し,原因解析するために必要な岩石学的評価についてまとめた,初の書籍である.多数の岩石の顕微鏡写真を収録したCD-ROM付き.
第I部 ASRに関するコンクリート診断学
1章 ASR研究の系譜と展望
2章 ASR劣化に対する維持管理
3章 ASR診断のフローの実際と詳細
4章 骨材のアルカリ反応性評価と抑制対策
5章 新しい方法の提案
第II部 ASR診断に必要な基盤技術と専門知識
6章 ASRの作用機構
7章 多様化する骨材に起因するさまざまな問題
8章 コンクリートと骨材および混和材の詳細分析・評価方法
9章 骨材の岩石学的評価
10章 骨材の地質学的産状とASR の可能性
グローバル化が進む研究開発の中でも日系多国籍企業が国境を越えて展開する共同研究開発を対象に、知識の移転とイノベーションを担う人材の育成とマネジメントについて分析。
私とはなにか、私たちはどこからきてどこへ行くのかーー。この根源的な問いにたいし、分析と還元を旗印とする科学、とりわけ「生命科学」は、有効に答えてきただろうか。「生命誌」は、科学によって得られる知識を大切にしながら、生き物すべての歴史と関係を知り、生命の歴史物語を読み取る作業である。博物学や進化論、DNA、ゲノム、クローン技術など、人類の「生命への関心」を歴史的に整理し、科学を文化としてとらえる。
DNAの解析やゲノムの解読、ワトソン『二重らせん』の翻訳など、日本の生命科学を牽引し、一般読者への啓蒙にも功績の大きい著者が、この20年あまり提唱してきた新たな学知、「生命誌」とは何か。1999年、NHK『人間講座』として放送されて好評を博したテキストをもとに、「生命誌」の基本的な考え方と今後の展望をまとめた好著。
私とはなにか、私たちはどこからきてどこへ行くのかーー。この根源的な問いにたいして、分析・還元・論理・客観を旗印にしてきた科学、とりわけ「生命科学」は、有効に答えてきただろうか。著者の唱える「生命誌」は、科学によって得られる知識を大切にしながら、それを包み込んで新たな世界観を作るべく更に広く展開するものだという。それは、生き物すべての歴史と関係を知り、生命の歴史物語を読み取る作業である。
博物学や進化論、DNAの発見、ゲノムという考え方、性と死、クローン技術をめぐる議論など、人類の「生命への関心」を歴史的に整理し、科学を文化としてとらえ、社会の中に生かしていこうとする「生命誌」の取り組みと展望を語る。
『生命誌の世界』(2000年、日本放送出版協会刊)の文庫化。
第1章 人間の中にあるヒトーー生命誌の考え方
第2章 生命への関心の歴史ーー共通性と多様性
第3章 DNA(遺伝子)が中心にーー共通性への強力な傾斜
第4章 ゲノムを単位とするーー多様や個への展開
第5章 自己創出へ向う歴史ーー真核細胞という都市
第6章 生・性・死
第7章 オサムシの来た道
第8章 ゲノムを読み解くーー個体づくりに見る共通と多様
第9章 ヒトから人間へーー心を考える
第10章 生命誌を踏まえて未来を考えるーークローンとゲノムを考える
第11章 生命誌を踏まえて未来を考えるーーホルモンを考える
第12章 生命を基本とする社会
学術文庫版あとがき
人類史上のエポックを画す火や青銅器・鉄器の利用は、化学反応の利用にほかならない。人類が古くから用いてきた技術には、物質変化に関連した化学技術と呼ぶのがふさわしいものが数多く存在する。一方で初学者には、その多様性に起因して物質に関する脈絡に欠けた雑多な知識の総体として映ることもある。本書は、多様性に打ち克って成立に至った現代化学の体系を学び、統一的に物質を捉えるために必要な物の見方の獲得を目指す。
1.化学の世界 2.原子の構造と周期表 3.化学結合はどのように生じるか 4.炭素化合物とその多様性 5.分子間力と高次構造の形成 6.光と分子:分子構造と機能1 7.人と分子:分子構造と機能2 8.物質の三態:氷と水と水蒸気 9.溶液とその性質 10.化学反応と熱の出入り 11.化学変化の方向と速度 12.酸塩基 13.酸化還元 14.分子をつくる1:官能基に注目しよう 15.分子をつくる2:基本骨格を構築する
本書は「生命シリーズ」の第4巻として「生物学」の基礎について講じたものである。生物学は生命あるものたち(生命体・生物)とその営み(生命現象)に関する科学で、この地球上で現に生きているものたちと、かつて生きていたものたちのみを対象として、「生きている」とはどういうことかを理解しようとするものである。
電子技術時代の日本語表記と印刷・伝達形式を考えるとともに、コンピューター以前の書き言葉のあり方を見なおし、新しい技術を歴史的文脈において評価する。
「装飾は犯罪である」と20世紀初頭のウィーンに爆弾発言をしたアドルフ・ロース。外観は寡黙で、内部は豊潤。コルジュジェやミース、そしてノイトラに大きな影響を与えたが彼らとは対極にいる奇才による伝説の住宅ミュラー邸(チェコ・プラハ/1930年竣工)を詳解。
アドルフ・ロース(1870-1933)
1870年、チェコ生まれ。ドイツのドレスデン工科大学卒業後、アメリカを放浪する。1896年に帰国。オットー・ワーグナーの「芸術は必要にのみ従う」という機能主義の主張を更に徹底させ、1908年に『装飾と犯罪』を執筆。過激な言論で「ウィーン分離派」や「ウィーン工房」の装飾性を攻撃した。代表作はカフェ・ムゼウム、ロース・ハウス、アメリカン・バーなど装飾をそぎ落とした建物で、モダニズム建築の先駆的な作品をつくる。死の直前にこれまでの図面などを全て焼き捨てたという逸話が残る異色の建築家。
住宅写真
図面
アドルフ・ロースの現代性
装飾はいらない:生活の多様性へ
平面図はいらない:ラウムプランへ
統一性はいらない:ミュラー邸へ
高価な素材はいらない:着衣のような建築へ
想像力はいらない:ファンタジーをこえて
要約目次:
1.生物学: 生命の科学
第1部 細胞
2.生命の化学的基盤
3.生命を担う有機分子
4.細胞の中の生物学
5.動的な細胞
6.生命を担うエネルギー
7.細胞のエネルギー
第2部 遺伝学
8.細胞の増殖
9.減数分裂と有性生殖
10.遺伝様式
11.DNAの生物学
12.バイオテクノロジーとゲノム学
13.突然変異と遺伝子検査
第3部 進化
14.ダーウィンと進化
15.小さな規模の進化
16.大きな規模の進化
第4部 生命の多様性
17.微生物:ウイルス,細菌,原生生物
18.植物と菌類
19.動物
第5部 植物の構造と機能
20.植物の解剖学と成長
21.植物の応答と生殖
第6部 動物の構造と機能
22.組織化と定常性
23.循環系:体内の輸送系
24.呼吸器系と泌尿器系: 体内環境の維持
25.消化とヒトの栄養吸収
26.病気に対する防御
27.体内環境の調節系
28.感覚入力と運動出力
29.生殖と胚発生
第7部 生態学
30.生態学と個体群
31.生物群集と生態系
32.生物圏への人間の影響
中国経済減速の懸念が高まる一方、ASEAN経済は堅調な成長を遂げている。中国との連携を深化させることでASEAN経済は次の発展段階へと進みつつある。経済規模は2025年にも日本を超えると見込まれ、こうした変化を正確に把握することが、日本企業の長期的な成長に必要不可欠である。ASEANの専門家が緊密化する中国関係を多角的に検証!
第1章 米中対立下のASEAN-均衡戦略の現状と展望ー(石川幸一)
第1部 経済統合
第2章 ASEAN中国自由貿易地域(ACFTA)をインフラに南進する中国(助川成也)
第3章 緊密化する中国とASEANの貿易(宮島良明)
第4章 中国企業の対ASEAN投資の現状ーASEANが「最大の投資先」にー(牛山隆一)
第5章 ASEAN金融統合の展望ー中国,そして日本とどう付き合うかー(赤羽 裕)
第2部 経済協力
第6章 「一帯一路」とメコン協力の実態(藤村 学)
第7章 ASEANのエネルギーとラオスにおける電力事情ーASEAN各国の多様性と環境・経済発展のジレンマー(春日尚雄)
第8章 カンボジアに対する中国の影響力ー経済的プレゼンスと話語権ー(鈴木亨尚)
第9章 中国・ASEANの経済展望と日本の稼ぐ力(大泉啓一郎)
「いいものを安く売る」から「プレミアムなもの(サービス)を価値に見合った価格で売る」へ。地域の付加価値や生産性を高め、賃金を上昇させ、地域が経済的にも精神的にも活性化する好循環を生み出すためのさまざまな事例を紹介。
日本人にとってのコメをめぐる環境と思想は、どのような歴史をたどり、現代の食文化や農耕のあり方にどのような問題を投げかけるのか。東南アジアのコメの文化・思想も視野に入れながら、民俗学・神道・植物学・農業従事者などコメの現場に携わる様々な立場の識者が、コメをめぐる環境・思想の多様性について追究、そのあるべき未来を提言する。
ー消失の危機から、あるべき存在へー ポスト・コロナに揺れるなか都市の農業が再評価されている次世代に向けて、いま何が必要か経済、社会、環境の多角的視点から接近する
第1章 都市農業の持続可能性に関わる論点 八木洋憲
第2章 日本の都市農業および分析対象地域の概要 吉田真悟
第3章 都市農業の多様な取り組みと立地条件 吉田真悟
第4章 継続可能な都市農業経営の特徴と今後の展望 吉田真悟・八木洋憲
第5章 市街化に伴う都市農地の転用とその計画的保全 寺田徹
第6章 生産緑地の相続と持続的保全 竹内重吉
第7章 民間開設型農園の経営的特徴とコロナ禍の対応 山田崇裕・新保奈穂美・筧田斎
第8章 都市農地活用型コミュニティガーデンの持続可能性 新保奈穂美
第9章 持続可能な都市農業の展望 八木洋憲