愛する者の死は、突然、訪れる。長年連れ添った夫、ジョン・ダンの突然の死。生死の淵を彷徨う、一人娘、クィンターナ。本書は、一人の女性作家が、夫を亡くした後の一年間と一日を描くノンフィクションである。近しいひと、愛するひとを永遠に失った悲しみと、そこから立ち直ろうとする努力についてのストーリーである。ジョーン・ディディオンは、夫を亡くした後の一日一日について、時に率直に心情を吐露し、時に冷静に自己と周囲とを観察する。フラッシュバックのように回想が挿入されるかと思えば、文献渉猟の成果が生のまま紹介され、脳裡に甦るさまざまな詩や小説や映画に慰められるかと思えばクィンターナを巡っての医師との攻防がシニカルに描かれもする、一筋縄ではゆかぬこの作品は、2005年10月に刊行された。ディディオンの筆力にテーマの普遍性も相俟って、本書は同年度の全米図書賞も受賞し、全米大ベストセラーになった珠玉のノンフィクションである。
立花透には、重い心臓病を患う娘がいた。米国で移植手術を受けさせるには、あと三千万費用が足りない。その窮地を救ってくれたのは、十年前に絶縁した親友、画家の秋ヶ瀬遼平だった。高校時代の夢の続きを一緒にみようと誘う秋ヶ瀬を拒み、さらに彼の気持ちを誤解した透は、彼を怒らせ、その金額で身体を買われたことにされてしまう。夜の相手を含めた奉仕をする存在として秋ヶ瀬のそばに留められた透はー。
奇蹟をめぐる5つの“聖なる愚者の物語”。“楽園”を追われた子どもたちの魂の放浪…。連載時より各紙誌で絶賛された、文芸賞作家による話題の連作小説。
『ネコは、ごはんを何日食べなければ死にますか?』とあるパチンコ店の前に置かれている一冊の「里親探しノート」に、そんな奇妙なことが書かれてあった。ただなんとなく生きている店員の五郎、現実逃避している常連客たち…。この一冊のノートにより、それぞれの運命の歯車が動き出し、生きる意味と向き合うこととなる。
「星とせせらぎの詩人」と呼ばれ、「第二の八木重吉」とも呼ばれ、日本のキリスト教を代表する詩人島崎光正が、生涯をかけて書きしるした数多くの詩から、みずから厳選した。
東京郊外の高校に通う周平は、剣道部の主将として充実した毎日を送っていた。ところがある日、父親の会社が倒産。学費や妹の小遣いを自分で稼ぐことになった。考え抜いた末、周平は幼なじみの沙代子と有料人助けの会「悲しみ君、さよなら組」を結成。恋愛、いじめ、用心棒…次々に舞い込む難題を、たくましく解決していくトラブルバスター・周平。真のやさしさとは、そして本当の悲しみとは…。
韓国人と日本人はこんなにもちがうのだ!ソウルに暮らした著者が目のあたりにしたものは!?海をへだてた隣国には私たちとは全くちがう思考、生活、風土があった。快楽を追求した食事、自分が一番の小中華思想…。そうした生活にどっぷりとはまり込んでようやく見えてくる文化の基層を愛情をこめて描いた韓国見聞記。
子供を失った悲しみは、四十の言葉を連ねても言い尽くせないーカナダの田舎町で起きた、十代の若者ばかりを狙った残忍な連続殺人。残された家族を思うと捜査を担当するカーディナルの心は沈んだ。そんな折、署内の不正を暴く特別調査室でカーディナルの過去を探っていた女刑事が、異動で新しい相棒になった…内憂外患のカーディナルが辿りついた、身も凍る真実とは?英国推理作家協会賞シルヴァー・ダガー賞受賞作。
ワルシャワ・ワジェンキ公園に昂然と建つショパンの像。二十歳で出国し、二度と故国の土を踏むことのなかったショパン。しかし彼の魂は決してポーランドの地を離れることができなかった。そんなショパンの姿を著者は克明に追った。
街の息吹に身を晒す。“地霊”の宿る場所に立つ。都市を巡る旅は、胸の高鳴る冒険だ。都市は人間の試みの痕跡に満ちている。
少年は大嫌いだった。自分を追い込んだ周りも、自分自身も。少年は憎んだ。自分を傷つけたこの青い星の全てを。だから、『追放』されるのではなく、自らこの星を棄ててやるのだと思った。憤りや哀しみに彩られた想いを断ち切るかのように、ひとり。誰の想いも届かぬよう、遠く空の彼方へ少年は旅立つ。そして、自分と同じ見捨てられた機械たち。見知らぬ少女の手紙。宇宙に交錯する想いが、少年の心に突き刺さるー。
スターリンが独裁者と化したのも、天才数学者と国際テロリストになった二人の神童の人生を分けたのも、無垢な少年たちを冷血な犯罪に走らせるのも、ストレスから人びとが自殺するのも、すべては「脳」に答えがある!現代の凶悪犯罪者や歴史上の人物から名作に登場するあの主人公まで、病める精神構造をすべて網羅、分析し、脳科学の最前線から「脳の秘密」を読み解く。