大和盆地の南西の壁をなす葛城の山々は、一言主大神を伝え、役行者を生んだ霊気ただよう地である。葛城の山と里の民俗世界に、古代と現代の接点を探る。
啄木は、東北、北海道、東京、という1900年代初頭にあって近代化の波に洗われた典型的な地域での生活を体験することによって、それぞれの地域を客観的に観察する立場を獲得した。それは近代化によって拡大しつつあった中央と地方の問題を、すなわち、近代化のひずみ、矛盾を問うことであった。
災害救援者たちが悲惨な現場で活動した後に起こすストレス反応(惨事ストレス)に焦点を当て、惨事ストレスの内容とケアの在り方を紹介。惨事ストレスをめぐる精神医学や臨床心理学の知見を整理し、実践活動や教育研修の基盤となるべき研究成果を公開している。
『源氏物語』の成立と享受の歴史には、絵画をはじめとする美術が深く関わってきた。院政期から江戸時代に至るまで、本巻は、『源氏物語』解釈の軌跡が刻まれ、その裾野の広がりを伝える多彩な美術作品を取り上げる。性愛と信仰、そして権力が交差する物語世界を鮮やかに可視化する、造形の想像力に迫る。
百人一首の研究用ガイド。百人一首の全歌を品詞に分解し、五十音順に排列した「百人一首総索引」(底本は角川文庫版)、「研究文献目録」(発行年月日順)、百人一首古注釈書の影印・複製・翻刻総覧およびそれに関する論文目録一覧を掲載する「古注釈簡明目録」(発行年月日順)、「歌別参考文献一覧」(歌番号順)、「百人一首掲出作品一覧」、藤原定家における百人一首の本歌取歌を列挙した「定家本歌取歌一覧」の6章から成る。
高等遊民として気楽な人生を送っていた代助が真実の愛に生きるべく人の世の掟にそむいて社会から追いたてられる。『明暗』の習作ともいうべき幾多の問題をはらむ『それから』論。珠玉の22編。
小説建設者としての漱石の明と暗。『明暗』こそは夏目漱石にとってその生涯を賭けた最も「小説らしい小説」であった。その卓抜な到達に向かって振り子的運動を続けた独特の制作過程と「小説の組立」を追う、著者歴年の仕事の結実がここにある。
本書は、上田市立図書館所蔵花月文庫本『本朝桜陰比事』五巻五冊の影印である。
村上春樹から、現代文学/文化の彼方へ。19人の気鋭の日本文学研究者が、新しい感性で村上春樹の言説圏を再検討する。
漾虚集とは鴨長明のいううたかたであろうか。幻想に遊ぶ「倫敦塔」「幻影の盾」「一夜」「琴のそら音」「趣味の遺伝」。さらにうつつともおもえぬ「こんな夢を見た」夢幻の十夜の夢物語。珠玉の漱石短編世界へいざなう22篇。