『北小浦民俗誌』は、柳田国男が特定地域を記述した唯一の民俗誌である。しかし柳田自身この地を訪れたことがなく、また北小浦に関する部分も少なく、むしろ日本全体の歴史像を論じている。柳田が意図したものは何か。『北小浦民俗誌』を正確に読み解き、その成立過程や資料的根拠を明らかにし、「郷土で日本を」を標榜した柳田国男の思想に迫る。
日本の水田二毛作はどのように始まったのか。それは単純に生産力の飛躍的発展だったのか。鎌倉後期から南北朝期の気候変動と農業生産の在り方を総合的に論究し、二毛作の展開過程を通して、従来の歴史像を書きかえる。
近代軍隊の創設にともない、軍人墓地や護国神社など戦死者を弔う特別の空間が創設された。これら慰霊の場の立地や景観、儀礼・祭祀などを通し、軍事都市を中心に展開した近代国家による民衆統合の様相を明らかにする。
古代の景観研究の進展により、多様な変化と動態が明らかになりつつある。景観史の視角と方法の確立をめざし、宮都の立地と形態、国府の形態と構造、農地の地割形態など、学際的研究により、景観の歴史的生態を究明。
天皇が経典を選び、日本全土に流布せしめた「国家仏教」。そこにはいかなる歴史的背景があったか。『仁王経』『金剛般若経』『金光明経』『最勝王経』を取り上げ、各経典の内容を分析・解説し、国家との関わりを解明。
明治政府は本当に薩長の藩閥政権だったのか。薩摩藩と琉球王国の特殊な関係、不自然なほど大規模な岩倉使節団など、数々の謎に迫る。学校教育を「西洋ノ丸写シ」とした江藤新平にも論及。明治維新期を新視点から読み解く。
柳田国男の著した『北小浦民俗誌』は、北小浦を訪れることなく、構築されたものであった。特定地域名を冠した民俗誌であるが、日本各地の調査資料を基礎としていた。長期にわたる現地調査に基づき、地域に即した北小浦の民俗の全体像を明らかにし、『北小浦民俗誌』と対置させて検証。柳田の方法を超えて、新しい北小浦民俗誌を提示する。
全国各地に残された様々な文書や記録類。第一線の歴史学者が、これらの史料をもとに、戦国期から明治初期までを対象とし、政治・経済・社会・外交などの多方面にわたり読み解き、新たな日本近世史像を再構築する。
中世東アジア海域では、国家・地域権力による交流と、民衆レベルの交流が相互に関係していた。三浦・対馬などの地域に重点をおき、倭人の朝鮮居留や被虜人を考察。人・物・情報がどのように循環していたかを解明する。
日本の仏教受容に古代朝鮮はいかなる役割を果たしたか。日本との関係史を説き、天照大神・宇佐八幡と仏教、廐戸王=聖徳太子と法隆寺、大宰府等の多彩なテーマを論究。東アジアを視野に古代国家と仏教の諸問題を解明。
中世の寺院はどのような構造を持ち、社会に対応してきたのか。寺院体制と信仰儀礼、教団と社会とのかかわりを究明する。寺院勢力や僧団、信仰集団の生活と動向、教団の展開などを照射した意欲的論考十四編を収める。
説話や信仰には、当時の時代背景や思想が如実にあらわれている。これら文化史を取り巻く事柄に焦点を当て、気鋭の研究者十二名が日本文化史を捉えなおす。新たな日本文化史のイメージを提起し、その実態に迫る論集。
日本人の遊びの特質をとらえる歴史的なキーワードは、古代中世の「数寄」、近世の「遊芸」、近代の「趣味」といえる。中世の数寄から近世遊芸への転換は、職業化した芸能者とこれを支える素人の弟子、あるいは観客よりなり立つ。遊芸の近世的展開とその質を問う。
対外関係を歴史展開の要因と捉え、その軌跡と課題、他者イメージの変容、国際社会における日本と朝鮮の関係等を探る。作家と研究者の歴史に対する考え方の違いにも触れ、新しい視座から対外関係史研究の歴史を総括する。
清酒製造業を、その形成過程、環境と酒造技術、酒造組合、産地間競争、戦時統制など、多彩な視点から実証的に考察する。近代化が地域を均一化するという従来の歴史観を否定し、地方産地の存続要因になったことを論証。
天皇を国王とする近代日本の実態を、君主をめぐる政治や制度・思想などを交え再検討する。またイギリスと朝鮮の君主制を日本との比較を視野に入れ考察。近代の三天皇を文明史的に位置づけ、議論を喚起する論考十一編。
“普通の人々”が国家のために殺し殺される徴兵制は、どう受け入れられたのか。徴兵制維持のサブ・システム=「軍隊教育」と「軍事救護」を分析。戦争自体をも正当化する論理がいかに語られていったのかを解き明かす。
薩摩藩による琉球攻略から明治政府による琉球処分まで、王国独自の政治外交と王権の特質に迫る。旧来の曖昧な「日中両属」論を批判的に検証。琉球の歴史「主体性」を機軸に、「従属的二重朝貢国」と位置付けた注目の書。
失われつつある近現代史の貴重な人物史料情報を収集・整理し公開。明治から現在まで、539人の個人史料情報を掲載。日記・書簡から遺品・口述記録まで、豊富な史料情報が満載。最適な執筆陣による精確・詳細な記述。