加賀百万石の領主であり、加賀藩の制度・文物万般にわたる完成者であった松雲公前田綱紀は、世に名君と呼ばれている。しかしその治績が模範的であればあるほど、封建政治の矛盾をはらんでいる。本書は藩政史料を厳密に調査し、社会経済史的立場から、彼の幾多の業績に検討を加え、そこに彫りの深い封建領主像を描き出した。
“茶聖”千利休の生涯を厳密な史料批判と、鋭い洞察とをもって、時代背景の中に描き出しているばかりでなく、古来のなぞとされる利休切腹の真相に対して、俗説を排し独創的な解釈を施した。歴史家であり茶人でありかつ禅者である著者の、多年にわたる研究成果であり、利休伝の決定版というべきもの。茶道関係者にも必読の書である。
本巻では、生活用具を中心としてまとめた。宝器というテーマのもとに、鏡・平形銅剣・銅鐸・石製品の一部をも把え、かつ実生活の用具として、各時代を通じ、最も重要なものとしての容器について、各方面の論考を紹介するとともに、石器・骨角器・農具・工具等にも触れ、内容を豊かなものにし、生活史の究明を充実させた。
これまでの虚飾に包まれた武蔵の人物像を廃して、史実をもとに真実の武蔵の「人」と「生涯」を活写、合戦6回、真剣勝負60数回の体験から編み出され、諸流の剣を薙ぎ倒した「二刀一流」の世界を追究する。さらに武蔵兵法の極意から発する処世哲学を時を超えた現代に投影させ、関係資料を盛り込みながら、読者に人の世の生き方をも示唆する。
最も研究の盛んな南北朝時代の武家文書に関する多数の論文の中から、特に古文書学研究に大きな意義を有する16篇の論文を掲載した。解説では研究論文目録を兼ねて、できるだけ多数の関係論文を掲げ、本文に収めた論文も含めて、それぞれの古文書学研究上の位置付けについて述べ、研究の現状と課題が概観できるようにした。近時注目を集めている朝幕関係の文書の解説に重点を置いたのも特色の一つである。
総論1として、百年の歴史をもつ日本古文書学の展開過程を跡付けた。草創期の明治より今日にいたるまでの古文書学全般にわたる多彩な研究の中から、これまで等閑視されていたヨーロッパ古文書学を含め、18篇の基本的な論文を収録した。本書は、古文書学に関心をもつ人々にとって、まずはじめに繙かねばならない必読の一書となろう。
現在、日本史研究は一段とその深まりを見せ、より緻密になっている。また、学際研究の活発化にともない、研究法もきわめて多様化している。そこで研究上の問題点の中から23のテーマを選び、最もふさわしい研究者に執筆を依頼して刊行する。これまでの研究を整理するとともに問題点の所在を明らかにし、更に今後の研究への展望を示す。
本書は、宮座と村落について史的分析を行なおうとするものである。宮座は、中世の惣村・惣荘、近世の村・村々の連合と関わりの深いものと考えられ、中世から近世にかけての、日本の社会の基盤であり、大多数の人びとの生活の場であった村落共同体について、究明するための恰好な窓の一つであると思われる。
北は北海道から南は九州に至るまで、国内各地に奉祀されている仏舎利塔及び伽藍内仏舎利を親しく巡拝し、実地に調査したオールカラー版〈日本全国仏舎利塔図典〉である。本書によって日本の仏舎利塔の全貌が初めて明らかにされる。叙述は簡潔に、仏舎利及び仏像の先駆をなす仏舎利塔の由来・構造、建塔の功徳と意義、我が国への仏舎利の渡来、各地舎利塔の説明がなされる。
積年の待望と要請に応える、定本的歴史大辞典。厳選総項目4万5千、類書にない周到精緻な編集。
北辺急を告げる際、身を挺して蝦夷および樺太を探検し、ついに間宮海峡を発見してシベリア大陸に渡り、世界地理学史上に不滅の名を残す。彼はこの輝しい前半生に反し、その後半生は“シーボルト事件”摘発の発頭人となり、さらに幕府の隠密として活躍した。新しい史料を基礎に、当時の世界情勢を背景として、その生涯を描く。
安政期幕政改革の最良の息子。機略縦横、横井小楠の「公共の政」理論にみちびかれ、幕府・諸藩の障壁を撒し、改革勢力の全国的連合に全精力をもやしつづける海舟。しかもついにその夢を実現できなかった彼はけだし不遇の政治家というべきだろう。このような視角から、幕末・維新期におけるもろもろの政治コースのなかで海舟の演じた役割を探る。
本巻は、生業・生産関係や技術についてまとめた。特に、縄文時代における採集・漁撈等の生活について、新鋭な研究を紹介するとともに、農業の問題をも、多方面から把握しようとした。また、土器や鉄器等について生産と技術の両面から考えた。さらに、近年各地で発見されている貨銭について渡来銭の問題や、中世経済との関係を課題にした。
スーパージョー!!敵基地攻略と捕虜救出がキミの使命だ健闘を祈る!!
豊かな研究蓄積をもつ鎌倉時代の政治史関係論文のなかから、「鎌倉幕府の成立」「執権政治」「得宗と御家人」「対外関係」の各分野について、重要な問題提起をしている17点をえらび収録した。これらの論文は、いずれも古文書を用いて論証している点が共通しており、今後、鎌倉時代の政治史を研究する上で、古文書による論証法を学ぶ必読の書となろう。
本書は大学で3分の1世紀にわたって日本古代史の授業を担当して来たものとして、その間に発表した論文の中、記紀に関連あるものから、個人的論争の色彩のつよいものや、内容の特殊に偏した如きものを除いて、一書にまとめたものである。
農産物を商品として販売し、その収入で農家経済を支えねばならない農家は今大きな困難と混迷の中にある。「辺境地」九州は一方では西南暖地的諸条件と地帯構成の多様性に規定されて多様な農産物を供給する能力を有し、他方では、日本経済における産業構成と都市消費人口の偏りの中で、域外の遠隔地市場への対応を余儀なくされ、輸送・貯蔵・保管の物流通的コストの高負担を余儀なくされ、さらに、国家の価格政策でカバーされない自由市場農産物の比重が高いこともあって、経済的・政治的差別を受ける構造に置かれていることは間違いない。本書は九州大学農学部農政経済学科農産物流通学講座で高橋伊一郎教授の指導を受けた者が教授の退官を記念して執筆した論文集である。本書に収録されている論文は対象農産物が異なるだけでなく、検討する問題領域も分散している。したがって、九州の農水産物の市場構成と流通の総花的・概説的な分析書ではないが、農産物市場と流通に関する分析と問題提起は含まれていると思う。