まわり道しなければ、たどり着けない場所があるーー。
若き日の著者の、人生を決めた旅立ちの物語。読んだ人に深い感動と変化をもたらした話題の書が、待望の文庫化。
第七回梅棹忠夫・山と探検文学賞受賞作。
大学4年のある日、オオカミの夢を見た。自然写真家を目指していた著者は、導かれるように1冊のオオカミの写真集と出会う。「ダメもとくらいの挑戦をしないと、人生は面白くない」と語る著者は、その世界的な写真家ジム・ブランデンバーグに弟子入りを直接志願するため、単身アメリカに旅立つ。
ミネソタ州北部に広がる森と湖の世界「ノースウッズ」の入り口へたどり着き、ジムの家がその先にあると突き止めると、カヤックにキャンプ道具を積み込み、水上の旅へ。深い北国の森と無数の湖、様々な野生動物との出会い。8日間の旅の末にたどり着いた場所で、ついにジムとの対面を果たすがーー。
臨場感あふれる自然描写、不安に揺れ動く心情を正直に素直に描く、著者のかざらない姿に、いつしか共感し励まされる。自分の足で歩き、自分の目で見て、人と出会うことの大切さを教えてくれる、人生の羅針盤となりうる一冊。
著者による「文庫版あとがき」追補。
文庫解説:松家仁之(小説家)
【令和の新たな家族のカタチ!!】
訳ありの人達が集まるシェアハウス「コトブキ荘」。
ここでは、皆が”家族”のように食卓を囲んでいる。
良子さん、サトシくん親子の前に元夫が二人を連れ戻しにやって来る中、
合田さんが転落事故に……。合田さんの密かな想いを知る良子さんは、
どのような選択を……。
そして、大家さんの病院通い…。
ホームレスの”記憶喪失”のお爺さん…。
全ての点が一本の線となり、衝撃のラストへとーー。
「戦争めし」「宮沢賢治の食卓」の魚乃目三太が描く、
”食が紡ぐ絆のドラマ”堂々完結!!
日本の戦後史をいろどった様々な事件に立ち会った人々の視点を自由自在に乗り換えていく語りが高く評価され、第56回谷崎潤一郎賞に輝いた『日本蒙昧前史』から4年。
パンダ来日、人気俳優同士の不可解な結婚、中東危機によるオイルショック……語りのスタイルはそのままに、著者の筆先は新たな事象にもぐりこんで「あの時代」を描き出していく。
著者みずから「ライフワーク」と公言する、疾走感あふれる叙事的長篇、待望の第二弾。
目覚しのアラームが鳴り、スマホの画面を確認した。そこに表示されていたのは「火曜日」の文字。おかしい、今日は月曜日のはず!! 飛び起きたナカガキがカレンダーを見ると、あるべきはずの曜日が消えていた。薄れていく月曜日の記憶、おかしな宗教団体、そして元カノの存在。死んでしまった月曜日の悲しみに気づき、元の世界を取り戻せるのか。第3回文芸社文庫NEO小説大賞大賞受賞作。
よい本と出会うことが子どもにとっていかに大切か、よい本を選び出す基準とはどのようなものか。子どもの本の多様なジャンルの特質に即して、よい本の評価基準を詳しく説き明かす本書は、長年にわたり児童文学や児童図書館に関わる人々の厚い信頼を得てきた。日本を代表する三人の児童文学者が訳した名著が文庫版で甦る。
映画監督になることを志し、美術大学の映画学科に入学した加々美大助。高校時代にとある映画賞を受賞した過去から、順風満帆なキャンパスライフを夢見ていた大助だが、圧倒的な才能を持つ同級生・大澤門の作品に衝撃を受け──…!?
希望と苦悩が入り混じる、大学生青春物語、開幕!!
二十年前に失踪した父とともに消えた幸福印の自転車が戻ってきた。小説家の「ぼく」が自転車の来し方を探るうち、物語は時空を超えて広がっていく。中華商場での庶民生活、蝶の貼り絵に携わる女子工員、マレー半島を駆ける銀輪部隊、ビルマから台湾に渡ったゾウの記憶ー。ブッカー国際賞候補作。
企業が利益直結型の開発を追求する一方で、私たちは余白的共用空間に日常の豊かさを求める。経済と公共のジレンマに揺れる都市に、儲けに価値をおかない空間やサービスが最終的に利益をもたらすという逆説的思考=迂回する経済を実装しよう。再開発地、盛り場、郊外住宅地、学生街のフィールドサーベイから切りひらく新境地。
夫と死別し、神とは何かを求めてパリに飛び立った私。極限の信仰を求めてプスチニアと呼ばれる、貧しい小さな部屋に辿り着くが、そこは日常の生活に必要なもの一切を捨て切った荒涼とした砂漠のような部屋。個人としての「亡命」とは、神とは、宗教とは何か。異邦人として暮らし、神の沈黙と深く向きあう魂の巡礼、天路歴程の静謐な旅。
著者を敬愛する芥川賞作家石沢麻依による解説を巻末収録。
……私は、内部からパアッと照らしだす光の中にいた。生まれて以来、何処にいても、居場所でないと感じつづけた、わけが、わかった。わかった、わかった。と、何かが叫んでいた。逆なのです、わたしたちすべて、人間すべて、あちらからこちらへ亡命してきているのです。あちらへと亡命するのではなく、この亡命地からあちらへ帰っていくのです。かつて、そこに居たのですから。”──本文より
芥川賞作家石沢麻依さん大推薦! 待望の文芸文庫化。
「『亡命者』は私にとっても思い入れの深い作品です。初めて読んだ時は、それまでの作風との違いに困惑したものの、最後のページにたどり着く頃には、深い白と青の光景に言葉を失くしました。入れ子構造の巡礼世界に、こんな領域まで言葉がたどり着けるのか、と畏れも感じた覚えがあります。そして、現在、自分がドイツにいることにより、個人としての「亡命」とは何なのかを考えさせられています。」
オランダの小さな村で、住民たちが老人ホームを買い取り、多世代共生の場へと再生した物語。障害者のデイケアや地域活動を通じて培われた「住民が育てるコミュニティ」の軌跡。その具体的なプロセスを建築家である著者が10年間の密着取材から紐解く。ケア、福祉、まちづくりに携わる人、暮らしのつながりを育てる全ての人へ
まえがき 0歳から100歳まで、誰もがケアし合うコミュニティ
第1章 オルドヘームの一日──近隣の暮らしの場に変わった老人ホーム
オルドヘームの朝
障害者のグループホームを見守るメンターたち
近隣をサポートする、障害者グループホームのメンバーたち
朝のコーヒー、午後のバックギャモン
オルドヘームの夕べ
第2章 オルドヘームで暮らす人たち──人生の様々なステージに応える拠点
ほどよくつながり、ほどよく離れる
機能の余白がある、緩やかな建築
「人それぞれ」を受けとめられる
88歳の地元っ子、ゲルトさん
老人ホーム時代から住んでいるザウドマさん
アトリエと住まいを借りたアーティスト、ヨハネカさん
シングルマザーのカルラさん
ひとりではないと感じながら暮らせる場
第3章 住民が描いた村の将来──老人ホームを買い取ったコミュニティ
集落に背を向けていたオルドヘーム
未来を予感して、牽引したアナさん
日本の学生たちには見えた、オランダの小さな村の可能性
将来のアトリエーーみんなで構想する村のこれから
対話と模索を重ねて
コミュニティとしての決断
いろんな世代が集う場に生まれ変わった
第4章 オランダ福祉政策の変容──コミュニティの力なしにはもう成立しない
壁画が伝えるメッセージ──等身大のメンバーたち
一人一人のウェルビーイングを支えるもの
住民が育てる、誰もが参加できるコミュニティ
大規模化する福祉事業ー人に寄り添うケアの喪失
オランダならではの「変化する」文化
住民が主体となる仕組みへの転換
第5章 活動から事業へ──「自分たちの答え」にたどり着くまでの10年
見えてきたのは自主事業という形
自治体・企業・住民組織三位一体の時代
障害者だけでなく、地域を活性化する活動に
ビジョンの共有、事業計画の完成、プロジェクト開始(2006〜2009)
あっけなく挫折、そして再スタート(2009)
「ケアから始まるコミュニティ」の本当の始まり(2009〜)
事業者たちの限界
住民主体でなければ成り立たない
コミュニティ活動から事業への脱皮(2017〜)
自治体と住民組織の対等な関係
第6章 変化し続けるコミュニティ──岐路で自分たちのビジョンに立ち返る
4人のコーディネーターとマネージャー
管理するというより、家族のように見守る
状況と向かい合いながら形作られたオルドヘームの運営
コミュニティ事業ならではの持続力
隙をついた乗っ取り事件
困難を乗り越えて生まれた仕組み
活気ある集落に投資したい──ニコレットさん
役にたつことが何よりも大切──コニーさん
集落と農地と北海を子どもたちの世代に──ベンさん
視野を広げながら変わっていく──熱心なのは中高年層ばかり、というジレンマ
コミュニティがパートナーとなる時代
わたしが恋をしたのは、壁の向こうの隣人でした。
ふたりを隔てるのはアパートの壁一枚・・・・・・だけじゃない!?
距離は近くても道のりは険しい、王道の恋愛小説。
自室の鍵を紛失し途方に暮れていた紗子は、帰宅してきた隣人の男性から思いがけない提案をされる。「よかったら、うち泊めますけど」普段であれば潔癖症と真面目な性格ゆえに断るところだが、彼が話す雰囲気から、下心が無いことと清潔な人物であることを直感しこの申し出を受け入れる。これを機に始まった交流の中で、紗子は彼に恋心を抱くのだがーー。ふたりを隔てるのはアパートの壁一枚……だけじゃない!? 隣人への片思いを描いた王道の恋愛小説!
あるところにとってもヘンナコがいました。シカのような角、ラクダのような顔、ヘビのような体、トラのような足……どんな動物にも似ていなかったので、みんなからはヘンナコ、へんてこなこと呼ばれていました。そんな中、ある日の出会いが、ヘンナコを変えていきます。第13回えほん大賞絵本部門大賞受賞作品。自分に自信を持てるようになる物語。