変化の原動力、そしてディレンマ。福祉国家の三類型論を提起して世界的な注目と議論を巻き起こしたエスピン・アンデルセン教授のわが国初の翻訳。自説の理論的基礎を積極的に提示する1999年の最新作。
本書は、現代南アジアを研究対象として、最近の国際的な移民研究の動向に注意を払いつつ行ってきたインド系移民社会に関する共同研究の一成果であり、インド系、南アジア系移民の歴史と現状を包括的に示している。
次代を担う若い世代に、生物物理学の重要性と面白さをわかりやすく伝え、21世紀の生命科学の旗手になってもらいたいという願いを込めて企画。電子やプロトンの運動をもとに生体エネルギー変換の仕組みにせまる。
ヒトにはヒトの世界があり、ムシにはムシの宇宙がある。昆虫は人間にとって、いわばバルバロイでありエイリアンである。ヒトがムシの宇宙を旅することは、異界探検であり異次元交流であるといえるだろう。ムシたちはそこで、人間に何を語りかけようとしているのだろうか。
蝶の変態と超弦理論の美の対照のなかに自然の豊かな多様性を見据え、宇宙と生命の限りない可能性を探る。技術と社会の近未来を理論物理学者が大胆に透視。
日本の食卓に欠かせないノリ。その安定生産を支える基礎研究は、近年目覚ましく進化・多様化している。本書は最新のノリ研究を網羅し、21世紀を展望したものである。
本書では、中小企業の多様なネットワークを題材に、ネットワークとは何か、どのようなネットワークが求められているのか、またどのようにすればネットワークが有効性をもち得るのか、このような問題意識に取り組み、ネットワークの状況や役割、問題点とその解決の方向を検討した。ネットワークという視点から、新しい企業行動をみている。
芸術大学陶芸科の授業内容を1冊の本にしました。技術を学ぶのは上手につくるためというよりも、自分の感受性を磨くため。どういう表現をしたいのか。それにはどんな技法を使えばいいか。加飾材は、釉薬は、焼成方法は?土を捏ねながら考える。
本書は、途上国の経済構造・発展過程を理解するうえで国内の地域経済構造についての観察・分析が重要であることを再確認し、「地域経済要因」あるいは「空間経済要因」が陽表的に組み込まれた分析枠組み、いわゆる地域経済学的(空間経済学的)アプローチがもつ意義・意味を明らかにして、その適用可能性を展望している。
京都の夏を彩る祇園祭は、平安時代のはじめ、疫病退散を祈って始まった。神道、道教、仏教の入り交じる祇園信仰の本質を考察し、現代に生きる神道の多様性を論じる。
本書では生体膜という舞台に登場するドラマの役者たち、イオンポンプとトランスポーターたちの個性あふれる素顔を紹介し、自然という不可思議な演出家が振り付けるわくわくするようなドラマの展開を伝えていく。
どんなに時代が移り変わっても、食料は人間の生活に不可欠である。しかし、科学技術の進歩や流通・消費形態の変化はいまや食料の安定供給を脅かしつつある。地球号に乗船している消費者と、その消費者の健康のために、食料はどうあるべきなのか。どうすれば安全、品質、安定供給、サービス、安さといった消費者ニーズが満たされるのか。本書では、世界の中の日本を念頭に置きながら、わが国の食料需要の現状と課題、そしてそれを解決すべき政策の課題について、消費者とともに考えている。
本書は、経営管理方式の国際的移転について論じたものである。ところで、経営管理方式の海外移転に関する理論は一般化可能なのであろうか。すでに多くの論者が指摘してきたように、ある国のある企業の経営管理方式は、その企業のおかれている経済環境や組織風土ないしその国の経済社会・文化に強く影響される。このため、企業の海外進出先が地球規模に拡大されるにしたがい、経営管理方式の海外移転論についての一般化はますます困難になっているともいえるのである。本書は、このことを意識しながら、日系企業だけでなくフランス、ドイツ企業の経営管理方式の国際移転に関する現実的・理論的諸問題を含む論点をテーマにした論文を編集したものである。
一般相対性理論は、宇宙現象を解析する有力な手法として、あるいは相互作用の統一理論の出発点として、物理学の欠かせぬ基礎をなしている。本書では、宇宙モデル、ブラックホール、時空のダイナミクス、幾何学的な統一理論と重力量子化の試みなどを題材として取り上げ、それらを微分幾何学の手法に重点をおいて解説し、一般相対性理論の構造を体系的に明らかにする。本書で用いた微分幾何学の手法は、物理学の他分野においても今後大いに役立つ場面があると期待される。補章として最近の興味ある研究の中から4次元時空のコンパクト化、低次元重力、ブラックホール形成における臨界現象についても紹介した。
超分子化学は21世紀の材料や触媒設計などにおいて有用なシステムを提供する可能性があり、その重要性は認知されている。しかし、分子構造は美しいが、必ずしもその機能は十分でなく、より機能的な超分子の設計が望まれている。そのような観点から、新しい概念に基づいた動的分子システムの構築がいま始まっている。ロタキサンやデンドリマーはその例であり、機能をもつ動的分子システムが評価され始めたといってよい。本書は、超分子の設計や機能発現、さらにはシステム化のコンセプトを具体的にかつ基礎的に述べた本である。
本書では、中山間地域の棚田集落を対象にして、次の3つの研究課題を明らかにすることが目的である。第1に、農林業により維持されてきた自然資源や自然環境が、農林業の衰退とともに荒廃化するなかで、このような資源や環境を保全する意義は何か。すなわち、荒廃化により失われる資源や環境の国民的価値とは何かを、明らかにすることである。第2に、1999年の食料・農業・農村基本法の制定を受けて、2000年度から、中山間地域等直接支払制度が実施された。このような直接支払制度も含む農林業振興政策によっても活性化対応の困難な、自然的・社会的条件の厳しい条件不利集落の実態を明らかにすることである。存亡の危機に直面している条件不利集落では新住民を受け入れるための定住条件を整備することが当面の課題である。それゆえ、条件不利集落における定住条件整備の方向と自然資源管理システムとを明らかにすることが、第3の研究課題である。
本書は、エルサレムのヘブライ大学農学部で行なわれた「作物の進化について」の講義を元にして書いたものである。近年は、作物と野生種の交配を意識的に行なうようになり、各種の遺伝資源が作出されている。栽培のもとでの進化の大きな要因の一つに遺伝的浮動があり、経済的に重要視されない形質、つまりDNAマーカーなどの多様性は、野生種に比較して栽培種には少ない。栽培のもとでの進化は、人と自然の成せる業であり、作物ごとに進化の特徴がみられる。ある作物は、植物学上の「科」の一員にすぎず、多くの作物がそれぞれの「科」に属し、それらが人類に豊かな食料資源を提供している。ある作物は、発祥の地域を中心とした小さな領域で、またある作物は広い地域で順化(栽培化)され広く拡散している。人とかかわる利用の面でも、ある作物は一つの目的のために、またある作物は多様な目的により開発され利用されている。進化・改良の過程では、あるものは形態的・生理的に激しい変化を受けたものもあれば、いまだに祖先種とあまり変わらないものもある。本書では、このような栽培に伴う植物進化の主要な側面を、7章に分け記述している。
本書は、それぞれの研究者が意欲的に取り組んでいる内容を最新の知見を交えながら紹介したものである。わが国における最近の、生態、行動、進化の分野を中心とした先端的な研究成果を基軸に、糸の物理性とクモ毒というこの分類群独自の内容も交えて章立てを行なった。
本書は、建国以来のアメリカ工業史を、世界の重商主義体制によって秩序だてられた市場社会(19世紀初頭)、規制を解かれたきわめて競争的な市場社会(19世紀中期)、大株式会社と政府によって管理される市場社会(19世紀末から世紀交代期へ)という、3段階の経済環境の変化にそくして考究する。政治と法、都市、地域、性、人種、宗教等々、多様な要因の工業化への影響を重視して、包括的な歴史記述をはかる。
本書は、約150年の協同組織金融の歴史から析出された思想・理論を集成し、将来を射程においてこの組織を展望したものである。長い歴史過程のなかで動態的性格を帯びている組織の思想・実態について解釈することを目的としている。