Sarah Banet-Weiser, 2018, Empowered: Popular Feminism and Popular Misogyny, Duke University Pressの翻訳です。
フェミニズムの大きな潮流を捉える
「いかなる社会や集団においても、あらかじめ定められたモデルなどは存在せず、女性の解放を訴える声は複数ある。その道のりは、一度きりの出来事で決まるようなものではない」(「日本語版まえがき」より)。
本書は、フェミニズムの歴史を世界規模で捉え、その多様性と発展を探究する。フランス革命期から現代に至るまでを三つの時代に分け、結婚、教育、参政権、生殖の自己決定権などのテーマを中心に、フェミニズム運動の進展とその背景を分析する。また、国際的な連帯や植民地主義などとの関係を描き、ブラック・フェミニズムやラディカル・フェミニズムの台頭も取り上げる。特にフランスにおいては、フェミニズムが国家形成や市民社会との関わりを深め、独自の歴史を築いてきた経緯を詳述する。
フェミニズム史を包括的に理解するための一冊。
[目次]
日本語版まえがき
序章 グローバルなアプローチ
第一章 男女平等の主張と女性の解放(一七八九年〜一八六〇年)
1 人権(男性の権利)と女性の権利
-アメリカおよびフランスの革命の潮流
2 フェミニズムと初期社会主義
3 改革派フェミニズム
第二章 国際化の時代(一八六〇年〜一九四五年)
1 ナショナルおよび国境横断的な集合的ダイナミズム
2 平等のための闘い
3 新しい女性たちと解放
第三章 男女平等と女性解放のために(一九四五年〜二〇二〇年)
1 改革派フェミニズムの連続性
2 フェミニズム運動のラディカルな刷新(一九六〇年〜一九八〇年)
3 フェミニズムの拡散と多様化(一九八〇年〜二〇二〇年)
結論
謝辞
訳者あとがき
参考文献
“生きづらさ”と向き合う 「現代女性文学」を読み解く
ジェンダーの非対称性、承認されないセクシュアリティの孤独、経済的格差の深刻化
による対立や分断など、わたしたちは多くの“生きづらさ”に直面している。
「女性作家」たちは、その作品世界から、〈いま〉を生き抜く道を探る。
笙野頼子・川上未映子・小川洋子・角田光代・金原ひとみ・江國香織・
松浦理英子・群ようこ・中島京子・若竹千佐子・谷崎由依・須賀敦子・柳美里・
高山羽根子・高木佳子・美智子皇后・永井愛・村夏子・森崎和江・多和田葉子・女性短歌・女性詩
1 ────越境・攪乱するジェンダー/セクシュアリティ
2────変容する家族とケアの倫理
3────紡がれる記憶/記憶の継承
4────短歌・演劇表現から探る現代
2015年国際女性デー、中国で痴漢反対のステッカーを配布しようとし、逮捕された5人の女性がいた。なぜ独裁者は、武器を持たない彼女たちを恐れたのか?独裁者(習近平)が指導する家父長制的権威主義国家は、性暴力をゆるし、女性たちを「産む機械」に貶め、その自由を奪ってきた。逮捕、勾留、脅迫、検閲、暴力。政府による抑圧が強まるなか、フェミニストはどのように声をあげ、行動したのか。その声はやがて、政治的表明を避けていた女性たちをも動かしてゆき…。独裁者も恐れた、フェミニストたちの姿を追う。
誰もがインフルエンサーになれる時代。
「バズ」で社会はどう変わる?
ビヨンセと人種差別、映画『バービー』と資本主義ーー
SNS上で巻き起こる議論を分析!
現代のカルチャーの成り立ちや変化、そこに紐づく社会への問題意識に光をあてる!
アーティスト、経営者のSKY-HIとの対談を豪華収録!!
「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」を受賞、『世界と私のAtoZ』の著者による『群像』の人気連載エッセイを書籍化!
〜〜 目次 〜〜
はじめに
第1章 サードプレイスの消滅
第2章 アルゴスピークという抵抗
第3章 Girlhoodの再定義
第4章 学生デモとパレスチナ
第5章 ビヨンセとカントリー音楽
第6章 映画『バービー』がもたらしたもの
第7章 Tradwifeブームとフェミニズム
第8章 「Girl」トレンドの変遷
第9章 「Fast Car」が愛され続ける理由
特別対談 竹田ダニエル × SKY-HI 議論自体が自己肯定感につながる
おわりに
「女性ならではのリーダーシップ」……って、なんですか?
あなたを「解放への旅」に誘う、リーダーシップ開発のあたらしい教科書!
「女性らしい」思いやりや協調性への期待、多くの試練に直面する迷宮のようなキャリア……女性が歩むリーダーシップへの「旅」には、今なおさまざまな困難や偏見がつきまとう。
それらをもたらす抑圧的な社会構造とはどのようなものか。抑圧に抗い社会変革に向かうための「解放のサイクル」とは?
インターセクショナリティ、批判的意識、大学生の成長理論を基盤に、フェミニズムをはじめとする知見とリーダーシップ研究を接続し考察。多様なアイデンティティをもつ学生たちのナラティブを取り込みながら、あらゆる人にとってより公正で公平なリーダーシップを実現していく方法を、読者と一緒に考える。
例えば、女性の方が思いやりがある、世話好き、聴き上手……といった褒め言葉のようなもの。[…]その言葉の裏側を読んでみてください。そんなありがちな褒め言葉は、組織や集団において女性に無償の感情労働をさせているのです。またそれらは、ジェンダーとリーダーシップについて二元論的な考え方を補強するものです。女性は、思いやりがあり協調的、逆に男性は、もともとアサーティブで決断力があるからリーダーシップを発揮するために存在する、というように。本書の目的は、そういった前提を問い直していくことです。(第1章より)
●著者紹介
ジュリー・E・オーウェン(Julie E. Owen)
ジョージメイソン大学人文社会科学部統合的・実践的研究学環准教授。リーダーシップ・アイデンティティ発達と女性の成人発達、解放的リーダーシップ教育を実践、研究。女性とジェンダーや高等教育研究の教鞭も執り、公正なリーダーシップを実現しうる社会変革、アイデンティティと社会的権力が日常の実践に与える影響について声を上げ続ける。
●訳者紹介
和栗百恵
福岡女子大学国際文理学部・准教授。修士(教育学)。
スタンフォード大学大学院教育学研究科修了。国際開発協力の仕事を経て、大学で学生・社会人向けの体験的学習の実践と研究を重ね、リーダーシップ開発教育に出逢う。
泉谷道子
創価大学経営学部・准教授。愛媛大学留学生就職促進プログラム推進室・副室長。博士(心理学)。
河井 亨
立命館大学スポーツ健康科学部・准教授。博士(教育学)。
わたしたちの消費は「正しい」のだろうか
金銭と時間の投資、心身の過剰な労働、性的消費との葛藤…、わたしたちと「推している」対象のあいだにはさまざまな問題が浮かびあがってくる。しかし、その活動に喜びが見出されることは間違いない。喜びと苦しさとが入り混じるその実践をすくい取りながら、「推し活」社会の現在地を描きだす。「推し活」論の決定版!
エンターテインメントをめぐるモヤモヤを考えるための補助線となる書。
ジェンダーアイデンティティとは何か
混迷をきわめるジェンダー問題を分析し、 平等な社会のための現実的な解決策を提示する
多様な「性」を尊重する社会づくりが世界的に進むなかで、それに合わせた法制度などが整備されつつある。その一方で、複雑化した「ジェンダー概念」への理解が追いつかず、社会的混乱を来してもいる。本書では、生物学的性別よりもジェンダーを優先する、いわゆる「ジェンダーアイデンティティ理論」が生まれた思想的背景を、ボーヴォワール、ジュディス・バトラーなどを振り返りながら丁寧に説明し、「ジェンダーアイデンティティ」とは何かを明らかにする。さらに、女性専用スペース、医療、政治、データ収集など、さまざまな文脈において生物学的性別の重要性を提示することを通して、「誰もが生きやすい社会」の実現に向けた現実的な解決を試みる。
< 可能的自他関係における自己実現の倫理>を問う書
ケア倫理、フェミニズムの立場、それを批判しきれずにいる従来の議論を乗り越え、見逃されてきた主体を顕在化させることで「新しい死生の術」をここに再構築する!
小泉義之立命館大学名誉教授による推薦文
医療・ケアの場で、新しい死生術、すなわち、「人生の最終段階」における「人生の物語り」によるACP・共同意思決定がなされている。IC・自己決定の限界を超えて、生/死をめぐる倫理は変遷してきた。そこにケア倫理やフェミニズムも関与し、関係性や親密性としての(拡張)家族が顕在化してきた。その次第を批判的に検討し、多くの人間によって現に生きられ/死なれる倫理を、「つながっていない」者さえも生きる/死ぬ倫理を、分析して構成する初めての書である。
フェミニズムは何と格闘し,何を獲得してきたのか。資本主義が変容した社会で今起きている新たな課題とは。労働と再生産,家父長制,ケア,国家と女性の権利などの論点を現代的視点で再考し,次の理論形成へ向けて,第一線の研究者が集結。渾身のメッセージ。
序 章 今フェミニズムは何を議論するべきなのか──グローバリズムとネオリベラリズムを超えて(江原由美子)
第1章 再生産費用の分配公正を求めて──家父長制と資本制・その後(上野千鶴子)
第2章 グローバル資本主義と再生産領域の金融化──「フェミニズムの相貌を気取る新自由主義」を異化するフェミニズムを(足立眞理子)
第3章 資本主義批判としてのフェミニズム──マルクス主義フェミニズムを振り返る(伊田久美子)
第4章 生産中心主義批判から,リベラリズムとの対抗へ──第二波フェミニズム理論はいかに継承されてきたか(岡野八代)
第5章 「男性稼ぎ主」型が命と暮らしを毀損している──社会政策の比較ジェンダー分析による洞察(大沢真理)
第6章 ケアの再公共化とフェミニズムの政治──福祉国家・ケア・新自由主義(山根純佳)
第7章 女性の貧困の再考察──長期時系列データから(阿部彩)
第8章 女性労働のゆくえ──能力発揮をフェミニズムはどのようにとらえるか(金井郁)
第9章 フェミニズムと戦争・軍隊──21世紀の新たな難問(佐藤文香・児玉谷レミ)
第10章 フェミニズムの新自由主義化に抗う──女性解放の現代的課題(三浦まり)
中国に女権主義(フェミニズム)ブームがやってきた。「なぜこの社会は不公正で不条理なのか」。自らの境遇に不満を募らせる女性たちの問いに、女権主義が答えを与えたからだ。「天の半分を支える」といわれてきた中国の女性だが、建国以来、中国共産党最高指導部にその姿はない。改革開放政策は男女格差を広げ、出産や結婚から女性は遠ざかる。女性への暴力や人身売買の報道もあとを絶たない。女権主義を手に入れた女性たちに対し、政権は神経をとがらせる。MeToo運動の最中に現地取材をした中国特派員が見た、抵抗と弾圧の最前線。
階級、ジェンダー、セクシュアリティなどの視座から、女性文学の多様な側面に切り込む。
宮本百合子を中心に、大塚楠緒子、野上彌生子、平塚らいてう、岡本かの子、林芙
美子、石牟礼道子、向田邦子、角田光代らの作品を幅広く取り上げ、一世紀にわたる
女性文学の内実を解き明かす、フェミニズム批評の実践。
1
一フェミニズム批評
女と言説/フェミニズム批評の有効性/フェミ
ニズム批評・ジェンダー批評・ケアの倫理/女
性文学史の新たな構築をめざして
2
二宮本百合子とセクシュアリティ
百合子とセクシュアリティ/『伸子』の素子/
『乳房』/ 鼎談 愛と生存のかたち
三宮本百合子と反戦・平和
『杉垣』にみる反戦表現/『築地河岸』『二
人いるとき』/『鏡の中の月』『雪の後』『播
州平野』をめぐって/占領下の百合子
四宮本百合子の世界と表現方法
百合子と日本女子大学校/『伸子』/『伸
子』にみるスペイン風邪と恋/『未開な風
景』/宮本百合子と佐多稲子
3
五女性表象の変容
女性による樋口一葉論/大塚楠緒子『空
薫』『そら炷 続編』/野上彌生子『噂』
/求愛の表現/戦時下の「母性」幻想/
角田光代『八日目の蟬』にみる母と娘
六フェミニズムとセクシュアリティ
『青鞜』におけるセクシュアリティの政治学へ
の挑戦/平塚らいてうと成瀬仁蔵/平塚
らいてう/田村俊子宛鈴木悦書簡をめ
ぐって/林芙美子『ボルネオダイヤ』『牛肉』
『骨』/林芙美子『晩菊』
七社会とジェンダー
岡本かの子『生々流轉』/石牟礼道子の世
界/三浦綾子『細川ガラシャ夫人』/向田
邦子のまなざし
性差別を撤廃するための知は、他者とともに考え、展開する実践の中で生み出される。では、そのような実践はどうすれば創り出せるのか? カナダのケベック州において、フェミニズム運動の流れを受け継ぎ誕生した2つのコミュニティの記録からは、意識化、実践、ネットワーク、インターセクショナリティがキーワードとして浮かび上がる。差別構造を変革していく実践の学習構造を分析した一冊。
フェミニズムとは、女の解放を意図しながら、「女」と位置付けられている者以外にフェミニズムを開いていくこと──最良の入門書であるとともに、男/女のカテゴリーを徹底的に解析する本書は、性差の虚構性を暴き、この身体から未来を展望する可能性を示す。齋藤純一氏との『思想』対談を付して文庫化。(解説=岡野八代)
はじめにーーいまフェミニズムを書くことについて
1 どこから来て、そしてどこまで来たのか
前=啓蒙主義の時代
錯綜性と矛盾の胚胎
初期の女性運動ーーセネカ・フォールズ大会の場合
第一波フェミニズムと「ドメスティック・イデオロギー」
第二波フェミニズムとマルクス主義
ジェンダー
ラディカル性と連帯意識
本質主義
精神分析に対する両面的なアプローチ
セクシュアリティ
2 どこへ行くのか
第1章 身体
1 身体的性差という虚構
2 〈女のエクリチュール/身体〉のアポーリア
3 形態論をめぐるフェミニズムの可能性
第2章 慣習
1 ジェンダー化され、ジェンダー化するハビトゥス
2 ホモソーシャルな公的領域
3 ポスト・ファミリーに向けて
第3章 グローバル化
1 境界によって分断される女
2 他者性の呪縛
3 グローバル化とフェミニズム
3 基本文献案内
あとがき
対談 親密圏と公共圏の〈あいだ〉--孤独と正義をめぐって……………齋藤純一・竹村和子
解説 未来からもたらされた、フェミニズム……………岡野八代
現代の女性が直面する日常生活の疑問や課題をフェミニストの視点から掘り下げる、現代版フェミニズム案内書。恋愛や仕事、テクノロジーやメディアの性差別など、幅広いテーマを取り上げ、ベル・フックスからボーヴォワールまで、さまざまなフェミニストの考えを解説。時代とともに変化するフェミニズムの姿を通じて、自分の立場と考え方を見つめなおすための一助となる一冊。
★第6回「書店員が選ぶ今年の本」選出(自己啓発・経営、経済、科学部門/韓国書店組合連合会発表)
★寄せられた賛辞
“女性の経験と共にあるさまざまな議論が複雑に入り混じった科学の話を読んでいるうちに、私自身も、科学と女性が出合うことで、目の前の壁を飛び越えられる日が来るかもしれないと夢見るようになった。”--キム・チョヨプ(韓国SFの俊英)
“我々が今まで男性の立場から科学をしてきたことに気づかされた。(…)女性が参加し、女性の観点で創造されるフェミニズムと科学技術の研究は人類の希望だ。”--チャン・ハソク(科学史・科学哲学者/ケンブリッジ大学教授)
★本書の内容
受精は、能動的な精子が受動的な卵子を捕獲する過程ではない。
卵子凍結はあるのに、男性のための精子凍結がないのはなぜ?
アシスタントロボットが「女型」である理由とは?
本書は、かつて科学者になる夢をあきらめた著者が、フェミニズムと科学技術社会論に出合い、憎んでいた科学と「和解」し、女性の観点から科学を見つめ、科学の観点から女性の体と経験を理解しようとした思索の軌跡をまとめたものだ。
“私は、科学と分かり合えなかった経験のある人たち、そのせいで科学の本にはなかなか手が伸びないという読者を思い浮かべながら本書を執筆した。ほかでもない、私がそういう人間だったからだ。”(「はじめに」より)
本書の探究は、「子どものような純粋無垢な好奇心」からばかり出発するわけではない。その出発点は、卵子凍結について悩むことかもしれないし、高校を卒業してすぐに受けた二重手術かもしれない。うつ病になること、摂食障害になること、妊娠とキャリアについて考えること、無責任な父親について考えること、かもしれない。さまざまな要素が混ざり合う、複雑な個人の暮らしから、本書は話を始めていく。
客観的で普遍的で価値中立的であることを装いつつ、じつのところ女性について無知だった科学にかけられた「呪い」を解き、「よき友」として付き合っていくためのエッセイ集だ。同時に、理系への進学を検討している学生や、その子らを見守る大人たちにもおすすめしたい。
“科学が本当の意味で変化するためには、賢い女子学生ではなく、平凡な女子学生こそもっと必要なのだ。(…)科学者や工学者になりたいという女の子や青少年が周囲にいたら、めいっぱい励ましてあげてほしい。(…)「実力さえあれば女でもなんだってできる」といった言葉の代わりに、「今までそこそこしか勉強してない男子学生だって科学者になれたし、科学界の80%に所属できているんだよ」と付け加えてあげてほしい。”(「おわりに」より)
正義論は家族やケアの問題にいかに応答しうるか。リベラル・フェミニズムの立場から法哲学の再構築に挑んだ先駆的著作。待望の新版。
性別役割分業、ケア、婚姻制度など、「家族」の問題を直視するフェミニズムのリベラリズム批判を真摯に受けとめたうえで、リベラルな公私区分を再編し、家族関係への契約アプローチを試みる。リベラリズムとフェミニズム双方を刷新し、リベラル・フェミニズムの可能性を徹底して追求した挑戦の書。近年の展開を捉える寄稿論考2本を増補。
[解説]井上達夫 [寄稿]川崎修/齋藤純一/ダニエル・H・フット/松田和樹/池田弘乃
編者序言[新版]
第1部
1 リベラル・フェミニズムの再定位(抄)--家族論を中心に
序
第一章 リベラル・フェミニズムの再定位
第1節 複数のフェミニズムスからのリベラル・フェミニズム批判
第2節 フェミニズムのアポリア
第3節 リベラル・フェミニズムの基本的理念
2 正義論における家族の位置ーーリベラル・フェミニズムの再定位に向けて
序
第一章 公私二元論再考ーー正義論の主題としての家族
第1節 第二波フェミニズムによる近代的公私二元論批判
第2節 公私区分の再定位
第二章 性別役割分業の解消と正義の諸領域
第1節 正義と性別役割分業
第2節 正義の諸領域
第三章 家族への契約アプローチ
第1節 家族関係の法的な捉え方ーーミノウとシャンリーの見解の検討
第2節 契約アプローチ再考
おわりにーーリベラル・フェミニズムの再定位に向けて
第2部
3 「親密圏」と正義感覚
1 問題の所在
2 正義の理念と家族
3 対外的レレヴァンスと対内的レレヴァンス
4 家族と正義感覚
5 おわりに
4 日本型「司法積極主義」と現状中立性ーー逸失利益の男女間格差の問題を素材として
1 はじめに
2 交通事故紛争の解決と裁判所
3 未就労者の逸失利益の算定における男女間格差の問題
4 現状中立性(status quo neutrality)
5 あり得べき正当化
6 結 論
第3部
5 応 答
1 フェミニズムとリベラリズムの革新[川崎 修]
2 〈「親密圏」と正義感覚〉について[齋藤純一]
3 経験、多様性、そして法[ダニエル・H・フット]
6 展 開ー新版に寄せて
4 婚姻の契約アプローチの展開と課題ーークレア・チェンバーズの「婚姻なき国家」の再考から[松田和樹]
5 国境を超えるケア労働と正義[池田弘乃]
解説 野崎綾子ーー人と作品[井上達夫]
新版へのあとがき
初出一覧
参考文献
索 引
身体性に結び付けられた「女らしさ」ゆえにケアを担わされてきた女性たちは、自身の経験を語る言葉を奪われ、言葉を発したとしても傾聴に値しないお喋りとして扱われてきた。男性の論理で構築された社会のなかで、女性たちが自らの言葉で、自らの経験から編み出したフェミニズムの政治思想、ケアの倫理を第一人者が詳説する。
序 章 ケアの必要に溢れる社会で
第1章 ケアの倫理の原点へ
1 第二波フェミニズム運動の前史
2 第二波フェミニズムの二つの流れーーリベラルかラディカルか
3 家父長制の再発見と公私二元論批判
4 家父長制批判に対する反論
5 マルクス主義との対決
第2章 ケアの倫理とは何かーー『もうひとつの声で』を読み直す
1 女性学の広がり
2 七〇年代のバックラッシュ
3 ギリガン『もうひとつの声でーー心理学の理論とケアの倫理』を読む
第3章 ケアの倫理の確立ーーフェミニストたちの探求
1 『もうひとつの声で』はいかに読まれたのか
2 ケアの倫理研究へ
3 ケア「対」正義なのか?
第4章 ケアをするのは誰かーー新しい人間像・社会観の模索
1 オルタナティヴな正義論/道徳理論へ
2 ケアとは何をすることなのか?--母性主義からの解放
3 性的家族からの解放
第5章 誰も取り残されない社会へーーケアから始めるオルタナティヴな政治思想
1 新しい人間・社会・世界ーー依存と脆弱性/傷つけられやすさから始める倫理と政治
2 ケアする民主主義ーー自己責任論との対決
3 ケアする平和論ーー安全保障論との対決
4 気候正義とケアーー生産中心主義との対決
終 章 コロナ・パンデミックの後を生きるーーケアから始める民主主義
1 コロナ・パンデミックという経験からーーつながりあうケア
2 ケアに満ちた民主主義へーー〈わたしたち〉への呼びかけ
あとがき
参考文献
非婚/未婚/既婚、正規労働/非正規労働、性差別的な売春か/セックスワークか、女性の保護か/男女平等かーー。差別に抗いながらもともに声を上げられない現実を、権力構造によるジェンダー分断、考え方や生き方、個人の関係性などの視点から読み解く。
はじめにーーオンナの呪いを解く
第1章 女は連帯できないのかーーフェミニズムとシスターフッド
1 呪いを解く知としてのフェミニズム
2 フェミニズムが見据えてきた「女同士」
3 シスターフッドの発見ーー分断のメカニズムへの抵抗として
第2章 対話、問い直し、フェミニズム
1 女性の活動への関心と縁
2 平場という関係とその困難
3 「対話」の工夫と調整
4 他者との対話、自己との対話
第3章 フェミニズムの「呪い」と女の欲望
1 フェミニストとしての自分を縛る「呪い」
2 ロック文化とフェミニズム
3 「エロ」はフェミニズムの敵なのか
4 「酒場女子」をめぐるモヤモヤ
5 フェミニズムか反フェミニズムかの二分法を超えて
おわりにーー他者と適度につながり続けるために