女性の政治・経済参画は先進国中で依然低く、男女賃金格差も突出する日本。女をあらかじめ劣位に置く権力ーとくに雇用や社会政策など生活を決定する多様な権力の分析は、問題の発見と理論化、実証分析の蓄積へと、フェミニズムの運動/研究の両方の実践が切り開いた。その軌跡と現在の位置を指し示す格好の文献を紹介。
「国家」と「わたし」の関係はどうあるべきか。過去のシティズンシップ(「市民権」)論、主にリベラリズムの議論を批判的に再検討しながら、「平等で自由な人格」がよりよく尊重されるための新たな理念を構想する。いかなる者の視点をも排除しない可能性を秘めたフェミニズム・シティズンシップ論につづき、誰かに依存せざるを得ない存在であるわたしたちにとって不可欠の「ケア関係」に着目した章を増補。本書は、「シティズンシップ」論入門として最適であると同時に、社会科学の新局面をひらく挑戦の書である。
「母」「主婦」…「女」役割の固定化の構造を解読し、解放をめざしてきた女性学のメインテーマ、性役割研究。共働きの増大や非婚・少子化の進むいま、雇用やケアをめぐって、性別役割分業が再編成されているー70〜80年代から現在まで蓄積された研究成果が、この社会のジェンダー力学をより鮮明に浮き彫りにする。フェミニズムの根本課題は、まだ大きい。
本書は、「政治」をどのように考えるかという問題を、政治学の知見を踏まえて真剣に扱うことにより、「政治」をめぐるフェミニズムの理論的考察に新しい知見を提示する。公/私の境界線、国家・社会・家族の関係、「男性のケア」などへの注目を通して、政治学の中心問題に「フェミニズム」をすえるとともに、「女性問題」ではないジェンダー平等を展望する。
若い女、中年の女、母親、主婦…孤立させられた女たちが声をあげたリブ。制度や意識の変化を経ても、性愛から老いまで、いまだ「名前のない問題」と向き合い生き抜く思想は終わらない。「女であること」と格闘し掴み取られて来たひとつひとつの価値を、手渡す/受け取るというセカンドステージへ。
女性への抑圧はいったい何に由来するのか。著者は主婦・家事労働に着目しつつ、階級闘争でも性解放運動でも突破しえなかった、近代資本制社会に特有の女性抑圧構造を、理論的、歴史的に明快に論じてみせた。マルクス主義フェミニズムの立場を打ち出し、研究の新たな地平を拓いた記念碑的著作。
妊娠や出産、育児は決して「自然の営み」ではない。育児負担の歪みがもたらす少子社会、出産の医療化の果ての産科医不足、テクノロジーが揺るがす生命観・家族観、生殖や再生産労働の商品化がひろげるグローバルな格差。フェミニズムの試金石でもありつづける〈母性〉=近代の性と生殖をめぐる危機の現在を見渡す論集。
客観性,合理性,価値中立性,真理など科学の中心的概念から科学と権力の共謀関係を問う。グローバルなレベルで社会正義と民主主義に反するプロジェクトを推し進める近代西洋科学への論争の書。フェミニズム,ポストコロニアリズムの立場から現代社会と科学の関係を批判的に考察してきた科学哲学者,ハーディングの本邦初訳。
日本語版への序文
はじめに
謝辞
序章 科学と不平等ーー論争を呼ぶ問題
論争となっている問題
専門用語についての挑戦
第1部 科学的研究の社会
1章 人種と科学について考える
科学は人種差別主義なのか
人種差別的な科学実践の擁護
科学の世界ーー人種、文化、帝国
結論ーー人種差別への抵抗が担うラディカルな役割
2章 他人が我々を見ているように、自分自身を見つめる
--ポストコロニアル科学論
「妖精ジニーが我々に与えてくれる贈り物は……」
自然科学は多文化的なものなのか
近代科学は他にもあるのか
3章 両目を開けてーー科学の世界
1つの地球、多くの科学?
南側諸国を出発点とするプロジェクト
北側を出発点とするプロジェクト
4章 北側のフェミニスト科学論ーー新たな挑戦と機会
北側におけるフェミニスト科学技術論
5章 差別的な科学認識論と科学哲学
スタンドポイント研究ーーその方法論的性質
科学実践はどのようにして文化化された自然をつくり出すのか
事物がいかに科学を悩ませるかーー行為遂行的な科学実践
実践に焦点を当てたフェミニスト科学哲学の重要性
6章 啓蒙思想の周縁に位置するフェミニスト科学技術論
フェミニズムと南側のポストコロニアル科学技術論
GESDにおけるフェミニスト固有のテーマ
結論
第2部 真理、相対主義、そして、科学の政治的無意識
7章 西洋科学の政治的無意識
外在的対内在的な民主主義の問題
科学にとっての民主的な理想
科学の統合というテーマーー1つの世界、1つの真理、1つの科学?
統合という理想のコスト
反民主的理想と民主的理想
近代西洋科学の政治的無意識を再考する
8章 科学において真理の主張は意味をなさないのか
初期の懐疑的立場ーークワイン、デュエム、ポパー、クーン、ファイヤアーベント
最近の分析
なぜすべての科学が「民族科学」でなければならないのか
知者はひとり?
意味をなさない真理の理想
9章 相対主義の脅威はパニックに値するのか
単一の基準に対する挑戦への3つの反応
誤った2つの仮定
近代主義者の夢を過去のものにするーーポスト実証主義のアプローチの1つ
絶対主義と相対主義を捨てる
訳者あとがき
注
文献
索引
メディアは、メッセージとともに既存の力関係も流通・補強しつつ、「意味をめぐる闘争」の場となるー発信の場からの排除や表現における差別は、構造的な歪みを可視化させ、「女性向け」商品は、受け手の能動的な読み替えで、新たな市場や回路も拓くー。カルチュラル・スタディーズや構築主義以降、メディアのジェンダー分析の新たな到達点も紹介。
フェミニズムとしての女性史研究は、性差を構築し内面化させる「近代」そのものを問い直す実践である。それは「近代」というストーリーを補強する制度的な知としての「歴史学」への鋭い問いでもある。その視座と方法をめぐる提起と議論、実践としての地域女性史研究、聞き書き、近代がもたらした排除と分断のプロセスの分析を紹介。問いかける側のリアリティをも揺るがしつつ紡がれた成果である。
さまざまな場で起動する「男子基準」、性別(間の/内に)ステレオタイプな分化を促すシステム、知に潜むジェンダー・バイアス、機会と選択の壁ー教育と研究の場はいかに変わりうるか。性や家族を問い直す知への逆風や、制度化と格差のジレンマに地道に向き合う実践と省察。
バイオテクノロジー開発に人を駆り立てるものは何か。再生医療・生殖技術・脳科学など、今日の先端医療や生命科学への熱狂は、20世紀の医学史・生命科学史の数々の悪夢を思い起こさせる。哲学、宗教学、社会学、科学史、生命科学などの先鋭的な研究者が、非倫理的医学研究とその正当化の歴史、今日的意義を討究したアクチュアルな研究書。グローバルなバイオテクノロジー開発競争の下、過去から学ぶべき医学研究の倫理とは。
キャバクラ、風俗店など25店を徹底取材。もがくほどに深く、抜けられなくなる楽しい穴生活、セイコ流・男女風俗現代考。