生き物は死なない、と躍起になって論じてきた。”Spherophylon” の刊行に向けての経緯を紹介すると言いながら、本筋から逸れているように見える。しかし、この叙述に、そのおそれは織り込み済みである。
“Spherophylon” で論述しようとした意図は、この複雑で多様化した社会の中で、私たちは今何を考えなければならないか、という問題を、生物多様性の研究を通じて感得した考えのうちから提起したいという点にある。それは、生命系の概念を提起する意味をもっと丁寧に説明することで果たす課題といわれるかもしれない。しかし、読んでいただく人が退屈しないでこの問題に向かうと期待するのは、単純な生命系の解説で果たせることではないと知る。
そこで、下巻の後半では、生命系を考えることによって到達する視点、寿命が尽きても、人が死滅することはない、に突進してみたいと考えた。生命系の概念を説明するために、自分の寿命を考えてもらうことはいいきっかけになると考えていた。一般論の生命を論じてもなかなか関心を向けてくれない人でも、自分の寿命を考えることには熱心である。いわんや、あなたは永遠に死なない、とオカルト宗教のような呼びかけをすれば一応話を聞いてみようかと立ち止まる人があるのも現実である。その人間の弱みにつけ込んで、生命系の久遠の生命を考えてほしいと期待する。ヒトという私たちが属している生物種も、その種の構成要員の一員である私自身も、生命系が永遠に生きるなら、その生の一翼を担うのである。さらに、人のみが認識して知る生には、現在でいえば 80 億分の1で、それが、文化というほどの概念が育ってからでも 1 万年以上もの間のヒトの一員の特性であり、社会に影を残す活動でもある。生命担架体としての肉体の、遺体を残す死があったとしても、それと同時に、自分の生が、先祖から引き継いで預かっていた生であり、継代して子孫に遺す生であることを知れば、自分も永遠の生を生きさせてもらっていることを認識するだろう。
日々の出来事に追われて生き、今の生活の効率だけに執着している現状から、生命系の生の永遠性に着目し、その生命系の生を生きている自分が、個体としての自分の生の維持だけにこだわっている現実を見直す機会を作りたい。それが、生命系の生を、80 億人の地球人すべてに発信したいと考えた理由であり、生物多様性の研究に関わって、呪文のような論文を産出した私が気づいている現実である。その意味で言えば、“Sphelophylon”はコケシノブのモノグラフと表裏の関係にある著作だというのが、それをものした著者の本音でもある。
著作に至った経緯はそれとして、せめて最後のところでは、生命系の概念にこだわる意図は知っていただきたい。それこそが、この世に生を賜った生き物の責任であり、歓びであることを、文化を創出した人の一員として認識したいと考える所以である。
(本文「生命系の生を論じる意味」より)
致命的な失敗を未然に見つけ、生産性を高める組織改革の全てがここにある。
女性、子ども、性的少数者、疾病・障害、外国人、民族、出自、犯罪被害者…。メディアはどう、「人権の尊重」の役割を果たしてきたのか。一方で、組織の中に多様性はあったのか。SNS時代に、メディアと私とあなたの新しい関係を探る「次世代のジャーナリズム考」。
開学10周年を迎えた京都の公立高校には、全国から視察が相次ぐ。不登校や発達障害のある生徒も、自分のペースで安心して学べる「学びアンダンテ」を掲げる清明高校。公立校の枠を超えた革新的な取り組みと理念の全貌に迫り、未来の教育の可能性を描く。
大推薦!
ーー苫野一徳さん(哲学者、教育学者/『「学校」をつくり直す』著者)
ーー村中直人さん(臨床心理士/『〈叱る依存〉がとまらない』著者)
序
第1章 筆者と清明高校の出会い
第2章 資料調査によってわかったこと/わからなかったこと
ティーチャーズバイブルに見る清明高校の4つの理論的支柱
利休七則に着想を得た「つばめ七則」の指導理念
理念を行動にーー清明高校『ティーチャーズバイブル〜実践編〜』
生徒をリスペクトするーー清明高校の最高理念
コラム1 生徒をリスペクトする[川畑由美子]
第3章 設立準備と最初の数年間ーー構想と試行錯誤
山口修一教諭・特別支援教育コーディネーター
塩見匠教諭・中間M年次部長
福田智幸教諭・学習支援部長
山下大輔教諭・生徒支援部長
渡邊比加里教諭・卒業G年次担任
コラム2 できる。[山下大輔]
第4章 親鳥となって羽ばたくーー天の時、地の利、人の和
越野泰徳先生ーー学校改革の立役者
山口修一教諭(その2)
塩見匠教諭(その2)
福田智幸教諭(その2)
山下大輔教諭(その2)
渡邊比加里教諭(その2)
コラム3 彼女にとって「清明高校」はどのような場所だったのだろう?[山口修一]
第5章 受けつがれる改革
人生はたこ焼きだ! すぐやる、まずやる、ざっくりとやるーー越野泰徳前校長の教育思想
子どもの権利条約が学校に届くまでーー川畑由美子現校長の場合
私自身の教育観はどんどん変化していきましたーー磯部勝紀副校長の場合
みずから希望して清明高校にやってきたーー教育相談コーディネーター藤田真澄教諭の場合
コラム4 教育のフルフラット[越野泰徳]
第6章 進化をやめない学校
「シン・会議」--学校改革のためのエンジン
清明高校はどんな場所だったかーー卒業生たちの証言
対人援助の専門家から清明高校はどう見えているのかーースクールカウンセラー綾野文さんの語り
清明高校でいじめが起こりにくい理由
第7章 ワーキンググループ見学報告
清明ワーキンググループの始動
ワーキンググループ体験日誌
コラム5 取り戻した“じしん”[小鳥遊隆]
第8章 授業風景と在校生たち
清明高校の授業見学記(その1)
清明高校の授業見学記(その2)
在校生たちの思い
コラム6 場所を変えて私も変わる[山奥知華]
第9章 保護者の声、トップたちの思い、筆者が考えること
保護者たちの声
変化を止めないーートップたちの思い
筆者が考えること
コラム7 どの学校も清明高校みたいな感じで良いんちゃう?[九条優花]
おわりに
日本という“共同体”そのものが揺らぎはじめた今
「コミュニティ」の存在が新たな潮流と融合する!
元ソニーの上席常務として、AIBOやCDの開発に携わってきた著者が、まったく新しい視点から日本全国の「コミュニティ」を巡ることで見えてきた、新しい社会構造への考察と提言。作家生活40周年を迎える金字塔的な作品。
(本文「むすび」より)
本書(改訂版)を出発点とする一連のシリーズ本は、「多様性」の大切さだけは守りますが、本来は神の領域である「次世代社会」への統一的なビジョンは一切出さない予定です。
もちろん、個々のコミュニティが、新しい社会実験に積極的にチャレンジしていただくことは大歓迎で、それが社会全体の「多様性」を支えることになりますが、そのどれが主流になっていくかということは、「人間の分際」でコントロールしようとしないで、自然の流れに任せます。
全体を眺める立場としては、「多様性」が損なわれないように注意すること、インディゴなどの進化した人類の居場所が確保されているか、それが人々によく知られているか気に掛けること、コミュニティ間での交流や自由な行き来が滞っていないか、そしてつまらない誹謗中傷が発生していないか注意すること、「社会的病理」の隠蔽がないように啓蒙すること、それぞれのコミュニティが「閉鎖的」「独善的」「排他的」に陥らないようにウオッチすること、などに留意し、あとは一切のコントロールを廃し、社会が自然に進化・発展することを神にゆだねる方針です。
まえがき
第1章 プロローグ
第2章 心の闇の力学
第3章 社会的病理と人類の意識の進化
第4章 「降りてゆく生き方」と「美しい物語」
第5章 老舗コミュニティのストーリー
第6章 意識レベル向上へのアプローチ
第7章 カウンターカルチャーの遺産
第8章 「集合的一般常識」と「社会に共通な認識様式」
第9章 コミュニティを深堀りするフォーラム
第10章 コミュニティ・ソースのダイナミズム
むすび
文献
「多様性の尊重」と「凝集性の確保」の両立は、いかにしてなされるか。
共生社会をめぐる問題系を明らかにし、社会制度のありようを考える。
*
多様性の尊重が掲げられるなかで、なぜ対立と分断に拍車がかかるのか。
「まとまり」への志向は、なぜ容易にナショナリズムに回収されるのか。
シニシズムとナショナリズムをかいくぐり、
共生社会を支える「凝集性(まとまり)」の
新たな創出に向かう理路を検討する。
本書のねらい──シニシズムとナショナリズムを掻い潜る◉岡本智周
第1章 共生をめぐる論点──社会的凝集性を問う理由◉岡本智周
1. 共生の語られ方
2. 共生の概念規定
3. 共生をめぐる今日的論点
第2章 社会的凝集性の系譜──社会学における概念史◉秋葉亮
1. 集団を自然化、理想化する危険性
2. 社会的次元において凝集性を見る
3. いかにして、社会学は国民国家を自然な社会とみなしたか
4. 国民国家の自然化、理想化を乗り越えて
第3章 「共生」の英語訳を考える──現実の人間社会に根差して◉坂口真康
1. 日本社会以外を想定した「共生」の英語訳
2. 英語圏における「多様性の尊重」と「社会の凝集性」
3. 現実の社会における人びとの「共生」を想定したさいの英語訳
4. 英語圏の個別具体的な事例でみる“living together”
5. 不安定な社会状況のなかで“living together”としての「共生」がもつ意味
コラム1 共生社会と「対話」◉笹野悦子
第4章 多文化共生言説の構造──外国人の排除はいかにして生じるか◉永島郁哉
1. 非共生的な多文化共生政策?
2. 主体・中心たる日本人と、客体・周縁としての外国人
3. 道具化される多様性
4. 多文化共生概念の隘路と可能性
第5章 「国民」概念の見直しがもたらす共生の可能性──沖縄「先住民族論争」を事例に◉熊本博之
1. ネイションをめぐる葛藤
2. アイデンティティをめぐる沖縄の歴史
3. 先住民族論争から見えてくるもの
4.「国民」「国民国家」の見直しによってもたらされるもの
コラム2 知識は他人と共有するからこそ意味がある◉岡本智周
第6章 「選抜の機会」としての学校教育を問いなおす──メリトクラシーの諸問題◉津多成輔
1. 選抜・配分が強化された社会
2. 日本のメリトクラシーの問題
3. 共生社会論に照らしたメリトクラシーの問題
コラム3 「学校選択の自由」と高校白書づくり運動◉池本紗良
第7章 社会的凝集性をどう確保するか──公設フリースクールの事例から◉小山田建太
1. 問題の所在──社会的凝集性を事例から問う
2.「むすびつくば」と親子の姿
3. 保護者は「むすびつくば」をどうとらえたか
4. 凝集的な共生関係を考える
おわりに──本書の結論と次なる課題◉岡本智周
現代の多様化した教育問題を考えるにあたり必要不可欠である、
「ジェンダー」や「ダイバーシティ」(多様性)の視点から編まれた、
いわゆる「教育原理」の学びを深めるテキスト。最新の教育状況を盛り込んだ第二版。
第1部(第1章から第5章)では、教育の思想および歴史について扱う。
前半2章では、教育とは何かについて考え、教育思想の成り立ちについて理解を深める。
後半3章では、ジェンダーや多様性の視点を取り入れた西洋と日本の教育の歴史について理解を深める。
第2部(第6章から第9章)では、教育の理念について扱う。教育課程とカリキュラム・マネジメント、
子どもの権利、教育の公共性、および教育の機会均等の理念および課題について、
ジェンダーおよび多様性の視点を織り交ぜつつ、考察を深めていただきたい。
そして、第3部(第10章から第13章)では、現代日本の学校教育が抱える諸課題を扱う。
現在も可視化されにくく社会的支援の網の目からこぼれやすいと考えられる、貧困家庭の子ども、
社会的養育によって育つ子ども、外国につながる子ども、性的マイノリティの子どもが直面する困難について
理解を深めるとともに、教育的支援の可能性について考える。
コラムでは、初版からの「特別支援教育」「児童虐待」「性教育」「地域社会」のトピックスに加え,
「子ども」「フリースクール」「夜間中学」「学校教育におけるDX」というテーマを新たに追加した。
【執筆者】
奥野佐矢子、本多みどり、田渕久美子、高橋英児、*藤田由美子、*谷田川ルミ、二井仁美、
角替弘規、岩本健良(*は編者)
到来するAI社会。大事なのは、SDGsと正しく向き合う思考法。
持続可能な社会とは、科学的なアプローチで達成すべきもの。しかし現在の国際社会では、科学的なデータが都合よく利用され、本質とはかけ離れた政策が実行されている。さらに、グローバリズムの思想が世界全体の持続性を失わせるとともに、社会的な道徳性や規範も崩れつつある……。
工学博士武田邦彦が、科学的な知見から環境問題とサステナブル政策の欺瞞を解き明かし、AI革命後の未来に光を当てる一冊。
LGBT、ジェンダー、移民、多文化共生、視覚障害者、貧困、生きづらさ、当事者研究、インターセクショナリティ、教育実践ーー様々な分野の多様性との対話を通して、それらが抱える問題点を批判的に検証し、差別構造の解消に向けた連帯と実践の可能性を探る。
スキルや態度、倫理、学びの「場」づくり、コンフリクトなど、協同学習のファシリテーションにおける重要ポイントを取り上げ、文化的多様性を学びに活かすヒント、実践の向上につながる具体的な方法を提案する。組織のファシリテーションの事例も紹介する。
「一番重要なのは、自分の頭の中の多様性」
無駄に増える不要なルールやコンプライアンス至上主義、カタチだけの女性優遇、SNSで暴走する正義幻想、「変わり者」の徹底排除ーー。
「多様性の尊重」が叫ばれて久しいが、今の日本社会は上っ面の「多様性」が自由を奪い、差別と分断を生む本末転倒な状況に陥っている。その原因は一体どこにあるのか?
『ホンマでっか!? TV』でもおなじみの“生物学の専門家"池田清彦が、「多様性」とは何かを解き明かし、世の中にはびこる “なんかいやな感じ”を喝破する!
「多様性社会」を正しく生きる知恵と教養が身につく一冊。
●尊重されるのは「都合のいい枠の中の多様性」
●誰にでも「能動的な欲望」を解放する自由がある
●道徳的に生きること=正しい生き方だとは限らない
●必要なのは「多様性の尊重」というフィクションに近づく努力
●感性や嗜好を他人に「理解してもらう」権利は誰にもない
●配慮するのは自由だが、強制されるものではない
●コミュニケーションとは、自分や相手が「変わること」
●イノベーションを起こすのに必要なのは異質な頭脳
4巻は、性や障がい、民族など、わたしたちの社会にある多様性についてわかりやすく解説。社会のなかで多数を占めるマジョリティと少数のマイノリティの間にある差別や不平等をなくすにはどうすればいいのか? だれもが生きやすい社会に変えていくためのヒントがつまったシリーズ最終巻。
地球に満ちる多様な生物種は,「種分化」とよばれる進化のたまもの。
種分化を理解することは,生物多様性のなりたちを理解することにもつながります。
では,種分化とは?
そのきっかけは? そのプロセスは?
有名なガラパゴスの「フィンチの嘴」のように,リアルタイムで起きている進化の様相を目の当たりにできる例は,残念ながら限られています。
でも! 今生きている生物の生態の中に,あるいは体内のDNAの中に,その証拠が残されている!
生物学の様々な考え方,手法を駆使して,種分化という現象のおもしろさ,研究方法を紹介します。
ー 進化の研究を志す学生の方だけでなく,生物多様性や生物の歴史について学びたい生きもの好きの方にもおすすめです。
・種分化を学ぶなら知っておきたい基礎知識,研究の展開をまとめた概論「種分化ことはじめ」が便利
・解析手法,日本列島の地史など,これから学ぶ人が知っておきたい重要なポイントを解説したコラム5篇を収録
・植物,昆虫,魚類を材料に,種分化研究の実例を紹介
・生きもの好き究極の問い「地球の生物はなぜかくも多様なのか」に答える地道な研究が見えてくる
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【 著者名付き目次 】
第1部 種分化を体系的に理解する
第1章 種分化ことはじめ -阪口 翔太
コラム1 生殖隔離の定量化 ー松林 圭
第2部 個別の事例から種分化を学ぶ
第2章 自然選択が引き起こすアキノキリンソウの種分化 -阪口 翔太
第3章 6年に1度の一斉開花の進化と生殖隔離 ー柿嶋 聡
第4章 集団の地理的分断から生殖後隔離〜ガガンボカゲロウを用いた種分化研究〜 -竹中 將起・東城 幸治
コラム2 日本列島の形成史ー形成過程とその原動力ー -竹中 將起
第5章 種分化の生態ゲノム学 -北野 潤
コラム3 種分化の転換点ーA tipping point in speciation- -山口 諒
第6章 適応と交雑が織りなす複雑な種のかたち -松林 圭
第7章 雑種形成がもたらす劇的な開花期シフト ー野村 康之
コラム4 種分化における遺伝子流動の多様な働き ー野村 康之
第8章 分布域の境界で起こる浸透性交雑:キイチゴ属に見られる交雑帯と環境勾配 ー三村 真紀子
コラム5 形質の地理的な変異と種分化 高橋 大樹
第9章 有性生殖を二次的にやめたシダ植物の無配生殖種の多様化 -村上 哲明・堀 清鷹
第10章 倍数化種分化における遺伝子発現解析 -清水(稲継)理恵
中等学校社会系教科及び総合的な学習(探究)の時間における多文化教育の単元開発と実践研究。開発した単元を実践にかけ、マジョリティとしての意識変革を促す上での有効性を検証し、多様性の尊重と社会正義の実現の視点から分析し再構築した単元を提示する。
「性の多様性」とりわけ性的指向と性自認(SOGI)の視点から、社会のさまざまな領域・構造を読みとく、はじめての入門書。
性の多様性の視点は、性的指向や性自認が流動的で非二元的であること、マジョリティを標準とする何気ない制度や規範が誰を周縁化しているかに意識を向ける。この視点から社会領域をつぶさに読みとくことで、社会の諸制度が内包している課題を俯瞰的に理解するとともに、多様性と包摂を基軸として再構築する方向性を学ぶ、基本の1冊。
★作品社公式noteで「序論」公開中→「内在的多様性批判 試し読み」で検索!
「みんなちがって、みんないい」とは、いかなることでありうるのか?
最注目の俊英による人類学的考察。
■國分功一郎(哲学者)
「かつて、多くの者たちがその問いについて悩んでいた。だが、あきらめずに最後まで考えようとする者は少なかった。いま、あきらめずに考え続けた者たちからの贈りものがここに一冊の書物として現れる。現代の隘路から決して目をそらさなかった著者による渾身の一冊。」
■松村圭一郎(人類学者)
「文化相対主義は、なぜ人類学のテーゼではなくなったのか? 人類の多様性という視点に潜む矛盾はどう克服できるのか? 本書は、ポストモダン人類学から存在論的転回までの歩みを独自に転回しなおすことで、人類学者自身も言語化してこなかった難問に挑む。現代人類学がたどりついた理論的地平の最前線がここにある。」
SNSを中心に多様性の尊重が規範化された現代社会で、私たちは「多様性による統治」という新たな不自由を獲得しつつあるーーバラバラな世界をバラバラなまま繋げるための思考はどのように可能なのだろうか?
多様性批判の学として人類学を捉え直し、二〇世紀末からポストモダン人類学にいたる軌跡をたどり、二一世紀に提唱された存在論的転回までの学問的潮流を再考したうえで、「転回」のやりなおしとして「内在的多様性批判」を提示し、私たちにとって多様性というものがいかなるものであり、いかなるものでありうるかを思考する。
「本書の目的は、二〇世紀後半から現在までの文化・社会人類学の軌跡、とりわけポストモダン人類学から存在論的転回にいたる主な人類学者の議論を、多様性についての内在的な批判として提示することである。ここで言う「批判」とは、多様性を否定して同質性に回帰することを意味するものではなく、カントが「理性」に対して、あるいはむしろニーチェが「道徳」に対して行ったように、私たちにとって「多様性」というものがいかなるものであり、いかなるものでありうるかについて思考し記述することを意味する。」--本書「序論」より
********
【目次】
序論 このバラバラな世界をバラバラなままつなぐために
第1章 「彼ら」の誕生
第2章 「私たち」の危機
第3章 ポストモダンを超えてーーラトゥール×ストラザーン
第4章 創作としての文化ーーギアツ×ワグナー
第5章 関係としての社会ーージェル×ストラザーン
第6章 多なる自然ーーデスコラ×ヴィヴェイロス・デ・カストロ
第7章 「転回」をやりなおす
あとがき
注/参照文献/索引
序論 このバラバラな世界をバラバラなままつなぐために
第1章 「彼ら」の誕生
第2章 「私たち」の危機
第3章 ポストモダンを超えてーーラトゥール×ストラザーン
第4章 創作としての文化ーーギアツ×ワグナー
第5章 関係としての社会ーージェル×ストラザーン
第6章 多なる自然ーーデスコラ×ヴィヴェイロス・デ・カストロ
第7章 「転回」をやりなおす
あとがき
注
参照文献
索引
世界で存在感を示せなくなった日本にとって
再び国際社会で活躍するために必要な「真の多様性」とは?
日本で行われている建前ばかりの男女雇用機会均等やダイバーシティ経営は、
むしろ「やったつもり」になることで現実を見る目を曇らせてしまいます。
文化や歴史、習慣など世界との違いを学び、
受け入れるところから本当の多様性が身につきます。
そうすることで、「失われた30年」を脱し、
日本人がグローバル社会で活躍できるようになるのです。
かつて世界第1位の国際競争力を誇っていた日本は、バブル経済崩壊後、
低下の一途をたどり、革新的なものを生み出すこともほとんどできていません。
この30年で、パソコンとインターネットが結びつき、
巨大なコミュニケーション環境下で新たな価値観、文化が醸成されました。
しかし、日本は多様性や型破りを認めようとしない社会です。
「男女平等」「女性活躍推進」「ダイバーシティ経営」などが盛んに口にされていますが、
日本のジェンダー・ギャップ指数はランクを下げ、最新の調査で156カ国中120位でした。
この調子では、イノベーションは生まれません。
本書では、ブラジルで生まれ、アメリカの大学で数学を学び、
アフロアメリカンの女性と国際結婚、また重量物ダンボールの会社を世界各国で
大きく発展させてきた著者が、
教育、ビジネスにおいて現在の日本の問題点をあぶり出し、
今後、日本人が国際社会でどう活躍していくべきかを提案します。
ジェンダー、DV、いじめ、共同親権、過労死、冤罪……
わたしたちが直面する人権問題に、どう向き合っていけばよいのか?
ジェンダーギャップをはじめ、国際的にも指摘される日本の遅れた人権環境。
多様性の時代を迎え、ますます複雑化する人権問題を前に、私たちは何を、どう変えていくべきなのか。
具体的な事例をもとに、一人ひとりの意識をアップデートするための手がかりを探る。
職場で、教育現場で、家庭で、いま求められる「人権」のあるべきかたち
第1章 「人権」受難時代の問題例を解く
第2章 DVと人権問題
第3章 増え続ける虐待から児童を守る
第4章 同性婚とパートナーシップ制度
第5章 生存権を保障する生活保護
第6章 婚姻における夫婦の「氏」の選択
第7章 違法捜査の実態と被疑者の人権侵害
第8章 離婚をめぐる妻の人権問題
第9章 止まらぬ過労死事件ーー問われる経営者の人権感覚
第10章 いじめ事件と人権侵害
第11章 こどものための共同親権
第12章 トランスジェンダーの性転換をめぐる法律と人権問題
第13章 袴田事件から考える再審制度
第14章 6つの冤罪事件を読み解く