虐待された子どもたちは心だけでなく、脳の発達にも障害が生じるという。そのために例えば自閉症児と極めて似た症状や問題行動に苦しむ子どももいる。著者は多くの重篤な被虐待児の治療にかかわる中、このような精神医学的知見に達した。これは子ども虐待と発達障害の関係を探るという今日的な緊急課題でもある。この分野の世界的な研究者で臨床医である杉山登志郎先生が臨床例や研究から分かりやすく紹介する。
性同一性障害者の願いで戸籍上の性を変更することを認める特例法が、2004年から施行された。これにより性別変更ができた人がいる反面、未成年の子どもがいないこと、性別適合手術の有無など、同法の定める性別変更の要件を満たせず、未だ苦しんでいる人もいる。
本書は、精神科医や弁護士などの専門家と当事者が「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」をやさしく解説、具体的な戸籍の性別変更手続き、戸籍変更後の問題、そして同法の問題点などをQ&Aで答える。 増補改訂版では、2008年、2013年の特例法改正を踏まえ内容を刷新し、最新情報も加えた。(2013.02)
天才バカボンで発達障害?神聖かまってちゃんでいじめPTSD?クレイジーケンバンドで自殺予防?人気精神科医たちがポップス=大衆音楽をモチーフに精神疾患や心模様を縦横無尽に語り倒します!
幼い頃から“普通"の男の子と違い、おしゃべりで女の子と遊ぶのが大好きだった和之が、母さんの壁を何度も乗り越え、医療の道から会社経営者を経て銀座のママという天職を見つけるまでの痛快自伝エッセイ。
自分の性別に違和感を抱く子どもに親と先生ができることとは?大切な未来をよりよく考える!
「ドイツ、フランス、そして日本で花開いた精神病理学の遺産を、著者は現代に引き継ごうとしている。入門書でありながら精神病理学の未来を見据えた意欲的な本である。」 ── 木村 敏(京都大学名誉教授)
精神病理学は、ときに難解とか抽象的といったイメージをもたれることがある。けれども本当は、統合失調症、うつ病、認知症、自閉症などの精神障害を「わかりたい」と思う全ての人にとって、大きな助けとなる実践的な営みである。もっとたくさんの人たちに、精神病理学が積み上げてきた叡智を知り、役立ててほしい。本書は、そんな強い思いのもと生まれた入門書である。だれでも読み通すことができるように、次のような工夫が施されている。
・各章を精神障害ごとに分け、冒頭で『DSM-5』対応の最新の基礎知識を概説し、全体の見取り図として学説史などを紹介。
・精神病理学の代表的な考え方ーー記述精神病理学・現象学的精神病理学・力動精神医学ごとに節を設け、それぞれの主要な学説を網羅。
・かならず症例を提示し、具体的・実践的に解説。
・わからない言葉があれば索引ですぐに確認可能。索引は文中の重要語をひろくカバーし、事典のようにも使える。
このように、精神障害のことをよく知らない読者でも、「自分がいまどこにいるのか」を見失うことなく読み進めていける構成をとり、そして、実践に役立てられるかたちで精神病理学のことが「わかる」記述を徹底した。自信をもって「入門書の決定版」として薦められる、著者渾身の書き下ろし。
発達障害の概念は、精神医学のパラダイムを覆すほどの影響をもたらし、発達障害や、特に自閉症スペクトラム障害(ASD)に関する研究は、精神病理学の中でも大きな柱をなす重要な領域となっている。
発達障害の概念が精神医学に与えた大きな影響を目の当たりにした精神科医や児童精神科医や心理学者など総勢18人が、2018年3月、相互討論ワークショップを行った。
本書には、そこでの徹底した議論を踏まえ書き下ろされた9編の論考が収められている。単にひとつの疾患概念の出現ということを超え,精神医学のパラダイムに深甚な影響をもたらした「発達障害」の精神世界を探究する。
書いた記憶のないノート、買った覚えのないパーカー、街を歩けば「先日はどうも」と知らない人から声が掛かる…(T_T)脳内に13人の人格が存在する「ぼく」が彼らとこの世をサバイブする、本当のはなし。
精神分析と愛着理論の再統合という理論的背景をもち、トラウマ治療への応用など汎用性の高い注目のアプローチを極めて平易に解説。
第1部 メンタライゼーションとは何か
第1章 メンタライゼーションとは
第2章 メンタライゼーションとの出会い
第3章 なぜメンタライゼーションか──個人的体験
第2部 メンタライゼーションに基づく治療とは何か
第4章 境界パーソナリティ障害から解離性同一性障害へ──愛着外傷という社会問題への処方箋
第5章 母思う,ゆえに我あり
第6章 こころの原始的モード
第7章 よそ者的自己(1)──その定義と誕生の経緯
第8章 よそ者的自己(2)──内なる攻撃者
第3部 メンタライゼーションに基づく治療の実際
第9章 治療者の基本姿勢とメンタライゼーションの不均衡への挑戦
第10章 介入の手順
第11章 未来に向けた転移の利用とよそ者的自己
第12章 非効果的なメンタライジング
第13章 メンタライゼーションの意義と価値
補 章 新型コロナウイルス時代のメンタライゼーション
・性の要素は身体の性、性の自己認識(性自認)、性的指向、性別表現、性役割、指定された性(社会に割り当てられた性)など多岐にわたる。これらのいずれかが多数派と異なる人々は性的マイノリティとよばれる。
・性的マイノリティ当事者は“医療”を利用する患者の数%を占めると考えられ、すべての診療科の医療スタッフは、見えにくいながらも日常的に接しているはずである。
・しかし、多くの医療スタッフにとっては系統的に知識を得る機会は限られている。本特集がその一助となればと思う。
■ 医療スタッフが知っておきたい性的マイノリティと医療
・はじめに
・LGBTと精神科医の役割
〔key word〕レズビアン(lesbian)、ゲイ(gay)、バイセクシュアル(bisexual)、トランスジェンダー(transgender)、精神科医
・性別違和、トランスジェンダーにおけるホルモン療法
〔key word〕性別違和、エストラジオール、テストステロン、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)アナログ
・性同一性障害/性別違和に対する外科治療
〔key word〕性同一性障害(GID)、性別違和(GD)、性別適合手術(SRS)、緩和外科
・性同一性障害/性別違和と保険適用
〔key word〕性同一性障害、健康保険、ホルモン療法、乳房切除術、性別適合手術、混合診療
・性同一性障害/性別違和の診療ガイドラインとGID(性同一性障害)学会認定医/認定コーディネーター制度
〔key word〕日本精神神経学会、GID学会、性同一性障害の診断と治療に関するガイドライン、エキスパート研修会、認定医、認定コーディネーター
・地域における多施設連携から協働への進展
〔key word〕性別違和(GD)、連携、協働、地域、性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン
・性的マイノリティ当事者が受診を躊躇しない外来づくり
〔key word〕性的マイノリティ、医療施設、受診、躊躇
・性的マイノリティの子どもーー教育と医療の連携
〔key word〕児童期、教育、医療、連携
・性的マイノリティ当事者を取り巻く現状ーー法律、結婚、生殖医療など
〔key word〕同性パートナー、子なし要件、手術要件、婚姻要件、同性婚、配偶子提供
●TOPICS
神経精神医学
・重大な他害行為を行った精神障害者の社会復帰ーー医療観察法
臨床検査医学
・Lp(a)の臨床的意義アップデート
麻酔科学
・新しい静脈麻酔薬レミマゾラム
●連載
この病気、何でしょう? 知っておくべき感染症
・22.単包虫症(診断は肝?胞と思いますが、何となく違うような気もします)
〔key word〕単包虫、単包条虫、包虫症、エキノコックス症、中間宿主、アルベンダゾール
オンラインによる医療者教育
・8.Withコロナ時代の内科系診療参加型臨床実習:兵庫医科大学の事例ーーハイブリッド型の診療参加型臨床実習
〔key word〕Moodle、Teams、ハイブリッド
ユニークな実験動物を用いた医学研究
・6.ヒツジ:胎仔を用いた先進医学研究
〔key word〕ヒツジ胎仔、ヒト血液キメラ、ヒト胎児モデル
●フォーラム
子育て中の学会参加
・14.学会中の戦慄
本雑誌「医学のあゆみ」は、最新の医学情報を基礎・臨床の両面から幅広い視点で紹介する医学総合雑誌のパイオニア。わが国最大の情報量を誇る国内唯一の週刊医学専門学術誌、第一線の臨床医・研究者による企画・執筆により、常に時代を先取りした話題をいち早く提供し、他の医学ジャーナルの一次情報源ともなっている。
かつては「多重人格障害」と呼ばれた病は,誤解を招く用語であるとして現在の世界的な診断基準では診断名として「解離性同一性障害」(略称:DID)と呼ばれていますが,その性質からいまだに非常に多くの誤解を持たれがちであると言えるでしょう。本書は,解離性同一性障害の豊富な臨床経験をもつ著者らが,当事者やご家族のために,主人格や人格交代などの専門用語を使いながらも,事例を交え,時には脳のメカニズムにも触れながらわかりやすく解説しています。解離性障害の患者さんにこれから出会う方々や,これからどのように治療していこうかと思案されている治療者の方々にも役に立つでしょう。
虐待等による複雑性PTSDへの簡易処理技法であるTSプロトコール。具体的な症例をもとにその臨床を余すところなく紹介する。
序 章 TSプロトコールの実践……………………………………………7
1 TSプロトコールの概要 7
2 簡易型処理を行う時のコツ 11
3 TS処方の工夫 18
第1部 TSプロトコールの臨床
第1章 トラウマ処理初期対応の工夫……………………………………24
1 TSプロトコールの弱点 24
2 脱落例の検討 26
3 最初から入院治療を行った症例 27
4 3回目までを乗りきる工夫 29
第2章 複雑性PTSDの治療経過をめぐって………………………………34
1 症例 34
2 複雑性PTSDの治療過程 43
3 TSプロトコールのもう1つの役割 45
第3章 自我状態療法の留意点……………………………………………48
--部分人格は主人格を著しく損なうことがあるのか
1 表者と裏者 48
2 表者を著しく損なう裏者の症例 51
3 表者を傷つける裏者に和解をうながす 59
4 DIDアルゴリズムの修正 61
第4章 TSプロトコールを受けてーー当事者からのメッセージ………62
1 独身時代 62
2 結婚・出産・育児 64
3 TSプロトコールとの出会い 66
4 TS処理とTS自我状態療法 66
5 治療者の先生へ 73
第2部 発達障害へのTSプロトコール
第5章 TSプロトコールの応用ーー小トラウマ症例への治療…………76
1 症例 79
2 症例の背景にある「トラウマ」 89
3 近年の子どもたちの臨床像の変化 91
第6章 自閉スペクトラム症と解離性同一性障害の併存例1…………93
--大きなトラウマをもたない症例の検討
1 症例ーー深刻なトラウマ体験がない青年期・児童青年期患者 94
2 深刻なトラウマ体験がないにもかかわらず 98
ASDはなぜDIDを生じうるのか
3 ASDに認められるDIDへの治療的対応 103
第7章 自閉スペクトラム症と解離性同一性障害の併存例2…………106
--大きなトラウマ体験をもつ症例:STP解離
1 症例 107
2 STP解離生成の病理 111
3 STP解離への治療 112
第8章 トラウマ体験の言語化に困難をもつPTSD………………………114
--身体感覚に焦点化したTSプロトコールの試み
1 症例 116
2 治療の経過 118
3 考察 121
第9章 知的発達症および自閉スペクトラム症の性被害………………124
1 症例 124
2 発達障害に大きなトラウマが掛け算になった症例への治療 130
3 オンラインでのトラウマ治療 131
文 献 133
あとがき 137
誰かに救われたり裏切られたりしながら、
世界への信頼を少しずつ取り戻していく。
幸福と絶望を行き来する
解離性同一性障害者の「普通の日常」。
「凄かった。読み終えると世界が澄みわたって見えた。生き延びて、なおかつ伝えることを諦めずにいてくれる碧月さんに心の底から感謝する。」
ーー村山由佳さん(作家)推薦!
【本書の内容】
虐待サバイバーで解離性同一性障害者。そんな過去や属性を聞いたとき、どう思うだろうか。怖い、可哀想、つらい過去を乗り越えた強い人、下手に関わらないほうがいい相手。あるいは、かつて「多重人格」とも呼ばれたこの病に、好奇の目を向けるだろうか。この社会では、正常とされる枠からはみ出た瞬間、一方的に判断され、傷つけられることが日常茶飯事である。
本書は、虐待サバイバーである自身の原体験をもとに、マイノリティの現状や課題について発信してきたライターが、主人格含む7つの人格と共に、パートナーにも支えられながら生きる「普通の日常」を綴った一冊だ。
“私は自分の言葉で、自分の日常を書きたいと思いました。幸福だった瞬間も、絶望した瞬間も。私という「人間」がこの社会で、あなたと同じように生きていることを伝えるために。読み終えたあとに、清廉潔白ではない、死に物狂いで生きている私の(私たちの)日常を、少しでもみなさんの心に残せたとしたら、この上ない喜びです。”
ーーはじめに 私の人間宣言
「交代人格」と共に、そばにいるパートナーと共に、この理不尽な社会に抗う様を記録した、気高きデビューエッセイ集。
はじめにーー私の人間宣言
交代人格
「はるさんはゴレンジャー」
眠るのが下手な母と、長男の憂鬱
虫を素手で触る母は、時々、大の虫嫌いになる
「もう子どもだもん!」
精神疾患と親権
つながる海
「どうしてみんな意地悪するの?」
ありふれたトリガー
約束のオムライス
「帰りたい」場所
飲めないレモンスカッシュ
いつかみんなでごはんを
“怒り”の瞬発力を養う
食べることは生きること
桜の庭
二度目のはじめまして
パートナーが適応障害と診断された日
支える者は「つらい」と言えない
もし、二度目の人生があったなら
おわりにーー幸福と絶望は行き来する
思春期やせ症の多発や境界例などの新しい病態の登場により、従来の治療方法を超えた技法が要請されるに至った。こうした病態に対処した臨床指導書として、ウィニコット、アブラハム、サリヴァン、マーラー、ガントリップ、ジェーコブソンの理論と技法を収めたのが本書の初版であった。今回の増補に当っては、新たにエリクソン、マスターソン、バリント、ビオンの理論を補い、それの実地臨床への適用を初版同様に具体的な事例をとおして紹介することにより、名実ともに精神科医・心理臨床家必読の書となった。