勤労動員にかり出された級友たちは全滅した。当日、下痢のため欠席して死をまぬがれた著者が、40年の後、一人一人の遺族や関係者を訪ねあるき、クラス全員の姿を確かめていった貴重な記録。
文春漫画賞受賞作家が、明治の夭折画家井上安治の風景画を通して東京の〈いのち〉を描く中篇コミック。
花房市にはふたつの高校があった。名門の県立花房高校と落ちこぼれ校の私立花房学園である。丸山家では高3になる長男の栄作が、その私立に通いひとつちがいの弟、保は県立に通っていた。そんなある夜、家族が揃った食卓にごちそうが並んだ。栄作が生徒会長に選ばれたのである-。私立花房学園の男女生徒34人が、“自分たちの心の叫びを”パフォーマンス。
1977年1月、厳冬のソウルに通信社員の妻として渡った著者が、子供を育て、韓国語を学びながら、3年間にわたって暮らした隣国の日常の出来事を、冷静な批評眼をもってつづったユニークな報告書、近くて遠い隣国の庶民の姿を新鮮な目でとらえた、韓国を知るための貴重な1冊。
大学を中途でやめて広告業界に身を投じたデイジーは、プリンセスの肩書きを心ならずも利用し、馬狂いの金持ちたちのために絵を描きはじめる。だが、デイジーにとって母とも呼べるアナベルが白血病に倒れた。ダニエルという重荷を背負いながら、果たしてアナベルを助け養っていけるだろうか?積極的な生き方で苦悩を切り拓くデイジーに、マンハッタンの愛の鐘はいつ鳴り響くのか…。待望の本邦初訳。
1970年頃から日本はアジアの低開発国に対する経済援助を活発に行ない始めた。そこで日本人は大きな歴史的誤りを犯した。それは、日本が求めてやまない「豊かさ」を、相手もまた同じように求めてやまないはずだというキメツケである。当時、日本政府からインドネシアに派遣された著者が、“援助する者とされる者”との「心のズレ」を自らの体験を通して鋭く綴った、日本とアジアを考える人びと必読の書である。
『おやすみまえのほん』は、3歳から6歳までの幼い子どもたちに、楽しいおはなしを読んで聞かせてあげたいという、おかあさんのためにつくられました。“おはなし、よんで”と、子どもにせがまれたとき、おやすみまえの安らかなひとときなど…、この本とともに、満ちたりた母と子の時間をおすごしください。
ある旅行者が、タイ、マレーシア、韓国、ケニア、フィルピン、ビルマ、インドネシアなどを歩き、妖艶な料理人、びしょ濡れの子供、運河の水死体、シナを作る八百屋、ヒマな宣教師、無表情の母親などに会い、ナムプリック、豆板醤、辣油、ニンニク、唐辛子などに燃え書いた本。
日本の文芸復興。中学生のサブテキストから老後の娯楽本まで。国民皆読・全段通読。当代のエンターテインメント作家が放つ古典名訳-83段〜186段まで。
シュタイナーが自身の学校「自由ヴァルドルフ学校」創立に際し、教師たちのために行なった連続講義。本シリーズは、「シュタイナー教育」の実践を具体的に示す“原典”である。
大正から昭和へと移りゆく時代・風俗・世相を背景に、東京は下町浅草一帯に勢力をはった博徒の波乱と流転の一生を語る好著。
肉体を喪失し、電脳都市の中で情報存在と化して生きる人間の「あえぎと渇き」。コンピュータ世代の終末夢を描き続ける神林長平待望の初期幻想作品集。
現人神から人間へ。敗戦のなか、劇的な転回を遂げる天皇裕仁。米ソが睨み合う中で世界は急変し、日本の経済は驚異的な発展をする。戦後の国際社会のなか、天皇はどのような道を歩んだのか。本巻では1945年(昭和20)の敗戦から高度経済成長時代をへて、その死までを追う-天皇との会見(ダグラス・マッカーサー)、天皇に責任なし、敗戦の責・我にあり(東条英機)、人間宣言の秘録(藤樫準二)、巡幸中の陛下(大金益次郎)、あらかん天皇紀(竹中労)、空虚の中心(ロラン・バルト)、苦しかったのは戦友を失ったことです(小野田寛郎)、封印された天皇の「お詫び」(橋本明)などを収録する。
激動の“昭和”。時代の荒波をくぐり抜け、歴代天皇の中で最も長く在位した天皇裕仁。その八十七年の生涯を、側近から外国人まで、様々な証言と記録によって浮き彫りにしたアンソロジー。本巻では1901年(明治34)の誕生から1945年(昭和20)の敗戦の日までを追う-天皇・運命の誕生(鈴木孝)、陛下の少年時代(学習院ご学友)、満州某重大事件(原田熊雄)、反逆者とは何事(美濃部達吉)、2・26事件獄中手記(磯部浅一)、ルーズベルト裕仁に訴える(ジョセフ・グルー)、終戦の真相(迫水久常)、滅亡か終戦か(鈴木貫太郎)、玉音放送の前夜(石渡荘太郎)などを収録。
鴎外を父としながら「思うところあって」文学者にならなかった著者が、解剖学者として折にふれ書き綴った随想を集める。死者のイメージに出会うヨーロッパ体験、実習室での奇妙な出来事、愛犬を失うの記、なきがらとの対話幻想などを語って自称「ボンヤリ教授」のペンが冴える。
「世の中には、わざわざ飢えた魔の顎の中へ首を突っ込みたがる輩が、本当にいるのでございますよ。我が殿アーモンさまも、そのおひとりでございましてな。かような所業をなさろうというのも、全ては退屈から始まったこと。人語を解する狼の話にいたく興味をもたれ、シヴァ神が舞い降りるという聖なるムリカンダ山へ出掛けたのでございます。旅に出る度、恐ろしいことばかり。そのうえ、この山には月の種族が棲むと、皆が怯えるのでございます…」古代インドを舞台に、鬼才が紡ぎだす、美しくも怪奇な物語の数々。