咲く花に時勢や人生の全盛を、落ち葉に凋落を、秋の夕暮れに寂莫を重ね合わせてきた日本人の繊細な感覚。それを最もよく示す季節感の変遷を、各々の時代を特色づけた文芸作品や思想の中にさぐり、日本人独特の心の歴史を究明する、創見に富んだ日本精神史。本巻では、万葉・古今・新古今から、芭蕉にいたるまでの、自然と生活が密着していた時代の日本人と季節の関わりを描く。
「今という時代がいかにして身を震わせたか」、そのさまざまの「ポーズ」を「スナップ・ショット」で撮るように、この日記は書き始められた。ナチス占領下から解放まで三年余のパリの動静と幅広い交友の様子が生き生きと描きだされる。映画・演劇・文学・政治にわたる記録。
老いを迎え、死を身近にする平凡な日常生活を通して、現代家族の風景を重層的に鮮やかに捉える。読売文学賞受賞。
里伽子にふりまわされっぱなしだった拓。そしていま…。近藤勝也のメモリアルイラスト&氷室冴子書きおろしの手紙でつづる、「海がきこえる」もうひとつのラブストーリー。
呉の兵は強かった。それは彼らが、戦さで一旗挙げようとする、フロンティアの若いあぶれ者だったからである。呉は名将にも恵まれていた。周瑜と魯粛は赤壁で魏軍を破り、呂蒙は関羽を生捕りにし、陸遜は劉備の報復軍を退け、陸抗は怒涛のような西晋軍を食い止めた。呉はフロンティアの常として山越という異民族に悩まされたが、呂岱や周魴はその内患をよく処理した。「呉書」第八〜第十五を収める。
宇宙人はすでに地球に住んで、30年間にわたり2000通のメッセージを送り続けていた!現代科学を超越した「テクノロジー、人間の魂、宇宙のしくみ…」驚くべき超科学の全貌を宇宙物理学者が、いま明らかにする。
明るく華やかな南フランス・プロヴァンス文化のトルヴァドゥール的情趣と共感しあい、ニーチェの思想の光と影が多彩に明滅する哲学的アフォリズム・詩唱群。神の死に関するニヒリズム、永遠回帰思想の最初の定式化、ツァラトゥストラの登場など、ニーチェの根本思想の核心が明確な姿を現わしてくる重要な作品である。重大な精神的転換期にあった哲学者の魂の危機の記念碑。
ドイツ統一が達成された現在、四十年間の分断の傷がいかに深かったかが、明らかになりつつある。しかしドイツ人たちは統一後の混乱を前に立ちすくんでいるのではない。彼らは、困難な状況に対して闘いを始めている。それは、東西に分断されていたこの国が、第二次世界大戦の後遺症から回復し、新生ドイツとして立ち上がるための生みの苦しみである。本書は、新しい座標軸を求めて苦闘するドイツ人たちの姿を記録しようとしたものである。
小国フランドルに生まれたために、アナーキーが制度と化した17世紀ヨーロッパを、芸術的才能を駆使して生き抜いたルーベンスの華麗なる生涯。
あなたの好きな、そしてまったく新しい氷室ワールド。
プロカメラマンを目指す友成勝人は戒厳令下の北京に単身のりこんだ。自由と民主化を求め天安門広場に集う学生たち。彼らの姿をカメラで追う友成に黄という青年が弟子入りを志願し、自分の祖父が日本人だと打ち明ける。八路軍に加わり抗日戦争を戦った祖父が苦渋に満ちた過去を語った翌日、天安門広場には戒厳軍戦車の前に立ちはだかる老人の姿があった…。(表題作)。中国への熱い思いを描く六篇。
ヤクザになった奴、北朝鮮へ還った奴、命を断った奴…、喧嘩では負けなかった。書下ろしノンフィクション。