スコットランドがまだ、スコーシアと呼ばれていた頃、その地に棲むシカたちの世界が変わろうとしていた。南の地の群れを統べる王が、自然なシカの生態、いにしえから伝わる伝説や掟を無視し、勝手な規則を持ちこんで独裁を始めたのだ。新しいやり方に反対するシカは殺され、恐怖がシカの世界を支配し始めたころ、ラノッホは生を受けた。そして、驚くべきことに、ラノッホの額には伝説にうたわれる「王」のしるし、白いオークの葉のもようがあったのだ。もようのことが独裁者にばれたらラノッホの命はない。子ジカの身を案じた母親たちは、冬の到来を前に、遠く北の地をめざして群れを離れた。だが、追っ手はやってきた。追いつめられたラノッホたちはシカの神ハーンが棲むという禁断の地「白い山」へと足を踏み入れ…。果たして伝説の王とは何を意味していたのか?またラノッホたちの運命は?処女作とは思えない筆力と深い英知を秘めた世界観で、アメリカを始め世界中をうならせた大長編ファンタジー。10代から。
小サブユニットの正体を暴いた大したサイエンス“分子生物学”小脳には動作の「お手本」となる内部モデルがある“神経生物学”など、最先端科学の動向・研究成果の意義を、第一線の科学者が解き明かす。
刃が頭をかすめた。髷がばらばらになる。頭の先が皿となって飛んだのだ。飛んでそのまま川面にふわりと浮いた。白い脳味噌がとろりと流れだしたー。激動の幕末、京洛。土佐勤王党の領袖・武市半平太に飼われ、「天誅!」の一声とともに佐幕派を屠り、震え上がらせた男。暗殺におのがすべてを賭け、修羅界を歩んだ凄絶な姿を描く、著者の独壇場。
家族関係がうまく機能しない家庭で育った人々を、アダルト・チルドレン(AC)と呼ぶ。本書では、5人のACへのインタヴューをもとに、AC体験の克服の過程を描き出す。厳格な親、暴力的な恋人との暮らしを捨て、オウムに入信したあかり、アルコール依存症の父を持つシズカと摂食障害の妹ユメ、共依存に陥った結婚生活を捨て前向きに生きる秋央。
皇帝の落胤が天下武術大会に企てた恐るべき陰謀-!果てなき闘いの中で少年が知った無償の愛。感動の完結篇。
パン好きさんの頬を落とす21世紀の『パパンがパン』。この本のために、あらためてパン屋めぐりをした二人が、おいしいおいしいパンの中から選りすぐったパン屋さんとパンを紹介。本当はひみつにしておきたかった、とっておきのパンもついに公開。絶対おいしいパンの本。
悪名高き長楽幇の幇主・石破天なのか?名侠客・石清、閔柔夫妻の息子・石中玉なのか?「狗雑種」は自分自身の正体がわからぬままに母を探すうち、謎の老婆・史婆婆に武芸を伝授される。一方、武林各派の総帥たちは、十年に一度巡り来る神秘の島「侠客島」からの恐るべき呼び出しに、頭を悩ませていた。赴いた者はみな消息不明、しかし拒絶すれば一派皆殺しとなるこの災いに「狗雑種」は巻き込まれて…。
本書は、豊富な図版と適切な解説でケルト美術の流れを紹介し、「書かれなかった歴史」を浮かび上がらせ、その想像力や世界観の自律性を明らかにする。美術・イメージの体系から、ひとつの文化を解釈する可能性を問う画期的試み。
皇帝ラインハルトとヒルダの婚礼の儀を迎えた銀河帝国では、ローエングラム王朝の繁栄を祝う歓声に沸きかえっていた。しかしその裏側には、拭い去れないいくつもの不安要素が存在した。間歇的にラインハルトを襲う発熱は、原因不明のままであり、潜伏中のルビンスキーと地球教の暗躍は、旧同盟領の各地に混乱をもたらしていた。そんな緊張状態のつづくなか、ある報告が届く。イゼルローン要塞に、不穏な気配ありーと。それは、民主共和主義の命脈を守るため、ユリアンがはじめて自ら仕掛けた戦いだった。
40年前、世界に薬害をもたらした薬が、難病患者の希望の光として復活した。20世紀で一番奇妙な薬「サリドマイド」を巡る全貌が、今ようやく明らかになる。ハンセン病、骨髄腫、壊疽性膿皮症、炎症性腸疾患、円板状エリテマトーデス、カポジ肉腫、ベーチェット病、各種の癌や自己免疫疾患…。これらの病気で他の薬が効かない患者は、今もサリドマイドを使っている。同じ効果を持ちながら副作用のない新薬ができる日まで。
彼らは誰かに喋らずにはいられない。たった今見出した世界の秘密についての発見を、とにかく色あせないうちに、消失しない間に、誰かに話さなければならない。人生は短く、芸術は長い。これが自分だけの思想であるなどという、けちなことは言っておれない。各界を代表する老人たちに話を聞いたインタビュー集。
アメリカは利潤追求のための自己責任に基づく競争システムを「つくる」国である。彼らは、法律や社会制度から経済の仕組みや国際社会の秩序にいたるまで「つくって」きた。テロの前に取り沙汰されていたのは、IT不況の深刻化と国際社会の中での孤立だったが、いま「新しい戦争」と同時に進行しているのは、新たな国際秩序の再編である。同時多発テロ以降のアメリカを中心にした世界の対応を注意深くたどり、重大な岐路に立たされたその真実の姿を浮き彫りにする。