ゆたかな自然のうつろいの中で日本人の心の奥深くはぐくまれてきた年中行事。それにつながる聖書の箇所をわかりやすく、学問的に語る。
ついに本物の石中玉が現れた。潔白を証明された「狗雑種」だが、人のいい彼は本物の代わりに侠客島行きを引き受ける。三十年来、武林の名手たちが数知れず訪れたが誰一人生還せぬという神秘の島。三月待って帰らなければ海に身を投げると見送る阿繍をあとに、侠客島に渡った少年は、そこで思いがけない光景を目撃する。そして冒険の末についにつかんだ自分自身の正体とは?不思議な感動を呼ぶ完結篇。
城崎温泉の宿で下働きをしていた八十松は、湯治に訪れた積問屋の主・高野屋長左衛門の勧めで京都五条坂にある京焼の窯元・亀屋に陶工見習いとして預けられた。折りから京焼は、女院御所や門跡寺院の御用を独占する粟田焼と五条坂を中心とした清水焼とが存亡を賭け争っていた。そんななか、修業を重ねてめきめきと腕を上げていく新参者の八十松はねたまれ、陰湿ないじめにあう…。深い感動を呼ぶ傑作長篇。
『マハーバーラタ』はバラタ族の戦争を物語る大史詩である。この叙事詩では、古代インドに雄飛したバラタ王の後裔であるユディシティラを長兄とするパーンダヴァ(五人の王子)とドゥルヨーダナをはじめとするカウラヴァ(百人の王子)による一族内の死闘が語られる。また、竜を食べるガルダ(金翅鳥)の誕生、乳海の撹拌、蛇の犠牲祭を行なうジャナメージャ王と、その蛇供をやめさせた最高のバラモンのアースティーカの物語など、非常に多くの神話、伝説があり、その他ありとあらゆる有用な情報が挿入されている。
はじめは屍骸にしか見えなかった。しかしそれは、まだ生きていた…。二人の男が山中で掘り出してしまった、螺旋状の角を持つ奇妙な動物ー土にまみれた獣毛には弾力があり、かすかな温みも感じられた。やがてその獣は、血を溜めたような瞳のない眼で二人を見上げ、忽然と姿を消した。そして凄惨な事件が、静かに幕を開けた。現代の「陰陽師」ともいうべき“闇狩り師”九十九乱蔵の活躍を描く、超伝奇アクション第三弾。中篇「媼」収録。
少年と二匹の猟犬、この健気な心の絆。全米で40年のロングセラー愛と美と悲しみの回想。
忙しい現代生活のなかで、からだの不調を訴える人が増えている。自分が、あるいはご家族の方が突然、体調をくずしたとき、それが病気なのかどうか、医者にみせるべきなのかどうか判断に迷ってしまうものである。とくに、症状がいくつも重なってあらわれたり、反対にはっきりあらわれなかったりした場合には、病名を特定することは素人にはなかなかできない。本書は、そのような場合すぐに知りたい判断が引き出せるように、徹底した“症状主義”に立って編集した。
「旅と歴史」藤田編集長の旧友、清野林太郎の死体が福島県喜多方市の山中で発見された。排ガスを密室状態の車に引き込んでおり、警察は自殺と断定。しかし娘の翠は、父親の自殺がどうしても信じられずに、他殺だと主張する。手がかりは車中に遺された、封筒だけで中身は空の奇妙な遺書。翠とともに死者のメッセージを追う浅見光彦は、思いがけない巨悪に立ち向かうこととなるー。迫真の長篇ミステリー。
こんな凄い作家がいたとは!大正末期から勃興しつつあった探偵小説界に、医学者としての知識を駆使した作品群で多大な影響を与えた小酒井不木。安楽死、毒薬、人工心臓、人体実験など今も古びないモチーフと意外な結末。科学と神秘的世界が結合した世界をみごとに描き切った作風は、新鮮な輝きを放っている。好評「怪奇探偵小説傑作選」につづく、新シリーズ刊行開始。
孫と祖父のこころの旅を描く感動絵本!心から心へつたえたいもの。それは、いのちのやさしさ…。
ちいさなさるは、かばのおばあさんからおなはしをきくのが、だいすき。ところがあるひ、おばあさんが「おわかれだよ」といいだして…。おばあさんが話してくれたお話のおかげで悲しみをのりこえていくようすをあざやかな色彩でえがいたこころにのこる一冊。
人間に変身できる猫・シータと、憧れの二人暮らしを始めた光魚。同時に美術の専門学校に移り、念願の絵描きの道を目指すことに。シータも東大に編入するや、一族の悲願「我らが王都」を再建すると言い出した!!二人とも毎日忙しくて、気がつけばHは二週間もご無沙汰。嫉妬も独占欲も相変わらずだけど、もしやシータの発情期がついに終わった!?人気シリーズ、完結。
カンパネッラは、テレジオ、ブルーノらと並ぶ後期ルネサンスの代表的思想家。監禁・幽閉30年に及んだその生涯はまさに波瀾万丈、巨大な百科全書の観を呈するその思想もまた複雑で究めがたい。生気論は機械論と、占星術は天文学と、中世的自然学は近代的物理学といかに調和しうるか。『太陽の都』以外に知られるところの少ない急進的万能人の知的背景と世界観を窺ううえで、さらには「科学革命」の現場からの証言として、本書は逸することのできない一級のドキュメントである。長文解説併載、改訳決定版。
紀元66-70年、パレスチナのユダヤ人たちはローマ帝国と戦った。だが、彼らにとってこの戦争の結末ほど悲劇的なものはなかった。聖性が宿ると信じられた都エルサレムと神殿を失ったにもかかわらず、彼らの神は沈黙したままだったからである。神の沈黙は彼らに神の再解釈を迫り、以後、ユダヤ人たちの運命は大きく変わった。2000年にわたる流浪の始まりとなったのだ。この戦争を克明に記録した本書は、古代キリスト教以来、現代に至るまで西欧社会の必読書であり、イエスの神性を保証するプルーフテクストとして機能してきた。第2巻は、ヨセフスが捕虜になり、ユダヤの民の不安と絶望の日々。