柳田国男を驚嘆させた巨人熊楠が、干支の動物を俎上に古今東西の説話をふまえて語る。その知識のパノラマも壮観なら、天衣無縫の文体もまた類を見ない。上巻には虎、兎、竜、蛇、馬の各篇を収めた。
犬と猫はなぜ仲が悪いのか。人や他の動物の寿命はどのように決まったか。猪と蝮の関係は?…それからそれへと興味つきない話の数々。下巻には羊、猴、鶏、犬、猪、鼠の各篇を収録。
杉本鉞子は、1873年、越後長岡藩の家老の家に生れ、武士の娘として厳格に育てられた。結婚によりアメリカに住むようになり、すべてがめずらしく目新しい暮らしの中で「武士の娘」として身につけたものを失うことなく、また自分にとじこもることもなく、みごとに自立した考えを身につける。今日に通じる女性の生き方を見る上にも、当時の風俗や生活のありさまを知るためにも、高い価値をもつ。
曹操は希代の英傑か、冷酷な姦雄だったのか?天下第一の名門袁紹はなぜ敗れ去ったのか?悪虐非道の董卓、野心に燃える袁術、猛勇無双の呂布、北方の雄公孫〓@5AAA…。大転換期に覇を競った男たちの苛烈な生きざま。
ドイツ伝来の精神史研究と社会学的方法の成果を用い、すばらしい切れ味の文体分析により、ヨーロッパ文学のミメーシスー、文学理論の根底に横たわる現実描写の流れを追求する。ホメーロスからヴァージニア・ウルフにいたるヨーロッパ文学の本質をとく画期的文学論。1946年に出版されて以来、学者・批評家のみならず広く世界中の文学界に激しい知的興奮をもって迎え入れられた不朽の名作。全二十章のうち、本巻ではラブレーからヴァージニア・ウルフまでの十章を収録。
ニーチェが後年「危機の記念碑」と呼んだ『人間的、あまりに人間的』の続巻。同書の翌年にひきつづいて刊行された『さまざまな意見と箴言』と『漂泊者とその影』という二つのアフォリズム集の合本である。ヴァーグナーとの精神的訣別と自身の肉体的な病苦のうちに書き進められながらも、科学者の冷徹な懐疑の心をもって生成の必然的な相貌をとらえ、宗教的・形而上学的な虚装、因襲的・道徳的な価値判断の彼岸に立とうと試みた転換の書。
レポートの役割は、事実や情報を取捨選択して整理し、それについての作成者の意見を加えて、読み手にわかりやすく伝えることである。そのためには、事実と意見を区別することを学ぶとともに、伝達手段としての言語技術の訓練が欠かせない。『理科系の作文技術』で話題をよんだ著者が、豊富な具体例をもとに、そのノウハウをわかりやすく説く。
1888年、ニーチェを精神錯乱が襲う直前に、彼はその悲劇を予感するかのように、精力的に著作活動に従事する。ヴァーグナーとその運動への宣戦布告の書『ヴァーグナーの場合』『ニーチェ対ヴァーグナー』。そして、すべての価値の価値転換の書『偶像の黄昏』『反キリスト者』。キリスト教においては、生を強化するものが悪とされ、弱化するものが善とされる。すなわち、それは、強者に対する弱者のルサンチマンの所産にほかならない。ニーチェ最晩年の激烈の思索。
坂と路地と寺の町、谷中。古い火鉢や桶に植えられた草花、子供たちの遊び声があふれる路地。寺の門前には昔ながらの和菓子屋、煎餅屋。寺町の歴史と今を、谷中に魅せられた著者が何回も取材し、ていねいにまとめあげた一冊。添えた写真からも、下町の人情がふつふつと伝わり、寺社リスト・索引付きでガイドブックとしても最適。
ブッチーはいじわるだから、いっしょにあそびたくないの。でもママは、「いろんなひととおともだちにならなきゃだめよ」っていうの。そこで、あたしは、さくせんをたてた…。5さい〜。
本書は、晩年のニーチェの思想とその形成過程を知るための必読文献である。また、若き日のニーチェが「回想」ふうに書き残した文章を編集した『自伝集』を併載する。
不安や死への自覚を介して未来へと先駆しながら、今において覚悟的に生きる本来的実存が示されるとともに、存在論の基礎となるべき時間性が解明される。
1927年に刊行されるや、ドイツの哲学界に深刻な衝撃をもたらした、ハイデッガーの最初の主著。《存在》の諸相をその統一的意味へさかのぼって解明すること、そして、存在者の《存在》を人間存在(=「現存在」)の根本的意味としての《時間》性から解釈することを主旨として、「現存在の準備的な基礎分析」と「現存在と時間性」の二編から構成する。上巻ではこの前者を収録した。「現存在」の根本的な構成が「世界=内=存在」として提示され、「現存在」のうちに見いだされる「存在了解」を探求すべく、基礎的な問いが差し出される。
空襲で家と家族を失った12歳のハリーは、イギリスの北の海辺を、犬とともに歩いていた。わずかな食べ物を犬と分けあい、親切な人や心に痛みを抱えた人、残酷なゆがんだ人など、さまざまな出会いをくぐり抜けるうちに、ハリーが見出した心の王国とは…。イギリス児童文学の実力派作家ウェストールの代表作。「児童文学の歴史に残る作品」と評価され、世界十数ヵ国で話題を呼んだ。ガーディアン賞受賞、カーネギー賞銀賞受賞。
気持よく締まった教室、いたわりのある教室、子ども一人ひとりの能力を豊かに伸ばす、そんないきいきとした教室は、どうしたらできるのか。教育に全身で打ち込み、創造的で新鮮な授業の地平を切り開いた著者が、自らの体験より、とっておきのことばと工夫を語る、実践的かつ画期的な教育書。