「人間は何故死ぬんでしょうね?」人生の無常に男泣きする寅さん。
少女のように純粋な貴婦人との悲恋を、人情と慈英で綴ったシリーズ第18作!
シリーズ第18作のマドンナは、満男(中村はやと)のクラスの産休教師(壇ふみ)の母親で、深窓の令嬢でもあった綾(京マチ子)。
子供のように無邪気な彼女は女学生時代“とらや"の馴染みで、若き日の寅さんにからかわれていた!?
何ともユニークな設定ながら、実は今回の寅さん(渥美清)の恋路は哀しみに満ちあふれている。
寅さんは真摯な慈愛をマドンナに傾けながら、
その果てに徳富蘆花『不如帰』のセリフ「人間は何故死ぬんでしょうね?」さながら、人生の無常に感じ入る…。
しかし、だからこそ今回は笑いのエピソードも豊富で、冒頭の夢からして『カサブラカ』のパロディ、
またタイトル・クレジットでは寅さんが映画の撮影現場をめちゃくちゃにするなどの映画ネタ、
無銭飲食による警察とのやりとりなど実に楽しい。
笑いと涙のバランスも絶妙な、心に染みる名編である。
一念発起!殿様の夢を叶えられるのは、寅さんだけ!?
渥美清+アラカン、昭和を代表する二大スター夢の顔合わせで贈るシリーズ第19作!
シリーズ第19作のゲストは“鞍馬天狗"などで知られる戦前戦後の時代劇大スター、アラカンこと嵐寛壽郎。
冒頭の夢もそれに倣って“鞍馬天狗"のパロディが繰り広げられるのが楽しいが、ここでアラカンが演じるのは四国・大洲潘18代目当主。
ラムネを飲んで「なかなか甘露じゃのう」などと、
今どき時代劇口調でしゃべるこの厳格奇妙な“殿様"と知り合いになってしまった寅さん(渥美清)は、
やがて広い東京の中で一人の女性を捜す役目を請け負うことに。
それは、寅さんが愛媛で出会った若く美しい未亡人・鞠子(真野響子)であった…。
三木のり平扮する執事も含め、従来よりもファンタジックかつ滑稽な装いは、懐かしき昭和黄金時代の喜劇の味わいそのもの。
そしてマドンナ鞠子に対する寅さんの夢と殿様の夢は、いつしか一致していくのだが、果たしてその結末は…!?
純朴な青年に恋愛指南する達人・車寅次郎の迷調子!?
しかしながら…自分の恋はいつもの調子のシリーズ第20作!
久々に葛飾柴又に戻ってきた寅さん(渥美清)は、
“とらや"二階に下宿している良介(中村雅俊)から押し売りと勘違いされて、
警察まで巻き込んでの大騒ぎになるものの、すぐに意気投合。
彼が恋する食堂の店員・幸子(大竹しのぶ)との仲を取り持とうとするが…。
『男はつらいよ』シリーズもついに20作。
ようやく寅さんも、若者たちの恋を指南するゆとりが出てきたか!?
もっとも、彼は彼で良介の姉・藤子(藤村志保)に、いつものように一目惚れ。
やはり寅さんは永遠に恋の現役選手なのであった。
今回は中村雅俊と大竹しのぶをゲストに迎えて青春映画のごとき趣を強めつつ、
失恋の達人・寅さんの偉大なるキャリアと貫録を、ガス大爆発の面白さで知らしめる。
なお寅さん曰く、デートで観る映画は洋画でなく日本映画、それも喜劇がいいとのことでした!?
SFに華麗なレビュー、人情コメディ、そしていつもながらの失恋!寅さん版ザッツ・エンタテインメント!
何と、寅さん(渥美清)は第三惑星宇宙人だった!そんな奇想天外なシチュエーションから始まる『男はつらいよ』第21作。
本作が公開された1978年は、『未知との遭遇』などSFブームが世界中に巻き起こった年でもあった。
またその前年、山田洋次監督作品『幸福の黄色いハンカチ』で映画デビューを果たした武田鉄矢が、
寅さんも呆れる失恋男としてゲスト出演。
そして肝心要の寅さんは、さくら(倍賞千恵子)の同級生でSKD(松竹歌劇団)の花形スター、
奈々子(木の実ナナ)の虜となって、浅草国際劇場に通いづめ!
今はなきSKDの華麗なレビューの数々を収めた映画としても実に貴重(なお、倍賞千恵子はSKD出身)。
SFにレビュー、人情コメディ、そしてもちろん失恋劇と、今回の寅さんはまさに“ザッツ・エンタテインメント"だ!
旅からの旅の寅さんに“実は女難の相あり!?"
寅次郎、人生のはかなさをしみじみ知って反省する筈だったシリーズ22作!
旅の雲水(大滝秀治)から「女難の相が出ている」と忠告されて、
表面を取り繕いつつも心穏やかではない我らがフーテンの寅さん(渥美清)は、
今日も全国のおばちゃん相手に「アタシも女房持ち」と口八丁手八丁のテキヤ稼業。
そんな彼も信州で博(前田吟)の父・□一郎(志村喬)と偶然再会し、
彼の説く『今昔物語』を『コンニャク物語』と勘違いしつつも、人生について深く考えさせられる。
しかし“とらや"の店員となった美女・早苗(大原麗子)と出会うや否や、彼はガス溜まりの腹痛を起こし、
要するにまたも恋の煩悩の炎を燃やすのであった…!?
まるでお地蔵様のような顔をした寅さんは、シリーズ第22作にしてついに人生の機微を知る!?
□一郎曰く「大人物は反省して去っていく…」そう、寅さんは毎回反省しては心大きくなっていく…のか?
結婚式から逃げ出して寅さんの胸に飛び込む“飛んでる花嫁"!
義侠心転じてほのかな恋の寅次郎…果たしてその結末は!?
“翔んでる女"といった言葉が流行していた1970年代末、
その代表格でもあった桃井かおりをマドンナに迎えて贈る『男はつらいよ』シリーズ第23作。
ここで彼女が演じるひとみは、マリッジブルーが高じて結婚式から花婿(布施明)を置いて逃げ出してきた花嫁。
しかも、そのエスケープ先が葛飾柴又の寅さん(渥美清)であったがために、
例によって“とらや"の人々は大騒ぎ!今回の彼女は従来のイメージとは少し異なりしっとりした雰囲気で、
そこに山田洋次監督ならではの卓抜さも感じさせられる。
一方、翔びまくった人生を送りながらも、恋愛に関してだけは小学生の甥っ子・満男(中村はやと)にまで心配されてしまう寅さんは、
いつそちらの方面でも翔べるのか?
つには惚れた女の結婚式で仲人を務めるのだから(独身なのに!?)、これぞまさに“男はつらいよ"!
葛飾柴又に黒船来航!?二人のフーテン、マイケルと寅次郎が繰り広げる日米対抗恋愛合戦の行方やいかに?
『男はつらいよ』にもいよいよ黒船来航!?
シリーズ第24作は“アメリカの寅さん"ことマイケル・ジョーダン(役名です。念のため)が登場する!“とらや"にも下宿中のこの独身男、職業はビタミン剤のセールスマンで、こともあろうにさくら(倍賞千恵子)に恋してしまうのだ。
演じるハーブ・エデルマンは『ザ・ヤクザ』などで知られるハリウッドの個性派俳優。
一方、本家本元の寅さん(渥美清)は英語塾教師(林寛子)の母・圭子(香川京子)に、いつものごとく一目惚れ。
この日米対抗恋愛合戦、果たして勝利するのはどちらのフーテンか?
ストーリーと脚本に『タクシー・ドライバー』などのポール・シュレイダーの弟で『太陽を盗んだ男』でも知られる大の日本通レナード・シュレイダーを迎えてお贈りする、『蝶々夫人』をも越える愛の日米親善映画。かくして人情も笑いも失恋も越境する!?
寅さん、永遠のマドンナ・リリーと運命の再会!灼熱の沖縄で繰り広げられる大人のラブ・ストーリー、その行く末は…?
『男はつらいよ』シリーズ第25作は、第11作『寅次郎忘れな草』、第15作『寅次郎相合い傘』に続き、
寅さん(渥美清)にとって永遠のマドンナともいえる歌手リリー(浅丘ルリ子)が三度目の登場とあいなった。
舞台はシリーズ初となる沖縄。
そこでリリーが入院していることを手紙で知らされた寅さんは、苦手な飛行機に乗って彼女の看病に駆けつける。
そして退院後、二人は国頭家の部屋を間借りして一緒に暮らし始めるのだが…。
シリーズ全48作中屈指の傑作であり、シリーズ終了後に本作を再編集した特別篇も製作されているほどの名編。
“とらや"でのユーモラスな騒動はいつもながらだが、
灼熱の沖縄に着いてからは大人の男女の恋と嫉妬が、優しくも切なく繰り広げられていく。
そして寅さんとリリーのドラマは、最終作『寅次郎紅の花』へと受け継がれていく…。
テキヤ仲間の忘れ形見、幸薄い娘に父親のような慈愛を抱く寅さん。
幸せを願うあまり定時制高校“お受験のパパ"と化す!?
ようやくさくら(倍賞千恵子)たちがローンでマイホームを購入するなど、
第1作から確実に月日が流れているのがわかる『男はつらいよ』シリーズ第26作。
変わらないのは寅さん(渥美清)だけで、気を利かせてご祝儀を渡したことから、またまた一騒動!?
しかし、そんな彼も恋模様に関しては徐々に変わりつつあるようで、
今回のマドンナすみれ(伊藤蘭)は亡きテキヤ仲間の若い娘ということもあってか、
まるで親代わりのような趣で彼女に接していくのだ。
また今回は定時制高校が大きなモチーフの一つとなっているが、これは後の山田洋次監督作品『学校』へと受け継がれていく。
なお、このときの同時上映『土佐の一本釣り』ヒロインは田中好子。
キャンディーズ繋がりの二本立興行として、通常よりも若年層が多く劇場に駆けつけるという現象が起きた作品。
江戸っ子の寅さん、ついに大阪進出!
ある時は清楚、ある時は艶やか、マドンナの多彩な魅力にメロメロの彼が、最後に漏らした言葉とは!?
葛飾柴又生まれの江戸っ子寅さん(渥美清)は浪花のノリと歯だが合わないようで、
そのせいかこれまで大阪が主な舞台になることはなかった『男はつらいよ』シリーズだが、
この第27作は大阪の地で初めて寅さんの恋模様がしっかりと繰り広げられていく。
ここで彼が惚れてしまうのは芸者ふみ。
そのマドンナを好演する松坂慶子は冒頭の夢“浦島寅次郎"で乙姫様を演じ、
瀬戸内海小島での寅さんとの出会いでの清楚な佇まい、大阪での艶やかな芸者姿と、
その多彩な魅力を前にして寅さんはすっかり大阪びいきに!?
そして二人の繊細でスリリングな駆け引きの果て、最後に寅さんが吐く言葉にもご注目を。
これもシリーズ始まって以来の異例の事象である。
また、今回からさくら(倍賞千恵子)の息子・満男役で吉岡秀隆が登場。彼の成長もまた、
今後のシリーズのお楽しみの一つとなっていくのだ。
「俺が死んだら、あいつを女房にしてやってくれ…」死にゆく仲間に頼まれて、“男"寅さん一世一代の大決心!
柴又小学校同窓会の招かれざる客となり、“とらや"へ戻って悪態三昧の寅さん(渥美清)は、傷心の想いで再び旅へ…。
冒頭の夢(寅さん版『愛染かつら』?)の後、いつものように幕を開けるご存知『男はつらいよ』シリーズ第28作だが、
その後が一味違う!今回は家出娘・愛子(岸本加世子)が寅さんに憧れて、ともに旅をしながらフーテン修行。
時にはサクラも務めて、おかげで寅さんの商売も大繁盛!?
そしてさらに、何と寅さんは病気のテキヤ仲間(小沢昭一)から、
自分が死んだら妻の光枝(音無美紀子)を女房にしてほしいと頼まれてしまうのだ。
約束ゆえか愛ゆえか、今度こそ想いを叶えようとする寅さん。
しかし、一見柔和だが彼女もまた“渡世人の女房"だった女であった…。
そう、今回は自由で寂しい渡世人の悲哀が改めて示されるという、秀逸なエピソードなのである。
惚れて惚れられ戸惑って、去って追われて甲斐性なくて…。
ユーモアの中に哀しさが漂う“大人のラブ・ストーリー"を描いた名編。
葵祭でにぎわう京都にて、日本を代表する陶芸家(十三代目・片岡仁左衛門)と知り合いになった寅さん(渥美清)は、
その家で働くかがり(いしだあゆみ)に売れ残り(?)の下駄を贈る。それが二人の切ない恋物語の始まりであった…。
シリーズ第29作は、寅さんにかがりが惹かれ、彼女の強い想いに寅さんが当惑するといった異色の展開。
舞台はやがて丹後、そして葛飾柴又、鎌倉あじさい寺へと移り変わっていくが、
シリーズならではのユーモラスな味わいを忘れることなく、
その上で“大人のラブ・ストーリー"日本代表とも言うべき名編に仕上がっている。
山本直純の音楽もシリーズ中出色の出来。満男(吉岡秀隆)が初めてドラマに深く関わることでも特筆されるだろう。
しかし、満男の幼い眼が見据えた寅さんの恋の結末は、あまりにも哀しくて…。
シリーズ第30作記念、寅さんと沢田研二が夢の共演!恋の師匠となった寅さんは、若者たちの仲を取り持てるのか?
寅さん(渥美清)が“とらや"に戻って早々、マツタケ尽くしのご馳走を前にいつものように大喧嘩。
久しぶりに、おいちゃん(下條正巳)の激昴にもお目にかかれる。
そして今回は『男はつらいよ』シリーズ第30作記念映画にふさわしく、渥美清と沢田研二、
日本を代表するビッグ・エンタテイナーの二人が夢の共演!
加えてマドンナ螢子役には実力派女優・田中裕子!沢田研二演じる三郎青年は純朴で、もちろん恋愛も苦手ときた。
かくして寅さんは、自分のことはさておいて彼に女の口説き方を伝授するのだが、
肝心のお相手たる螢子の興味は“面白い人"寅さんにあるようで…。
失踪した“演歌の女王"、彼女の心の傷を寅さんは癒せるのか?都はるみ、『男はつらいよ』シリーズに堂々の登場!
『男はつらいよ』シリーズ第31作は“演歌の女王"こと都はるみが堂々の登場!
当時芸能界からの引退を表明していた彼女ではあったが(現在は復帰)、
渥美清のラブコールに応えて今回の顔合わせが実現した。
ここで彼女が演じているのは、彼女自身のキャリアとダブらせた演歌歌手・京はるみ。
寅さんは全国公演の途中で失踪した彼女と共に佐渡島へ渡り、失恋して傷心の彼女を慰め、癒し、そして立ち直らせていくのだ。
シリーズ恒例、メイン・タイトルのドタバタ・シーンでは細川たかしが駆け落ちする恋人役で特別出演し、矢切の渡しを越えようとする!?
後に彼女が民宿で寅さんと一緒に『矢切の渡し』を口ずさむサービスをはじめ、
全編にわたって彼女の歌声が聞こえてくる演出がなされている。
何と“とらや"の庭先では『アンコ椿は恋の花』まで披露してくれるのだ!
御前様曰く「煩悩が背広を着て歩いている」寅さんが、出家する!?そのありがたい法話と恋の行方を前にして、ついには仏も泣き笑い!
『男はつらいよ』第32作は、寅さん(渥美清)が出家してお坊さんになる!?ことの起こりは、
博(前田吟)の父の墓参りに寅さんが立ち寄ったこと。
かつて博の父を演じた志村喬亡き後に合わせた今回の設定は、
かの名優に対するシリーズからのオマージュでもあるが、
そこで寅さんはひょんなことから二日酔いで動けない寺の住職(松村達雄)に代わって法事を務めることに!?
ところが、あの名調子を発展させた法話が檀家に好評で、彼はそのまま寺に居座った。
やがて博の父の三回忌がやってきたが、そこに現れたのは……!
今回の寅さんはコミカル色全開だが、
その一方で彼は住職の息子・一道(中井貴一)を慕うひろみ(杉田かおる)を応援しつつ、例によって一道の姉・朋子に片想い。
その結末は……周囲の予想を裏切って、御仏は意外な方向へと彼の恋をお導きする!?
寅さんと風子、気の合う二人のフーテンと曲芸バイク乗りのトニー。
カタギになれない男と女の悲しい恋愛模様を夜霧が包む。
月日の経つのは早いもので、満男(吉岡秀隆)は中学に入学し、
たこ社長(太宰久雄)の娘・あけみ(美保純)がシリーズ初登場でいきなり結婚ときた。
なかなかの現代っ子ではある彼女だが、いざ花嫁姿を前にして社長もホロリ男泣き。
またシリーズ初期で寅さん(渥美清)の弟分だった登(秋野太作)が、すっかりカタギになった姿で久々にお目見え。
我らが寅さんだけは相変わらずで、北海道でフーテンの風子(中原理恵)から好意を抱かれていることを察して背を向ける。
やがて“とらや"に曲芸バイク乗りのトニー(渡瀬恒彦)が現れ、風子が病気だと告げるが……。
『男はつらいよ』シリーズ第33作は、従来よりもカタギと渡世人の対比を濃厚に示しつつ、
その悲哀をムーディに、そして鋭さを忍ばせる異色編だ。
ただしラストには大胆なギャグも用意されている!?
失踪した夫を探す人妻に惹かれてしまった寅さん!
心焦がしつつ罪の意識に悩む彼の“真実一路"はどこにある?
松竹創業90周年記念作品『男はつらいよ』シリーズ第34作は、
まず冒頭の夢が松竹唯一の怪獣映画『宇宙大怪獣ギララ』(ちなみに、主題歌を歌っていたのは倍賞千恵子)をモチーフにしたSF仕立て。
そして本筋では、寅さん(渥美清)が人妻を愛してしまう。
突如失踪した夫の故郷へ赴く彼女に同行する寅さんは、
心のどこかに浮き立つものを感じてしまい、罪の意識に悩まされていく。
これまで彼は未亡人や、夫と別居中の女性などに恋したことはあっても、
夫を愛する女性に心惹かれるのは初めてなのであった。
そのマドンナふじ子を好演するのは、第22作『噂の寅次郎』以来、シリーズ二度目の登場となった大原麗子。
夫役の米倉斉加年もシリーズ準レギュラーだが、今回はストレスに侵されるエリート証券マンという設定などから、
現代サラリーマンの悲哀までも浮き彫りになっていくのだ。
「青年!惚れているなら勝負しろ!」またも若い二人の恋愛コーチを買って出る寅さん、名選手必ずしも名コーチならず!
自分のことはさておいて、なぜか他人の恋愛に加勢したがる寅さん(渥美清)ではあるが、
シリーズ第35作での寅さんは長崎五島列島・青砂ケ浦で老婆(初井言榮)の最期を看取ることに。
孫娘・若菜(樋口可南子)のことが気になり始めた寅さんは、
東京にて彼女のアパートの隣室に住む司法試験浪人・酒田(平田満)と若菜がひそかに惹かれあっていることに気づき、
心中複雑ながらも恋の指南役を買って出る。
思えば第1作でさくら(倍賞千恵子)に片思いしていた博(前田吟)に恋愛のコーチを施して以来、
寅次郎恋愛塾の塾生たちはほぼ完璧にゴールインしているが、
果たして今回はいかに?クライマックスのリフトを効果的に用いた告白(?)シーンは大爆笑。
それにしても、肝心の塾長は?失恋という名の喜劇は、そう簡単には終わらないようでありまして…!?
家出したタコ社長の娘を探しに下田へ赴いた寅さん。ひょんなことから式根島版『二十四の瞳』の仲間入り!?
たこ社長(太宰久雄)の娘・あけみ(美保純)が家出!かくして寅さん(渥美清)は彼女を探しに伊豆・下田へ。
シリーズ第36作は、かねてより寅さんの生き様にあこがれていたあけみがもう一人の主役ともいうべき存在感を放ちながら、寅さんと二人旅を始める。
そして式根島に渡った二人は“島のマドンナ"として教え子に慕われる真知子先生(栗原小巻)と知り合うが…。
『二十四の瞳』になぞられた設定の下、寅さんも小さなお目目で勝手に“瞳"=教え子たちの仲間入り!?
栗原小巻は第4作『新・男はつらいよ』以来、これが2度目のマドンナ登板。
元々は下町出身で、理想を追い求めるあまり人生に疲れたその佇まいは、寅さんとも息が合うかに思えたが、
意外なところに恋のライバル(川谷拓三)が!
それにしても、寅さんはなかなか恋の卒業生にはなれないようです。
九州の炭鉱の町で昔馴染みの座長の死を知る寅次郎。
残された薄幸な娘の職と婿探しに奔走する寅さん、その心の中は!?
山田洋次監督が松竹大船撮影所50周年記念作品『キネマの天地』('86)の製作のため、
前作からほぼ1年ぶりの御目見えとなった『男はつらいよ』シリーズ第37作。
これまで幾度となく登場していた旅芸人一座座長の訃報を知らされた寅さん(渥美清)が、
ひとり残された一座の元花形女優・大空小百合こと美保(志穂美悦子)のため、何と色恋抜きを宣言して大奮闘。
しかし「幸せの青い鳥がほしい」とつぶやく薄幸の彼女と、
画家志望の青年・健吾(長渕剛)の恋に、やはり寅さんの心中は穏やかでなく…。
日本が誇るアクションじょゆうとビッグ・アーティストの新鮮な一面を引き出した青春映画的テイストも濃厚な本作ではあるが、
それに倣うかのように、志穂美悦子と長渕剛は本作での共演をきっかけに、後に結婚。
二人にとって本作は、まさに“幸福の青い鳥"だったようである。