寅さんと風子、気の合う二人のフーテンと曲芸バイク乗りのトニー。
カタギになれない男と女の悲しい恋愛模様を夜霧が包む。
月日の経つのは早いもので、満男(吉岡秀隆)は中学に入学し、
たこ社長(太宰久雄)の娘・あけみ(美保純)がシリーズ初登場でいきなり結婚ときた。
なかなかの現代っ子ではある彼女だが、いざ花嫁姿を前にして社長もホロリ男泣き。
またシリーズ初期で寅さん(渥美清)の弟分だった登(秋野太作)が、すっかりカタギになった姿で久々にお目見え。
我らが寅さんだけは相変わらずで、北海道でフーテンの風子(中原理恵)から好意を抱かれていることを察して背を向ける。
やがて“とらや"に曲芸バイク乗りのトニー(渡瀬恒彦)が現れ、風子が病気だと告げるが……。
『男はつらいよ』シリーズ第33作は、従来よりもカタギと渡世人の対比を濃厚に示しつつ、
その悲哀をムーディに、そして鋭さを忍ばせる異色編だ。
ただしラストには大胆なギャグも用意されている!?
「俺が死んだら、あいつを女房にしてやってくれ…」死にゆく仲間に頼まれて、“男"寅さん一世一代の大決心!
柴又小学校同窓会の招かれざる客となり、“とらや"へ戻って悪態三昧の寅さん(渥美清)は、傷心の想いで再び旅へ…。
冒頭の夢(寅さん版『愛染かつら』?)の後、いつものように幕を開けるご存知『男はつらいよ』シリーズ第28作だが、
その後が一味違う!今回は家出娘・愛子(岸本加世子)が寅さんに憧れて、ともに旅をしながらフーテン修行。
時にはサクラも務めて、おかげで寅さんの商売も大繁盛!?
そしてさらに、何と寅さんは病気のテキヤ仲間(小沢昭一)から、
自分が死んだら妻の光枝(音無美紀子)を女房にしてほしいと頼まれてしまうのだ。
約束ゆえか愛ゆえか、今度こそ想いを叶えようとする寅さん。
しかし、一見柔和だが彼女もまた“渡世人の女房"だった女であった…。
そう、今回は自由で寂しい渡世人の悲哀が改めて示されるという、秀逸なエピソードなのである。
九州の炭鉱の町で昔馴染みの座長の死を知る寅次郎。
残された薄幸な娘の職と婿探しに奔走する寅さん、その心の中は!?
山田洋次監督が松竹大船撮影所50周年記念作品『キネマの天地』('86)の製作のため、
前作からほぼ1年ぶりの御目見えとなった『男はつらいよ』シリーズ第37作。
これまで幾度となく登場していた旅芸人一座座長の訃報を知らされた寅さん(渥美清)が、
ひとり残された一座の元花形女優・大空小百合こと美保(志穂美悦子)のため、何と色恋抜きを宣言して大奮闘。
しかし「幸せの青い鳥がほしい」とつぶやく薄幸の彼女と、
画家志望の青年・健吾(長渕剛)の恋に、やはり寅さんの心中は穏やかでなく…。
日本が誇るアクションじょゆうとビッグ・アーティストの新鮮な一面を引き出した青春映画的テイストも濃厚な本作ではあるが、
それに倣うかのように、志穂美悦子と長渕剛は本作での共演をきっかけに、後に結婚。
二人にとって本作は、まさに“幸福の青い鳥"だったようである。
車寅次郎、行き着いた先はなんと、音楽の都ウィーン!?
そして現れたマドンナは、“美しき青いドナウ"が似合う美女!
『男はつらいよ』第41作目にして、ついに寅さん(渥美清)が海外旅行!
今回の企画はオーストリアのウィーン市から招聘を受けて実現したもので、
自殺志望の男(柄本明)と知り合いになった寅さんは、
うっかり湯布院と勘違いして彼と一緒にウィーンへと行ってしまった!?
正直、音楽の都よりも温泉のほうがしっくりくる寅さんにとって、ドナウ川も江戸川も同じといった有様で、
初の異国にも意外と物怖じしていない。
しかし恋愛の神様は例によって例のごとく、かの地で日本人のツアー・コンダクター久美子(竹下景子)を彼に出会わせた!
ウィーンの美しい風景や数々の観光名所案内も今回の見所の一つ。
竹下景子は第32、38作に続いてのマドンナ役だが、今回は葛飾柴又に姿を見せないというのも異例ではある。
なお、本作は夏休み興行として公開される最後のシリーズ作品となった。
山陰の城下町を旅する寅さん、かつて恋い焦がれた歌子さんと再会!何と、彼女は幸せ薄い未亡人だった・・・・・・!?
えっ寅さん(渥美清)が結婚!?というびっくり仰天のシーンから始まる『男はつらいよ』シリーズ第13作は、
第9作『柴又慕情』のマドンナ歌子役の吉永小百合が再び登場する。今回は早々と失恋し、
傷心の想いで旅を続ける寅さんが、2年前に恋心を募らせた歌子と津和野の地で再会。
しかし、父親(宮口精二)の反対を押し切って家を飛び出し結婚した彼女だったが、今は夫に死なれて未亡人になっていた・・・・・。
寅さんは、歌子への恋の再燃といったよう要素もさながら、
前回では描ききれなかった娘と父の絆に深く関わることにもなり、そのさまが感動的に描かれている。
名優・宮口精二いぶし銀のごとき名演も印象的。
また本作で二代目おいちゃんこと松村達雄が出番終了となるが、
彼はこの後も役柄を変えてシリーズにしばしば登場する。
甥っ子に負けてられないとばかりに、大人の恋の機微を若い二人に指し示す寅さん!いよいよ佳境の“満男篇"第3弾。
満男(吉岡秀隆)と泉(後藤久美子)、若い二人の恋の行方を追う“満男篇"もいよいよ佳境を迎える『男はつらいよ』シリーズ第44作。
東京での就職活動が上手くいかず、その上母親(夏木マリ)の再婚話に心傷ついた泉は、日本海を見たいと家出してしまう。
しかし彼女は鳥取の地にて“おじちゃま"こと寅さん(渥美清)と偶然にも再会。
心配して駆けつけた満男とも合流し、三人はかつて寅さんが惚れて心配して駆けつけた満男とも合流し、
三人はかつて寅さんが惚れていたという聖子(吉田日出子)の営む料亭へと赴いた…。
今回は若者たちに負けてられないとばかりに、寅さんの恋愛も大きくクローズアップされていく。
そして若い二人は、大人の恋の機微を目の当たりにしながら、少しずつ大人への階段を上っていくようでもあるが、
一方では満男の寅さん的ずっこけぶりも少しずつ板についてきているようでもあり!?
競馬で大儲けした寅さん、おいちゃんとおばちゃんを連れてハワイ旅行!?
労働者諸君まで巻き込んで、寅さんの新たな恋のお相手は幼稚園の先生だ!
『男はつらいよ』シリーズ第4作は、
名古屋競馬場で大穴のワゴンタイガー(=車の寅)になけなしの金をつぎ込んで見事大儲けした寅さん(渥美清)が、
葛飾柴又までタクシーでご帰還。当時の運賃は2万9,000円なり。
そしてまだハワイが夢の時代、寅さんはおいちゃん(森川信)とおばちゃん(三崎千恵子)を連れてハワイ旅行と決め込むが……。
今回の監督は、本シリーズの前身たるTVドラマの演出を担当していた小林俊一で、従来よりも柴又の人々の個性を表に出しながら、
町を挙げての騒動をドタバタチックに描いているのが大きな特徴。
後半は“とらや"に下宿する春子(栗原小巻)へ、例によって寅さんの恋幕情が繰り広げられるが、
お隣の“労働者諸君"まで巻き込んでの滑稽なデート演出なども楽しい。
また彼女の境遇がどこか寅さんと似ているという設定も心憎い。
気ままな自由を寂しさがないまぜの相合い傘、素直になれない寅さんの恋の行方は?
運命のマドンナ、懐かしのリリーが再び登場するシリーズ第15作!
シリーズ第15作は、第11作のマドンナであり、寅さん(渥美清)にとって運命のヒロインでもあるリリー(浅丘ルリ子)が再び登場。
珍しく寅さんの帰省が遅い葛飾柴又の“とらや"を、あの懐かしいリリーが訪れた。
すし屋の亭主と離婚した彼女は再び旅から旅の歌手として全国を渡り歩いている。
一方、寅さんは家出した中年男“パパ"(船越英二)と奇妙な道中を続けていたが…。
シリーズ屈指の傑作と名高い本作は、寅さんとリリーの再会を中心に、パパの初恋慕情譚など充実した内容。
冒頭の夢からして、寅さんファミリーを総動員させての海賊超大作“パイレーツ・オブ・トラビアン"(?)が繰り広げられるのもお楽しみ。
そして寅さんとリリー、二人の恋の行方は最後の最後まで切なくスリリングで、一瞬たりとも目が離せない!
失踪した“演歌の女王"、彼女の心の傷を寅さんは癒せるのか?都はるみ、『男はつらいよ』シリーズに堂々の登場!
『男はつらいよ』シリーズ第31作は“演歌の女王"こと都はるみが堂々の登場!
当時芸能界からの引退を表明していた彼女ではあったが(現在は復帰)、
渥美清のラブコールに応えて今回の顔合わせが実現した。
ここで彼女が演じているのは、彼女自身のキャリアとダブらせた演歌歌手・京はるみ。
寅さんは全国公演の途中で失踪した彼女と共に佐渡島へ渡り、失恋して傷心の彼女を慰め、癒し、そして立ち直らせていくのだ。
シリーズ恒例、メイン・タイトルのドタバタ・シーンでは細川たかしが駆け落ちする恋人役で特別出演し、矢切の渡しを越えようとする!?
後に彼女が民宿で寅さんと一緒に『矢切の渡し』を口ずさむサービスをはじめ、
全編にわたって彼女の歌声が聞こえてくる演出がなされている。
何と“とらや"の庭先では『アンコ椿は恋の花』まで披露してくれるのだ!
「愛してる」なんてカンチューハイ2本で言えるなら寅さんはとっくの昔に幸せになっているはずなのに…!?
1988年夏の興行をお休みし、1年ぶりのお目見えとなった『男はつらいよ』シリーズ第40作記念作品は、
俵万智による新感覚のベストセラー短歌集『サラダ記念日』をモチーフにしたもの。
ここでは早稲田大学の学生・由紀(三田寛子)の詠む短歌を劇中に散りばめながら、
我らの寅さん(渥美清)が恋愛騒動を繰り広げ、ついには早稲田で講義を開始!?
今回のマドンナは由紀の叔母で女医の真知子(三田佳子)。
サブタイトルのイメージから一見ライトなコメディとして捉えられがちではあるが、
実は現代における老人医療問題をそこはかとなく忍び込ませた巧みな作りになっているあたりもお見逃しなく。
また、今回から葛飾柴又の“とらや"が“くるまや"に屋号を変えて登場。
第1作から早20年、時代は確実に変わってきているが、「結構毛だらけ〜」と寅さんの七五調は変わることはない。
葛飾柴又は、書物の小脇のメガネっ子寅さんの話題で持ちきり!
ついに寅次郎学問に目覚める!?シリーズ第16作!
シリーズ第16作は、冒頭の西部劇の夢に始まり、
寅さん(渥美清)をまだ見ぬ父と勘違いして山形から上京してきた娘(桜田淳子)のエピソード。
当時人気絶頂だったアイドル桜田淳子のヒット曲『私の青い鳥』を新米巡査(米倉斉加年)が口ずさんでいるのが可笑しい。
今回は、何と寅さんが学問を志す!ついには、
“とらや"の二階を間借りする考古学助手のマドンナ礼子(樫山文枝)に「あなたは何のために勉強するのですか?」と問いかける。
かくして本邦初披露、メガネっ子寅さん!田所先生役で出演の小林桂樹は、
当時日本中で空前のブームを巻き起こした映画『日本沈没』に同じ役名で出ていたという楽屋落ちのネタもあり。
しかし寅さんは時の流行など何するものぞ、最初から最後まで同じ衣装同じスタイル同じ失恋で、わが道を貫き通すのであった!