渤海の領域支配や王の系譜、日渤外交開始前後の事情、外交文書の扱いなどを日本・中国・朝鮮の史料の丹念な読解による実証的手法で解明。日本と渤海の外交関係を古代東アジアの国際情勢を踏まえ、詳細に跡付ける。
著者の研究者としての広汎な知識と幅広い問題関心は、古代史のみならず日本史全般に渉っている。本巻には太政官奏や「越前国正税帳」、常陸国の式内社調査報告を始め、新井白石年譜、古賀精里の別号、加賀藩校明倫堂・経武館などを取り上げた著作・余録・短編等多数を収める。とくに「最澄の生年について」では、著者の学問・教育観がしのばれる。
本書では、中・近世を封建制の時代とみなし、各段階の地域を中心とする政治・法制・社会上の問題を描出して検討している。事実に近づく史料解釈による論理化を目ざした。
白木屋文書の翻刻、第二集。今回は、近世期の文書群を対象とし、近世前期、中期、後期の三つの時期について、それぞれ重要と思われる史料を選択し、翻刻を行なった。白木屋の経営内容を示す史料をはじめ、十組問屋の活動が伺われる文書類、嘉永の問屋再興にまつわる記録など、多様な情報が盛り込まれている。
移住漁民の民俗形成を、移住誌(漁撈技術の変容を詳細に記述した民俗誌)という手法により考察。口承資料による漁業の復元に対し、生態学的分析を用いて、漁業における自然と人間の関係をとらえ、地域社会の特徴を解明。
利根川水運は、江戸市場に直結し、東廻海運の形成・発展と密接な関係にあった。川船の運航実態や上・下流域から江戸へ至る輸送機構を解明。浅瀬の克服、水戸藩独特の水運機構にも及び、関東水運史研究に新生面を拓く。
近世前期の在地支配の基軸となった検地。江戸開幕以前・以後の検地を比較検討し、その連続性・非連続性から在地支配政策としての検地を捉え直す。さらに、検地帳の多角的な分析から、村落構造や景観、地域像を復元。
徹底した先行研究の検討と史料批判による空海伝。讃岐国誕生説を見直して畿内誕生説を提示、最澄との訣別などを空海自身の文章と同時代の史料に基づき立論する。歴史学の最新成果を取り入れ、空海研究の新地平を開く。
古代律令国家において、家族と村落はどのような存在だったのか。戸籍と計帳、「家」観念、相続、村落構造など、制度と実態を検証する。制度・法制・社会経済史の分野にわたり、家族・村落の実相を解明した珠玉論考の集大成。
山村は生産力の低い地域とされてきたが、江戸近郊の山間地域は、高い生産力を発揮した。「山」利用の実態、林業の生産を支える村構造を考察。自給的な焼畑農業から商品経済的な林業の成立・展開を中心に特徴を解明する。
神社の祭礼に上演される土地の人の地芝居や地方の芝居小屋には、現在の歌舞伎が失った役者と観客が一体となった劇空間が存在する。黒森歌舞伎・旧金毘羅大芝居などに、江戸歌舞伎の“時空”を考察。歌舞伎の原風景を探る。
太政官は古代律令制度における最高機関である。その成立過程を探り、複雑な構成と役割との関連、政務運営の方式、個々の多様な祭祀との関わり方を追究。最新の研究成果を踏まえ好評の初版を大幅に改訂・増補した決定版。
日本中世史の解明に取り組む気鋭の研究者たちが、権力と地域社会をテーマに集った論考を収録。中世社会の黎明に関わる三編をはじめ、民衆と地域社会の諸相に迫る四編を収める。日本考古学史研究をめぐる付論を掲載。