江戸幕府存立の基盤である財政の成立からその改革そして解体に至るまでの解明に取り組み、最近の政治史・経済史や地域史の成果も取り入れた総合的な研究である。多年の史料調査と実証的研究による業績がここに結実。
外来宗教の仏教は、鎌倉新仏教の誕生と旧仏教の対応である思想運動を通して定着した。本書は鎌倉幕府と仏教界との相関関係の変遷を縦軸に、新仏教と旧仏教における「神祇信仰」の受容状況を横軸に、中世仏教を構造的に究明する。
古来より広く信仰されている八幡信仰は、豊前国宇佐神宮に始まる。宇佐八幡宮において宮寺が最初に成立するという新視点から、八幡信仰の源流をはじめ、神仏習合など多角的に追究し、山岳仏教や修験道にも言及する。
長州藩、そして奇兵隊研究の歴史は、明治維新の厖大な研究史と重なる。この二重写しの研究史を窓として、明治維新とは何かを鋭く追究し、さらに維新の全体像を世界史の中にいかに位置づけるべきかの試論を展開する。
近代国家において、市民的自由=私権と政治的自由=公権を、国家権力に接合する地方自治はいかに生成するのか。地租改正を基礎に、地方民会(地方議会)の成立過程を構造的に考察。明治国家形成の特質を解明する。
日本民俗学を創始した柳田国男は、「民俗」を己の視線から創出していった。そこから排除されたものは何か。近代の中で、記述する者とされる者との関係性において民俗が変移する過程を、「民間の新嘗祭」として発見され、位置付けられた奥能登の農耕儀礼アエノコトを軸に描き出す。文化財保護制度や民俗写真の検証も併せ、民俗誌のあるべき姿を追究。
近世の江戸と上方は、あらゆる面で緊密な関係にあった。大店の白木家や三井両替店の活動を通して、両地域の経済特質を解明。また上層町家の経営を担った女性や中層商家の主婦の暮らしを女性史の観点から掘り起こす。
下剋上と戦乱の時代、新たな権力機構=戦国大名と自立した社会集団=村落・都市双方に注目。徳政論、領主の「蔵」と蔵本論、東国の流通と地域社会論の三つの視角から、新しい政治・経済・社会秩序のあり方を追究する。
「民俗学的歴史」「都市・漁村」「日和見・王権論」「儀礼研究の展開」をテーマに、民俗学研究の最新成果を集成。沖縄の門中組織、昭和戦前期の郷土食等、宮田民俗学の継承と課題の克服を試みた多彩な論考十三編を収録。
「民俗学的研究法」「幸福・終末観」「カミの民俗誌」をテーマに、宮田民俗学の継承と課題の克服をめざす論集。弘法伝説を事例とした歴史と民俗の関係性、法螺抜け伝説など、現代民俗学を網羅する十二編を収録する。
貴族院を立憲政治の阻害者とする従来の研究を問い直し、「国家的見地」を代表する存在として貴族院が果たした役割を解明。また内閣・衆議院との関係をめぐる貴族院の動向を、「自立」と「自制」という観点から検討する。
中世後期の室町幕府ー守護体制は、中央権門=幕府と地域権力=守護が、相互に補完し合い成立していた。室町期から戦国期へと武家権力はいかに変わっていったのか。権力構造と秩序の実態を解明し、歴史的意義を探る。
奈良時代の根本史料として重視されている『続日本紀』は何を語るのか。あいつぐ政治事件や皇位継承問題の記述から、編纂時の国家思想を読み解き、編纂過程を解明。編纂方針を浮かび上がらせ新たな史料論を展開する。
院政期から鎌倉時代の社会変動を背景に、新しい鎌倉仏教が展開した。この仏教の思想的評価を歴史学の観点から捉え直す。仏教の信仰儀礼、鎌倉仏教の特質、仏教典籍の役割などを究明した最新の研究成果十五編を収める。
キリスト教は、近代の政治・社会・思想にいかなる影響を与えたのか。日本が西洋化を目指した時期の、外来文化としてのキリスト教の実態を時代の流れにそって追究する。巻末に教派ごとの動向を一覧できる詳細な年表付。
日本文化はどのように形作られてきたのか。第一線で活躍中の研究者十三名が鮮やかに論究する。文化史の時代区分、貴族の生活と行事、造形されたイメージの解読など、多彩な視点からアプローチした、魅力あふれる論集。
唐が発給した外交文書の書式、遣唐使が持ち帰った国際情報などから国際交流史の諸相を考察。さらに日宋貿易史から、アジアにおける日本の歴史的位置を探る。中央・東南アジアからの視点も意識しつつ検討した対外関係史。
古代において、地方と中央の間では宗教を媒介とした様々な交流があった。最澄や空海の東国地域での伝道の意味や、八幡神や巫覡など憑依託宣の民間宗教を考察。制度史や政治史からは見えない中央と地方の関係を解明する。
わが国最初の説話集『日本霊異記』とは何か。国文学・歴史学の視点から、斬新な作品論・史料論・人物論を展開。ことば遊びをはじめ、夢、史料的価値、家族、遺言、転生譚など多角的に論究し、新しい『日本霊異記』像を提示。