中世(古琉球)における琉球王国の内部構造について「辞令書」という斬新な史料を駆使しつつ本格的な分析を加えた初の成果。琉球辞令書の体系的究明を目指す仕事であると同時に、従来の研究において等閑視されてきたところの琉球王国の内部制度を探り、その歴史的な位置・評価の再構成をめざす論点を鮮明に提示する。
南方は数多くの書信を残しているが、編者の叔父宮武省三とは特に親交があり、大正12年から昭和16年の歿年までに344通の書信を送っている。本編著は宮武宛の書信中より主として民俗学関係のものを選び、合わせて伝記や生活に関するものも収録した。本書に収録した書簡はほとんど未発表のもので、南方研究に不可欠の一書となるであろう。
“真珠王”御木本幸吉は、これまでいわれてきたような真円真珠の発明家ではなく、養殖真珠の逞ましい企業家であり、技術と漁場の独占に辣腕をふるい、巧みな演出と商魂によって全世界に“ミキモト・パール”の名を売り込んだ偉大な商人であった。本書は幾多の新資料を駆使して、伝説化された既往の“真珠王伝”を大きく書き改めた力篇。
日本における歴史書の端緒からはじめて、歴史叙術の発達と歴史学の成立過程とを、日本の歴史の推移・変遷との関連のもとでの把握・理解を企図して記述したもので、坂本博士の長年の読史の姿勢と方法が表現されており、独自の風格をもった史学史である。また、個々の歴史書について、周到にして平明な解説の用をも兼ねて至便である。
王朝国家有数の碩学匡房は、最も漢詩に長じ和歌・朝儀にも通じた学者兼政治家ながら、その多面的な活動にもかかわらず評伝が多くない。本書は続々新出した彼の漢詩・願文・説話集などの古写本を巧みにとり入れるとともに、鴻需ながら仏・道の呪術に通じ、説話に深い関心を示した人間像に光をあて、歴史の中にいきいきと叙述した好伝記である。
日本天台宗の開創者である最澄のあとを継ぎ、その教義を顕揚し、また新たに天台密教を根づかせた円仁。入唐して揚州・五台山・長安における修学と書籍の求得に、ひたむきに心をかたむけたその真摯な姿、会昌の破仏という未曽有な出来事に際会し、幾多の辛酸を嘗め、強靭な精神に支えられた足掛け10年におよぶ苦難の旅。その生涯を克明に描いた伝記。
坂本博士がもっとも尊敬された二人の歴史上の人物、「聖徳太子」と「菅原道真」についての論文大小15編を収録した。その評伝を通して、博士の学問と人となりがもっともよく表白されているものとして注目される。「人物叢書」2冊分、さまざまな講演筆記、そして法隆寺怨霊寺説に対するきびしい批判論文をも含む。
大江山の酒呑童子退治説話で有名な頼光は、多田満仲の長子で摂関家と深く結んで源氏発展の基礎を固めた。関白兼家の新第落成の宴に馬30頭を贈り、道長の新第造営に当っては家具一切を調進して世人を驚嘆させた。その富裕と処世の才幹とを察知できよう。本書は説話等をも巧みに織りまぜて、その生涯を時代の上に浮彫りしたユニークな伝記。
ここへ来て、天気予報は情報としての価値を持つに至った。この本では、そんな大それた“情報”を扱ったわけではない。が、その情報を読み取るためのヒントになるような事を集め、それを一問一答形式のクイズにまとめた。
千古の謎を秘める邪馬台国!その国はどこにあったのか。卑弥呼はいかなる人物か?本書は戦後の数多い学説をたくみに整理して問題点をあきらかにする。
本辞典に収録する項目は、日本歴史の全領域を網羅し、さらに広く考古学・人類学・民族学・民俗学・国語学・国文学などの隣接諸分野にも及んだ。また、主要な典籍・古文書・記録や、書誌学・古文書学・史料学、史学史関係の項目も多数採取して、研究の便を図った。
新国家建設と近代外交の確立に全生涯を賭けた外務卿寺島宗則の本格的評伝。蘭学者から一転して、新政府の外交指導者となった寺島の思想と行動を新史料を駆使して丹念に跡付ける。欧米に対する自主外交、東アジアに対する条理外交という新たな視点から寺島外交を再評価。さらに伊藤博文との政治的競合・対立にも新解釈を加え、新しい寺島像を描く。
本書は、多様なスペイン戦争独自の争点や問題点のうち、オーウェルやケストラーらの文学者のスペイン戦争への関わりとその後の軌跡、アナキズム運動、ソ連の外交政策、国際旅団の戦列で戦ったイギリス人義勇兵の消息、ジャック・白井、日本人ジャーナリストのスペインでの足跡、スペイン戦争をめぐる日本の新聞報道といった問題を扱っている。
全集未収録の珠玉の随筆9篇、未発表稿1篇、女性との往復書簡、英国博物館宛陳状書など、新資料を満載。