ヒコは漂流して渡米,日本人として禁教後最初にキリスト教の洗礼を受け,また帰化第1号の米国市民権を得る。ハリスに伴われて開国日本に帰り,わが国最初の新聞『海外新聞』を発行し,幕末明治の文化の恩人となった。著者はヒコ研究に30年,この“新聞の父”の生涯と功績とを克明に記し,また『ヒコ自伝』を正確にした。
華麗な天平文化の頂点に立つ“美貌の皇后”彼女はまた凄惨極りない政争の嵐の中にそびえ立つ存在でもあった。彼女は生来の叡智と仏への深い帰依によって数々の事業をなし遂げるが,公私にわたり人間としての悲喜にも遭遇する。この天平宮廷に生きた1女性を,政治・社会・文化の各方面からダイナミックに描き出したものである。
本巻所収の諸論稿は明治初年の岩倉遣外使節団派遣の政治史的分析に始まり、さらにその海外視察の体験を基礎に発足した内務省の成立と機構,そしてそのもとでの三島通庸による東北開発に論及する。ついで、立憲制制定への軌道を確定した明治14年政変をめぐる政治過程について考察する。いずれも新たな基礎史料を発掘・紹介しつつ、明治国家の形成に鋭く迫る。
近代史研究の泰斗による珠玉の24篇
“アジアは一つなり”という名言をもって戦時中大いにもてはやされた天心は、戦後、あまり顧みられなくなってしまった。しかし明治の美術界をリードし、日本の美術を今日の隆盛に導いた彼の業績は、いまこそ改めて考究されるべきである。近代美術の生みの親ともいうべき天心の生涯を委細にわたって知り尽した著者による労作。
漢方医学一点張りの鎖国下の日本にあって,初めて西洋医学書を訳読,『解体新書』と銘打って公刊することに心血を注いで成功。日本の医学界の革新と純正な蘭学の確立を希求し、その発展に熱情を傾け通した玄白。日本人の心に生きつづける不朽の名著『蘭学事始』を遺した先覚者の本格的な伝記、新史料と精緻な考証を加えてはじめてなる。
全国第2位の生産量を誇る「福島県」の養蚕業と製糸業は、どのように普及・発展してきたのであろうか。種掃立枚数・繭産量・蚕種製造の増加にともない、製糸方法も座繰器から機械化へと進んでいくー。それら近代福島県の養蚕・製糸業の変遷を、本書では著者が粉骨砕身して収集した綿密なる史料と統計を基に論理的に展開している。昭和60年に急逝された、庄司先生の博士論文となった近世編の続編として、後世に遺る労作。
『古事記』はひとつの完結した作品として把握されねばならない。「高天原」「葦原中国」「黄泉国」「根之堅州国」の位置付けに新たな見解を示し、『古事記』が、上中下巻を通して構築する独自の世界観ー中国を意識しながらみずからひとつの世界であるという主張を解明する。
近世大阪随一の富豪鴻池家の初代から近代までの一貫した歴史を、従来未公開であった厖大な資料によって丹念に追求した力篇。醸造業から海運業へ、そして大名貸その他の金融業へと発展する財閥成長の過程を、歴代当主のすぐれた業績と人物とを織込んで叙述し、特にその同族組織や事業内容をも克明にえぐり出した画期的著作。
文豪夏目漱石は神経症になやまされていたが、その死因は“胃潰瘍”であった。また旅と酒を愛した歌人牧水は“肝硬変”によって亡くなった。暗殺を逃れた板垣退助は“脳溢血”に斃れた…等々。本書は明治・大正・昭和の激動期に生きた各界の著名人102人のさまざまな「死因」を、医家の眼を通して調査したユニークな読み物である。