ライラックの香りにつつまれた作曲家ミスター・トロットの仕事部屋。萩原アンは、お手伝いさんをしながらトロット氏の作曲活動をみまもるという、すてきな日々をおくっていました。そんなある日、怪しげな黒ずくめの男がアンに声をかけてきたのです…。魅力あふれる時間遡行の物語「未完成ライラック」と、やさしい魔女物語「月夜にダンシング」の二編を収録。
本書は古文書とはから、読み方、用語・用字・文体の用例を通してその解読法を分りやすく解説し、研究・利用法により、古文書が歴史研究の史料となるまでを具体例で示す。独学で古文書の解説が習得できるよう工夫された最新の入門書。
絢爛たる文化の栄えた飛鳥〜奈良朝は女帝の時代でもあった。わが国には、女性が政治を司る長い伝統があったが、推古から称徳にいたる六人八代の女帝の輩出は何を意味しているのであろうか。また天平のヒロイン光明皇后の誕生と役割は…。聖武天皇をめぐる女性たちや、一見華やかな文化の背景にある古代豪族の滅亡や皇位継承をめぐる血みどろの政争などを鮮明に描く。
飛鳥時代の仏教は、氏族が私的に伽藍を建てて信仰する「氏族仏教」であった。本書では、欽明から天智にいたる各大王が仏教に対して示した立場や政策、さらに、同時代に生きた厩戸王が聖徳太子へと変化し、崇拝の対象になっていった過程を浮き彫りにする。当時伝えられた経典についても論及した。日本仏教の黎明期を、日・朝交渉史の中で追求する。
多くの謎につつまれた鎌倉時代を、公武関係を中心として、後白河法皇と頼朝、承久の乱、執権政治、得宗専制、人物論、幕府の滅亡、等々に焦点を当て、史実のベールを次々に剥いでゆく。興趣あふれる筆致と簡明で分かりやすい文体の中に、鋭い指摘や新しい見解が随所にちりばめられている。中世史学をリードしてきた著者が描く恰好の鎌倉時代史概説。
幕臣として軍艦頭取を勤め、幕府瓦解後榎本武揚とともに軍艦を率いて函館に奔り、五稜郭に奮戦したが、陥落投降、赦されて開拓使に出仕し、北海道の測量、農学校の設立、女子教育の促進に尽力した。また内務省地理局に転じ、メートル法の導入、経度の決定、日食観測を行い、初代中央気象台長となるなど、近代日本の自然科学の基礎を築いた科学者の業績と生涯を描く。
古代東北史に大きな足跡を残す二つの巨星。誉れ高き「征夷」の名将・坂上田村麻呂。悲劇と伝説につつまれた「蝦夷」の領袖・阿弖流為。征服と抵抗の歴史を克明にたどり、いまだ謎多い二人の英雄とその時代に新たな光を当てる。
佐々木導誉(高氏)は佐々木氏の庶流京極家の出で、近江に本拠を据え、初め北条高時に仕えたが、南北朝動乱期に活躍し、足利尊氏を補佐して幕府の基礎固めに尽力した。多くの国の守護を兼ね、旧来の権威を軽視する「ばさら大名」の典型とされた反面、芸能・文芸に堪能な風流の武将であった。文武両道に秀でた魅力的な風雲児の生涯を描く。
20世紀の幕開けをはさんで勃発した日清・日露戦争。国内には軍国化の波が押し寄せ、全世界は世界大戦と革命の時代へとむかっていく。この二つの戦争の時代を、国際関係や国内政治、民衆生活・思想の側面から問い直す。
戦国の覇者・織田信長に臣従した家臣の全てを網羅。家臣ではないが一時期長信に従った人物も採録、全項目に読みを付す。総項目数は1400に及び、豊富な史料の中から典拠となる確実な史料のみを探し出して丹念に追究、分かる限りの事績を正確かつ詳細に掲げ、出典を示した。著者の二十数年に及ぶ研究成果の結晶で、戦国史研究に新たな一歩を刻む、使利な画期的辞典。
奈良時代の政治史において、藤原不比等以下の藤原氏の存在は重要である。本書は律令官人制研究の第一人者である著書が、奈良時代の政治過程を詳細にあとづけ、藤原氏四家の人びとの果たした役割を克明に論じた力篇。
幕藩体制の有機的一環としての藩制研究は今や勃然として起りつつある。本書は著者多年研究の結晶として、外様の雄、岡山藩をその全期間に亙り総合的に解明し、藩政の確立、展開、解体等個別的研究に先鞭をつけた力編。
古代末期の兵乱は、王朝軍事機構の変質を促し、やがて最初の武家政権=鎌倉幕府を誕生させた。本書は、中世的軍制の形成と内乱との関わりを追究し、鎌倉幕府の権力構造を明らかにして、中世成立期研究に新生面を拓く。
本書は、戦後日本について何かを知りたいと思った時に便利この上ないハンドブックである。
唱和問答の歌謡から発生した連歌は、その機知とユーモアのゆえに目ざましい発展を遂げ、公武朝野に盛行して中世文芸の主流をなした。本書は、今まで類書の少なかったこの連歌の理解と研究のための好指針といえよう。
日本全国統一の過程で東アジア征服の野望に駆られた秀吉は、その第一歩として朝鮮に兵を進めたが、朝鮮・明の反撃にあって敗退した。本書はこの侵略の実態と傷痕を日本・朝鮮・明の史料を駆使して克明に叙述する。
日本彫刻の起源は大陸伝来の仏像彫刻と肖像彫刻とである。前者の著作は多いが、後者を通史的に纒めたものは今迄なかった。代表的作例を揚げて、日本独特の豊富な形式と様式とに分化発展したその流れを、詳細に跡付けた唯一の書。
一向一揆の最大で最後の戦いとなった石山合戦。信長に惨憺たる敗北を喫した本願寺教団が、この合戦によりさらに発展する理由は何か。中世民衆の心をとらえた一向宗の謎と今まで明らかにされなかった石山合戦の本質に迫る。
日本絵画史上の狩野派は、四百年にわたり強大な勢力を形成し、画壇での枢要な位置を占めてきた。本書はその発端・成立から大成・変容・展開・終焉の史的流れを実証的に跡づけた最初の書。流派活動を後援した支持層を詳述し、独創的な狩野派史論を展開する。
公家や武家の官制・官職、年中行事、遊戯・娯楽、服飾、乗物、調度、武器・武具、宮中殿舎等、有職故実関連の事項を解説したもの。収録項目数3200。解説は署名入り。排列は見出し語の五十音順。図版等多数。巻末に総索引がある。-歴史・古典文学の理解に必要不可欠の大辞典。