蜜柑山ーそこには神が住むという。香流コンツェルンと旧華族宮根家の血をひく、宮根転布子。目付役の雫石霖、異母弟の竹越健一、結崎麻由、大江晢と蜜柑山の屋敷で暮らしている。転布子は、神と語らうことができる不思議な力を持っていた。そんな力に惹かれるように1人の少女ー石動水流がやって来る。一方、物の怪ー竜ーが日本に侵入しようとしていた。それを阻止するため転布子は、まだ力に目覚めていない水流とともに〈竜退治〉に立ちあがる…新感覚SFファンタジー第1弾。
津田左右吉氏の研究に端を発した『日本書紀』の史料批判が、戦後さらに進展する過程で、大化改新像は大きく動揺した。しかし最近における関東諸分野の研究や考古学上の成果はめざましく、大化改新研究は新たな時代を迎えたと言える。そこで本書は現時点における学界の到達点を示すとともに、そこに再構築された歴史像を古代国家形成過程の中に位置づけた。
明治大正期の卓越した史論家であり、独自の政治思想家であった愛山の初の本格的伝記。旧幕出身者としての「敗者の運命」を克服すべく奮闘した青少年期から、『独立評論』で活躍する壮年期、さらには、精力的に歴史叙述に取組んだ晩年に至るまで、近代日本をひたむきに生きたその思索の跡を活写。北村透谷との論争の意義にも新たな光を投じる。
加賀百万石の藩祖前田利家の実録。信長・秀吉政権の成立と展開に密着しつつ、幸運に乗って自らを開拓する勇気と才能、誠実と機智とを具え、変転する動乱の世に、順調な境遇を保って生涯を閉じる。本書は稗史や巷説に惑わされず、あくまで基礎史科を忠実に踏まえ、豊臣政権の側面を叙して、利家の真面目を描き出す。新装版は、新史料により加筆し、異説の多いその出生年次を解きあかした。
鎌倉時代中期の名僧であり、時宗の開祖。念仏を唱えながら踊る「踊念仏」や「札くばり」(賦算)など、独自の布教で全国各地を念仏遊行して、いかに生くべきかを民衆に説く。世に遊行上人といわれる一遍智真のはじめての本格的な伝記は、多年にわたる著者の研鑚による意欲的な労作であり、その生涯をわかりやすく説き明かして、余すところがない。
独学古典を研鑚し、『難古事記伝』以下多数の著作をもって宣長学を大胆に批判し、創見に富む学説により国学史上に異彩放つ守部桐生・足利の機業家・豪農等に多くの門人をもった彼の事蹟は、天保期における庶民文化の発展と、国学の普及発達を見る上からも注目される。本書は幾多の新史料を駆使して、その生涯と学績とを解明した力篇である。
本書は、おもに四国の古代地方豪族の動向・特徴・性格を、文献史料だけでなく最近の考古学の成果や現地調査をふまえて検討し、大和王権の瀬戸内海支配が四国側航路を中心にしておこなわれたことなど、今まで未解明の多くのことを明らかにした。古代史研究者・四国の人々はもちろん、広く日本史に関心のある一般の読者にとっても必読の書である。
江戸時代の初頭を彩る寛永文化は、かぶきの誕生、本阿弥光悦の芸術、桂離宮など、日本文化史上に輝かしい一時代を画した。本書ははじめて寛永文化に正面から取組み、その性格と歴史的背景を明らかにした清新なる力作。
日本近代史学史の研究に早くから関心を寄せた著者は、伝統的な修史事業と新しく流入したヨーロッパ史学の発想とのきり結ぶところで、日本近代史学がいかに形成され、いかに確立されていったかを手堅い手法で実証する。その論ずるところは、たんなる史学史をこえた歴史観の分析にも及びそこにはもうひとつの明治史が浮き彫りにされる。
本書は、上総国分寺台遺跡調査団が1976年から1977年にかけて調査を実施した稲荷台古墳群のうち、稲荷台1号墳出土の銀象嵌鉄剣銘文概要報告である。
典型的な開化大名にして蘭学の大の庇護者島津重豪初めての伝記。中世的体質を強く残した薩摩藩の、後進性克服を生涯の課題とした重豪は、積極的に開化政策を展開。そのために五百万両という巨額の藩債を造出した元兇と伝えられる。新史料によってその原因を究明、多彩な重豪の業績とともに、薩摩藩天保財政改革前夜の姿を描く。