昭和19年10月米軍は遂にフィリピンに侵攻してきた。だが迎え撃つ日本軍に昔日の力は無く、戦局は不利に傾くのみ。この時、木村少将ひきいる第2水雷戦隊は、ミンドロ島の敵泊地にある米輸送船団攻撃に出撃した。僅か8隻の艦隊による“なぐり込み”の成果は…?
「大化前代」のヤッコー律令制下の陵戸・家人・奴婢など日本古代の賎身分の前史・成立から崩壊までを,古代中国・朝鮮における良賎制成立の考察を踏まえ,精緻な史料批判に基づいて解明し,随所に新見解を提示する。特に従来曖昧であった賎身分合理化のイデオロギーや奴婢差別の問題について,初めて仏典や道経にも立入って論及している。
明治維新の潮流に乗りそこねたものは多い。西郷とともに,江藤もまた時早く命を絶たれた。功臣が一転して逆賊となる時勢の激しさに,江藤も押流されたのである。その波瀾多き生涯は幕末維新史のめまぐるしさに似ているが,本書はよく新史料を消化し,政治法制史的な視点から佐賀藩及び江藤個人を分析し追及した力作である。
人間は歴史によって作られ,また歴史の形成に大きく存在した。それ故に一人物をとおして一定の時代を考え,人物そのものの行動を追跡する意味がある。前著『武士世界の序幕』において武士世界と武家政権成立の実体について考察した著者は,本書では源氏・北条らその開幕の舞台に登場する人々を取上げ,個々の歴史的行動の軌跡を生き生きと叙述する。
伝統的仏教学のうず高い知識が、近代の学問的態度をもって見事に整理せられた好著。
本名は鄭成功だが国姓爺として有名。貿易のため来日した明人鄭芝竜の子で母は日本人。帰国して抗清復明に活躍,国姓「朱」を賜わり,しばしば日本に救援を乞うたが容れられなかった。一度は南京を陥落しようとして果さず,退いて台湾に拠り,大陸反攻を夢みつつ同地に歿した民族運動の英雄。本書はその生涯を描いた興味ある伝記。
近世女性史研究に新たな視野を切り拓き、既存の近世史研究へも多くの問題を投げかける意欲作9編。封建社会の町や村に生きる女性たちを、史料を丹念に集め着実な分析を加えることによって多面的に描き出し、その経済的・法的・社会的存在形態に迫る近世女性史研究会7年の成果。現代の女性問題にも多くの示唆を与える。
地蔵さんになった百姓の足跡。軍国主義下の日本で、さまざまな迫害と弾圧に耐えながら、「無産強戸村」を築き、10年にわたって統治した農民の勇気と知恵。まさに地方自治の原点を見る思いだ。歴史の証言として読んでほしい。
日本古代政治史の研究は、ともすれば、飛鳥・奈良・平安(前期・後期)等の各時代に分断されがちである。しかし、これらの全時代に一貫して、古代独特の論理の働きがあることを見過ごしてはならない。その基調にあるものこそ、天皇制の価値観(直系主義)ではなかろうか。本書はかかる視点から政治史上の諸事件に独自の解釈を加え、新たな日本古代像を浮彫にする。