本書は、戦後、戦勝国として一方的に日本を断罪しつづけてきたオランダ人のいわば自省の書である。著者は省みなければならないのは、インドネシア人を過酷に支配してきたオランダ人ではないかと、問いかけているのである。おそらく、かつての植民地支配者による初めての真摯な反省の書であろう。それも、少年時代に日本軍の厳しい抑留所生活を送った人物によるものだけに、大きな意味がある。
豊饒なインドの大地に生まれ、中央アジア・シルクロードを経て、中国・日本へと伝わった仏教美術。その伝播と変容、展開の様相を風土・民族・歴史と関連づけながら、イコノロジー(図像解釈学)の方法によって読み解く。
インド独立50周年の機会に、三人のインド人、政治学者、歴史家、詩人がインドの政治、社会、文学の歴史をみずからの体験をも踏まえて語った文章を中心に、南インドの現代女性作家を取り上げた文章、タイとバングラデシュの直面する問題を、それぞれの活動と観察の場で考えた文章を加えた地域研究。
あるものはある。ないものはある。実在するものは知られうるし、言語で表現できる。逆に、知られるもの表現できるものは必ず実在する。インド実在論の源流ヴァイシェーシカ学派、現存最古の綱要書『勝宗十句義論』をわかりやすく読み解き、いまなお斬新な知の体系を提示する。
真理の探究、心の救済を求めて行脚する高僧・玄奘三蔵。シルクロードから中央アジア、そしてインドへ-。遙か二万キロメートルに及ぶ苦行の旅へ駆り立てたものは何か。歴史の深淵に消えることなく生きつづける壮大なる三蔵法師の時空。
「学校はいいけど、電気はいらない」文明をひとつひとつゆっくりと選んでいる砂漠のラジプート族。ウルルンでもディープでもないインドへの旅。
印パ戦闘、国内暴動、宗教の「共生」を謳うインドが揺れている。原因は単に宗教対立なのか?背景を見据える貴重な現地レポート。
本書は、現代南アジアを研究対象として、最近の国際的な移民研究の動向に注意を払いつつ行ってきたインド系移民社会に関する共同研究の一成果であり、インド系、南アジア系移民の歴史と現状を包括的に示している。
愛とは歓喜である。性愛の喜びは愛の喜びである。神々の歓喜の姿を大らかに謳いあげ、一千年の時を超えて神の子=人間に至福の人生を教える、奇蹟の世界遺産。
虎狩りの士官が密林に発見したアジャンタの壁画、灼熱の岩盤を掘り抜いたエローラの巨大な彫刻建築に、インド美術の精髄を見る。豊穣アジアの旅。
日本語さえ知っていれば不自由のなかった日本社会は今、転換を迫られている。多言語の「先進国」インドの状況を知ることは、日本の明日をさぐることへと通じる。本書では、言語と政治の関わりを、インドの言語政策を国家と州の両面から追究し、多言語の中で人びとが何と向き合い言語状況がどのように動いていこうとしているのかを明らかにする。
“How much weight can an elephant lose?”-「象が痩せるとしたら、どれほど痩せられるだろうか」。この諺には「少々のダメージに、へこたれるな」という激励の意味が込められている。巨大で頑健な象も、時には体調を崩し、体重を落とすことがある。しかし、10キロや20キロ痩せたところで、総体としての象の大きさ、力強さは不変だというわけである。著者は「象」を「日本」になぞらえ、日本にエールを送っている。