短編で読むポワロの魅力!表題作「安すぎるマンションの謎」のほかに「消えた料理女」・「船上の怪事件」の3点を収録。
リンダはかつて人生を謳歌していた。美しい容貌と、努力して手に入れたやりがいのある仕事。そしてある男性と恋に落ち…事故に遭ってすべてを失ったのだ。十年間眠り続け、奇跡的に意識を回復したリンダは、恋人の兄だった大富豪ライアン・フォーチュンが、エメットという男性に彼女の世話を託して世を去ったことを知る。だがエメットは、初めて会うなりリンダに冷たく言い放った。ライアンとの約束を果たすためだけに僕はここにいる、と。同情なんてごめんだわ。私は一人でも生きていける。そう思った次の瞬間、リンダは言葉を失った。まさか!エメットがこの家に住み込むですって。
ドクターのブレンダンが瞳に暗い陰を宿して現れたとき、キャシーの運命の歯車は狂い出した。彼女はソーシャルワーカーとして、そして友人として、落ち込む彼を自宅に招いて相談に乗るはずだった。ところが、慰めを求める彼に導かれるままに一線を越えてしまう。それはキャシーが密かに憧れ、同時に恐れていたことであった(『ドクターとの一夜』)。新年の午前零時を迎えたパーティー会場で、助産師のジョアンナは見知らぬ男性にキスされ、神秘的な魅力の虜になって大胆に応えた。しかし耳元で新年の挨拶をささやかれたとたん、はっと我に返り、自分の犯した過ちに気づいてその場を逃げ出した。数日後、仕事で病院を訪れた彼女は、予期せぬ再会に息をのんだ。あの夜の謎めいた男性が診療衣に身を包み、目の前に立っている(『謎めいたドクター』)。セクシーなタッチで描いた会心のミニシリーズ。
ローレンは婚約者のマシアスに別れを告げるため、彼が滞在しているタホ湖のロッジへと車を走らせた。婚約者といえど、マシアスとのあいだに恋愛感情はない。二人の縁組は両家のビジネスを発展させるためでしかなく、彼女は悩みぬいた末、愛してもいない相手とはやはり結婚できないと思い至ったのだ。だがロッジに着いて彼を見たとたん、ローレンは妙な胸の高鳴りを覚えた。なぜかしら?今まで顔を合わせたときには何も感じなかったのに、今日の彼はすごく…セクシーで魅力的に見える。戸惑うローレンに、マシアスは突然キスをした。
ローガンにとってその夜は、不愉快な邪魔とともに始まった。彼の会社は企業や個人向けに送迎車を手配しているが、深夜で運転手がおらず、彼が直接出向くことになってしまったのだ。それに、ナイトクラブで待っているのが、大物実業家のひとり娘、ジェンナ・フォーダイスとあっては断るわけにもいかなかった。だが車に乗せたジェンナはサングラスをかけ、頭に怪我をしている。ローガンは病院に行こうと勧めたが、ただ家に帰ると言うだけだった。しかたなく、彼は外科医の兄に連絡して自宅で診てもらうことにした。金持ちの娘が酔って怪我をしたあげく、スキャンダルを恐れて、車を呼んだと思っていたのに、診察後、兄は意外なことを口にした。「ローガン、彼女は酔ってなどいない。目がほとんど見えないんだ」。
フランスからイギリスへ飛ぶ旅客機で、奇妙な事件が起きた。眠っていると思われた乗客の女性が、じつは死んでいたのだ。その首筋には、針で刺されたような傷がのこり、すぐに吹き矢の針が機内で発見される。針にはおそるべき毒ヘビの毒が塗られていた。大空を飛ぶ飛行機は、完全な密室だ。だから犯人は、必ずこの機の乗客、乗員のなかにいる。問題の機に乗りあわせていた名探偵エルキュール・ポアロの推理がはじまった。
マープルさんをたずねる友だちのマギリカディ夫人が、その途中で列車の窓から見たのは、おそろしい光景だった。ならんで走っている列車のなかで男が女を絞め殺す瞬間だったのだ。すぐに通報したが、女の死体はどこからも発見されない。だれも信じてくれなかったが、マープルさんは別だった。みずから調査をはじめると、問題の線路付近にある大きな屋敷に目をつける…消えた死体のなぞにいどむマープルさんの作戦とは。
地下鉄のホームには、ほとんど乗客の姿はなかった。ひとりだけ、やせた小柄な男がホームの端に立っている。そのとき、男の顔が恐怖にひきつった。思わずあとずさりした男は、線路に転落して感電死してしまう。現場を見ていたアンは、男のようす、そしてどこからともなく駆けつけてきた医者のようすに怪しいものを感じた。事故ではない。何かが裏にある。現場でひろった一枚のメモを手がかりに、アンの大冒険がはじまった。
星空の下で異国の王子にすべてを捧げた夜の思い出は、甘く切なくアンドレアの胸で生き続けていた。そして今、変わらぬセクシーな笑みをたたえ、サムが目の前に立っている。「君に会わずにはいられなかった」七年間手紙のひとつもよこさずにいたくせに、なぜ今ごろになって私に近づくの?怒りと動揺を覚えつつも、アンドリアの全身を熱いおののきが走り抜けた。
お金をもうけよう-ひさかたぶりに再会した幼なじみのトミーとタペンスは、青年冒険家商会なるものをつくった。が、その直後、英国の極秘文書消失事件に巻き込まれてしまう。まもなく文書を狙う地下組織の大ボスが現われ、冒険また冒険の展開にふたりの運命は?好奇心にとっても富む名コンビ結成の記念的作品。
本書において著者は、刑罰を意図された苦痛として促えようとし、人を統制するためにどのような苦痛を与えているか、そして苦痛を与えることをいかに統制しようとしているかについて述べている。
『ラスベガスの熱い夜』-クレオは、母親と同じような生き方だけはしたくなかった。ダンサーだった母はカジノに集まる大物たちとの恋を繰り返し、奔放な一生を送った。だけど、私は母とはちがうわ…。平凡で真面目な男性との未来を描いていたクレオの前に、ある日突然、カジノの帝王フレッチャーが現れる。『百万ドルの新妻』-“きみの子供の父親は、トレント・クロスビーだ”レベッカはそう聞かされて、激しいショックを受けた。ある事情から精子提供を受けたものの、まさかこんな現実が待ち受けていようとは…。数日後、トレント本人から完璧な“提案”が持ちかけられる。
半年で十三回の出産祝いパーティに出席して、モリーは子供がほしくてたまらなくなっていた。だが子供どころか、人生の伴侶さえ見つかっていない。そんな折、“犬をさしあげます”というちらしを目にして、赤ん坊の代わりに犬と暮らそうと決める。出迎えた広告主は、大柄で危険なほどハンサムな男性だった。一瞬熱いものが体を駆け巡ったが、モリーはすぐに冷静になる。彼は“売約ずみ”よ。赤ちゃんを抱いているんですもの。ところが驚いたことに、彼は魅惑的な視線を投げかけて言った。「いつかデートしてくれないかな」なんですって!妻も子もありながら、なんていう男なの。