土手下に転がされていた無残な遺体。暴行の痕が残る体には、メッセージが残されていた。「目には目を」。明かされる悲しい過去、次々と現れる容疑者、そして新たな殺人。罪を償うべきはーあなたかもしれない。『永遠の仔』『悼む人』の著者が描く、ノンストップ・クライムサスペンス。
一九六二年、雑誌「思想の科学」に発表され、埋もれた一篇の怪奇幻想探偵小説が「再発見」される契機となる作品論「ドグラ・マグラの世界」。政客の長男に生まれ、農園経営や僧侶や新聞社勤務等の傍ら執筆に励んだ夢野久作の実像を描き、昭和初期のきな臭い世相と不可分の作品世界の価値を評価した、日本推理作家協会賞受賞の作家論「夢野久作 迷宮の住人」。重層的夢野久作論集。
32歳、琴音の「静かな崖っぷち」新鋭作家が奏でる、おかしさに彩られた哀しみの夜想曲。第170回芥川賞候補作。
顔を売りたいはずの「斬られ役」の俳優は、なぜカメラに背を向けて倒れたのか。俳優のマネージャーが「わざと」自動車事故に遭ったのはなぜかー。演劇学校の講師であり、ベテラン俳優でもある南雲草介は、ドラマや映画の撮影現場で起こるさまざまな事件やトラブルを鮮やかに解決していく。だが、演技に潜む「罪」を見抜く南雲にも、ある秘密が隠されていた。役者たちの「業」を描いた著者渾身の傑作ミステリ。
行方不明の父親を探すため、京都にやって来た木ノ下繭子。“サトリ”の血を引く彼女は、人に触れるとその心の声が聞こえてしまう能力の持ち主だった。ひょんなことから、天狗の子孫で、モノノケの頭領である小説家・壱村水月と出会った繭子は、彼の家に住み込みで働くことに。飄々とした水月に振り回され、モノノケたちの起こす騒動に巻き込まれながら、繭子は父の失踪の真相を知りーほっこり和風ファンタジー。文庫書き下ろし。
心に鬼を棲まわせた“独眼竜”にして奥州の覇者、伊達政宗。数多の武将から恐れられ、後世にもその名を残した男の周囲には、たくましく、そしてたおやかな女性たちがいたー。我が子に毒を盛ったとされる母・義姫、影ながら政宗を支え続けた妻・愛姫、片倉小十郎の姉で政宗を育てた喜多、松平忠輝に嫁いだ娘・五郎八姫、真田信繁(幸村)の娘・阿梅…波瀾の戦国の世を、凛と生き抜いた伊達の女を主人公にした連作短編集。
才能はあるけれど売れない小説家と、画力は抜群だけれど物語が作れない漫画家。二人が出会った時に起きる小さな奇跡とは?(「結ばれたものは」)、出掛けるたびに道に迷ってしまう方向音痴の母。そこには意外な理由が隠されていて…(「方向音痴は治りません」)。死神、福の神、風神、雷神ー気まぐれで心優しい八百万の神と、人間たちとのちょっと不思議な“縁”を描いた、人気シリーズ第三弾。文庫オリジナル。
京都・祇園。花見小路の先にある甘味処「もも吉庵」。店を営む元芸妓の女将・もも吉のもとには、様々な悩みを抱えた人が訪れるー。「前のタクシーを追ってください」と、タクシー運転手の美都子に懇願する家族の辛苦、茶菓子の食べ方から「人を見る目」を教わった銀行の融資係の改心、紛糾する会議の空気を一変させた女性秘書の機転…祇園に集う人々の悲喜交々に、もも吉の言葉がやさしく寄りそう人情物語。文庫オリジナル。
創業170年を迎えた老舗出版社の比類なきアーカイブの結晶!ラルース百科事典を彩る挿絵画から、美と驚異の世界へ誘う70点を収録。知的好奇心溢れる人なら年齢を問わず、本書に学び魅了されるでしょう。深海、原生林、公園や庭園の秘密を探求し、そこに生きる小鳥や甲殻類、猛禽類や蝶類と出会いましょう。画家のアトリエやガラス職人の工房のページを訪ねてみれば、美しいイラストの数々が、学術的記述と味わい深い挿話とともに、古き時代の科学や技術の世界を垣間見せてくれます。