きみが三年の間どうしていたか、話してくれないかー長い間失踪していた夫・優介がある夜ふいに帰ってくる。ただしその身は遠い水底で蟹に喰われたという。彼岸と此岸をたゆたいながら、瑞希は優介とともに死後の軌跡をさかのぼる旅に出る。永久に失われたものへの愛のつよさに心震える、魂の再生の物語。
少年たちは暴力の果てに何を見たのか?東京から山間の町へ引っ越した中学三年生の歩。級友とも、うまくやってきたはずだった。あの夏、河へ火を流す日まではー。第159回芥川賞受賞作。
大晦日、実家に帰ると母がいなかった。息子の泉は、夜の公園でブランコに乗った母・百合子を見つける。それは母が息子を忘れていく、始まりの日だった。認知症と診断され、徐々に息子を忘れていく母を介護しながら、泉は母との思い出を蘇らせていく。ふたりで生きてきた親子には、どうしても消し去ることができない“事件”があった。母の記憶が失われていくなかで、泉は思い出す。あのとき「一度、母を失った」ことを。泉は封印されていた過去に、手をのばすー。現代において、失われていくもの、残り続けるものとは何か。すべてを忘れていく母が、思い出させてくれたこととは何か。
井上靖、三島由紀夫らの小説でも描かれ、コーちゃんこと越路吹雪は多忙ながら東京會舘でのショーには永く出演した。七〇年代はじめに改装。平成では東日本大震災の夜、帰宅できない人々を受け入れ、その翌年には万感の思いで直木賞の受賞会見に臨む作家がいた。そして新元号の年、三代目の新本館が竣工する。
たたき上げの副支店長、社内恋愛中のOL、お調子者の課長代理…出世のため、家族のために奮闘する行員たち。現金紛失事件をきっかけに不穏な空気がたちこめ、一人の男が失踪した。
91歳の耕造は妻に先立たれ、69歳の小夜子を後妻に迎えていた。ある日耕造が倒れ、小夜子は結婚相談所の柏木と結託して早々に耕造の預金を引き出す。さらに公正証書遺言を盾に、遺産のほぼすべてを相続すると耕造の娘たちに宣言したー。高齢の資産家男性を狙う“後妻業”を描き、世間を震撼させた超問題作。
若き日に誓った忠誠、悲しきその行方はー山内で一体何が起こっていたのか!?衝撃の真実がついに明かされる。八咫烏シリーズ、戦慄の最新刊。
50年に及んで一教師として教育実践の場に立ち、退職後も新しいテーマを研究・発表しつづけている著者が、本当に“教える”ということはどういうことなのか、具体的な数々のエピソードを通して語った表題作「教えるということ」をはじめ、「教師の仕事」、「教室に魅力を」、「若いときにしておいてよかったと思うこと」を収録。プロの教師としてあるべき姿、教育に取り組む姿勢について、きびしくかつ暖かく語る。教育にかかわる人をはじめ、教育に関心をもつすべての人々、とくにこれからの社会を担う若い人々に贈る一冊。
たとえ、自分が生と死の境に立っていようとも、人は恋をする。なぜなら…。傷を傷というふうにも表せない男女が魅かれあう姿を通して、人が人を求める気持ち、言葉にできない寂しさを描いた五篇を収録。人を愛することで初めて生ずる恐怖、“聖なる残酷”に彩られた、最高に贅沢な愛と死のシミュレーション。
目が覚めてわたしは、いるはずのない場所にいて。閉鎖病棟の中で繰り広げられる絶望と再生の14日間。
高山なおみが本格的な「料理家」になる途中のサナギのようなころの、雨ではないが晴れ間でもない、なにかの中間にいることの落ち着かなさ、不安さえ見え隠れする淡い心持ちを、そのままに綴ったエッセイ集。なにげない日々のなにげない出来事が静かに心を揺らし、切なく痛い。カラー口絵、32レシピ付き。
触れるだけで相手の命を奪う恐ろしい手を持って生まれてきた少女、自分を殺そうとする父から逃げ、山賊に拾われた男、幼き日に犯した罪を贖おうとするかのように必死に悪を糺す同心、人々の哀しい運命が、謎の存在・金色様を介して交錯する。人にとって善とは何か、悪とは何か。
秋のある日、大往生を遂げた男の通夜に親類たちが集った。子ども、孫、ひ孫たち30人あまり。一人ひとりが死に思いをはせ、互いを思い、家族の記憶が広がっていく。生の断片が重なり合って永遠の時間が立ち上がる奇跡の一夜。第154回芥川賞受賞。
「あのね。よく聞きなさい。昨日、団地で男の人が殺されたの」知っている。わたしが殺したのだ。母は続けてこう言った。「警察に里子ちゃんが連れて行かれたの」友梨、真帆、里子。大人になった三人の人生が交差した時、衝撃の真実が見える。傑作長編エンタテインメント。
君が生まれる前から僕たちが結ばれることは決まっていた。十六歳の少女の部屋に男が侵入した。十七年前に男が見たという夢は、果たして妄想なのか。
偽装殺人、他殺を装った自殺…。どんなに誤魔化そうとしても、もの言わぬ死体は、背後に潜む人間の憎しみや苦悩を雄弁に語りだす。浅沼稲次郎刺殺事件、日航機羽田沖墜落事故等の現場に立会い、変死体を扱って三十余年の元監察医が綴る、ミステリアスな事件の数数。ドラマ化もされた法医学入門の大ベストセラー。
ワインの将来の価値を予測する。症状の統計から病気を診断する。脚本段階で興行収入を最大化する。そしてあなたに最適な結婚相手まで決めることも、「絶対計算」が可能にする!IT時代の兆単位のデータがもたらす新世界ビジネス戦略。イェール大学気鋭の計量経済学者がわかりやすく書いた知的大興奮の書!文庫版は補章追加。
大阪、ミナミの繁華街ー。夜の街に棲息する人々の、懸命で不恰好な生き様に、胸を熱くする力作誕生。
フォトジャーナリズムの世界でもっとも有名かつ最高峰といわれる「崩れ落ちる兵士」。だが、誰もが知るこの戦争写真には数多くの謎がある。キャパと恋人ゲルダとの隠された物語がいま明らかになる。
八咫烏が支配する世界山内では次の統治者金烏となる日嗣の御子の座をめぐり、東西南北の四家の大貴族と后候補の姫たちをも巻き込んだ権力争いが繰り広げられていた。賢い兄宮を差し置いて世継ぎの座に就いたうつけの若宮に、強引に朝廷に引っ張り込まれたぼんくら少年雪哉は陰謀、暗殺者のうごめく朝廷を果たして生き延びられるのか…?